真・恋姫†無双 魏伝アフター   作:凍傷

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97:IF/罰を愛と謳う夜①

148/静かな罰

 

-_-/一刀

 

 屋敷……城内? もういいや、城内で。───を、歩く。

 目的としては誰かと出会うため。

 視察兼警邏をするにしても、他の人の予定に入っていたらいろいろと面倒なことになりそうだから、確認をしたかったのだが……会わない。面白いくらいに将の誰とも会わない。

 考えてみれば誰がどの部屋に泊まるか~なんてことは事前に何かに書いてあるはずなのだから、重要書類を見直してみれば華琳が何処に居るのかなんてのはわかる筈なのだが───俺はその重要書類が何処に在るのかさえ知らない。

 書いたら積んでの繰り返しだったのだ、仕方ない。

 倉庫の位置は知ってはいるものの、わざわざそこを開けてもらってまで調べたいことじゃない。そもそもそんな回りくどいことをするくらいなら、自分の足で調べたほうが早いだろう。

 

「のう主様? こうして歩き回るのはよいのじゃが~……なぜ何処の部屋にものっくをせんのじゃ?」

 

 てほてほと歩く中、美羽が疑問を貼り付けた顔のままに俺を見上げる。

 何故ってそりゃあ……

 

「気配で探してるから」

「なんと!?」

 

 既に氣くらいしか自慢できるようなものがない。そう言っても過言ではないくらいに錬氣馬鹿になっている北郷一刀です。

 いや、もちろん気配を探るっていっても結構おぼろげなものだ。

 “あ、ここには人が居る……かな?”程度のもの。

 相手に自分の氣をくっつけて動きを探るのと似たようなものだ。

 完全に相手の動きが読めれば苦労はしないし、相手の位置の全てが解ればこれまた苦労はしない。

 そういった意味ではこの世界の将の凄さは……思う度に異常であると頷ける。

 

「……ふむ」

 

 そんな考えはどうあれ……さて。

 鍛錬の時にも思ったことだが、本当に、不思議なほどに将の誰とも会わない。

 そういう時ってほら、ちょっと顔が見たいなーとか思うもので。

 なので訪ねてみても、案外いらっしゃらないとくる。

 どうなってるのやらと思いつつも各部屋を回ってみたりするわけだが、やっぱり会わない。

 仕方無しに部屋に戻って仕事でも……と思うのだが、ぶっ通しで仕事が出来たお陰でそこまで仕事がなかったりする。もちろんそれは書類関連のものだから、少し待てばちくちくと追加されるわけだが……すぐにやらなければいけないものってわけでもなかった。

 

「……まいった」

 

 なんというか……今日はめぐり合わせの悪い日なのかもしれない。

 溜め息を吐きつつ、頭を軽く掻いて歩き出す。美羽と一緒に。

 とりあえずアレだ。

 視察の仕事もあるから、それをちゃちゃっと終わらせてしまおう。

 

……。

 

 そんなわけで視察兼警邏…………なんだが、何事もなく平和的に終了した。

 

(ば、馬鹿な……何も起こらないだと……!?)

 

 そんなことを普通に思えてしまうあたり、俺ってもうトラブルに慣れすぎているんだろうなぁ。

 まあいい。

 今日は平和。平和な日なのだ。そろそろ気持ちを切り替えないと、いらないストレスを抱え込むことになりそうだ。───な~んて思ってると面倒が起きるんだよね!? そうだよね!?

 

「………」

「いらっしゃいいらっしゃ~い!」

「これはうちが一番安いよ~!」

「………」

 

 街の中で何をソワソワしてるんでしょうね、俺ってやつは。

 よし、大丈夫だ。今日は本当に平和だ。

 何かが起こることを期待してるわけじゃないんだから、自然でいこう。

 

「よしっ、じゃあ残りの書類関連もさっさと終わらせて、川にでも行くかっ」

 

 もちろん、美羽を連れて。

 心の中がそれを目標とした途端、体に活力が生まれる。

 人間ってやっぱり欲が深いね。目の前にエサがあると突っ走ってしまう。

 自分で吊るした餌でも、それが魅力的なら手にしないのはおかしい。

 なので全力! 俺の百面相を見上げていた美羽を抱えて氣を込めた足で地を蹴───る前に。

 

「そういえばあの書店、ついこの前出来たんだっけ」

 

 確か、報告の類の書簡の中に混ざっていたはずだ。

 ちょっと寄ってみようか? 一応視察の仕事でもあるわけだし。

 警邏の名目では店の中までは見てなかったから……

 

「美羽、ちょっとあそこの書店に寄っていいか?」

「!? ……つ、艶本を買うのかの……!」

「買いませんよ!?」

 

 前略張勲さま。

 おそらくあなたの入れ知恵でしょうが、次会ったらデコピンくらいさせてください。

 あと純粋なのはいいけど、七乃の言うことならなんでも受け取る美羽にもいろいろと問題が……。

 

 

 

-_-/華琳

 

 一通り本を見て、その隣の呉服屋で衣類を見て回った。

 特に目新しいものがあるわけでもない……と思っていたのがつい先ほどまで。さすがに一刀が支柱となる場所だけあって、見たこともないような意匠のものが奥のほうに随分と存在していた。

 店主曰く、「形は斬新ではあるのだが、だからといって買ってもらえるわけでもない」そうだ。なるほど、意匠に凝っているのなら値段もそれ相応のものになるのだ。そうそう手が出せるものではないだろう。

 

「沙和あたりは喜びそうね」

 

 思い浮かべるまでもなく、頭の中に目を輝かせて燥ぐ沙和の姿が。

 そんな沙和を見習うわけではないけれど、目新しいものを見ていると少し心が浮つく。

 どう浮つくのかといえば………

 

「………」

 

 …………。

 いえ。

 べつにこれらを着た際に、どこかのばかの反応を思い浮かべているわけではなくて。

 ………………なくて。

 

「店主。試着させてもらっても構わないかしら」

「ええどうぞ」

 

 そう言ってみれば、店主は手のひらをすり合わせていた。

 そんな店主の反応に小さく息を吐いてから、何着かを手にとって歩く。

 試着室はさらに奥にある。

 そこへとこもり、早速姿見の前で試着を開始した。

 忌々しいことにどれも自分の体格よりも大きめだが、気に入ったのなら言えば直しくらいはするだろう。

 なので着てみる。

 まずは……一刀が考えたという“めいど服”。

 本来は自分のような立場の人間が着るものではないらしいが、服は服だ。服を着てなにが悪い。むしろ今の自分は魏王ではなく一人の曹孟徳として来ているのだ。なにを言われる筋合いもないわよ。

 

「………」

 

 そんなわけで、姿見の中にめいど服を着る自分。

 ……………。

 髪、おろしたほうがいいかしら。

 いそいそと髑髏の髪留めを外して、さらりと髪を払う。

 その上に“ほわいとぶりむ”とかいうものをつけてみると…………なんというか、髪の色が違う桂花ね。

 悪くはないけれど、やはり印象というのは強いものだ。

 この服を着て黙って誰かの言うことを聞く自分を想像出来なかった。

 

「次ね」

 

 次。

 赤と白の衣装。

 白い小袖に緋袴というらしいそれは、巫女装束というらしい。

 一応着てみようと思ったのだが、上手くいかない。

 着付け方法が書かれた紙が服の間に挟まっていたものの、それの通りにしてみるも……ずり落ちる。……いえ? べつにどうとも思ってないわよ? こめかみあたりがビキビキと躍動していたりもしない。するものか。

 とにかくこれは私には似合わない。何故だか確信する。似合わない。

 色合いを求めるのなら、なんというか……これは落ち着きのある、黒い髪の者にこそ合いそうな気がする。

 

「次は───」

 

 次の衣服を手に取る。

 さらりとした生地の触り心地に驚きながらも、ふっと笑って試着を続けた。

 

 

 

-_-/一刀

 

 でげででーん!

 

「おおお……! まさか冥琳にまだ見せてもらってない絵本を発見してしまうとは……!」

 

 新しい本屋で何を買ったのかといえば、絵本だったりする。

 真新しい本が入った紙袋を子供のようにキュムと胸に抱き、ほっこり笑顔の……こんにちは、北郷一刀です。

 

「さーてどうしようかな。今日はもう迅速に片付けなきゃいけない仕事もないし、部屋に戻って本を見るか……それとも寝るか」

 

 どうしよう。

 将に会うこともないとくると、言っちゃなんだけど久しぶりに自分の時間を得られたと言える……のか……!? や、事実としては仕事やってた時でも寝なかった分は自由な時間だと言えるわけだが、それを仕事に使ったなら自由とは言えないだろう。ほら、一応学生だし俺。学生の感性を持ち出すのなら、仕事をするのは自由時間とは呼びたくないですはい。

 なので今! なんか寝不足と本を手に入れた高揚感とでテンションが愉快なくらいに上がってるが、今! そう……今こそ好機!

 

「おお……主様がとても楽しそうなのじゃ……。その本はそんなにも良いものなのかの?」

「美羽……」

「う、うみゅ? どうかしたのかの、主様」

 

 ソッと美羽の両肩に手を置いて、語りかける。

 片方は本を持ってるから締まらないものの、まあそれはそれで。

 

「俺と……俺と同じ状況を味わってみればきっとわかるさ。堅苦しい言葉、上から目線の文字しかない、絵なんて皆無な書物を延々と読んで知識を深める日々を味わえばさ……。この、押し付けるんじゃなくて“学んでほしい、知ってほしい”に溢れた温かな絵本のありがたさがっ……!!」

「むぅ、よくわからんがの。つまりその絵本には、やさしさが詰まっておるのかや?」

「そう! そうなんだ! そのやさしさ! ヴァファリンにだって負けるもんか! 小さな袋に入った少量の粉末の成分の半分程度のやさしさに負けるもんか!」

 

 そう、やさしいんだ。

 べつに風邪引いた時に初めて飲んだ際、咽た拍子に粉末が鼻の奥に付着して物凄い違和感と戦った過去を持つから嫌ってるとかそんな事実はない。ないったらない。

 ともかく移動しよう。民の視線がなんだか痛い。

 

「あ、でも」

 

 ふと美羽を見下ろす。

 視線が合って、「うみゅ?」と首を傾げられたが……その姿に頬を掻く。

 すっかり庶人の服が定着しちゃってるよな。

 給料の大半を真桜の開発費に回しているとはいえ、まったく無いわけじゃない。たまにはそういう使い方もいいんじゃないだろうか。

 ……い、いや、べつにタタタタ他意は無くてデスネ? 惚れた相手の気を引きたいとかそーゆーのじゃ断じてなくてっ! いやごめんなさいやっぱり喜んでくれたら自分も物凄く喜ぶと思いますハイッ!

 

「子供の頃の純粋さって怖い……」

「? なにか言ったかの、主様」

「なんでも───はうあ! ……エ、エェト。コココッココ子供の頃の純粋さって、怖いなーって……ネ?」

 

 なにか言ったかと問われ、誤魔化すのはよろしくない。

 ならば正直に。なんかもう泣きそうなくらい顔が熱いし恥ずかしいけど誤魔化さない。これ……なんて羞恥プレイでしょうかね。正直に生きるのってムズカシイ。

 

「そんなわけで美羽っ!」

「? お、おおっ! なんじゃっ!?」

 

 無理矢理張り上げた声に、美羽もわざわざ声を張り上げて付き合ってくれる。なんだか無性に感謝したくなった瞬間でした。

 

「服を買いにいこう! ずっとその服だけじゃ、外に出るにもこう……ほら、張り…………合い? とにかくなにかが足りないだろ?」

「元々着ていた服もあるぞよ?」

「や、“ぞよ?”じゃなくて。ここは素直に頷いてくれると嬉しいんだけど」

「………………?」

「うわぁ」

 

 もはや自分が服を買ってもらえるってことが普通に考えられなくなるほど、制限された生活に慣れてしまったのか……? 袁の旗を掲げていた時なんて、服も食事も娯楽も選びたい放題だったろうに。

 よ、よし。ここは三国に降ってもらおうと提案したこの北郷が、せめて少しの贅沢は出来るんだってことを教えてやらなければ───!

 ……あくまで俺の金で!!

 

……。

 

 そんなわけで呉服屋である。

 ここには俺が意匠を凝らした衣服が結構あったりする。

 もちろんそれらは天……日本に存在した、いわゆる色物的なものだったりするわけだが、だからといって手抜きをしたわけでもテラ光りしているわけでもない。

 あくまで自分の知識の範囲内での仕事になってしまうのは仕方ないこととはいえ、その知ってる中での全力は出せたと胸を張れる。

 

「メイド服はロングだよな。うん」

 

 ミニスカートはウェイトレスが身につければ良し。

 詠のはミニだったな。

 あれ確実に商人の趣味だろ。たしかに詠には似合っていたけどさ。月があの性格だから、逆に詠には似合っていたけどさ。

 そもそもメイドといいますのは(略)であるわけで(略)言ってみれば(略)であるべきであるからして(略)欲望の捌け口では断じてないと俺は(略)

 

「さてと。美羽に似合いそうなものは───っと」

「お、おおお……主様、ほんに、ほんに主様が妾のために買ってくれるのかの……!?」

「ああ。遠慮しないで受け取ってくれな? しっかり選んでしっかり贈るから」

 

 華琳と来た時に学んだことは決して忘れない。

 男は女性の衣類を選ばなければならない。たとえ恥ずかしくともそうすることが王道! らしい! 呉に居た時もみんなに振り回されっぱなしで、軽い贈り物の時でさえ俺に選ばせたのだ……女性との買い物の際、なにかを贈るなら男が選ぶ! これ、人間の知恵!

 

「うむっ! そこまで言われては仕方ないのぉ、にゅふふふふ……仕方ない、仕方ないのう主様はにゅふふふふふ……!」

「………」

 

 なんかものっそい緩い顔でにゅふにゅふ笑ってらっしゃるのですが。

 え? これ怖いとか思っちゃいけないの?

 いや、今は服選びに集中しようね。

 えーと……多少大きくても店員に言えば仕立て直してくれるだろうし、ここは思い切って───マテ。

 

「え…………これ、幼稚園とかの……」

 

 ス……スモック……?

 馬鹿な……俺、スモックなんて型紙すら採った覚えがないんだが。

 これも商人の欲望のカタチの一つだとでも…………いうのだろうか。

 

(…………そっとしとこう)

 

 カショリとスモックを戻した。

 続いてその隣へ目を移す。

 そこには…………

 

「…………。……? ───! うわっ! こっ───、これ、完成してたのか……!」

 

 懐かしい意匠の服があった。

 完全再現なんてことは当然不可能ではあったが、今この世界で作れる一番類似した素材を使っての……フランチェスカの服。もちろん男子用ではなく、女子用だ。

 

「………」

 

 レプリカとつけたくなる制服を片手に、ちらりと服を見て回る美羽を盗み見た。それからはいつかの華琳との買い物の時のように、イメージを開始。

 ……うーん、これ着るならもう少し身長が欲しいか?

 仕立て直して貰えるとはいえ、それでもだ。

 フランチェスカに住まう数少なき我ら男子の中の一人である早坂章仁───……その氏の妹君であらせられる早坂羽未嬢 (143cm)よりも明らかに小さくていらっしゃる。これはもう採寸がどうとかの問題じゃなく、似合わないだろ……割と本気で。

 なのでもっとこう、言っちゃなんだがどうせ選ぶなら“これでこそっ!”というものを。もちろんスモックは却下の方向で。

 …………ちなみに。

 妹君の身長情報は、及川祐の提供でお送りする。

 

「んー……」

 

 朝の鍛錬の時も思ったが、美羽の服は鍛錬には向いていない。

 鍛錬用になにか動きやすいのと、あとは外行き用になにか……

 

「…………」

 

 さらに待とう。なんでブル……もとい、体操着がある。

 や、そりゃスパッツがあるんだから予想できないわけじゃないよ? 初めて鈴々を見た時は首を傾げたくなったもんさ。それ以前に真桜のゴーグルとか……まあ、眼鏡の起源は紀元前8世紀の古代エジプトのヒエログリフあたりにまで遡るらしいから、ゴーグルくらいはあるかもだけどさ。それでも素材的なものとか作り方とか…………ああ、うん、今さらだったね。ゴーグルひとつ作れないでガンランスが作れるもんか。

 もう製作物に関してツッコむのはやめよう。ブルマがあるのはブルマがあるからと、そう考えてしまえばいいんだ。と、当然なんだよきっと、当然。

 

「……それよりも服だ」

 

 頭を振って見繕いを再開。

 さて、美羽といえば……黄色、金色、山吹色を主体にした色合いが似合いそうだ。

 髪の色が金だからってわけでもないんだろうが、明るいけど明るすぎない色がいい。となると山吹色か?

 リボンの色に合わせてみるのもいいか。紺色、紫色、結構いろいろある。黒は……うーん、黒も悪くはないけど……蜂蜜好きも相まって、蜂みたいな色になりかねない。

 大人し目だけど明るい色で……大人しめの名に恥じない、露出の少ないもので……おお、これなんかどうだろう。動きやすそうだし、これからの季節に合いそうだ。値段は結構しそうだが、喜んでくれるなら───ハッ!? いやいやダメだダメだ落ち着け童心動くな少年! 俺の中の子供な俺よ、今は堪えろ!

 

「……のう主様? なぜ急に自分の頬を殴り始めたのじゃ……?」

「ああ、えっとな、実は惚れた弱み───いや違うそうじゃなくてね!?」

 

 なにを口走ろうとしてやがるか俺!

 今はそんなことより服選びが……ああもう! ズバッと決めろ!

 

「よしっ! これとこれだっ!」

 

 きみに決めたとばかりに服を二着。

 もっと買ってあげたいところだけど、そこまで余裕があるわけでもなく。……いや、服って高いんだよ。本当に、冗談抜きで。ゴスロリをただで貰えることに驚くくらいに高いんだ。

 だから二着。買い食いとかあまり出来なくなるけど、そこは目を瞑ろう。完全に無くなったわけじゃないし。

 

「そんなわけで美羽、これなんだけど……いいか?」

「主様が着るのかの!?」

「違いますよ!?」

 

 全力で誤解されたので全力で誤解を解きに走った。

 事情を飲み込んでくれれば早いもので、美羽は二着の衣類を手にご機嫌状態で───奥にある試着室へ。俺はなんとなく初めてのデートに燥ぐ恋人を見守るような気分で───イヤ違うなんで恋人になる落ち着け俺。

 ともかく燥ぐ美羽を見送って……って、カーテン締まってるじゃないか。

 けれども美羽は気にせずに突貫。これはやばいと慌てて止めに入ったのだが、止めようと呼びかけつつ近寄った甲斐もなくあっさりとカシャアと開かれるカーテン。

 そして───

 

「へぅっ……?」

 

 その先で、何故かフランチェスカの制服に身を包み、きょとんとした顔で月のような声をこぼす天下の覇王さま。ああ、うん、着替え中じゃなくてヨカッターというのももちろんだけど……うわ、やばい。顔絶対に赤いぞ俺。

 いやあの、美羽には似合わないとは思っていたものの、これは……髪下ろしてるから一瞬目を疑ったが、これは……!

 

「………」

「え……や、ちょっ……一刀っ!?」

 

 のしのしと試着室に入って、驚く華琳の髪の毛をさらりといじくる。

 こう、ロールが手前にくるように。

 さらに前髪もちょちょいといじって美羽のリボンを拝借して後ろで縛れば───

 

「み、御子柴さゲブゥ!!」

 

 喋り途中で肋骨に貫手をされた。地味に痛かった。


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