真・恋姫†無双 魏伝アフター   作:凍傷

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102:IF/技の開発は傍から見るといろいろとアレ③

 さて。

 今度こそと地面に撃った指先発射の圧縮氣弾は、確かに威力もあって地面も抉ってくれた。固定した状態ではタカが知れているんだけど、抉ってくれた。もちろん穿つには至らない。

 大人しく凪みたいに爆砕型でいったほうが良さそうだ。

 爆砕型はすごいぞ~? なにせ賊を捕まえるために放てば、店の看板が吹き飛ぶくらいの威力で……

 

「……使いどころをちゃんと考えてから放とうね」

 

 そもそも地面に氣弾を潜伏させるって野望は費えたんだから、地面を抉る理由もないのだ。そりゃあ威力を知りたいって願望があったわけだけどさ、手入れしてくれる人に悪いじゃないか。

 

「手入れかぁ。園丁†無双のみんなは元気かな」

 

 懐かしき魏国の精鋭らを思う。

 またボッコボコにされた中庭を整備するためだけに呼ばれたりとかしてなければいいけど。

 

「まあそれはそれとしてだ。んー……」

 

 とりあえず結論を出すのなら、今の俺は氣弾を放つよりも氣を込めて物理的に殴ったほうが強いみたいだ。

 ようするに攻撃特化や防御特化ではなく、加速とかそういう変則的なことに向いている氣なんだろうね。なんたって類を見ない攻守融合型らしいし。

 ……これって使えるのだろうか。

 普通に攻撃型の方が男としては浪漫があったような気が。

 でもそうだとしたら、誰かの傷を癒すとか誰かの氣を呼び覚ますとか、あんなに簡単には出来なかったんだろうな。そこのところは素直に感謝。

 

「威力は無くても数撃ちゃ武器になるだろうし、目眩ましにも……数撃ちゃ?」

 

 数……数か。

 ピッコ○さんや野菜の王子様みたいに両手で撃つんじゃなくて、こう……右手で木刀を構えて左手で相手の動きを制限させるために連続で……でも氣弾を馬鹿丁寧に撃ってたら氣がいくらあっても足りない。そこで数だ。

 

「数……指先から……そう、指先から、氣の量は小さいけど多少の威力はある氣の小さなレーザーみたいなのをドチュチュチュチュと発射…………ああっ! アーマー○コアでそんな武器があったよ!」

 

 え、えーと、イメージイメージ。

 指五本を相手に向けて構えて、その五本の指から一気に一発ずつの氣弾……氣線? を放つ……と。

 

「よっ……と。おおっ、出た出た」

 

 相当にショボかったものの、小さな氣弾が出てくれた。しかしすぐに霧散してしまったので、これじゃあ敵に当たる前に消えてしまうことになる。……むしろせめて線状で出したい。あれじゃあ指からパチンコ玉(ダメージはそれに劣る)を飛ばしてるだけだ。

 こう、もっと狭めるように~……それでいて気脈から一気に押し出して~…………イメージって言うけど、考えるのは簡単で、明確化させるのが難しいんだよこういうの。歌の練習とかで、“もっと頭に響かせてー”とか言われたって響いたら脳が死ぬわ! とか真面目にツッコミたくなるような気分。いやまるで関係ないんだが。

 

「リズミカルにやってみよう。1、2、123、って感じで出す……」

 

 やってみる。

 ……出るには出るんだが、どうにも複数個所から出すというもの自体に俺が慣れていないようで、どうにも上手くいかない。

 はぁ……覚えることがいっぱいだ。そして溜め息吐いてるくせに顔がニヤケている。自分が強くなれる可能性が見つかったからだろうか。春蘭とか相手に使ったら小細工がどうのこうのと罵倒が飛びそうな予感だけが浮かぶものの、まあなんだろう。春蘭相手に大した威力もない見掛け倒しマシンガンを撃ったところで、どうせそのまま突撃してくるに違いないのだ。そしてまた空を飛ばされる俺。……ソレを思えば、罵倒がなんだというのだろう。

 たとえ負けるとわかっていても、可能性を思えば冒険をしたくなるのが男って生き物だと思わせておいてくださいお願いします。

 で、それに付き合う女性っていうのは大体、まーた始まったと苦笑してしまうものでしょう。男でごめんなさい。

 

「……一本一本地道にいこうか」

 

 人差し指は楽に出た。

 中指もOK。……薬指と小指と親指が上手くいかない。

 そのくせ、サムズアップしながらだと何故か出た。

 ……しょうもないけど大いに笑った。

 

……。

 

 さて。

 なんとか指の一つ一つや、人差し指と中指二本ずつ、小指薬指二本ずつなどでも氣弾が出せるようになって一息。なんとなくやりたくなって握り拳から小指人差し指のみを立てて、それを天に突き上げながら氣弾を放ってみた。世に言うテキサス・ロングホーンポージングである。

 無性にラリアットをしたくなったが、きっと気の所為だ。

 

「……よしっ」

 

 そんなウエスタンソウルはさておき、いざフィンガーマシンガン!

 バッと格好よく構えた(つもり)の指先から、氣弾を発射する!

 それらはそれぞれが指差した方向へと器用にまっすぐに飛び、障害物に当たったものは軽く弾け、当たらなかったものも一定距離を飛ぶと消えた。しかしきちんと思う通りに発射出来るようになって、俺はもうそれだけで十分満足だった。

 威力など二の次。

 こういうのはあれだ。

 かめはめ波と同じで“出来たこと”が何より大事なんだ。

 だから指から一斉に氣弾というか光線が出なくても、たとえ二本ずつとか一本ずつの発射にバラけていても、それはそれでいいのだ。い、いや、挫折したとかそういうのじゃないよ!? ほんとだよ!?

 あとは動きながらでもこれが出来て当然になれば、戦い方も広がるってものさ! ……多くの場合、威力が小さいと知るやコレを無視して突っ込んで来そうだけどね!

 

「せっかく編み出したマシンガン(もどき)なんだから、そう簡単に潰されるのもなぁ……。じゃあアレだ。コレを無視して突っ込んできた勇気あるお方には、漏れなく全力の氣を込めた木刀の一撃を進呈するとか」

 

 目眩ましのあとに一撃……砂をかけてから攻撃するどこぞの悪党のようですね。

 命をかけるんだったら“どんな手を使ってでも勝つべし”だろうけど、やったら華琳を始めとする様々な人に絶縁されそうで怖いです。

 

「……アレ? じゃあ俺、相手が掻い潜って出てきても相手が攻撃仕掛けるまで待たなきゃダメなの?」

 

 …………覚えた意味ねぇ。

 そんな言葉が俺の頭の中に大きく誕生して……口調が悪くなるのも直すつもりもなく、頭の中の言葉をそのまま口にしたのでした。

 体が勝手に崩れ落ち、もはや恒例となってしまったorz状態なのは、もう気にしないことにした。

 

……。

 

 氣の応用その……いくつだっけ? まあいいや、その2ってことでいこう。

 

「氣のマシンガンについては卑劣に見えない程度に使う方向で。次は……」

 

 ともかく俺の氣は何かに宿らせることや加速などといったものに特化しているようなので、攻撃の加速や移動、自己の回復などに使うのがベストだろう。

 さすがに疲労は簡単には回復してくれないが、それも氣で体を動かせば疲れづらいという恩恵があるので度外視。防御面に使うって方向は……さすがに腕に氣功を使ったからって銃の弾丸を弾く肉体とか刃物を受け止める肉体とかになるのは無理だろうから、俺はあくまで衝撃吸収の化勁でいこう。もちろんそういう氣功に憧れはあるんだけどね。

 えーと? 体を硬くする氣功って名前、なんていうんだっけ? 硬氣功っていうのはちょっと違ったような気がするんだけどな。逆に筋肉増強とかの氣功があるなら是非覚えたいものだ。筋力の上げようがないから、こう……美しい魔闘家鈴木さんのように爆肉鋼体と名づけた能力を使うだけでマッチョになれるとか。……なったらなったで、その体を使いこなすのにまた時間を費やすんだろうね。使った途端に使いこなせるイメージが全然湧かないのは、どこまでいっても自分が日本人……というより極々一般的な地球人だからなんだろう。宇宙人ならなにがあっても驚くだけで済む……そんなイメージなら簡単に出来そうだ。

 

「移動速度……だよな。走る練習は今でも続けてるし、お陰でもう氣で体を動かすことにも慣れた」

 

 けど、それはあくまで筋肉に負担をかけない程度の速度。

 疲労が出ないように動くことを意識しているために、無茶な行動は出来ていない。なのでそれをさらに氣でカバー出来れば……というのが応用2。

 

「腕の加速が出来るなら足の加速も出来るはず。それは練習の段階で何度かやったけどなぁ……」

 

 あれは結構痛い。

 ご存知のように氣で体を動かしているわけで、それに加速をつけると関節にダメージが来る。なにせ走る動作の際にクッションになるはずの筋肉が、脱力の所為で普段よりも機能していないのだ。お陰でどっすんどっすんと響くし、痛みを和らげようと氣をクッションにしようとすると走る方向に氣を集中させづらくなるし。

 現在よりも速く走るとなると、まずはそこをなんとかしないと……ん? なんとか……あ、なんとか出来るかも。指の一つ一つから同時に氣を放出することに成功したんだ。その要領で、こっちもなんとかなるかもしれない。

 

「おお……案外無駄なことって無いのかも」

 

 喜びつつも鍛錬再開。

 走るために体を動かす氣と、クッション代わりにする氣とを動かしてゆく。……が、予想通りと言うべきか最初からそう上手くいくなんてこともなく、何度か盛大に転倒。

 見張りをしている警備隊の視線に恥ずかしそうに苦笑しながら頭を掻くと、それでも体を動かしてゆく。そんなことを何度か……何十度か繰り返していくと、いい加減恥ずかしさよりも成功率に集中出来るようになってくる。

 成功を目指して頑張っているのだから、なにが恥ずかしいもんか。

 そう頭が切り替わってくれれば、あとは集中するだけだ。

 

(体は脱力。氣で完全に体をコントロールして……木刀は氣で手に繋げるイメージ。自分を自分で操るマリオネットだって思えば、あとは───)

 

 地面を氣で蹴り弾く。

 以前よりも速く、しかし衝撃は吸収して地面を蹴り弾く氣に上乗せすることで、より速く。化勁の要領だ。今までは相手に向けて上乗せで攻撃していたソレを、移動の際には移動へ付加する。

 マリオネットのようにとは自分でも妙な喩えを出したものだとは思うものの、困ったことに実際にそんな感覚なのだ。脳で信号を出す以上は筋組織で動かすのと変わらないだろうと思うだろうが、筋肉を動かしちゃ意味がない。あくまで氣を操って体を動かすのだから、困ったことにマリオネットなのだ。

 これが相当に大変で、今まで生きてきた自分を完全否定しながら動くようなものだ。人間の構造とか無視ですよ。“赤子の頃から筋肉とともに歩んできた体への、これは冒涜だぁ!”なんて叫ぶつもりはもちろんないわけだが、染み付いたクセというのは取れないものだ。いざという時は決まって氣よりも筋肉が先に動くために、氣と筋肉の動作意識が合わさって激しく転倒。いろいろな意味で痛い目を見ている。

 

「御遣いの氣って、いいことばかりじゃないよなぁ」

 

 でも、極めればシーザー……特別な味です。じゃなくて、極めれば行動の幅が確実に広がる。

 いっそ仙人にでもなるつもりで、愚直に氣を極めよう。なにせその一点しか成長させることが出来ないのだ。成長しないこの体で、どこまで居られるかわかりもしないこの世界で、何も出来ない自分で居るよりは……そうさ、何かを出来る自分であるために。国に返せるものを一つでも増やすために、まずは一点。それを極めてみよう。

 

「言うは易しだけどなー……」

 

 苦笑してぼやきながら、それでも体を氣で動かす。

 たとえば寝転がった状態で完全に脱力してから、氣だけで体を持ち上げつつ立ち上がる。もちろん脱力中だからぐにゃりと体が後ろに倒れそうで───って固定固定! よ、よし、直立状態に出来た。あとは歩くために氣の固定やら移動やら、緩急に応えられる体作りを行なえるように意識。

 それに慣れると走りださせて、衝撃も氣で吸収。次の一歩のための加速装置として踏み出させて、一歩ごとにどんどんと速くさせて───!

 

(は、速い! 人ってこんなに速く走れたのか! 速い───速っ……速ァアア!?)

 

 行動になれてくると、まるでリズムゲームのような感覚。

 足が地面に着く瞬間に衝撃を吸収して、それを蹴り足に装填して蹴る。それらをリズムで繰り返すようにしていると景色の流れが速くなって、方向転換をする速度も速くなってゆく。

 

(にっ……忍者! 人にして人に非ず!)

 

 でもここまで来るとその先へ行きたい。

 そんな欲求が出てきたら、もはやこの北郷……止まる理由などござらんかった。

 速くなるリズムに無理矢理合わせ、走る足が段々と忍者チックになっていくと、なんというか余計な意識まで浮上したりするのだが……

 

(おおお! 忍者走り速い!)

 

 ◆忍者走り───にんじゃばしり

 大きく前傾しつつ、爪先で地面を踏んでは腿を上げを繰り返すもの。

 踵で着地して大きく前へ足を踏み出す従来の走り方とは少々違い、

 前傾であることと腿を持ち上げる動作のみで走るために使う筋肉が少ない。

 慣れれば瞬発力よりも持久力に優れる遅筋のみで走れるようになるため、

 通常の全力走りよりもスタミナの消費が少ない。(かもしれない)

 しかしそれに慣れるには並々ならぬ鍛錬が必要なため、一般的ではない。

 *神冥書房刊:『まず大きな前傾姿勢を保つのが辛い』より

 

(……普通の筋肉でやろうとしても無理だなこれ)

 

 体を前傾で固定、氣で腿を上げて倒れ込むように前へと進む。

 前傾のためにかかる重力の負担も次の一歩のために吸収されるため、体への負担はとことん無いとくる。

 続けるには当然氣が必要なわけで、しかしそれも吸収した衝撃を上手く利用して使っているからそこまで必要じゃあない。問題なのは“戦いながらこの集中力が持続するかどうか”だ。ちなみに現時点での自分での考えは“絶! 対! 無理!”である。

 

(何事もやってみなければわからないとはいえ、普段から武器を持って相対している鍛錬でもヒィヒィ言っている余裕の無い俺に、これをずっと続けろと?)

 

 無茶でしょう。

 自分で想像してみて無理でしょうときっぱり言えるくらいだ。

 ただ、じゃあ慣れなさいと言われればやるしかないとも思える。

 だってやっぱり氣しかないんだもん俺。

 

(氣しかない……うーん。現時点で戦う能力が国に返すことになるかって言ったら、高い確率で否。鍛錬よりも仕事を探して国に貢献しろって話になるだろーなぁ)

 

 以前聞いた五胡の脅威は、確かに今はこちらに向いていない。

 平和が続いている今に戦う術を磨いたってしょうがないと思う時がないわけでもない。

 じゃあいつ磨くんだーって話だ。敵が攻めてきてから“じゃあ今から鍛錬するんで待っててね”なんて言えるわけもない。つか、言ったら殺される。

 だからやるなら今だ。

 仕事が少ない時にやって、いつかみんなが“その時の今”を守れなくなった時にこそ、自分はそれまで守ってもらっていた恩を返そう。

 なにも“返す”っていうことを焦らなくていい。

 返せるタイミングで、自分に出来ることを全力で。それでいいんだと今は思っておこう。どうするのが一番なのかなんてことすら、まだまだ子供な俺にはわからないんだから。

 

「ほっ」

 

 ズザァッ、と足を止めてみる。

 一定のリズムで体を動かしていた所為か、思考の海に埋没しても詰まることもなく走ることが出来ていた。疲労も……おお、息切れもしていないし、多少のだるさはじわりと滲み出てきたものの……すぐに安定。

 言ってしまえば片春屠くんに乗ったほうが疲労も少ないし氣の燃費もいいわけだが……それでも自分の身ひとつであんな風にダカダカと走れたことが何より嬉しい。衝撃吸収+蹴り弾きの繰り返しの所為で実にやかましいことこの上ないものの、これは要改良ということで今は成功を喜んでおこう。

 

「なにかというと失敗ばっかりだったもんなぁ」

 

 そう思うと成功が素直に嬉しい。

 ……そう、そうなのだ。些細な成功は今までだってしてるんだ。なのに最後の最後で失敗ばかりだったから、今回の忍者走りの成功は俺にとっては素晴らしい一歩だ。……ちなみに、これが国への恩返しにどう繋がるんだとか言われたら苦笑しか出来ない。ほっといてほしい。

 コホン。それはともかく、騒音はよろしくない。気配を殺してもうるさいんじゃあ、奇襲なんかには全く向かない。春蘭や華雄といった人たちのように真っ直ぐにぶつかるなら全然構いやしないが、俺にあそこまで愚直に一直線で戦えと言われてもまず勝てない。変則に特化した氣って、こういう時は男らしくないのかもしれない。でもわかってください。“小細工”に頼らないと俺自身、鍛錬相手にすら成り得ないんです。この世界の女性は強くて逞しすぎる。

 ていうか考えれば考えるほどヘコんできて、せっかくの成功への喜びが台無しだ。よ、喜べる時に喜んでおけばいいんだよ、俺! じゃないと真正面から潰された時のショックが絶対にデカいから!

 

「よしやるぞ! 考えてみれば気配を殺しての不意打ちなんて成功する気がしないし、なんかもうそんな小細工してる暇があるんなら、手数増やしたほうがよさそうだし!」

 

 吹っ切れた。ヤケクソとも言う。

 鍛錬しなければいけないことは事実なんだから、今はそれで良しだろう。

 氣弾マシンガンはこの際忘れて、ただひたすらに移動の強化のみに集中した鍛錬を続けた。気脈は無理矢理拡張する方向じゃないなら、使い切ってまた錬氣した方がジワジワとだけど広がるっぽいので、ともかく地道にコツコツと。

 走りに氣の全部を使う気で地面を蹴り弾いてみれば、一歩目から大いに転倒。身体測定の際に煽られて駆けようとした地下闘技場チャンプのように地面を抉ってしまい、なのに体は宙に浮いてしまってドグシャアと。脇腹から落下したためにしばらく悶絶したのはここだけの話にしようと思う。

 しかし失敗すると諦めるよりも“なにくそ!”と思えるようになった自分は、言い訳も用意せずに走ることを続けた。それだけでも、過去の自分よりは成長出来てるんだなって思えて……少しくすぐったさにも似た感覚を感じてしまい、顔を緩ませた。




結論:ヤム○ャさん凄い。

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