真・恋姫†無双 魏伝アフター   作:凍傷

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105:IF/じぶんのなかでなにかがかわるかもしれない。9点 ○②

 死ュウウウ……

 

「う、うぐぐっ……」

 

 多分一時間後くらい。

 中庭の樹の幹でぐったりする俺が確認された。

 最初から全力でいった分、地獄を見ました。

 何故って……華雄、春蘭、愛紗だけでも地獄なのに、祭さんや蓮華や桃香、騒ぎを聞きつけて目を輝かせながらすっ飛んできた雪蓮とも戦うことになって、もう体がガタガタだ……。

 雪蓮戦の時にはもうズタボロ状態だ。つまんなーいとか言われたってしょうがないんですよ雪蓮さん。

 ……一応残りカスのような氣を全力で振り絞って挑んで……その残りカスを何処で振り絞るかを選び、隙を突いて解放。放った加速の一撃が、やはり勘で避けた雪蓮の鼻先を掠めた時、アア、終ワッタ、と思いました。

 だって雪蓮の目が得物を狩る虎になってしまいまして。

 お陰で生命の危機を感じた俺は、搾り切った氣脈から出涸らしみたいな気力を振り絞らなきゃいけなくなり、ようやく落ち着いてくれた時には呼吸はぜえぜえ、汗は掻き放題で体が熱くてしょうがない。

 寒いと感じられる空気の中、死んだようにぐったりしながら湯気を発する俺は、これが漫画とかだったらシュウウ~とか擬音がつけられてる。シュウウの“シ”が“死”でもいいくらいぐったりだ。

 

「ああ……休みたい……書類整理でもいいから、のんびりしたい……」

 

 ここで弱音を吐くのは弱い証拠だろうか。

 もうこの際弱くていいから吐かせて。そして休ませて。

 

「あら。この程度で弱音? 以前のあなたなら喜んで向かっていたじゃない」

「へ? って……華琳」

 

 泣き言を言っていた俺に、影からするりと姿を見せて、木の幹を枕に寝転がる俺を見下ろす華琳。片手を腰に当てた呆れ顔で「情けない」とか言ってる。

 

「休める時間が少しでもあるならこんな弱音儚い……もとい、吐かないって。なんなら五日ほど部屋交換してみるか? 休む暇がないくらい人が来るぞ」

「ふぅん? だとしても、休めないのはあなたにきちんと休む意思が足りないからでしょう? 休むと決めたなら他のことなど気にせず───」

「夜、霞と星が酒とメンマ持ってくる。紫苑も桔梗も混ざることがあって、酒の匂いに釣られて祭さんも来るな。で、終わったあとでも終わらないうちでも美羽やシャオが来て、眠れないから一緒に寝ようと言ってくる。断る前に布団に潜って、ダメだって言っても動かない。仕方ないからそのまま寝ようとしたらシャオがなんか背伸びした色っぽい声で迫ってきて、美羽がそれに対抗して迫ってきて、思春に追っ払ってもらうと扉の前で騒ぎ出して、しばらくして静かになったと思った矢先に桂花が嫌がらせに来て、撃退したと思ったら蒲公英が窓から覗き見してることに気づいて、注意したら今度は堂々と扉から七乃が入ってきて」

「……あぁもう……あの子たちは……! いいわ、一刀。皆には一刀に少し休ませるように言っておくから」

「……ぐっ……う、ふぐぅっ……!」

「泣くことないでしょう!?」

「たった五日……されど五日だったんだ……。みんなと過ごすのは楽しいけど、人数が人数だから自分が休む暇が本当に無くて……。寝不足の所為でふらついてたら桂花の落とし穴に落ちて、抜け出して穴を埋めてたら美以と美羽が蜂蜜欲しさに蜂の巣落として蜂に追われてきて、一緒に逃げてたら蜂の巣ひょいと渡されて俺だけが追われるハメになって、全力で逃げてたら華雄が鍛錬と勘違いして余計に走らされて、途中で逃げようとしたら捕まって怒られて……そもそもみんな風邪はどうしたんだよ。自分たちばっかり早々に回復して、看病とばかりに人の部屋に突撃してきて、看病してくれるのは嬉しかったけど、バッグからタオル取られて水浸しにされて、顔にびちゃりと置かれた時は窒息するかと思ったよ……」

「あなたが疲れているということだけは痛いくらいにわかったわ」

 

 頭に手を当てて深い溜め息。

 そんな華琳は呆れた顔で言葉を続ける。

 俺に呆れたんじゃなく、みんなに呆れたようで───

 

「あの子たちも燥いでいるのよ。なんだかんだで久しぶりにあなたに会える子だって居るのだから」

「あー……正月にだけやたらと叔父さんに絡む子供みたいなノリか。お年玉ちょーだいって」

 

 お年玉なんてないぞ。むしろ俺が欲しいくらいだ。

 財布はいつだってカラッポ寸前さ。なにせ空を飛ぶための費用に当ててばっかりだ。

 正直飛べるとは思っていないものの……なんでだろうなぁ、真桜なら何とかできてしまいそうなのは。

 

「おとしだま?」

「ああ、一年の初めに、親が子供にあげる軍資金みたいなもんだよ。天では子供のほぼがそれを楽しみにしてる」

「へえ、そう。年初めに金銭で忠誠度とやる気を底上げする算段ね?」

「あぁええっと。間違ってないんだけど……素直に頷けないなぁ。むしろ忠誠度とかって喩えから離れてほしいような」

 

 一般のピュアな子供たちが、金で信頼を得ることができるちょろい人々みたいに聞こえてくる。お年玉が嬉しいのはきっとどの歳になんってもだろうけど、なんかこう……譲れない一線があるのですよ。

 

「けれどそのためとはいえ、正当な支払いでないものを渡すのはどうかと思うわよ。働きに比例した施しや褒美でないと、他に示しがつかないじゃない」

「働けない子供にあげる、親から子供へのお小遣いの一段階上のお愉しみみたいなもんなんだ。だから年に一回だけ」

「子供限定ということ? ……なるほどね。つまり、手に金銭を持てば使わずにはいられない子供の性格を上手く利用した流れというわけね? 親が子に、子が店に支払い、支払った金を纏めたものが俸給となる。よい連鎖ね」

「平和な場所じゃないと有り得ないけどね」

「それはそうよ。治安が悪いのに子供にお金を渡したりしたら、好奇心で店で使う前に盗まれるわよ」

「だよなー」

 

 何人組かの男に囲まれてホッホォォォォ持っとるのォォォォ的な展開になりかねない。

 警備隊が目を光らせているとはいえ、それも完全じゃないしなぁ。完全だったら、日々俺のところに始末書……もとい、報告書がくるわけがないのだ。……でも来るのがぜ~んぶ将関連なのはいい加減なんとかなりませんか神様。

 ……なので、そういうのは芽が出る以前に提案しないのが上策だろう。

 いきなりお年玉制度なんて出しても、各ご家庭は戸惑うだけだろうし。

 

「で、それはそれとして俺の休みのことなんだけど」

「そうね、無理して倒れられても困るし……いいわ、あなたは少し休みなさい」

「えっ!? いいの!? ほんとに!?」

「ええ。私たちの居ない場所で、のんびりと」

「……ホエ?」

 

 華琳たちの居ない場所?

 それってつまり、休んでいる時にも仕事中にも鍛錬中にも食事中にも就寝中にも誰も来ない場所……?

 

「…………!」

 

 なんて素敵な響きだろう!

 休みを渇望する俺の体が血を───もとい、やすらぎを求めている!

 お陰で一緒に居られたらいいのにとかそういうのじゃなく、とにかく離れることを望んでしまい───

 

 

  ───こんなことになってしまったがね……。

 

 

 ……ギー、ギッギー、シャワシャワシャワ……!

 

「…………」

 

 森の中に居る。

 熱帯雨林とでも呼びましょうか。ともかく森の中。密林と言ってもいい。新米ハンターがクック的な先生と戦わなきゃいけなくなるような雰囲気がある。

 なにやら高い樹ばかりがあって、そういった木々から長い蔓のようなものがたくさん生えている。掴まってアーアアーとかやりたくなるあの蔓だ。ジャングルの王者的には“AAAAAA!!”と叫びたくなる。

 

「あ、あーの、あのあの、美以さん? なに、ここ」

「なにって、みぃたちの故郷にゃー!」

「にゃー!」

「なー!」

「なぅー……」

 

 そう……休みを貰えることに浮かれていた俺は……何故か南蛮におがったとしぇ。

 おかしいと思ったんだよ! お供に美以たちだけだったし、その美以たちにも早く戻るようにとか言うし!

 まさかのサヴァイヴァル!? ここで俺にどう休暇を楽しめと!?

 

「それじゃあみぃたちは帰るにゃ!」

「かえるにゃー」

「にゃー!」

「にゃーう」

「いやいや待って!? せっかくの故郷なんだしゆっくりしていこう!? 厳密に言うと俺だけ一人なんてやだぁーっ!!」

 

 なんだか知らないけどここ視線を感じる!

 気の所為だろうけど感じるの! こんなところで休暇なんて無理だって!

 

「懐かしい空気に触れられただけで十分にゃ! なにせみぃはだいおーなのにゃ! だいおーは懐かしい程度でさみしくなったりしないのにゃー!」

「だいおーさま、かっこいいのにゃー!」

「かっこいいにゃー!」

「うにゃう……」

「いやいやちょっとだけ! ちょっとだけだから腰を落ち着かせよう!? むしろここって何が食べられるかとか教えてくれない!? 食べたら危険なものとか絶対あるだろこれ!」

「んにゅ……仕方の無い兄ぃなのにゃ。じゃあちょっとだけ教えてあげるじょ」

 

 仕方ないなぁとばかりに、しかし心底嬉しそうに踏ん反り返り、近くにあった樹に器用に登り……木の実らしきものを持ってくる。

 黄色くまんまるい、しかし見たことがない果実だ。他にも赤いのも持っており、リンゴにもトマトにも見える変わった果実だった。

 

「これは黄色いにゃ」

「? あ、ああ、うん。黄色いな」

「黄色はだめにゃ。赤いのを食べるにゃ」

 

 言って赤をショブリと食べる。

 もっしゅもっしゅと食べて見せて、俺に心配はないと教えてくれているんだろう。

 なんか……悪いなぁ。

 俺もこんなことでいちいち不安だとか言ってちゃ

 

「ぷぺぇっぺぺ! 間違えたにゃ! 赤はだめにゃ!」

「不安だぁあーっ!!」

 

 絶叫した。

 

 

 

158/あしたっていまさ! 10点 ○

 

 人は順応する生き物だと聞いたことがあります。

 誰かの知識からおすそ分けされたものであり、俺の知識ではありません。

 だが言おう。順応しなきゃ死ぬだけだ。

 順応するにはどうしたらいいか? ……生きるのだ。それしかない。

 

「水っ……水の確保! なにはなくとも水!」

 

 ジャングルもとい南蛮生活一日目。

 早くも都での生活が懐かしい。

 着替えとタオルと携帯電話と調味料、あとは適当な容器(小さな甕)しか入っていないバッグのみを左肩に、右手には黒檀木刀を装備した盾無しの戦士がゆく。

 どこへ? ……どこへだろう。誰か行き先と明日を示してくれ。

 

「………」

 

 水発見。

 森の奥地にぽつーんとあった。流れてない。

 ……大丈夫か? 飲んだら疫病に感染して倒れるなんてことは……!

 むしろなにかしらの水棲生物がうじゃりと居そうな雰囲気なんだが。

 ……ア、アメリカザリガニが居そうな水って言えばわかりやすいだろうか。あれ? そうなると池? ……面積的には池が一番合ってるのか?

 

「ま、まあ一応容器もあるしっ」

 

 ばしゃりと掬って、じぃっと見てみる。

 ……なんかちっこいのがうじょうじょと蠢いていた。

 ごめん無理!

 

……。

 

 南蛮生活二日目。

 朝起きると腕にヒルがウギャアアアアアアアア!!!

 

……。

 

 失礼。

 朝を迎えた。

 ヒルかと思ったら謎の生物だった。名前は知らない。ただペトペトしてて少しヌメリけがあった。それだけ。食用では絶対ない。むしろ食べられると言われたら相当な状況じゃなければ食べたくない。

 

「あったぁーーーーっ!!」

 

 歩き回ってどれくらいか、森の中心(?)あたりで湧き水を発見。

 泣きそうな勢いで近寄って容器で掬うと……今度は蠢くなにかは無し!

 容器をよく洗って再度掬うと……心配なのでまずは火を熾した。沸騰させて煮沸消毒だな。……あれ? 水自体を沸騰させて消毒させることも、煮沸消毒っていうんだっけ?

 まあいい、今は考えるよりも行動だ。

 火を熾して…………湿気が多いからか中々火はつかず、むしろライターもなにもないから種火の時点で苦労する。

 

「氣を上手く使って……」

 

 よく見る原始的な方法で火を熾しにかかる。

 あれだな、棒と板を合わせて燃やす方法。

 もちろんまずは大鋸屑のようなものを作って、それを火種にするのも忘れない。

 

「ホワーッ!!」

 

 早くも生きるために必死になり、氣で腕を加速させて高速で棒を回転させる。

 しかし中々火は熾らない。

 湿気か! 湿気が悪いのかくそう! あまり太陽入ってこないもんなぁここ!

 けれどもとりあえずの拠点は決定。

 水が傍にあれば、様々な面で助かるのは間違い無い。はず。

 キャンプやサバイバル知識なんてないから、適当な知識で乗り越えるしかない。

 

「おかしいな…………心を休めるために休暇を貰ったはずなのに、全然休めていない」

 

 華琳さん。何故によりにもよって南蛮だったんでしょうか。

 もっと他のところがあったんじゃ……。

 

「“人に慕われて文句を言うなら、いっそ人恋しくなるまで休んでいなさい”なんて……まさかその通りのことをされるとは」

 

 確かに慕われているのに文句を言うのは贅沢だった。

 一人になってすぐにそれは実感できた。できたけどこれはないだろ。ツッコミくらいはさせてほしい。

 

「不安はあるけど、ダンジョンマスターだって水だけで長い時間生きていられたんだ、とりあえず水があれば四日はいける……と信じたい」

 

 ほんと、休みに来たんだよね? 俺って休みに来たんだよね?

 なのになんでサヴァイヴァル!? ……と訊いたところで誰もいない。

 

「とにかく警戒は怠らないように……! 気配探知はいつでも出来るように、氣を集中させないとな……!」

 

 食料は黄色い果実と………………黄色い果実しか知らないんだが。

 赤はダメだったんだよな。美以が苦しんでたし。

 しかし赤は案外通好みの味ってオチがあったりして……。

 

「いかにも毒々しいもの以外は、ちょっとずつでも試してみようか」

 

 なにせ死活問題だ。

 一欠けらが猛毒のものがあることは、美以が縄張りにしていることもあって、無い……とは思う。なので毒々しいもの以外は食べてみよう。

 

……。

 

 南蛮生活三日目。

 やたらと美味しい竹の子を見つけた。竹の子……筍とも書けるそれを見て、桂花を思い出したのは彼女には秘密だ。

 

「南蛮に竹の子……ああ、この世界がわからない。あるところにはあったのか?」

 

 それでも調理。

 風通しの良いところに干しておいた枝などを今度こそ燃やして、窪んだ大きな石を熱して水を入れて、煮たり焼いたり。

 食べてみればもう目を見開くほどに美味しい。唾液が出っ放しで、涙まで出るほどだ。

 赤の実も煮てみれば結構いけた。

 煮ると苦味が流れ出すようで、それでモグモグ。

 苦味が出た汁もひどく濃いゴーヤ茶のような渋みで、慣れると結構いける。

 じいちゃんとかは好きそうな味だ。

 

「華琳……俺にだけこういうことさせるんじゃなくて、将のみんなにも俺のところに来る回数を減らしてくれると嬉しいんだが」

 

 これはこれで貴重体験だとは思う。

 でも南蛮ってさ、妙な病気とかなかったっけ? 記憶違いならそれでいいし、美以とかが平気なんだから平気なんだとは思うが……あったとして、現代医学とか華佗に習ったことで治るといいなぁ。

 

「ところで……たまに見るアレは、象で間違いないんだろうか」

 

 南蛮ってなんでも居るんですね。

 美以の頭にも乗ってたけど、まさか本当に居るとは。

 

「はふー……うん。お腹、膨れたな」

 

 何があるかはわからないものの、慣れれば案外住みやすかったりするのかもしれない。

 せっかくだから家でも作ってみよう。枝と葉っぱと蔓を合わせて、どこぞの部族の骨組みが密集して出来たみたいな家を。

 

「また干しておかないと、次の火種に苦労するし……お、早速枝発見」

『グヒー!』

 

 そうそう、グヒーって感じで発見……グヒー?

 

「………」

『ブフルッ……』

 

 …………ある日……

 

『フゴッ! フゴー!』

 

 森の中……!

 

「あ、ああ……あああああ……!!」

『グヒー!!』

「キャーッ!?」

 

 猪に出会ったぁああーっ!!

 いやっ、ちょっ、待っ───速ァアアアーッ!?

 

「うわぁああああばばばばこっち来んなぁああーっ!!」

『グヒー! グヒーッ!!』

 

 全力疾走! 氣を込めて一気に駆ける!

 なのに物凄い速度で追って……オワァーッ!!? え、えっ!? なにっ!? なんで追ってくる!?

 なんかキン肉マンがキン肉ドライバー覚える際に襲い掛かってきた猪みたいな声出して襲ってきてるんだけど!? いやいやいやいやそんなどうでもいいこと冷静に分析してる場合じゃなくてだな!!

 

「だ、だが所詮は猪! 某ハンティングアクションでも真っ直ぐにしか走れない猪! 爆発する岩に自ら突進してお陀仏な猪! ならばこそ───!」

 

 逃げた先にあった木にの裏に回り込み、得意顔で「ヘイカモン!」と「ギャアーッ!!」木が細すぎた! 突進であっさり砕けた! ……えぇっ!? 砕けた!? 細いとは言え木ですよ猪さん!! ……ああっ! でも頭からいった所為かフラフラしてる!

 どどどどうする!? 今の内に攻撃……木刀バッグに入れたままだったァーッ!!

 

「っ……」

 

 そ、そうだ。よく考えろ。

 こんな時だからこそ……こんな時だからこそだ。

 いつでも武器があるとは限らないんだ……!

 そういうこと……なんだな? 華琳……! 休みをくれたと見せかけて、俺に成長の場をくれたってわけか……! 武器に頼ってばかりの俺に喝を入れるために……!

 

『ブルルルルッ! ……ブフー! ブフー!』

「……もう、持ち直したか? だったら来るといい。それが合図だ」

 

 華琳に期待されたなら、俺はどこまでだって伸びてやろう。

 勝てない相手にだって、勝てるよう努力してやる。

 もう……以前の、提案しか出来なかった俺ではいたくないんだ。

 自分に出来る努力の中から自分を鍛える努力を抜いたために、華琳に太刀打ちできなかった蜀の王を知っている。姉の姿を追いすぎるあまり、自分の至るべきを定められずにいた呉の王を知っている。そして……王であろうとするあまり、それ以外の楽しさを後回しにしすぎた魏の王を知っている。

 そんな先人たちが示した道と後悔を知るからこそ、今俺は、後悔しようがその後悔の幅が狭いものであるように努力をしよう。

 

「生き抜いてやるぞ……! この“休暇”(サバイバル)!!」

 

 猪が走り出す。

 同時に俺も走り出し、拳を振り抜いていた。


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