真・恋姫†無双 魏伝アフター   作:凍傷

303 / 454
番外的オマケ話(本編とは関係ないでゴワス)

-_-/番外的なIF

 

 お題:もしも献上品に性転換薬があったら

 

 ……。

 

 むかぁしむかしのぉ~こと~じゃったぁ~……!

 ある晴れた昼下がり……市場へ続く道を、ずんずんとゆく一人の覇王が~……おったぁ~。

 

「~♪」

 

 見るからに上機嫌。

 鼻歌まで歌ってずかずか歩く姿は、まるでおもちゃを手に入れた子供のようであり……

 

「さあっ! 服を買うわよ一刀っ!」

 

 そんな彼女に引き連れられた俺は……女性用の呉服屋の前で、黄昏た。

 

……。

 

 覇王がおる。

 目がらんらんと輝いている。

 ある薬を飲んでから、いやむしろ飲まされて……俺があろうことか私になってしまってから、華琳のテンションは異常だ。

 いやまあうん、わかるよ? 理由はなんとなくわかる。我らが覇王さまの女性好きは有名ですもの。

 そこにきて、好いている男性を女性に変える薬があって、変化した姿が彼女の琴線に触れたらしく、まるでデートに行くわよと言うかのように“フスー!”と鼻息を荒くした彼女は、政務そっちのけで俺を連れ……ここへ来たわけで。

 

「一刀。あなた、下着の色はどれがいい?」

「し」

「だめよ、黒になさい」

「なんで訊いたの!?」

「あら、そんなこと。あなたのその慌てる顔が見たかったからに決まっているでしょう?」

 

 Sな笑みを浮かべ、つつっと俺の顎を人差し指と中指で持ち上げる。

 ……その際、自分の視線を少し高くするために、踏み台の上にわざわざ乗ったことについてはツッコんでいはいけない。

 

「あ、あの、華琳? 俺べつにフランチェスカの制服のままで」

「だめよ」

「だ、だってな、いくら女になっ」

「だめよ」

「いや、服は男物で」

「だめよ」

「華琳って綺麗だよね!」

「そう? ありがとう」

「やっぱり服は男」

「だめよ」

「服の話になった途端に即答!?」

 

 なんだか滅茶苦茶だった。

 なのに俺の前まで服を持ってきて、合わせてみている華琳の顔は緩みっぱなし。

 うわーい、こんな顔、男の時になんて見たことないやー。

 

「とっ……ところでさぁ華琳っ? べつにその、服なんか買わなくたってさ。ほらっ、どうせすぐに元に戻るだろうし……」

「だめよ」

「うぅっ……参考までに、なんで?」

「着させなきゃ脱がせられないじゃない」

「勇気ある脱出!!」

「待ちなさい」

「ぐえぇっぐ!? ~……俺になにするつもりだあんたぁああーっ!!」

 

 なにを当然のことを言っているのよとばかりに言われ、思わず逃走、襟キャッチ、絶叫。

 え!? なに!? え!? 俺、これ着たら脱がされるの!? 何処で!?

 つか、なんですかそのうっとり顔! なにを楽しみにすればそんな顔が出来るので!?

 

「あぁ一刀。一応訊いておいてあげる。初めては私と同じ場所がいい? それとも寝台?」

「なにが!? ねぇなにが!?」

 

 なんかよくわからないけどこのまま付き合っていたら危険だってことは本能のレベルで受け取った! なのでワンモアタイム! 逃げ捕まったァアーッ!! 言い切る暇すらないよ! あっと言う間もなかったよ!

 

「いやちょちょちょ怖い! なんか今の華琳怖い!」

「怖がる必要はないわ。私も通った道よ。私とともに歩むというのなら、何処までもついてくればいいの。……導いてあげるわ、ついてきなさい、我が覇道に」

「かっ……華琳……! ってなに人の制服脱がしてますかぁああーっ!! 人がっ、人がせっかくじぃいいんってきてたのに!」

「うるさいわね、いいから脱ぎなさい。そして着なさい。ほら」

「着ろって、これ女性ものの下着じゃないか!」

「当たり前じゃない」

「まっ……真顔でなんてことを!」

 

 いや、そりゃあ今の俺は女だし、女が男ものの下着をつけてるほうがおかしいとは思うよ!? 今は! でも身体は女! 心は男! その名も……北郷一刀! な俺としましては、女ものの下着なんて穿きたくなど、ってだから脱がすなぁあーっ!!

 

「……埒が空かないわね。───桂花 」

「ここに」

「何処に!? えっ!? ここにって、何処に居たの!? どっから出てきたの!? ねぇ!!」

 

 華琳が指パッチンしたら、物凄い速さですっ飛んできた桂花が華琳の前に跪いた!

 もしやこれはカッパーフィールド!? 不思議なるカッパーフィールドでござるか華琳!?

 

「桂花。私が押さえているから一刀の服を脱がしなさい」

「はっ」

「えぇええっ!? 即答!? ま、待て桂花! ほらっ、俺男だぞ!? 男になんて触りたくもないなんて言ってたお前が、俺に触れるどころか服を脱がすなんて───」

「なにを言っているの? ここに男なんて一人もいないじゃない……! ふ、ふふふ……うふふふふ……! ああ、女になったあんたがこんなに可愛いだなんて……! 今、今この汚らわしい男ものの衣服を剥いであげるからね……! だだだ大丈夫、だいじょっ……うっくっふっふっふ……! 痛くしないから私に全てを委ねなさい……!?」

「ヒギャァアアーァァァァァーッ!? イヤーッ!? なんかかつてないほどやさしい顔なのにギャップ萌えとかそんな次元を超越して恐怖しか感じねぇえーっ!! いやちょ待やめ脱がすなやめろぎゃあああーっ!!」

 

 華琳に羽交い絞めにされ、桂花に服を脱がされてゆく。

 抵抗しようにもこの華奢な身体のどこにそれほどのパワーが秘められているのか、俺を羽交い絞めしてらっしゃる華琳はびくともしない。いやほんと……なにこれ!? 冗談抜きでビクともしないんだけど!? 無理矢理背負うように持ち上げることも出来ないとか、地に根でも下ろしてるんですかアータ!!

 

(我が覇道……ここで費えるというのか……)

(孟徳さん!? どうせ費えるならこの後ろの孟徳さんの覇道も連れてって!?)

(わしにだって……出来ぬことくらい……ある……)

(孟徳さん!? もうとっ……誰!? なんか途中からキバヤシみたいになってない!?)

 

 そうこうしている間に衣服は脱がされ、着せられ……叫び疲れた頃には、姿見の前に短髪のおなごが……おがったとしぇ……。

 

「さあ、いくわよ一刀」

「ああ……うん…………えと、どこに……?」

 

 もはや本気で疲れた。

 ぐったりしている俺を見て、しかし華琳はとてもつやつや。

 やりとげた女の顔になっている。

 ……そして桂花がいつの間にか消えていた。

 彼女はあれですか? 忍者の末裔かなんかですか?

 ……大陸に忍者っているのカナ……。

 

「もちろん、許昌の川よ。そこじゃないと私と同じ場所とはいえないじゃない」

「ア、アノ。マジでなにをするおつもりで……?」

 

 言いつつも店を出る。

 代金は既に桂花が払ったようで、店主はペコーとお辞儀をして送り出してくれました。

 引き止めてくれてもよかったのに、と思ったのは秘密だ。

 

「まじ? ……よくわからないけれど、もちろんあなたを私のものにする大切な儀式をおこなうのよ。私と同じ場所で、私と同じ痛みを以って」

「痛みって?」

「………」

「?」

 

 いや、ほんとなんの話だか。

 脱がすだのどうの、初めてはどうのって、なんとなく考えてみたけどそもそも俺は男で…………おと…………オ…………

 

「アノ」

「なによ」

「ソノ。モシカシナクテモ、俺……襲ワレル?」

「襲わないわよ。同意の上でないと許されないことだもの。だから頷きなさい」

「ほぼ脅迫だろそれ!! どこから出したんだその絶!! あとこれってもう非道の域だろ!? やめよう!? ほんとやめよう!?」

「…………」

 

 怯える俺を見て、華琳はハッとするとそそくさと絶を仕舞い……あ、あれ? よく見えなかったな。どこに仕舞った? ……あれ!? 何処!? ねぇどこ!?

 

「そうね。ごめんなさい一刀。私も突然の状況に混乱していたみたいね。覇王にあるまじき失態だわ」

「華琳……」

 

 安堵……ああ、今回ばかりは本気で安堵の息を吐いた。

 そうだよな、いくら華琳だって人間なんだ、慌てるときだってあるさ。

 そしてすぐに復活出来るのも彼女の強みだ。

 今だって落ち着いた顔で近寄ってきて、俺の両肩をやさしく掴んで───

 

「だから、頷きなさい?」

「肩痛ァアアアーッ!?」

 

 ごめんなさい気の所為でした!! 目ぇぐるぐる回ってらっしゃる!

 うわぁいほんとこんな華琳初めてダー!! ものすっごいやさしい笑顔なのに目がすげぇぐるぐる回ってる!

 そして指がってかいだぁああだだだだ爪が爪が肩に肩に肩にィイイーッ!!

 ハッ!? いや、でも死中に活ありだ!

 今なら……今なら言ってもらえるかもしれない!

 

「かっ……華琳っ! 華琳っ! ちょ、華琳っ!」

 

 呼びかける! ……うわぁ興奮してて聞いちゃいねぇ!!

 こうなったら強引にでも肩を掴む手を外して……!

 よっ……! ほっ……! な、なんと……! お、おがぁああだだだだだぁああっ!?

 

(な、なんてパワーだ……! オラの十倍ぇはありそうだ……!!)

 

 じゃなくて外れない! なにこの力! 頷くまで離してくれそうもありません!

 ええい構うか! 聞こえてなくても届かせる! 届けこの言葉!

 

「華琳っ……俺───もとい、私のこと……好き……っ……?」

 

 たぶん“俺”って言葉は届かない。なんかそんな気がしたので私でいってみた。

 するとびくりと肩を弾かせる華琳さん。

 そう……男の時は言ってもらえなかったけれど、今なら───!

 などと期待を混めた俺の前で、彼女はふわりと頬を染めて視線を逸らすと、恥ずかしそうに言ったのだ。本当に照れたような、甘さを孕んだ耳に心地良い声で。

 

「さっ……! ……察しなさいっ……!」

「チクショォオオーーーーーーッ!!!」

 

 泣いた。

 その、男の時とのあまりの反応の差に、涙した。

 

 

 

 その日俺は……華琳に言われるまま片春屠くんで許昌へ向かうこととなり───

 

 その間も何度も説得し、失敗し、なんだかんだで連れてこられた夕暮れ時の川の傍で、抵抗虚しく衣服を剥がされ、男の時には聞いたこともないようなやさしい声で囁かれて、そして、そして───

 

 

 

 

      ~ここから先は書物が塗れ、滲んでいて読めない

 

 

 

 

 

  おまけ/了

 


 ▲ページの一番上に飛ぶ