真・恋姫†無双 魏伝アフター   作:凍傷

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111:IF2/それでもそんな自分をマイペースって言える①

-_-/劉禅

 

 ……昼が過ぎて夜がきた。

 

「んー……んっ」

 

 ととさまの手の上で、氣が燃える。

 ここはととさまの部屋。

 普段は私たち子供は立ち入り禁止となっている場所で、ととさまは鍛錬をしていた。

 

「お見事です、隊長。随分と慣れたものですね」

「頑張ったもん」

 

 一緒に居るのは文謙さま。

 ととさまの氣の様子を見て、ほう、と溜め息を吐いていた。

 もちろん嫌な意味での溜め息じゃなくて、感心しかないもの……だと思う。

 対するととさまは褒められて嬉しかったのか、子供みたいな口調でにっこり。

 

「いやー、凪みたいに燃え盛る氣を作るにはーとか考えに考えて、鍛錬に鍛錬重ねてようやくだよ。これは純粋に嬉しい! なんかっ……こうっ………………た、たた喩えられる言葉が見つからないけど、とにかく嬉しいっ!」

 

 ととさまは信じられないくらいに鍛錬の鬼です。

 暇を見つければ仕事と鍛錬。仕事が終われば娘たちとの遊ぶ時間を設けて、誰とも遊べなければ鍛錬。

 これを知ったら、お姉さまがた……特に曹丕姉さまと甘述姉さまはととさまを見直すと思う。でもととさまは、教えようとはしない。どうしてなんだろう。

 

「ととさま、それが出来るようになるまでどれくらいかかるの? 禅もやってみたい」

「…………8年」

「………」

「……その。お疲れ様です、隊長」

 

 とても時間がかかるようだった。

 しかもととさまの鍛錬は内容が氣についてばかりなのに、それでも8年かかったということは。……他の誰かがやるとなると…………考えたくない。

 

「禅にも……出来るかなぁ」

「───」

「隊長!?」

 

 私にも出来るだろうかと訊ねると、ととさまがぴしりと固まった。

 固まったら、少ししてカタカタと震えだす。

 

「デデ、デデデデキルンジャナイカナ……!? ミミッ───ミミミミミンナ才能ノ塊ダシ……!? イツカノ桃香ダッテ少シ教エタラスグニ剣閃デキタシアワババババ……!!」

「隊長! お気を確かに!」

「………」

 

 ととさまの発作が始まった。

 ととさまはなにも、最初から才能に恵まれていて何でもできたというわけではなくて、ここまで出来るようになるのに相当苦労したらしい。

 最初の頃なんて氣すら全然使えなくて、各国を回りながら必死で……本当の意味で必死で頑張って身に付けたんだとか。……“気脈を強引に広げる方法で一度死にかけたことがあるんだぞー”なんて、笑いながら語られた時はどうしようかと思った。

 でも、だからなんだろう。

 少し教えただけであっという間に技術を吸収する子供たちが羨ましいらしい。

 教えた傍からあっさりとやってみせる存在は、今までの手探りな努力も簡単に越えてしまうんだなぁ、なんて寂しそうに言っていた。

 

「八年……八年頑張ってようやく出来た力が、もしあっさり行使されたら……!」

 

 カタカタと震えるととさま。───が、突然ぴたりと停止。

 

「すごい才能だよなっ!」

 

 ととさまはドがつくほどの親ばかだった。

 

「ようし禅! 今からととさまが氣の燃やし方を教えてやるからな~!? これが出来たらお前も立派な三国武将の仲間入りだぁーはははははぁーん!!」

「隊長! 笑顔なのに涙が止まってません!」

 

 親ばかだけど、自分の才の量は理解しているあたり、奇妙なところで人間が出来ているのかもしれない。

 涙をこぼしつつも笑顔で、ととさまが私の手にキュムと触れる。

 ととさまは人の氣を探るのが上手だ。

 それを簡単に引き出すことが出来て、私ももうある程度氣を操ることが出来るようになっている。

 

「ねぇととさま。ととさまはどうして、お姉さまたちにはこのことを教えないの?」

「───」

 

 言ってみる。と、ととさまはひどくやさしい顔をして、私の頭を撫でた。

 

「反面教師って言葉があってね。俺がぐうたらでだらしない男だってだけで、ああはなるまいと強くなってくれるなら、俺がどれだけ嫌われようがそれでいいんだよ。その勢いの強さがそのまま国のためになる。……俺はまだ、この国に全然返せてないからね」

「隊長……」

「えと。最初から全部曝け出してれば、こんなことにはならなかったんじゃ……」

「自覚があるんだよ。それじゃきっとだめだったって思えるほど。甘やかしてばっかで、娘を堕落させる自信だってある。ある意味これでよかったんだとさえ思えるくらいだ。特に曹丕はね、強く育ってくれてる。華琳の背中を追ってるなら問題はないさ」

「でも。それじゃあととさまが……」

「俺はいーの。そりゃあお前達が産まれる前からやりたかったことなんて、大して叶ってもいないけどさ。ぐうたらだとか怠け者とか……なんで母はあんな男を、なんて思われてもさ」

 

 やさしい笑顔のままに、本当に壊れ物でも扱うくらいにやさしく頭を撫でるととさま。

 そんなととさまが言う。

 

「産まれてきてくれてありがとうって言えたことを、ちっとも後悔できないんだ。それって、単純だけど幸せなことだから」

「……寂しくない?」

「はっはっはー、ととさまはこう見えてもい~っぱい知り合いが居るんだぞ~? 王も、将のみんなも、兵も……街のみんなも。だからな、禅。ととさまが寂しそうだから~とかそういう理由で、なにかしらのきっかけを逃したりなんかすることないからな? なにかあったら、俺よりも別のことを優先すること」

「やだ」

「へ? …………ははっ、そっか。いい子だなー禅は。あ、桃香の子だから~なんて言うつもりはてんで無いからな? 俺は相手が子供だろうが、その個々の在り方こそを認めます。誰かの子供だからこうなって当然なんて、ひどい押し付けだしな」

「う、うー……それ、登姉さまに言ってあげて?」

「甘いぞ禅。……言って、既に蹴られた」

 

 物凄く陰の差した遠い目をされた。

 ここはととさまの部屋だし、遠い目をしたって見えるものは変わらないはずなのに、ずっと遠くを見ているんだろうなって思わせる……そんな目だった。

 

「自分に才がないのはあなたに似て産まれた所為だ、なんて言われもしたなぁ」

「隊長に似たのならば、むしろ才があるのでは? 私にしてみれば、剣にしても氣にしても、少々教えただけで飲み込めたことに驚いたくらいです」

「あれは才とかじゃなくて、天のー……あーっと、……イメージ、じゃわからないか。天でよくある題材めいたものを、自分なりに纏めてやってみた結果なんだ。俺が凄いわけじゃない」

 

 「及川ならきっともっと上手くやるって」なんて言って、ととさまは笑う。

 ……及川というのは、ととさま言うところの天に住む友人らしい。

 どんな人かと訊いたら“怒った顔が怖いヤツ”と言われた。

 誰でも怒った顔は怖いと思うんだけど、どうにもその“怖い”の意味が違うみたい。

 

「その。隊長? その及川、という人物には、なにかしら齧ったものが……?」

「ああ、うん。女性との付き合い方が異常なくらいに上手かったな。なのに特定の彼女が居ないっていう不思議なやつで……」

「───」

 

 文謙さまの目が、どの口がそのようなことを仰るのですかと言っている。

 ともあれ、話しながらも私に氣の燃やし方を教えてくれたととさまは、さあ、と私に促してくる。

 こくりと頷いて言われるまま、氣を誘導されるままに集中してみれば、体外に球状として出した氣がくるくると回転して…………ぽすんっ、と消えた。

 どうやら上手くいかなかったらしい。

 

「…………隊長。顔が大変なことになっています」

「自覚してますごめんなさい!」

 

 瞬間、ととさまの顔は安堵なのか悲しみなのか、どっち着かずの顔になっていた。

 八年が一瞬で乗り越えられたらどうしようという不安とか、そうならなかった安心とか、我が娘ならきっと出来るという期待とか出来なかった瞬間の“続ければ出来るさ”という期待とか、ともかく何もかもを混ぜたおかしな表情。

 

「うう、ごめんなぁ禅。弱い父を許してくれ……」

「えと、うん。物凄く人間らしいととさまだなーと思うよ?」

「うう……そうか、人間らし───人間らしい!? え!? 今まで俺人間らしくなかったの!?」

「そ、そうじゃないよぅ!」

「落ち着いてください隊長」

「はうっ!? ……わ、悪い。娘に人間じゃないなんて真正面から言われたのかと」

 

 ととさまは立派なんだけど、どこか抜けてます。

 将のみなさんに言わせると“だからいい”そうで……完璧な人と一緒に居るのは息が詰まるみたい。

 

「ととさまは完璧な人は嫌い?」

「またいきなりな質問だな……」

「誰に似たのでしょうね」

「遺伝よりも影響で考えていこうね、凪。で、影響したとするなら雪蓮あたりじゃないかなぁ。話題、ころころ変えるし」

「話題に事欠かないという意味では、隊長もあまり変わりませんが」

「え? そう?」

 

 きょとんとするととさまだけど、それはそうだと頷ける。

 だってととさま、黙ってる時間なんて氣の集中をしている時くらいだし。どこからそんなに話すことが出てくるのか聞いてみたいくらいだ。

 でもその前に話を戻そう。

 

「ととさま」

「質問の答えだよな。ん、忘れてないから安心しろ。で、答えだけどー……そだな。完璧な人は嫌いっていうか、苦手かもしれない」

「───! た、隊長っ!」

「おゎぁおっ!? ぇどっ……どうした、凪……?」

「隊長……! それは、それは華琳様が苦手という意味で……!?」

「? ……苦手、って……いや、好きだけど?」

「いえっ、好きとかそういう意味ではなくてっ!」

「? …………あっ! 完璧な人の話か!」

「話が繋がっていなかったのですか!?」

「や、だって……華琳って完璧か? あれで結構おかしなところでポカするだろ。桃香に料理教えてたら味付けの指示を忘れたこととかあったし」

「あ、あ~……あっ!? い、いえ、しかし軍事では完璧な……」

「一点での完璧さなら三国に呆れるほど居るだろ。そういう人が集まって支えてるのが三国なんだから、まあ……なんというのか。完璧な人でいるのって、結構寂しいことだと思うぞ? 嫌いとかそういう話じゃなくてさ」

 

 「ところで凪。今華琳のことで思いっきり納得したよな?」「していませんっ!」……そんな小さな会話が二人の間でされた。  

 文謙さまは普段は凛々しくて真面目で、言ってしまうと硬い印象があるのに、ととさまの前だとすごく……なんというかこう、柔らかいというか、ふにゃふにゃというか。とても口には出せないけど、多分これが一番ぴったり。“かわいい”。

 

「そんなわけだ、禅。ととさまは完璧な人は苦手だ。なんていうのかな。一人で十分な人の周りには、それを利用しようとする人しか集まらない。足りない部分を補おうって気が無い人と一緒に居ても、一人でなんでも出来る人と一緒に居ても、なんかこう……楽しくない気がしないか?」

「……ととさまは意地悪ですね」

「はい。意地の悪い質問です。完璧な人相手だろうと、その人が気に入れば傍に居るのが隊長でしょう」

「うぐ……」

 

 目を伏せ、やれやれといった感じで喋る文謙さまを前に、苦笑を漏らしながら頬を掻くととさま。

 ととさまが人を嫌うという状況は、不思議なもので全然想像がつかない。

 悪口をどれだけ言われても文若さまとは本気の喧嘩にはならないし、元譲さまが剣を片手に襲い掛かっても、叫びはするけど本気で怒ったりはしない。

 ……怒ることなんてあるのかな、って思うくらいに温和な人だよね。

 その代わりかどうなのか、悲鳴みたいな声をよくあげてる。

 夜の鍛錬では特に。

 文謙さまと夜の鍛錬をした時も、氣弾で城壁の一部を壊しそうになっちゃって……女の子みたいに「キャーッ!?」って叫んでたし。

 

「ととさまって能ある鷹なの?」

「いきなりだなぁ……能なら残念ながら───」

「女たらしですね」

「凪さん!?」

「あー……」

「禅さん!?」

 

 ととさまが驚いた表情で私と文謙さまを交互に見るけど、納得できてしまう。

 だっていっつも違う女性と一緒だ。たらしだと言われても仕方ない。

 たらしの意味なら文若さまによーく教えられたから知ってるもんね、間違いないよ。

 そのことをあたふたするととさまに言ってみると、笑顔で「もうあいつが神でいいから真桜にチェーンソー作らせよう……」と涙しながら言ってた。ちぇーんそーってなんだろ。

 でもととさまってふしぎ。

 自分の娘相手でも“禅さん!?”とか言ったり、冷や汗みたいなの流しながら笑顔でやさしい言葉をかけてきたり。それとも普通の親ってこんな感じなのかな。

 もし違うなら……うん。面白い人が父親でよかった。

 

「ねぇねぇととさま」

「な、なんだい禅。女たらしじゃないこの父になんの用だい?」

「いつか禅が誰かと一緒になっても、変わらないととさまで居てね?」

「───」

「隊長!? 何故吐血を!?」

 

 笑顔のままに口の端から器用に血を吐き出すととさま。

 それからカタカタと震えだしたと思ったら、

 

「ぜ、ぜぜぜぜ禅サン……!? もももしや、気になるヤロッ……男の子でも、いいい射る……もとい、居るのカナ……!?」

 

 口が歪んで、眉も八の字で、コメカミでは青筋がばるばると躍動してて、なんというか面白い顔のととさま。……えと。なんだか言っちゃダメだった言葉みたいで、ととさまからモシャアと黒い氣のようなものが。

 でも……気になる男の子? 男の子……ととさまも男の子だよね?

 

「うん、居るよ?」

「俺の拳が血を求めている!!」

「落ち着いてください隊長!!」

「HAHAHAァ! なにを言ってるんだィ凪さァん! 僕は冷静さ! 相手は禅を幸せにしてくれるかもしれない男だよ!? そんな相手に対してぼぼぼ僕がなにかするだなんてハッハッハァ!! ただ、たたたたタタたたただ、貴様のような男にお義父さんなんて言われたくなななナイダケデ……! オ、怒ッテナイョ凪サァン! ワタシ全然怒ッテナイヨゥ!! タダチョットソノガキブチノメシテミタクナッチャッタナーミタイナ全軍突撃ィイイイイッ!!!」

「だから落ち着いてください!」

 

 ととさまの体から氣が溢れ出して、それが頭上で“滅”の文字に象られる。

 すごいなー、ととさまは。私じゃああんなのできないよ。

 なんて、私がじっとととさまを見つめていると、文謙さまと話し合っていたととさまが私に向き直って、相変わらず引き攣った笑みを浮かべながら質問を投げかけてきた。

 

「ぜ、禅ー? その気になる相手っていうのは誰のことなのカナー? とととととととさまにちょっと教えてみてくれないかなー?」

「隊長……訊いてどうする気ですか」

「心の臓! 止めてくれる!」

「支柱があっさりと殺人を犯さないでください! しかも理由があんまりにもあんまりです!」

「肝の臓! 止めてくれる!」

「あ、あの……隊長……止めることから離れてください……」

「と……っ……止めちゃだめなのか……!? ……そう、だな……そうだよな……。なんでもかんでも止めることばかりを意識しちゃ……だめだよな……」

「隊長……!」

「じゃあ春蘭と愛紗の料理を合成させたブツを食わせて、腹痛が止まらないように」

「絶対にやめてください!!」

 

 ととさまは愉快な人です。

 時々暴走しますけど、愉快な人です。

 お姉さまがたもこんなととさまを知れば、きっと毎日が楽しいと思うのに。

 もったいないなぁ。

 今だって、怒ったのかなと思ったらもう笑ってる。

 

「ねぇととさま。ととさまって本気で怒ったことってあるの?」

「どうだろう、凪」

「隊長……ご自分のことなんですから、私に訊かないでくださいぃ……」

「や、俺もそうは思ったけどさ。ほら。本気で怒ったのかどうかなんて、案外自分じゃわからないもんじゃないか。……華琳を叩いた時は別だけど……こほん。なら、こういうのは俺のことを俺より知ってそうな人に訊くのがいいだろ?」

「わ、私が……隊長より隊長のことを……?」

 

 あ。赤くなった。

 赤くなった文謙さまって……口では言えませんけど、かわいいです。

 やがて何かが文謙さまの心を動かしたのか、文謙さまがととさまのことを語り出した。

 私ももっとととさまのことが知りたかったので、がんばって頭の中に入れてゆく。

 

「私と隊長が出会ったのは、まだ世が乱れていた頃のことです。当時私は真桜や沙和とともに───」

「うんうん……!」

「凪っ!? それって俺が本気で怒った時のことと関係あるの!? えっ!? 俺その時怒ったりしてないよね!? お、怒ったっていえばほらっ! 桃香との……劉備軍との篭城戦で、華琳が意地を張った時とか……ああっ! あの時凪は別のとこ行ってて居なかったぁっ! じゃ、じゃあ美羽に拳骨くらわせて……その時も居なかったぁっ! ……じゃあ雪蓮の暴走っぷりに怒った時とか!」

「その時、カゴが壊れてしまいまして」

「ととさま……」

「あれぇ!? 聞いてくれてないのに非難の目だけはしっかり向けられてる!?」

 

 その後、少し表情が怖い、赤い顔の文謙さまにととさまのことをそれはもうみっちりと教え込まれました。必死に止めようとするととさまですが、何故かととさまのお話なのに、“黙っていてください”と睨まれたととさまは瞬間的に正座をしてしょんぼり。

 ……威厳みたいなものはないのかもだけど、私は威厳よりも傍に居てくれるととさまだからこそ大好きです。最初こそぐうたらなのかなぁとか思ってたけど、それはかかさまが素晴らしき天然っぷりで破壊してくれた。

 その瞬間、ぐうたらだと思っていた父は自慢の父に変わった。

 元々そうだったのを、私たちが確認もしないで誤解していただけ、といえばそれまでの話なのに、それを認めたくないのが困ったことに人間なんだよーなんて、ととさまは笑いながら言っていた。

 人っていうのは上に居る完璧な人よりも、下でもがく人のほうが周囲ってものを見れるもんだって言っていた。コツは嫌なことよりいいところを探すこと。嫌うより好きになる努力をすること、だって。嫌なことばかりに目を向けてしまうのが人間だとは言ったけど、逆にいい方にばかり目を向けられる人も居るから“ばらんす”は保たれるって。

 

「ととさま」

「うう……なにかな、禅……」

 

 文謙さまの隊長語りに顔真っ赤にして恥ずかしがっているととさまに、私は“さむずあっぷ”をして笑う。

 

「楽しいって、いいねっ」

「俺は今大絶賛恥ずかしいけどね!! 娘や部下にいじられる父親になるなんて、この世界に降りた時は微塵にも思ってなかったよ!」

「ととさま……禅も、ととさまのこと嫌ったほうがいいの……?」

「いじってくださいごめんなさいぃ!!」

 

 泣いてしまった。

 ととさまって、なんか全力で生きてるなぁってよく思わせてくれる人だ。

 

「なぁ凪……反面教師って……自分からするのってすごい辛いな……」

「隊長……それは、聞くたびに辛くなるので……その」

 

 ああ、一回や二回じゃないんだ……。

 ととさま、少し可哀相だ。

 ……うんっ、ここは事情を知ってる私だけでも、ととさまをきちんと励まさないとっ。

 


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