-_-/───
一刀がアグナコトってから数時間後の朝。
北郷一刀の朝は早い。
それに合わせて起きるようにしていた一人の少女の朝も、それはもう早くなっていた。
「おはようなのじゃ主様ぁーっ♪」
朝。都の一角。
心の底まで己を許しきっている人物を訪ね、扉をドヴァーンと開けたお子がおる。
……が、探し人はおらず、しんと静まり返った部屋があるだけだった。
「う、うみゅ? 主様? 主様~?」
妙ぞ、こはいかなること? と首を傾げてみた少女……美羽は、きちんと自分の部屋で寝るようにと一刀の部屋を追い出されてからこれまで、一度としてこの部屋を訪ねなかったことなどない。
その経験からして北郷一刀はどれだけ早起きしようが徹夜をしようが、自分が来るまで朝の運動や朝食には向かわなかった……はず。他の者との予定がある日は別にしても、大体は待っていてくれたはずだ。
だというのに居ない。
「……? はっ! もしや何者かに攫われでもしたのかの……!」
そこまで考えてはみたが、“襲う”の意味が違う方向で考えられているあたり、命の危険は特に心配していなかった。
部屋の鍵が開いているのは毎度のことだ。北郷一刀は美羽よりも起きるのが早い。
早く起きて、身支度をすると自分が来るのを待ってくれている、そんな人だ。なのでこの状況───朝だというのに鍵は開いていて、かつ部屋の主が居ないという理由は。
「……おおっ、厠じゃのっ!」
それくらいしか思い浮かばなかった。
「仕方が無いのぅ主様は」などとくすくす笑いながら寝台までを歩き、ちょこんと座る。人を想うという行動にも、人を待つという行為にも、もうすっかり慣れたものだ。
我が儘だった姿など面影もないのだろうが、それはひとえに一人を想えばこそ。自分の行動を邪魔されるのが嫌だった自分も、自分の思い通りにならないことがとても嫌だった自分も、彼の前では頭を引っ込めた。
考え方のそもそもが変わり、言ってしまえば彼の傍に居ることや彼に笑んでもらおうと頑張ることこそが、いつしか自分の行動の大元や自分の思い通りになってほしいことに変わっていたからだろう。
それを前提で言うのなら、従姉である袁紹も随分と丸くなったものだ。
恋だろうとなんだろうと、思い通りにならなければ不満を口にして殴り込みでもかけそうな彼女が、自分との時間に仕事が転がり込んでしまった際、文句も言わずに引き下がることを覚えたのだ。……といっても文句は言わないものの、一刀の傍を離れようとはしないのだが。
「……~♪」
ともあれ、考えてもみれば信じられないくらいの影響を自分たちに与えた存在を思い、美羽は寝台に腰かけながら、持ち上げた足をぷらぷらとさせていた。
鼻歌はもはや癖だろう。
蒲公英とともに何度もねだっては聞かせてもらった歌。
一刀の携帯に入っている歌で彼女が歌えない歌などはもう無かった。
「……ふみゅ」
そうして歌い終えても戻らない主に、こてりと首を傾げてみる。
厠にしては遅いのぅ、と。
小さなものではなく巨大なものと格闘しているのかもと考えると、ポムと軽く赤くなりながらも「し、仕方ないのぅ主さまは」と呟いた。
「………」
一刀と出会い、彼の期待に応えたいと思って駆け抜けた日々は結構長い。
気づけば子供達には慕われ、都の民達にも笑みを向けられる存在になっていた。
8年以上前であろうと笑まれることは変わらなかったのだろうが、その笑みの種類も今では理解できる。あれは歓迎されていない笑みだった。
それが今では自然な笑みで迎えられるのだ……思ってみれば、それはとても心が温まる世界だ。
それを与えてくれた人に。根気良く付き合ってくれた人に、自分は今以上のなにかを届け続けたい。体もすっかり普通に大人だ。相変わらず子供扱いされることはあるものの、そんなものはしてもらえる内が花であると様々な人物に言われた。
その言葉が切っ掛けで子供薬争奪戦争というものが起こったことがあるけれど、あまり気にしない方向でいこう。結果として、年長組と呼べる存在はあの日と変わらぬ容姿で今を生きている。それだけなのだから。
「む」
暇に任せていろいろと考えていると、この部屋へと駆け迫る気配。
急いでいるらしく、ノックを待たずに入ってくるであろうその気配の主は───
「おはようございますお嬢様っ」
……七乃だ。おはようを唱えるならもっと早く、自分の部屋にまで来て言うべきではないだろうか。小さくそんなことを考えながらも口には出さず、「うむ」と返す。
今思えば随分と人をからかっておちょくって楽しんでくれた七乃だが、それをどうこうするつもりも、そもそも恨むつもりもない。いろいろあったが傍に居てくれようとした存在なのだ、それを拒絶するなどとんでもない。
しかしながら、からかえなくなったと知るや、あからさまにがっかりするのはやめてほしい。もう散々と堪能しただろうに。そんな言葉も言わない。困惑する彼女をからかい返すのは、自分の数少ない趣味のひとつだ。
……と彼女は考えているが、結局は言葉では勝てず、最後はからかわれる。
そんな青春。
「どうしたのじゃ七乃。そのように駆け込んできたりしたら、主様に迷惑であろ?」
「いえいえぇ、それが実はその愛しの一刀さんに関してのお話なので、お嬢様でしたら絶対にこの部屋に来ているだろうと思い、脇目を振りつつここまできたのです」
「脇目、振ったのじゃな……」
「はいっ、それはもうっ」
お決まりの姿勢と言えばいいのか。
七乃はピンと立てた人差し指をくるくると回し、人をからかうための餌を言葉に混ぜつつ話し始める。それを真正面から受け止める美羽は、“いつものことながら、よくもまあここまで舌が回るものじゃの”と感心した。自分がやろうとしても舌を噛むだけに違いない。
「───と、そんなわけでしてっ。一刀さんが夜逃げしたというお話が、兵たちの間でまことしやかに噂されていましてね?」
「うほほ、おかしなことを言うのぅ七乃は。主様は困難に直面したら、むしろそこへわざわざ足を運ぶようなお方ぞ? それが娘からの理解を得られないという理由で夜逃げなどと」
ふふりと笑いつつ腰掛けた寝台から立ち上がり、一刀が使っている机へと歩く。
どんな時でも仕事をするような人だ。今日だって厠に行く前は書簡整理でもしていたに違いない。そう思ったからこその行動───だったのだが、机に乗っているものがたった一つの竹簡のみという事実を確認すると、きょとんとしたのち……驚いた。
『拝啓、天体戦士サンレッ……もとい、
この部屋を訪れたあなた様。
新茶が美味しい季節になりましたがいかがお過ごしでしょうか。
さて本日は、出張鍛錬の日時のお報せをお送りさせていただきたく思い、
こうして筆を取らせていただ───』
「主様が家出したのじゃあああぁぁぁぁぁぁーっ!!」
最後まで読まれることなく閉じられた竹簡が、ガリョッといい音を鳴らした。
「お、おぉおお……! 主様が、主様がぁああ……!!」
「まあまあお嬢様、一刀さんが他国に飛び出ていくことなんて、一度や二度のことではないじゃないですか。気にするほどのことでも───」
「竹簡が置いてあったのは今回が初めてであろ!」
「あ、先に気づいちゃだめじゃないですかー。気づかせずにいろいろ吹き込もうと思ってたのに、お嬢様ったらいけずっ」
「生簀なぞ知らぬのじゃ! それより主様じゃ!」
「いえいえ“いけす”ではなくて。もう、お嬢様ったら一刀さんのことになると冷静ではいられなくなるんですから。ではそんなお嬢様に朗報です。見張りの兵が、国境から戻ってきた兵に一刀さんが門を潜ったという情報を聞いたそうですよ」
「なんじゃとぉ!? 何故それを先に言わぬのじゃ!」
言いつつも情報を得たとばかりに期待を込めた目で七乃を見つめる美羽。
その“頼られている瞳”にうっとりな七乃だが、同時に悪戯心も沸いていた。
「で、で? 主様は何処への関所を通ったのじゃ!?」
「はいっ、実は───」
「実は……!?」
「私にもわかりません」
「───」
「………」
……指を回している女性の笑みは、極上のものへと変化した。
対するポカンと呆けていた少女はその極上の笑みの彼女へとローキックをかまし、痛がる彼女に「どういうことなのじゃーっ!」と叫んだそうな。
「い、いえだって、私としましては一刀さんが出ていくのを見ただけであって、何処に行ったかまでを調べるには時間が早すぎますよ?」
「兵から聞いたと言っておったであろ!」
「もちろん嘘ですっ☆ いたぁっ!?」
再び蹴りが飛んだ。
「いたたたた……! ふふふ、甘いですねぇお嬢様……言葉遊びというのは相手の言葉に集中してこそ勝てるもの。ここから国境までを一日かからず辿り着くなど、休み無しで全速力で、しかも障害物などを全て無視してでも真っ直ぐに向かわなければ無理ですよ」
「主様ならやりかねんであろ」
「……えーとその。まあ。一刀さんでしたらやりかねませんけど」
なにせ氣だけで言えば異常ともとれるほど持っている。
加えて空を飛ぶ絡繰まで持っているのだ。普通ならば迂回しなければいけない場所でも、空を飛べば大きな川だろうと谷だろうと越えられる。
片春屠くんはつり橋なんて渡れないから相当迂回しなければ各国を回れないという難点があるが、空を飛ぶ絡繰は実に便利だ。
「うみゅぅう……では、国境の兵が戻ってきたというのも嘘かの……?」
「もぉちろんですお嬢様っ!」
「威張るでないのじゃぁああーっ!! ええいそこになおれこの馬鹿者がー!!」
結局はからかわれる側らしい。
が、日頃から子供たちに“主様を蹴るでない”と言う割りに、この少女も意外と足が出るのが早かった。べしぃっ、と音が鳴ると、七乃が「はうぅうんっ!?」と悲鳴をあげて、蹴られた右足を庇うように飛びのいた。
「お、お嬢様ぁ、氣を込めて蹴るのはやめてくださいとあれほど申し上げたではありませんか~……」
「七乃がいつまでも妾をからかうからであろ! まったく、主様と勉学に励む中、どれほど妾が偏った知識のために恥を掻いたかわからんわけではなかろ?」
「もちろんわかりませ───」
「わからんのなら全力で蹴るのじゃ」
「ごめんなさいお嬢様っ!」
ピンと立てた指が祈るように組まれ、にっこにこ笑顔が悲しみに溢れる。……とても早い懺悔であった。
「ふみゅ……まあ知らぬ相手でもないからの。七乃を好いておる妾であるからこの程度で済むものを、もし妾でなく底意地の悪い君主相手であったなら、今頃七乃の首は道端にさらされておったのじゃぞ?」
「もっちろんわかっておりますともっ!」
そして物凄い速度での復活であった。ピンと弾かれるように伸びた人差し指も、どん底から這い上がったようにはまるで見えない極上の笑顔も、それすらもがからかう材料だったのかと思えるくらいに眩しかった。
「うむっ、これに懲りたなら、一層妾に尽くすがよいのじゃっ!」
「ええもちろん! どこまでもついていきますよお嬢様っ! なにしろ言われるままを鵜呑みにしたり他人任せばかりだったお嬢様が、今では積極的にご自分で行動なされるほどの成長を見せたんですからっ! ここまでの成長などお嬢様以外には不可能ですっ! よっ、都を支える現代の知将っ! お嬢様ってばさすがですっ!」
「うははははっ、そうであろそうであろっ!? もっと褒めてたも!」
……で、結局は根っこというものはそう簡単には変わらない。
既に七乃が次はどんな言葉でからかおうかと思っている時点で、二人はずっとこのままなのかもしれない。
そんな大盛り上がりの二人の聴覚へ、ノックの音が届いたのは……この直後だった。
-_-/一刀くん
朝である。
「裂蹴ゥウウーッ!! 紅球波ッ!!
今日も元気に……別の村で鍛錬。少しの休憩を取ったら全力で走りました。
……さて、今回の鍛錬は───手の中に作った“風を巻き込む回転”をする氣を作ると、逆側に回転する氣を重ねるように作り上げ、それを高速で回転させることで火をつける、なんて鍛錬。
発火剤はあくまで氣であり、燃えてしまえば酸素を巻き込む限りは燃える……のだが、氣も作り出しては回転させを繰り返さなければいけないので、凪のように“作り上げたらさっさと撃つ”のが一番だ。
そもそも俺に凪のような瞬間発火させて飛ばすような方法は無理だ。これからまた何年も研究すれば出来るかもだが、それをするよりは別のものを研究したい。
なので
かの元霊界探偵が使っていた、霊力……ではなく氣のボールをサッカボールのように蹴って相手にぶつける技だ。投げるよりもよっぽど早いので、結構面白い。
蹴った氣の球は村の端の草原を飛び、多少カーブすると地面に落下。破裂して地面を抉った。
「……勢いはいいんだけど、問題は命中精度だよな」
何分足で蹴るため、どこに跳んでいくかが正確にわからない。
プロのサッカー選手とかだったら完璧なんだろうなー……生憎とサッカーの練習はやってないから俺には無理だ。
「まあ、応用応用」
放出系はここまでにして、次は応用。
放出するイメージを体に込めて振るう。
氣を上に飛ばすイメージが成功して武具が軽くなるのなら、振るう拳を先へ飛ばすイメージを働かせれば拳が速くなる。そういったものだ。
もちろん、武器を下に振り下ろす際は下へと氣を飛ばすように振り下ろす。
今まで加速にしか使っていなかったものを、それ全部を氣弾にするイメージだな。
「ん、んー……」
今までは加速が出来ればそれで良しと考えていたもの。
拳に届けばそれを鈍器とするように振るっていたソレを、拳に届いてなおその外へと向かわせるようにして───
「爪先から踵───」
回転を開始する。
「踵から膝───!」
体を下から順に回転させて、
「膝から腰───!」
一緒に氣を螺旋のイメージで昇らせて、
「腰から背骨、背骨から肩!」
速すぎる回転に関節や軟骨に負担がかかるが、それも個々に使用出来るようになった氣を緩衝剤にして負担を減らす。
「肩から肘、肘から手首! 手首から───」
やがて、何を心配することなく最高の速度で昇ってきた氣を拳に宿し、そこで終わらずに体外へ全速力で放出するイメージを働かせる。けれど実際に放出することはなく、ただその速度のままに拳を振りきり───!
「はぶぅぃっ!?」
……全力を放った結果、拳の勢いに持っていかれた体が全速力で芝生に衝突した。
いくら振り切ったところで拳は体にくっついてるんだから、飛んでいく筈もない。
ないんだが……地面にしこたま顔を打ち付けたというのに、俺はわくわくしていた。
何故って、今までやってきたことがきちんと生かされているから。
フィンガーマシンガンとか魔空包囲弾とかいろいろへんてこなことをやってきたけど、そのどれもが集中に必要だったり分散に必要だったりして今に活きている。それが嬉しい。
今なら岩だって軽々と破壊できそうな気さえするのだ。出来ないんだろうけど。
「~……よしっ」
わくわくを胸に石を拾い、同じ過程を以って石を全力で投げてみた。正面とかは危険なので空へと。それは風を裂き、空を切り、蒼天を目指して飛び───
『ギュピィーッ!!』
「キャーッ!?」
……空を飛ぶ鳥を仕留めてみせた。
遥か上空、昼ならば眩しくて仕方が無かったであろう天空にて、鳥の悲鳴が耳に届く。
ゲェエと叫びそうになったのに、なんだか普通にキャーとか叫んだ俺は大丈夫か?
いやそうじゃないだろまずはあの落下してきている鳥を……落下!?
「うわわちょっと待てぇえーっ!!!」
当然慌てて疾駆。
草原を駆けて襲撃防止用の壁を飛び越えて駆けて駆けて駆けて───鳥が落下してきた場所へとンバッと飛び出した……ら、下が川でした。
ギャアアアアアアァァァァ……!!
ダッポォーン───……
───……。
まずは両手を合わせます。集中。
両手に氣を集めて、体を包むように展開。集中。
風を巻き込むようにして氣を動かします。集中。
その際、片手ずつ放つ氣は全て逆方向に。集中。
そうして氣と氣を高速で摩擦させて、巻き込んだ酸素を燃やします。集中。
「もっとぉっ! 熱くなれよぉおおーっ!!」
そうしてからその摩擦で燃えた渦巻く氣を空へと飛ばすように、拳を天へと突き上げます。するとどうでしょう。自らが作った小さな氣の渦が一気に燃えて、濡れていた体が乾きます。
「……この要領で飛竜昇天波とか出来ないだろうか」
あっちは熱気を集めて冷気で吹き飛ばすんだっけ?
……また8年かければ、火じゃなくて冷気を作ることが出来るだろうか。
「冷気……冷気ね」
考えてみれば、ファンタジーでいう魔法とかはどうやって氷などを作っているのか。
魔力? 魔力だろうなぁ。言ってしまえばそれまでだけど、氣だって人間が出せるものだろう。魔力もそうなら氣でも氷を作れないだろうか。
「氣同士を摩擦させて、巻き込んだ酸素を燃やすことで火を作るなら……その逆?」
そんな単純なことで出来るものだろうか。
まあいいか、今は応用の続きだ。
「一撃はデカいけど隙が大きすぎるのが難点だよな、これ」
全力すぎて、攻撃のあとの隙がデカい。
どうせやるなら投擲ものの方が確実に強い。
その事実は、死にはしなかったものの目を回している天空の鳥が教えてくれた。
現在も木の上から俺を恨みがましく睨んでいる。
相当高く飛んでいたからなのか、威力が弱まったところで当たったらしい。
癒しの氣も流したし問題はない……筈なんだが、飛び立とうとはせずにこちらを睨んでいる。
「あー……えと。悪かったって、そう睨まないでくれ……」
『カッ! カッ!!』
声をかけると翼をバサァッと広げ、カッカッと威嚇してくる。
……言葉がわかるわけでもないのだろうが、随分と嫌われたものだ。
子供と俺の関係もこんなものなんだろうな……なんだかどんどんと自信がなくなっていく。でもなぁ、俺、別に子供達に痛い思いをさせた覚えもないんだけどなぁ。こういうふうにあからさまな原因があって嫌われるならまだしも、隠しているとはいえ仕事もしているのに嫌われるというのがまた……はぁ。
「だったら隠さなければいいってみんな言うけど、こればっかりはな」
今さら……そう、今さらなのだ。
ならばやはり反面教師。
想像の中の俺のようにならないため、強く生きてくれ子供達。
そしていつかぐうたらな親を今こそ叩きのめしてやると牙を剥いた時にこそ……
「真正面からブチノメして種明かしをしてくれるわグフフフフ……!!」
……とまあ、悪者ぶるのは適当に、そんなことを考えているわけだ。
するとどうだろう、子供達からの俺への評価が一変! 何故今まで隠していたんだと軽蔑の眼差しで…………あれ? 変わってない?
「………」
どう転んでもダメなものはダメと考えるのも必要なのだろうと、その時悟った。