───で……数分後。
「偉大なる母様……私は、琮は……ようやく母が言っていたことがわかりました。きらきら輝く人……私もそんな人を見つけることが出来ました!」
「ふえっ!? ふえぇええっ!? え、えええっ!? きらきらっ……!? そ、琮? それはどんな……?」
「はいっ、お手伝いさんですっ」
「───」
叱ったために家出をした娘が急に帰ってきて、爆弾発言をするという恐ろしい出来事があったそうで。
「母様……私は、大きくなったらお手伝いさんと婚儀をしたく思います!!」
「───ふぅうえぇえええええっ!?」
その言葉に亞莎が絶叫。
何事かと集まる呉将の前で、琮は言ったそうな。
強くなりたいので武を教えてほしいと。
賢くなりたいので一層の知を与えてほしいと。
突然どうしたのだと訊いてみれば───ほぼが半眼、じとーっとした目つきだった少女が信じられないくらいに可愛い笑顔で笑い、
「そんな自分を誇ってもらいたい、眩しい人に出会えました! その人の伴侶となれるよう、自分を磨きたいのです!」
それはそれは立派な理由だった。
そう言われては是非もないと、武官文官は腕まくりまでして彼女を応援しようとしたのだが。
「かっかっか、そうかそうか。応、どんと任せておけぃ。───時に呂琮よ。その相手とは誰じゃ?」
「お手伝いさんです!」
『───』
からかうように問うた祭さんと、その場にいた呉のみなさんがその後、俺の部屋に突撃してくるまで……そう時間は要りませんでした。
『一刀あなた自分の娘相手になに考えていつかやると思っておったがよもや本当にやるとは思わなんだわこの馬鹿者貴様よもや述に対しても同じようなことを考えて旦那さまいくら女性への手が早くても自分の娘にそれは最近延も旦那さまを見る目がおかしいなぁとか思っていましたけどまさか本当にそうだったなんてぇ~だだっ、だだ旦那さまっ……そんな、旦那さまが琮に……! すすすすいませっ……私に魅力がなかったから……!』
「いきなりなに!? ていうか一人ずつ喋って!? むしろ何があったのか説明してくれぇええっ!!」
ええもちろん、突撃してきた母親全員にいっぺんに喋られてもわかる筈もなく。
それからじっくりと説明された俺は、まあなんといいますか。
ずっと一緒に居て見守るって言ってしまった手前、激しく否定することも出来ず、そこらへんはきちんと段階を置きながらしっかり説明したんだが……うん、なんだろ。
むしろこんなことになって、“やっぱり”とか思われていたあたり、なんだか悲しくなって笑顔のままに泣きました。
「お、おおっ……!? なにも泣くことはないじゃろう……」
「娘相手に“いつかやる”とか思われてた俺の身にもなってよちくしょう!!」
「しかし貴様のことだ、どうせ嬉しかったのだろう?」
「あ、そうですよ旦那さまっ、話の途中で顔が緩んでましたっ」
「ウ」
どうせなら違う方向で、大きくなったらお父さんのお嫁さんになるー、と聞きたかった。ハイ、本心です。
「一刀、あなたまさか本気で……」
「いやいやいやいや蓮華さん!? ちょっと待った! 娘に“大きくなったらお父さんのお嫁さんになる”って言われるのは、娘を溺愛する父親が持つ夢みたいなものでしてね!? 天では結局そう言われようが娘は他の男を好きになって嫁いでいくんだから、むしろもうのちのピエロのようなものでしてね!? 決して怒られるような感情じゃないんだって! 後のこと考えれば悲しいくらいの僅かな喜びなんだよぅ!」
「あらら~、必死ですねぇ~」
「必死にもなるよ!? 今の状況で必死にならなきゃ俺がみんなにボコられるでしょーが!!」
「しかしそうか。ふむぅ……まあ、たとえお主が娘に手を出したところで、娘が歳相応になってもお主のことを好いておればそれはそれで面白───構わんとは思うが」
「祭さん、今面白そうって言おうとしなかった?」
「かっかっか、知らんのぉ」
楽しんでらっしゃる。さっきはあんな形相だったのに。
「とにかく」、と一息置いて、子供たちは確かに大事だけど、手を出すつもりなんて本当にないことを告げる。
大体、確かに嬉しかったことは事実だけど、天ではそういうのは恐ろしい重罪だとも。「というかいくら我が子が可愛くても、そういう感情は沸かないから」とキッパリ。
「あと亞莎に魅力がないなんてことないから、卑下しないの。いい?」
「はうっ……!? は、はいぃっ……あ、ああありがとうございまっ……!」
……いつものことながら、やっぱり言葉は最後まで聞こえないなぁ……。
消え入るような声っていう言葉があるけど、亞莎の場合は語尾が本当に消えてしまうから困る。ここ8年でもそれは直らなかったので、もう仕方ないのかもしれない。
喋ってる本人、真っ赤だし。
「それで一刀? もう起きて平気なの? 布団を干しているようだけど、昨日の今日で動き回るのは感心しないわ」
「ああ、大丈夫大丈夫。そりゃあ痛むけど、体というよりは氣脈に無茶させた感じだからさ。体を筋肉で動かす分にはそこまで負担はかからないって」
「……そう」
「だ、旦那さまっ……この度は琮がご迷惑をおかけして、も、もうしわけっ……!」
「あぁーしぇっ! そんな他人みたいなこと言わないっ! 琮は俺の娘でもあるんだから、そういう言い方はちょっと……かなり……いや、物凄く悲しい!」
「ふええっ!?」
「ふふふっ、亞莎はいつまで経っても照れ屋さんですねっ」
「んふふ~、いい加減慣れればいいのにぃ、亞莎ちゃんは恥ずかしがり屋さんですねぇ~♪」
「だ、だ、だって旦那様がっ……一刀様がっ、他人、他人みたいなこと言わない、って……!」
「ふむ? おお、確かにその言い方は、まるで夫婦みたいじゃのう」
「ふうっ───!?」
「わわっ、また赤くなりましたっ!」
「あらあら~、亞莎ちゃん、愛されてますね~」
「ひ、ひやああ~……! や、やめてくださっ……いぃい……!!」
ますます赤くなる亞莎を囲み、わいわいと騒ぐ明命と穏と祭さん。そんな様子に溜め息を吐くのは蓮華で、その傍でこちらを見ているのは思春。
呉のみんなは家族のこととなると一斉に来るから、結構心臓に悪いです、はい。
でも、その“内側を大事にする構え”は好きなんだよなぁ、一生懸命で。
「で、肝心の琮は?」
「言いつけた鍛錬をしている。本を読んでばかりだったから、まずは基礎だな」
「……手加減してやってね、思春」
「基礎程度で折れるのならその程度の話だろう」
「安心していいわよ、一刀。こうは言うけど、思春ったら述にくれぐれも怪我をしないようにと琮を見張らせて───」
「れ、蓮華さまっ!」
「……思春。述にもちゃんと教えてやってね。じゃないと拗ねるぞ」
「言われるまでもないっ」
言われるまでもないらしい。さすがおかーさん。
思わずくっくっと笑っていると、ギロリと睨まれたので「ワラッテナイヨ!?」と返しておく。
「ふふふっ……けれど、今日は本当にいい天気ね。こんな日に窓も扉も開けているのは、確かに心地良いわ」
「エ? ア、ウン、ソウダヨネ」
「…………」
「なんで睨むのかな、思春さん」
理由はなんとなくわかりそうな気もするけど。
「さて。それでは儂は戻るとしよう。柄に剣術を教える約束をしておるのでな」
「あ、はい。私も邵により一層の気配の消し方を乞われているので」
「あらあら~そうなんですかぁ。穏は延に、殿方の支え方を教えてほしいと乞われているんですけど~……あのぅ、旦那さまぁ? ほんとーに、ほんっとーに、娘に対してそういうことはしませんよねぇ?」
「しませんよ!? なんでそこで念を押して訊くの!?」
「いえいえぇ~、深い意味なんてありませんよぅ~?」
「………」
嘘だ、絶対嘘だ。
そうは思っても、深く訊けばなんか自分が危うそうなのでやめておきました。
「あ……で、では私も行きます……夢中だったとはいえ、琮にはきつく躾をしすぎてしまいましたから……」
「いや、うん。さすがに我を忘れるほどの尻叩きはもう勘弁してやってね……」
「はぅっ……は、はいぃ……!」
「まあ……のう」
「はぃ~……暗器で縛った子供を引き寄せて振り回せるほどの腕力で、あれだけのおしりぺんぺんは、穏でも怖いですよぅ……」
「こ、怖かったんですかっ!? ご、ごごごごめんなさっ……こ、こんな私では、一刀様の伴侶失格で……!」
「こらこら亞莎、卑下禁止だってば」
「そうよ、亞莎。あと誰が伴侶なの」
「え? ツッコむところそこなの?」
蓮華さんに思わずツッコむが、なんかもう伴侶って言葉で皆様が超反応を見せて、ガヤガーヤと騒ぎ出した。
そしてこの北郷は早くも悟るのです。
もう……なにを言っても無駄なのに、きっと肝心なところの決定は俺にさせるんだろうなーと。
「一刀っ! 結局あなたは誰をっ!!」
「やっぱ来たぁあああっ!!」
慣れたものだけど、状況には慣れようと答えを見つけることにはいつまで経っても慣れません。
今日も都はとても平和です。
そんな言葉に“極一部を除いて”という言葉を足したい俺は、誤魔化すように言った一言を糧にまた騒ぎ出す母たちをよそに、そっと窓から脱出をし───はい捕まりました。
ヤ、ヤア思春サン、今日モ麗ワシュウ。
「何処へ行く」
「───俺より強い奴に会いに行く……!」
思春さんの質問に、風に髪を撫でられながら思いついた言葉を適当に言ってみた。
……昨日の今日で何事かと、全員から説教くらいました。
お久しぶりです。
随分と更新が遅れてごめんなさいです。
連日連夜の熱地獄に苦しんでまして、ろくに更新できませんでした。
まあ、はい、なんといいますか…………クーラーとかないんですよね、うち……。
しかも僕の部屋、気温にめっちゃ影響されやすく、夏は灼熱・冬は極寒みたいな部屋で、窓開けたって熱風しかこないし、なもんだから寝苦しく、仕事中にも寝不足でくらくらするし、なんか足から力が抜けて機敏に動けなくなるし、なんの負けるか男じゃわしゃあああ! と走ったら目が回ってぐったり状態になるわ、病院に行ってみても足に力が入らなくなる現象は謎であるとくるわ……いえまあ貧血気味で疲労物質が溜まりやすくなっている、というのは聞いたんですけど、直接の原因と言えるかは、うーん……と言われてしまい、結局なんなのよォオオ~~~ッ!! って感じです。
そんなわけで、全部この夏の暑さがいけないのよ……!!
なんか寝ても寝ても疲れが取れなくてネ……。
どうせ寝られぬのなら……! と編集作業とかやってると、予想通りといいますかそれまで以上に疲れました。
やっぱり少しだろうと眠るのは大事ですね。
皆様も暑さ対策などをして、僕なんぞより快適にお過ごしください。