真・恋姫†無双 魏伝アフター   作:凍傷

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*注意
 今回から少しの間、男キャラが一人追加されます。
 いえ、問題なく原作キャラなのでオリ主が引っ掻き回す、というものではないのですが。
 ラストに必要なことですので、どうか少しの間、見守ってあげてください。
 どうあっても“日本にならいいけど、三国世界にはかずピーだけじゃなきゃ嫌!”という人は注意を。
 え? 最近よくあるNTR? はははまっさかぁ! 僕NTR大嫌いですもの!
 吐き気するほどダメです、ほんとダメです。なのでそれは絶対にありません。


外史終端偏
144:IF3/蒼天より来たる者①


196/落下時のダメージはどうなっているんだろうとか真面目に考えたらいけない

 

 螺旋とは穿つイメージを備えた、人の中での“破壊に適したイメージ”だ。

 拳もただ突き出すより、捻るようにして打ったほうがいいという。

 先人に敬意を払いつつ放つ加速にも、螺旋の応用が当然ある。

 爪先から膝、膝から腰、腰から脊髄……一連の行動の際に動く関節も、ともに駆け昇る氣も、螺旋を描きながら手へと走る。

 軽身功の応用として、自分の体重を爪先から昇る氣に乗せて対象にぶつけることも、破壊力向上には大事な要素だ。

 

「こういう考えがあったから、今の自分はその過程を素っ飛ばして次の段階に移れる。そういった先人への敬意を忘れれば、人なんてまだまだ原始人だ、なんて言う人も居るくらいだ」

 

 故に。

 先人に(なら)い、先人に学び、先人に敬意を払うこと。成長というものに重要なそれを、人は忘れるべきではない。

 そして柔軟に物事を受け入れる過程で重要なのは童心だ。

 これはこういうものだと固定した考えで物事を受け止める……それももちろん大事ではあるけれど、それとともに“次”を想像して創り出す柔軟さも必要なのだ。

 絵を描こうとすれば、まず誰かの絵の真似から入り、次第に自分の描き方を見つけるように、第一歩を自分の力のみで踏み出すことは容易ではない。

 当然としてそこにあるものを自分が受け止めて当然、即座に次の一歩を自分が歩み、自慢するのが当然……というのではなく。……既にそこにあるからこそ、自分がもう一歩を進める事実を受け止め、そうさせてくれた先人に感謝する。

 

「一撃に感謝。行動の一つ一つに感謝する」

 

 丈夫な体に産んでくれた両親に、鍛えてくれた祖父に、いろいろあってもあまりツッコまなかった妹にも一応。

 感謝と敬意を抱き、心を静かにした状態で脱力する。

 

「───」

 

 見えるものは中庭の、いつもと変わらぬ景色。

 そんな景色にも感謝できるものはたくさんあり、たとえば見張りをしている兵にだって、庭の手入れをしてくれている人にだっていくらでも出来るだろう。

 こうしてのんびり鍛錬が出来るのは、見張りという仕事をしてくれている人が居てこそだと。

 

「ひゅう……すぅ……───」

 

 脱力、脱力。

 体の力を極力抜いて、氣だけで体を支える。

 そうしてあまりの脱力に、眠りに落ちた時のように“かくんっ”と体から“無意識上の力み”さえもが消えた瞬間。

 

「」

 

 掛け声も何もない、脱力からの螺旋が居合いを放った。

 足から手までを駆け昇る氣の速さは過去最速。

 腕を振り切った勢いに脱力した体が持っていかれたが、すぐに体に力を込めて支える。

 

「イッツァアーッ!!」

 

 そして大激痛に襲われた。

 自分でも驚くほどの速度が出たまではいいけど、お陰で関節に激痛が走った。主に肩と肘と手首。

 

「お、黄金長方形の回転とはいったい……うごごご」

 

 はい、散々ともったいぶったことをやってはいたものの、結局は童心を糧にしたかめはめ波的なアレである。

 氣の回転速度向上は上手くいっている。驚くほど加速居合いが速くなったよ。……お陰で関節も痛いけど。

 

「自然の中から黄金長方形を探すっていってもな……うーん」

 

 まあ、あれだ。愚痴をこぼしていても始まらない。

 今日はこのあと予定がぎっしりなのだ。主に皆様に誘われて。

 ……ああうん、皆様といっても、みんなとどっかに行くわけではなく……一人一人からご丁寧に時間ずらして誘われております。

 先約があるからごめんって言っても右から左。

 散々と振り回されて、気づけば夜で……休日ってなんだっけ、と思うわけだ。

 もちろんみんなと一緒なのが嫌なわけじゃない。

 ただ……ただね? たまにさ、独りで休みたいとか、男の誰かと休みたいとか思うんだ。

 男じゃなきゃ出来ない、こう……くだらなくも苦笑せずにはいられない話をたっくさんしてさぁ。

 

「黄金長方形……建造物、人が手を加えたものは駄目なんだよな……木だって手入れをしたものだってあるだろうし……。人に飼われて、成長過程の一部を人に操られた馬でも大丈夫なんだっけ? うんん? わからなくなってきた」

 

 いろいろ考えながらも回転考察を続ける。

 氣の量も随分と多くなってきたし、だったらそろそろ氣自体に“小細工”を混ぜてみましょうってことで、思考を開始したんだけど……これがまた上手くいかない。

 回転、螺旋のエネルギーを振るうにしても、その速度、破壊力に体がついてこれないのが現状。普通はそうだよなぁ。今までの鍛錬に倣い、もちろん関節ごとに氣のクッションはつけている。それでも痛いのだ。

 人は自然には勝てないとはよく言ったものだなぁ。

 

「あー……だから投擲とか発射するものだったわけか」

 

 黄金の回転エネルギーを利用して繰り出されるものは、大体が投擲、発射物だった。

 無限回転エネルギーというくらいだから、振り切れば終わるような行動には向いていないのだろう。北郷納得。

 ふむ。だったらこう……弓はどうかな。

 

「……弓って螺旋を描いて飛ぶのか?」

 

 無理だ。某サッカーゲームの翼くんのサイクロンならまだしも。

 今思えばあれって、黄金回転だったから人を吹き飛ばすほどの威力が……ああいやいや、あれはデフォルトだった。誰が蹴っても必殺シュートだったら吹き飛ぶんだ、あの世界は。

 

「そもそも自然の法則で、投擲物って基本……真っ直ぐにしか飛ばない……よな」

 

 ブーメランなど、形状を目的のために変形されたものならまだしも、たとえばボールを投げれば……いや、カーブとかの投法があるなら可能……いやいや空中を大きく螺旋を描いて飛ぶボールってどうなんだ? それこそ翼くんのサイクロンじゃないといろいろと無茶な気が……!

 

「………」

 

 サイクロンって前例があるから別にいいか。よし柔軟にいこう。

 たとえそれが創作物の世界のものであっても、そこから得られるヒントは計り知れない。

 

「ええっと……まずは氣の球を作って……それを後方回転」

 

 胸の前に構えた両手の間に氣の球を作って、高速回転させる。

 それが完成したら、左手の上に回転させたままの状態でキープして……

 

「む、難しいなこれ……! ええっと、次に……」

 

 次に、右足から右手までの加速を込めた螺旋の氣を、高速回転している氣の球にぶつける。もちろん、さらに回転するように。

 

「………」

 

 回転エネルギーを込めた右拳に殴られた氣の球は、ドチューン、と左手の上から吹き飛んでいった。風に影響されてか不規則な方向転換を続けて。で、途中で霧散。

 

「……翼くんすごいなおい」

 

 ボールにバックスピン、頭上に上げたボールが落下してきた時にドライブシュートを打つ。そんな高速回転を込めたのがサイクロンだそうです。その理論を氣の球を使ってやってみたんだけど、何処に飛ぶかわかったもんじゃなかった。

 

「よし操氣弾だ」

 

 だったらヤムチャさんだ。

 そうだよなぁ、球を操れるっていうなら、ヤムチャさんほど完全なる黄金の回転エネルギーに適した技の使い手は居ない。

 

「つおっ!」

 

 恒例の掛け声を放ちつつ、掌に氣弾を作成。

 ……結構あの掛け声好きだったのに、あとになればなるほど無くなった気がするよなぁ。

 

「まずは操氣弾を高速回転させます」

 

 可能な限り高速回転。

 風を巻き込んでゴヒャーとか扇風機(強)みたいな音を立ててるけど、気にしちゃいけません。

 

「次に爪先から成る加速のイメージも、螺旋を加えて高速化。右手に構えた氣弾にそれをぶつけて、掌から発射させるイメージで……!」

 

 右手は撃鉄、氣は火薬。

 自分が想像出来るもので一番発射速度と回転のイメージが強いものを思い浮かべて、それをなぞるようにして動作を完了させる。

 もちろんその際に、それらを簡単にイメージ出来る事実に、先人達へ払う敬意も忘れない。

 

「黄金の回転! 鉄球のぉおぁぉぅぉおおぁぅう!?」

 

 けれど思い出してみてほしい。

 俺が使う操氣弾は、氣弾に氣を繋げて操るものでした。

 それを高速回転を加え、それこそ弾丸のように発射すればどうなるでしょう?

 結論。繋げた部分から一気に氣を持っていかれます。

 お陰でヘンテコな力の抜ける声が出た……がどうした!

 

「今なら操れる!」

 

 氣を引きずり出されてもなお、瞬時に錬氣して氣弾を操る!

 敬意を払えッ! 見えずともいい! 建造物であろうとなかろうと、この場にある全てに感謝し、これを完成させ───“ドゴォーン!!”と炸裂音が鳴った。

 

「ゲェエエエエーッ!!」

 

 回転させることばかりに熱中するあまり、氣弾が何処に向かっていたかとか全然考えてなかった。むしろ見えてなかった。

 通路側の欄干を見事に破壊した氣弾は、それでもなお回転を続けて直線状にあったものを次々と破壊してキャーッ!?

 

「いやいや止まって!? むしろ消えて!? 今まで何かにぶつかったらすぐに消えてたくせに、なんだって今日に限ってそんなにしぶといんだぁあーっ!!」

 

 結論。まだ氣を繋げたままだから。

 大慌てで氣を追って駆ける俺は、慌てていたからこそそんなことさえも忘れていて……ハッとそれが操氣弾であることを思い出して、操ろうとした瞬間に氣を枯渇させて昏倒した。

 ……俺、こんなのばっかですね……。

 ええ、もちろん破壊したものについては、たっぷりと覇王さまからの説教と罰をいただきました。

 

……。

 

 中庭にある東屋には、いつも誰かが座っているイメージがある。

 現在はといえば覇王さまがずずんと座ってらっしゃって、俺の技開発状況を見て呆れていた。

 

「つまりなに? せっかくの休日に誰とともにあるでもなく、休むでもなく? 先人に感謝をしながら自分が使える技術を開発していたと?」

「だってたまには無邪気な男っぽいことをしたいじゃないか!」

 

 言いつつ、片手を目の前辺りまで持ち上げて、瞬間錬氣。

 一瞬で満たされた氣を行使して、「観音寺弾(キャノンボール)!!」操氣弾の超簡易版、観音寺弾を作る。

 親指の先程度の大きさしかないそれはしかし、綺麗に圧縮された氣の塊だ。

 それを飛ばして、操ってみると、結構器用に操作出来た。

 

「へえ……氣というのはそんなことまで出来るのね」

「……!」

「そこでかつてないほどの無邪気な笑みを向けられても困るのだけれど」

 

 だってやってみたことを褒められたみたいで嬉しいじゃん! と言いそうになるのを堪える。

 童心全開だったら確実に言っていたそれを、今度は調子に乗ってさらなる行動を取ることで失敗する子供のように、「キルキルアウナンアウマクキルナンンン……! これぞ正義の必殺! 二連観音寺弾(ゴールデンキャノンボール)!!」……詠唱とともに掲げた両手の先に二つの観音寺弾を生成!!

 内股になりつつ、それを眼前へと放つことで、その器用さを見てもらった。

 で、どうだーとばかりにバッと振り向いて華琳を見てみるのだが。

 

「…………!」

「………」

「………」

「……」

「……?」

「首を傾げられても、言うことなんて得に無いわよ」

 

 所詮そんなもんだった。

 

(……まあ)

 

 女性と付き合うと、やることの基準が女性側に傾くものです。

 確かに行動が男らしい方々も大勢いらっしゃる。

 だが、やはり女性なのです。

 男子高校生が友達とするようなくだらない行動……そんなことを気兼ねなく出来る相手というのは、これで難しい。

 なので漫画知識に感謝して技を開発~なんてことをやっていたのだ。

 木の棒を拾って勇者ごっことか、たまに子供に戻って燥ぐくらいがいいんだ。それを通行人に見られて恥ずかしい思いをする……そんな甘酸っぱさがほしかったのだ。

 ……そこで敢えて続行するという雄々しさもたまには必要だけどね。

 

「気安さかぁ……及川が居たらどうなったかなぁ」

 

 もっと気楽に生きていられただろうか。

 人生の厳しさとか人付き合いの難しさとか、三国無双と対峙する恐怖とか空を飛ばされる悲しさとか、そんな思いを共有出来たのだろうか。

 

「また“おいかわ”? あなたって本当にその男が好きなのね」

「好きとかじゃなくてさ。一緒に居ると楽っていうか……重くないんだよな。ずかずかと踏み込んでくる割に、一緒に居る時に窮屈さを感じないっていうのかな。こいつと居る時はこうしなきゃいけない、みたいなのがないんだ。そして何より遠慮無用で居られる男って感じ」

 

 この世界の女性に俺がどんな遠慮をしなかろうが、軽く捻られるのは事実だ。

 けど、それでもやっぱり相手は女なのだ。全てを遠慮無用でっていうのは無理だ。

 ならばこそ考える。もしこの場に彼が居たのなら、どれほど自分は日々の楽しさや辛さを語り合い、笑っていられたのだろうかと……!

 

「ふぅん……? たしか、けーたいとかいうのにその男の写真があったわね?」

「へ? ああうん、そこで太陽光充電してるから、見たかったらどうぞだ。操作の仕方はもう覚えたよな?」

「ええ、問題ないわ」

 

 東屋を囲う欄干の上、ちょこんと置かれ、陽に当たっている携帯電話を手に取り、パキャリと開く華琳さん。

 ……うーん、過去の英傑が現代機器を持つ姿……ぱっと見た限りでは普通な姿な筈なのに、物凄い違和感だ。

 

「……この男ね。見た雰囲気からして軽そうに見えるわ。あなたが言った“重くない”という言葉がそういう意味ではないにしても、確かに軽そうと感じるわね」

「まあ、そうだよな」

 

 及川祐(おいかわたすく)は軽そうだ。重くないって意味でも、雰囲気でも。

 でも、付き合ってみればわかるが、人のいろんなところを見ている抜け目の無い男だ。

 そんな彼に合う言葉があるとすれば……ああ、多分これだな。

 

  “生き方が上手い”。

 

 ただ、どうしても不器用な部分は……そりゃあね、人間だもの、存在する。

 ああいうタイプの人間は……そうだな、大抵のことは引いてくれるけど、曲げたくないことには全力でぶつかる。そんなものがあったら、友人を殴ってでも貫こうとする、そんな覚悟が…………あるんだろうか。うん、そこまではわからない。

 あれは……真桜か星を男にした感じ? むしろ真桜と星を足して二で割ったのを男にした感じ? …………雪蓮でも通用しそうな気がする。

 妙に打たれ強くて、早坂兄に殴られても次の瞬間には飄々としていたほど。

 あのしぶとさは見習いたいものがあった。

 

「……この男が、一刀。あなたより人として勝っているというの?」

「見習いたいところとかは結構あったぞ? 人付き合いも上手いし、場を盛り上げるのも上手い。ちょっと踏み込みすぎっていうか、無鉄砲なところもあったけど……結果として場の雰囲気が明るくなるってところに落ち着く、不思議なやつだった」

 

 本当に不思議なやつだ。

 元の世界……天での彼が時間が止まったままなら、きっと俺のバッグにいろいろと詰め込んだように、自分の荷物にもビールとか突っ込んでいたんだろうなぁ。

 あんなもん、もし大人や教師に見つかったらと思うと……や、俺もこの世界じゃ散々飲んでるけどさ。

 

「……ふぅん。こんな、軽そうな男がね」

「軽そうな雰囲気っていっても、真桜だって雪蓮だって全然優秀だろ? って、優秀だ~なんて言い方だと自分が偉そうな人間みたいで嫌だけどさ。しぶとさでは右に出るやつなんて居ないんじゃないかな(男でという意味で)」

「そう」

 

 ちらりと見た華琳の顔。

 その口角が、つい、と少し持ち上がった。

 ……いや、会いたいっていったって無理だからな?

 さすがに天に居る人を呼び出すなんて………………アレ? そういえば俺、召喚されたよね?

 いやいや待て待て? そもそも“その世界の軸”になった人の願いは、何回くらい叶えられるんだ? 俺は華琳に御遣いとして呼び込まれた……んだよな? また会いましょうって。で、会って……えーと。

 わあ、なんだか物凄く嫌な予感。

 真剣に願えば何度だって叶うんじゃないだろうな、これ。

 

  なぁんて思っていた次の瞬間。

 

 どっかーん、なんて音と、瞬間的な地震が起きて。

 次いで、「流星が落ちたぞー!」なんて見張りの兵が叫んで。

 

「………」

「………」

 

 俺と華琳は目を合わせて………………駆け出した。

 


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