真・恋姫†無双 魏伝アフター   作:凍傷(ぜろくろ)

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149:IF3/遥か遠くの未来の空へ②

「うう……じゃあ跳ぶけどさ」

「ふふふ、どうぞ。まあっ、私の記録は塗り替えることは出来ますまいっ!」

「じゃあ星」

「むふんっ……なにかっ?」

「俺が勝ったらメンマ癖直そうな」

「!?」

「じゃあいっくぞー、ってうおっ!?」

 

 きぃ、と反動を付け始めた途端、星にガシィと腕とブランコの縄を掴まれた。……ものすごい力である。

 

「まままっままま待ってくだされ主! あなっ、あなたは私に死ねと!?」

「はっはっは、大丈夫だって星~。ちょっと全力で行くだけだからさ。天では(子供の頃に剣道で)無敗とされたこの北郷が、正々堂々と同じ条件で跳ぶだけなんだから」

「いっ……いやっ……ひやっ……まま待ってほしい! そっ、それは負けるとは思ってもおりませぬが……おりませぬがっ……!」

 

 慌てる星。

 そんな彼女の前に立ち、その両肩にポムと手を乗せる。

 

「いいかい星……雛里も冥琳も、自分の精神安定を懸けて立ち上がったんだ……ここでお前だけがそれは無いと首を横に振ってどうするんだ……」

「し、しかしっ! 私のは癖ではなく好物という意味でありっ!」

「酒が好きな人で、酔って暴れたりすることをなんて言う?」

「? さ、酒癖が悪───ハッ!?」

「そう……酒好きは酒癖。メンマ好きもまたメンマ癖……好物のことで万が一にも迷惑をかけたなら、そういうことになるんだ」

「う、うぅ、ううぅううう~……!!」

 

 熱心に語った。

 ……語ったら、なんだかぽろぽろと泣き始めてルヴォァアアーッ!?

 

「ちょっ……自信満々に踏ん反り返ってたのになんでそこまで絶望的な未来しか見えないの!? もっと自分の記録を信じようよ!」

「いや……いいのです下手な慰めは……。私は知ってしまった……先に高記録を取って踏ん反り返る者は、のちに記録を作る者の踏み台でしかないと……!」

「……聞きたくないけど情報提供者は?」

「……? あのおいかわとか言う男ですが」

 

 うん知ってた。むしろ予想出来ないほうがおかしかった。

 

「ワー、こんなところに裸で歩く女の子ガー」

「ぬぁんやてどこどこ何処におヘヴォルギョーア!?」

 

 棒読み感満載の声を何処で聞いていたのか、ホイホイ現れた友人を、滑り込んできたその勢いごとストレートにグーで殴った。

 

「で、話を戻すけど」

「……この男には容赦がないな、北郷」

 

 倒れて痙攣している及川を見下ろしつつ、呆れ顔で言う冥琳に、「大丈夫。心の癒しになってくれるって宣言してくれたから」と親指を立ててみせた。

 

「いやあれそういう意味とちゃうんですけど!? って、あたたたた……! んもう急になにするんねやかずピー……」

「ん、ちょっとブランコ跳び対決をしててさ」

「あれ? 女の子ぉの裸スルー?」

「むしろ殴られたことをスルーするお前ってすごいよな……」

「ンやぁん、べつに大したことあらへんってぇ」

 

 照れてくねくね蠢いている。

 うん、頼む及川、その動きはモンゴルマッチョの抱擁を思い出すから勘弁してくれ。

 

「しっかしブランコねー、なっつかしいもんやっとんなー。あ、俺も混ざってええ?」

「いいけど、負けると癖を封印することになるけど、いいか?」

「癖? あっはは、俺に癖らしい癖なんて」

「そか。じゃあ関西弁、やめてみような」

「……!!」

 

 あ。なんか顔を変色させた驚き顔のまま固まった。ていうかこっち見るな。その顔と顔色のまま固まられると怖い。

 

「かずピー!? 俺に死ねゆーんか!?」

「だからなんでみんな死ぬんだよ!! 癖を直すだけって言ったよね俺!!」

「じゃ、じゃあかずピーが負けたら鍛錬癖直せるっちゅーんか!?」

「お前俺に死ねってのか!?」

「ほれみぃやぁ~! ほれみぃ~! やっぱそうなるやないかー!!」

「じゃなくて俺の場合本当に死ぬんだってば!」

「ん……そうやね……自分だけ特別って思いたなる時……あるねんな……フフッ」

「ほぉおおおおこのエセ関西ィイイイイッ!! お前、全ッ然理解してないだろォオオ!!」

 

 俺の場合本当に死にます。

 なにせ鍛錬しなければ最果てにおいて左慈に負ける。

 なのに人の肩に手をおいて物凄いやさしい笑顔で言うもんだからああもうこの馬鹿は! ていうか俺お前に話したよね!? 最果てで起こることのために鍛錬してるって話したよね!?

 

「へへっ……つまりこらあれやな……死闘っちゅーわけやな……?」

「メンマを封印か……どうしても引かぬと主が言うのであれば、それに殉ずるのもメンマ愛……」

「あ、あ……あああ……わ、私、も……きちんと直すためにも、一度なにかをきっかけにしたほうが……!」

「雛里さん!? それもう負けること前提になってません!?」

「癖……癖か。北郷、私に癖があれば、そのめもは貰えるのか?」

「勝てたらって話じゃございませんでしたっけ!? いつから癖があったら漏れなくプレゼント祭りになってたんだ!?」

 

 つかもうツッコミすぎて疲れたからやめよう!? ね!?

 そもそも俺、ここにただたそがれに来ただけだったのに、なんでこんなことになってるのさ!

 

「ではまず私から行かせていただこう……己で己の記録を打ち破るというのも、武に生きる者の否定出来ぬ“(サガ)”……!」

 

 そして人の話を無視してさっさとブランコに座る変形ナースがおった。

 どこまでブランコ対決がしたいのですかあなたは。

 

「あ、ちなみにかずピー? 何回フライ勝負や?」

「一回だろ。真剣勝負に二度目はないってことで」

「ほー、なるほどなー。つまりあのナースな娘はいっちゃん最初に手の内さらすっちゅーわけやな」

「!?」

 

 星さん!? なんでそこで“やられた”って顔で俺見るの!? いや、いいんだからね!? 全力で跳べばそれでいいんだからね!? 遠慮することないんだよ!? わかってるよね!?

 あ、あぁああ……! なんか物凄い絶望を孕んだ顔でがたがた震え始めた……! しかもメンマメンマ呟き始めたし……ああああ涙滲んでるぅうーっ!!

 

「あ、あー……なぁ星? そもそもこれは遊びなんだから、純粋に楽しまないか? 俺も鍛錬を禁止されるととっても困るし……な、なぁ雛里? 雛里も普通にあわわって言ってたほうが落ち着くんだもんな?」

「い、いえ……ご主人様……あ、わ、わた……あっ、わたし……あぅ……」

「ねぇわざと!? わざと言ってるの!? 涙目で顔真っ赤にしてそれ続けられると誤解する人が、少なくとも二人は居るんですけど!?」

「す、すごい話術やなかずピー……! まさか言葉だけで女の娘ぉをあんあん言わせるやなんて……!」

「ベンハァーッ!!」

「ぶべぇっしぇ!!」

 

 遠慮無用で右のグーが走った。

 もうそれがオーバーマン騒動で殺されそうになった時の借りでいい。素直に殴らせてくれ。

 

「アホかお前はいやアホだなあぁアホだろこの阿呆!! 言葉だけで人がそんなことになるわけあるかぁっ!!」

「いやいやなにゆーとんねやかずピー。世の中に言葉責めって言葉がある時点で、そらもう確立されたジャンルでやな」

「……今はお前のタフさが心底恨めしいよこの野郎。あれか。もう氣を込めて全力で殴っていいのか。岩とか壊せるようになったけど、もう全力出していいのか。お前のタフさを信用していいのか」

「普通に死ぬからやめぇや!? ……へ? か、かずピー?」

「大丈夫。俺達……親友だろ? 俺……お前のこと信じてるぜ?」

「信頼の方向性全力で間違ぉとるゥウーッ!!」

 

 なんかもう未来がいっぱいいっぱいだ。

 そして友人の肩に手を置いて語る言葉の中ではとても素晴らしい台詞だったはずなのに、及川はとても嫌がっていた。そりゃ嫌がるか。

 でも騒ぐことでいろいろと冷静になれたのか、深呼吸をした星が───……ブランコ漕ぎ始めました。

 

「だからやめようって言ってるのに!」

「いや……いや主! ここで逃げてはメンマから逃げたのと同じ! ならば私は必ず勝って、メンマというものを謳い続けなければならぬのです!」

「そこまで使命感を働かせなくていいから! 好きなものが重荷になる瞬間って相当辛いもんだぞ!? やめよう!?」

「いくら主の願いでも、こればかりは───!」

「そっか……残念だ。大麻竹のい~ぃのが丁度食べごろになってたのにな。これで負けたら一生食べられないのか」

「すぐやめましょう」

「ワーオ!? ビタァって止まったで!?」

 

 うん止まった。大麻竹すげぇ。

 でもどうせ止まるんだったらもうちょっといい理由で止まりましょうね、星さん。

 

「なんだやめるのか。それで? めものことはどうなるんだ?」

「いやどんだけメモ欲しいのさ」

「いつでも書けていつでも消せる優れものだろう? 欲しいに決まっているじゃないか」

「あー……まあ、わかるけどさ」

 

 黒板じゃ、いくらミニサイズでも邪魔だし、ページ増やすと無駄に重いもんなぁ。

 

「及川、お前メモとシャーペン、結構持ってたよな」

「んお? おー、そらもちろん、いつでも女の子ぉの情報メモっておけるように、バッグにたっぷり収納してあんで~?」

「全部くれ」

「全部とな!?」

 

 うっとり笑顔で語っていた顔が驚愕に染まった上で変色した。

 だから、その顔怖いって。

 

「あー……うん、まあええけど。かずピーには貴重な画像データ、見せてもらったし。その他にも衣食住で世話なっとるしなぁ。あ、でももう使てるもんとかは堪忍したってや。ちゅうかジブンどんだけ俺からモノ奪うつもりや……もしやあれか? 取るもん取ったらもう要らんゆーてそこらにポイっと……ひどい! かずピーひどい! 所詮道具だけが目当てだったのね!」

「で、このシャーペンだけどな? 使い方はこう、ここを押して……」

「うわーめっちゃスルーしおるこの友人~」

「あのな、道具目当てだったらビールとかつまみとかメモとか取って捨てるだけだろ。衣食住と仕事の面倒を見る必要がどこにあるんだよ」

「うんわかってる。かずピーなんだかんだでやさしいもんなー♪ やなくて、ボケに対するツッコミをやな……スルーっていっちゃん虚しいやん……」

「じゃあ及川、ブランコしよう」

「それ結局スルーやない!?」

「いいからいいから」

 

 騒ぐ及川を押して、ブランコ対決を開始。

 もちろん賭けるものはなしで、純粋に距離を競うものだ。

 何かを賭けるのって確かに本気を出すにはいいかもだけど、それで何かを失ってちゃ寂しいと思うのだ。なので賭けは禁止。

 

「んっはははは! いっくでーっ!? とーう!」

 

 ブランコをたっぷりと漕いで勢いをつけた及川が、すぽーんとブランコからすっぽ抜けるように跳ぶ。

 高さも丁度いい具合であり、その距離は……星の印に一歩及ばず程度の位置に。

 

「!?」

 

 これには星さん大慌て。

 武を知らぬ者に勝負で負けるわけにはと再度の跳躍を申し出て、再び跳んで、上手く飛べなくて。

 

「ふむ、なるほど。原理は構築できた。次は私が出よう」

 

 慌てる星を押し退けて、三番手には冥琳が立った。

 その顔は……どこか楽しそうだ。

 

「雛里よ。いつかの武道会では負けたが、今回は勝たせてもらうぞ」

 

 それどころか雛里を見て、そんなことまで言い出す……もしかして結構悔しかったりしたのだろうか。

 いや、そりゃ悔しいか。

 でも今はそれよりも、子供冥琳の方が前に出ている感じだ。

 凛々しいといういつもの表情よりも、無邪気に近い表情だ。

 そうしてブランコを漕ぎ始めた彼女はチラリチラチラと樹の位置や地面を見下ろしたりして何かを測って……

 

「……! ここっ!」

 

 シュパンッ……と綺麗に跳んだ。

 そしてその距離が、星よりも先、という結果に……!

 

「……! ……!!」

 

 その瞬間を見届けた俺が、ソッと趙子龍さんを見た時。

 彼女はとても荒い呼吸で、何度も何度も安堵の溜め……た、溜めてないな。ともかく安堵の息を吐いていた。

 賭けなくてよかったね……ほんと……。

 

「うん、いい距離だ。さあ雛里、あとはお前だけだぞ。ああ、ちなみに私が勝ったならば、北郷が使っていためもは私がもらう」

「!」

「え? いや、そんなの新品を使えば───」

「わぁ~かっとらんなぁかずピー。ん~なんやから鈍感~とか言われんねやぞ?」

「え……お前はわかるのか?」

「おー、あったり前やぁん! 伊達にいろんな子と付き合ぉてフラッ……フラレ…………うっ……ぐすっ……」

「自分から言い出して泣くなよもう!」

「うっさいわぃ! 鈍感のくせして成功しとるかずピーに、俺の気持ちなんかわかるもんかい!」

「だからそれ以前にメモのことがわからないんだって!」

「かーっ! んなもんちぃと考えたらわかることやろがぁ!」

「あー……うん、鈍感なのは自覚してる。すまん。……ところでそれは、わかるとフラレるものなのか?」

「ゲブゥ!?」

 

 何気なく放った言葉に、何故か血でも吐くような動作でビクゥと震える及川。

 ……少しののちにがくりと項垂れて、「成功するやつに、一歩足りんやつの気持ちなんぞよーわかられへん……」とか言い出した。

 

「…………今の跳び方、重心を置く位置、ぶらんこの揺れ幅……座る位置……あ、あっ……あ……」

「………」

 

 もうツッコまない。

 雛里さん、もう跳んじゃってください。

 そして勝利して、存分にあわわを言ってください。

 

「……主」

「星? どうかした?」

「い、今、そのー……大麻竹メンマをくれたなら、もしや私の中の隠されたぶらんこ力が解放されて、より遠くに飛べるやも……!」

「まず深呼吸して落ち着こうね子龍さん」

 

 俺も負けず嫌いだけど、やっぱり星には負けるよ。

 でもどうしてだろう……彼女なら本当に、メンマを食べればパワーアップする気がするのは。

 

「ところで主」

「ああ」

「ぶらんこに乗る雛里……」

「ああ」

「………ありですな」

「ありだな」

「ありやね」

 

 及川も合わせて三人、腕を組んでうんうんと頷いた。

 そんな意味のない行動をしている内に、雛里も冥琳と同じく樹を見て地面を見て、遠くを見て、ここぞと思ったところあたりで被っていた帽子をひょいと俺に投げ渡し……ついに、シュパンと跳んでみせた。

 座った状態、というよりは体を寝かせた状態に近い。

 まるで背で風を受け止めるかのような姿勢で跳び、降下が始まると上半身を起こして着地の姿勢に。

 やがて彼女は

 

「ふきゅっ!?」

『キャーッ!?』

 

 ……地面に激突した。

 俺と及川、思わず絶叫。

 

「ホワァアワワ大丈夫かほーちゃん! 今顔面からいっとったやろ!」

「雛里───ってストップ及川!」

「へっ!? なんっ───おおそうやな! 台無しにするところやった!」

 

 派手にコケた雛里だったが、着地した位置にはきちんと自分でぞりぞりと印をつけていた。

 そうしてから立ち上がると、……うん、まあ、てとてと歩いてきて俺にしがみついてお泣きあそばれた。

 

「己が身を省みない特攻か……そこまでしてこそ勝利できるというもの。この趙子龍、遊びという言葉で本気さを忘れていたか……」

「いや、随分と本気だった気がするけど」

 

 でも、確かに綺麗な着地を望んではこの距離は出せなかった筈だ。

 その距離……派手にコケただけはあって、冥琳よりも遠くに跳んだのだ。

 

「あ~、こらぁあれやな、体の軽さも手伝って、ぽーんと」

「そか? 勢いがつけば、重いほうが飛ぶ気がしないか?」

「ほう、北郷。誰が重いって?」

「はっはっは、主よ。……少々話したいことが」

「エ? あ、いやっ! 重いっていうのは雛里に比べたらって意味であってだな!」

「なはは、アホやなぁかずピーは。そーゆーことはわかってても言うことやあら、……へ、ん?」

「そーかそーか、お主も私が重いと思っていたか。ならばともに来るがよかろう。友の危機に傍に居るのもまた、友の務めというものだろう」

「えぇええええ!? いやいやいや俺遠慮しときますわ! ちゅうか俺別に思ってへんよ!? ほんまやって! 言葉のあやってやつやもん!」

「ほう。ならば私と趙雲と、どちらが重そうに見える」

「そら周さんやな。背もおっきいし胸もおっきいし───っていやぁあああーっ!? なんで!? なんで襟掴んで引きずるん!?」

「大変正直な男だ。こうまで遠慮無用にものを言われたのは雪蓮と北郷以来だ」

「ああっ! これこそまさに正直者はバカをみるっちゅーやつやなっ! かずピー助けてぇえ!!」

「一緒に引きずられてる俺になにをどう助けろっていうんだお前は!」

 

 冥琳に引きずられる及川と、星に引きずられる俺。

 雛里に助けを求めても、泣いて俺にしがみつくばかりであり、むしろ一緒に引きずられるカタチになっている。そして星さん、平気な顔で人間二人を片手で引きずらないでいただきたい。

 ああっ、腕力っていうより技術だって思ってた星も、やっぱりこの世界の女性だなぁ! 腕力すごいったらないよもう!

 

「あ、あのー、星? 話をするだけなら、別に引きずる必要はないんじゃないかなー、なんて」

「はっはっは、なにを仰る。聞けば主は現在仕事が無くて時間が空いているという。こんな時こそ普段は中々時間が合わない我らとともに在る時間を過ごすべきだろう」

「いやあの、むしろ何処に連れて行く気なのかを訊いてるんだけどー……」

「無論、蜀の屋敷だ」

「なに? それは許さんぞ趙雲。北郷は呉の屋敷へと連れてゆく。代わりにこれをやるから諦めろ」

「あれ? なんや俺、今コレ扱いされんかった?」

「いや、悪いがこれは譲れないな。なにせ距離では雛里が勝ったのだ。ここは蜀へ連れていくべきだろう」

「賭けは無しの方向で話はついていた筈だ。それを勝ったからと急に引き合いに出すのは少々女々しいんじゃないか?」

「ほほーう……? ならば今度は主との時間を賭けて、正々堂々と勝負といこうか」

「面白い。武でもなく知でもなく、単純な跳び合いで雌雄を決するというのか。断っておくが、私が知しか能のない者だと思ったら大間違いだぞ」

「ふふっ……そちらこそ。この趙子龍、武だけと高を括られては困る」

「ほう……?」

「ならば───」

『相手にとって不足無し!』

 

 クワッと睨み合って、二人が今来た道を急に戻り始めた。

 瞬間、掴まれたままの俺と及川は急に襟を捻られるハメになり、ゲホリゴホリと悶絶しながら元の場所へ。

 それからムキになって、ブランコを漕ぐ二人が通りすがりの皆々様に目撃されるに到り、暇がある将の皆様も参加することになって……


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