真・恋姫†無双 魏伝アフター   作:凍傷

46 / 454
16:呉/えほんのきずな①

37/えほんのきずな

 

 ……。

 

「うう……」

 

 ぎっくり腰とまではいかないものの、強烈な痛みを抱えたままに進むのはなかなか辛かった。

 老人が多少の段差で腰を庇う理由がわかったような……。

 

「たはは……朱里に“もしも”の話をしたけど……どの国に下りようが、やっぱり俺の在り方なんて変わらなかったんじゃないかな……」

 

 だって、どこに居ようと結局は北郷一刀だ。

 相手の受け取りかたもあるだろうけど、下りたのが俺なら、やっぱり警備隊長をやりつつみんなと仲良くなるくらいしか想像がつかない。

 ……や、仲良くなるっていっても、決してその、ああいったことを想像しているわけでは───って消えろ消えろ! イメージが得意になったからって沸いてこないでくれ桃色妄想っ!

 

「っと、冥琳は……」

 

 痛む腰を庇いながら周囲を見渡す。

 思えば小川小川~としょっちゅうここにはお世話になっているわりに、探検などはしたことがなかったりする。

 いっつも森を抜けると丁度見える滝と岩と小川を眺めつつ、汗を流したり頭を冷やしたりと……頭を冷やす理由は察してくれるとありがたい。桃色妄想を払拭したばかりなのだ。

 

「……居ない?」

 

 ハテ。たしかに腰痛の所為で、登るまでに時間はかかったものの……見渡しても居ないなんて、いったいどこに……。

 

(………)

 

 ───鳥が(さえず)る、空気のいい景色を見渡してみる……けど、それらしき人物は見当たらない。

 耳を澄ましてみても、聞こえてくるのは小川の流れる音と、小さな滝からこぼれる水が、水を打つ音ばかり。

 注意して見渡してみても、特に目立つものは───……え?

 

「……? なんの音……?」

 

 滝の音に混じり、嫌な音が聞こえた気がした。

 それはまるで、重病患者が出したくもない咳を、無理矢理絞り出させられているような、苦しげな……ッ!?

 

「冥琳!!」

 

 注意深く眺めたなんて、どこがだ。

 景色の先、木と大きめの岩とが並ぶその場所に、一瞬だが綺麗な黒髪が見えた。

 地を蹴り、今聞こえた音が冥琳が出した音かなんて確信も持てないのに走り、その途中でどうしてか冥琳に「来るな」と言われるのも構わず近寄り……───

 

  ───俺は、赤を見た。

 

「……冥琳っ!? それっ……」

 

 屈み、咳き込んでいたのだろう。

 自嘲めいた笑みを見せながら俺を見上げる冥琳の手には、赤い液体がべっとりと……

 

「血を、吐いて……!?」

 

 驚くよりすることがある。咄嗟に駆け出そうとしたのは、自分にしてみればいい判断だったはずだ。

 すぐに誰か、信頼のおける医者───華佗を呼ぼう。そう思ったのに、駆け出そうとした俺の手が、赤に染まる手で掴まれた。

 

「……め、冥琳?」

「すまないな、北郷……悪いが、皆に知られるわけにはいかない」

「なにっ……なに言ってるんだよっ! 血を吐くなんて普通じゃないだろ!? すぐに華佗に見てもらわないとっ!」

「……見てもらわなかった、とでも思うか? “ようやくこれから”という時だというのに、ほったらかしにするとでも思うか」

「───」

 

 自嘲の笑みは消えない。そして、俺の中の“駆け出そうとした自分”が急速に冷えていってしまうのが、自分でもわかった。

 

「今まで保ったのが不思議なくらい、だそうだ。赤壁の頃から違和感を感じていたが、終戦し……ああ、そうだな。北郷、お前が消えたという報せを受けた夜、苦痛は消えた」

「え……?」

 

 俺が消えてから? なにかの偶然ってこともあるんだろうけど、たとえば。そう、たとえば……俺が存在することで捻じ曲がった正史があるとして、すでに外史めいた軌道を進む今がある。

 この世界では雪蓮……孫策が死ぬことも、夏侯淵が死ぬことも、曹操が敗北することもなかった。

 同じく病で倒れるはずの周公瑾は健在でいて、でも……もしそれが、俺が係わったことで一時的に捻じ曲がっていたものだとするのなら───

 

「………あ」

 

 これもまたたとえば。

 俺が係わることで、死ななかった命があるなら……逆に、係わったことで死んでしまう命もあるのでは……?

 孫策が死ななかったために散る兵が居る、夏侯淵が死ななかったために散る兵が居る、曹操が敗北しなかったために……つまり、そういうこと。

 辻褄合わせのいたちごっこをするわけじゃなく、たしかにそういった事実が存在するんだ。

 そう、散る兵が居るのなら、孫策が、夏侯淵が生きていたおかげで生きていられる兵も居る。

 俺がこの世界から消えることで、捻じ曲がった辻褄合わせをする必要が無くなった途端、冥琳の病気が治ったっていうのなら、そこには少なからず歴史改変の影響が出ているのだろう。

 

「……もしかして、冥琳は自分の病気に俺が関係してるの、知ってたのか?」

 

 だから聞いてみる。思い出したのは、必要だからといっても急に言われた言葉。

 やるべきことを成したのなら出ていくべきだと言われ……思えばあそこには多少なりの焦りが見えた気がした。

 そしてさっき感じた違和感の正体は……そっか、なるほど。

 

「知ってたから、原因かもしれない俺を遠ざけようとしてたんじゃないのか?」

 

 思い当たったのはそんなこと。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。曖昧すぎることだけど、冥琳はもはや関係もなしといったふうに溜め息を吐いた。

 

「そうであろうとそうでなかろうと、もはや関係のないことだ、北郷。人はいずれ死ぬ。この病がたとえお前に影響していることだろうが、私がお前を恨む道理はない。感謝さえしているくらいだ」

 

 岩に背を預けた冥琳は、もう落ち着いたのか、咳をすることもなく言葉を吐く。

 

「お前が天より大陸に戻った途端、少しずつ蝕まれていったのは事実と受け取るべきなのだろう。一年という時間が多少の回復を見せてくれたのだろうが、完治には至らなかったらしい」

「冥琳……」

「そんな顔をするな。むしろ、逆に解けない難問に向かうようで楽しく思う自分さえ居る。何故、お前が消えるだけで癒えたのか……それを考えながら死んでいくのも、悪くない」

「───……」

 

 悪くないなんて、そんなことない。悪いに……悪いに決まってる。

 せっかく平和の只中に居て、ようやく騒ぎも治まってきたっていうのに……報告に騒ぎのことがない、って喜んでくれていたのに、病気って形で終わるなんて……そんなのあんまりじゃないか。

 どういうことなんだ、これ。俺が消えると治まる病なんて、どんな性質の悪い冗談だ。

 “俺”っていう存在の所為で歴史に亀裂が走った? 誰かが生きる代わりに誰かが死ななきゃいけなくなった? それとも……変わってしまった歴史の中に“俺”が残るためには、他の誰かが居なくなる必要が……?

 

「………」

 

 嫌な予感っていうのは当たるものだ。でも、こればっかりは当たってほしくない。

 だって、そうなればきっと冥琳は助からない。あの日、消えたくないと思っても華琳の前から消えるしかなかった俺と同じように。

 ……この世界が続くには、“枠”が必要なのか? 誰かが増えれば誰かが消えるなんて、そんな枠が。

 普通なら居るはずのない俺が、この世界に下りたから、冥琳に限ったことじゃなく、他の誰かが……

 

(それって……)

 

 考えてみたらゾッとした。だって、もしかしたらそれは華琳かもしれなかったんだ。華琳じゃなくても、魏の誰かかもしれなかった。……だからって、魏の人じゃなくてよかった、なんて単純に考えられるほど、呉での暮らしに嫌悪を抱いたことなんてない。

 仮説にこんなに怯えてどうするんだって思う……思うけど、理屈じゃない。目の前で病に侵されている人が居て、その人は俺の存在の有無で苦しんでいる。それは……たとえ仮説だったとしても、心が凍るくらいに恐ろしいことだった。

 

「華佗に……自分を呼んだのは冥琳だ、って聞いた。その意味がこれで、華佗でも治せなかった……のか?」

「ああ……そういうことらしい。すでに思い付く限りのことはした。病であることは間違いがないのだが、華佗でも治せないそうだ……病の気を辿ってみたところで、病の底……気の淀みが見切れないと言っていた。似たような事例など、北郷。お前の時以来だと聞いたぞ」

「そんな……」

 

 たしかに“周瑜”は病死するって歴史がある。でもそれは、俺が係わってどうこうって話であるはずがない。

 助けようと思えば助けられたのが今までで、その度に俺は“存在”を削りながら生きてきた。

 でも、じゃあもし、それが“存在”を削る程度では救えないものだとしたら? たとえば……俺が存在を削ることで、この世界の歴史が完全に“正史”の枠から外れたために、“冥琳が死んで当然”という世界になってしまっているのなら?

 ……救えるのは以前俺が下りた世界までで、もう一度こうして下りたこの世界は、すでに完全に“世界”として確立されていて……存在を削るくらいじゃあ助けられるものがなにもなかったら?

 

(……あ)

 

 なにか、繋がった気がした。

 俺は歴史を知っていたから自分の存在を削ることで歴史を捻じ曲げてこれた。

 でも、この歴史はすでに華琳が天下を治めた新たな歴史。俺が歴史の先で知る三国志にはない世界だ。

 だからもう、未来の知識を活かすことで誰かを救うことなんて出来ないし、それによって俺の“存在”が欠けることもない。

 その代わり……死が誰かを迎えにきた時、それはまるでそうなるのが当然のようにその者を殺す。俺が、どれだけ未来における知識を駆使してもだ。

 だから華佗でも救えない。祭さんが助かったのはあくまで世界が捻じ曲がり切る前であったからであって、今こうして未来が読めない世界に至った時点で、重い病を患っている冥琳は───きっと、助からない。

 

(……な、なんだ、それ……はは……)

 

 乾いた笑いがこぼれそうになるのを、なんとか留める。

 死ぬ? 死ぬだって? そんなに簡単にか?

 死ぬのがもう定められたことだから、医者が手を打とうとしても助けられないって?

 

「……冥り───っ……え?」

 

 ……ちょっと待て。救えない? 未来の知識をどれだけ駆使しようと?

 

「なぁ、冥琳。華佗は? 諦めてたか?」

「……? いや……可能性は低いだろうが、最後まで諦めるつもりはないと……言っていたな」

「そっか」

 

 それだけ聞ければ十分だ。華佗は俺の力が必要になるかもしれないと言った。

 氣を高めろと。気配をべつの何かに溶け込ませることの出来る自分に至れと。

 ……そこに、治療の鍵があるんじゃないか?

 

「冥琳、華佗のところへ行こう」

「なに? ……無駄だ、と言ったはずだが?」

「ちょっと考えがある。無駄がどうした、そんなの歴史をもっと捻じ曲げてでも変えてやる」

「…………」

 

 きょとんとした顔で見られた。次の瞬間には咳き込む冥琳だが、どれだけ促しても動こうとしてくれない。まるで自分の死をすでに受け入れているかのように。

 ……くそっ、どうしてこの時代の人はこうなんだ。死ぬことは天命だとか仕方のないことだとか───どうして最後まで、無様だろうが生にしがみつこうとしないんだよっ……!

 

「周々! 善々! 言葉が通じるかどうかじゃなくて直感で受け取ってくれ! 今すぐ医者を───華佗を連れてきてくれ!!」

 

 滝の下へと声を張り上げるが……果たして、届いたかどうか。

 

「やめろ北郷、私は無様にもがくつもりなど───」

「だめだ、もがいてもらう。無様でも生きて、死ぬならおばあちゃんになってからゆっくり、娘にでも孫にでも見守られながら逝ってくれ。じゃなきゃ───俺が嫌だっ!」

「……な……っ!?」

 

 そうだ、相手が万策尽きて死を受け入れようとしてたって知るもんか。

 やれることがあるかもしれないならなんでもやる。やれないことがあるなら、やれるようになれるまで頑張ってやる。

 だって───そのために、今まで自分を鍛えてきたんだから。

 

「……北郷。無駄な努力ほど見苦しいものはない。お前も魏で軍師まがいのことをしていたのならわかるだろう」

「わからないよ……わかるわけないだろ、そんなの。努力に無駄もなにもあるもんか。そんなものはないって信じたいから、みんな努力するんだ。出来ないから努力する。やれるようになるために努力する。出来ないことがあるなら、出来るようになるまで努力すればいい。時間が無くたって、最後まで諦めないことが努力だろ……! 無駄な努力なんて、ない……あるもんか……! 死んでほしくないって意思が固まってるなら……死なせないようにする以外のなにが努力だよ!!」

「…………北郷……」

 

 ……決めろ、覚悟を。

 確実な答えはもう出ている。“絶対に失敗できない”。そして、“絶対に簡単にはいかない”。

 最悪、冗談抜きで死ぬ可能性だってある。あるけど……やるって決めたならな、一刀。怯える必要も、躊躇する必要もないんだ。ただ真っ直ぐに、自分のやりたいことをやってみろ。

 その果てが死であったなら、幽霊になってでも魏のみんなに謝りにいけ。

 

(魏に生き魏に死ぬって、誓ったくせに……)

 

 本当に、俺ってやつは優柔不断の八方美人だ。どれか一つって選択肢をいつもいつも選べないでいる。

 でも……はは、仕方ない、よな。そうしたいって、そうしてやりたいって思っちゃったんだから。

 

「冥琳。今からやることに、あまり口を出さないでくれると嬉しい。俺が勝手にやることだし、最悪の場合は本当に嫌な思いをさせると思う。だから、全部終わって全部上手くいったら、もう本当に、引っ叩いたりしてもいいから」

「……待て。本当に、お前はなにをする気だ……」

「治すんだ。未来の知識じゃなくて、“この世界で学んだ知識”で」

 

 ……未来の知識を振り絞っても治せない。もはやそういった影響力は消えてしまっている。

 だったら、この世界で得た知識、経験の全てを以って、冥琳を治す。

 出来る保証なんて何処にもなく、本当に覚えたばかりで曖昧な方法での治療……いや、もはや治療と呼べるのかもわからない。

 だから、全ては華佗が来てからで決まる。華佗が、もし“それでいい”と頷いてくれるなら───!

 

「頼むぞ、周々、善々……! 早く華佗を───」

「───連れてきたぞ」

「へ?」

 

 まだかまだかと待っていると、誰よりも早く……周々や善々よりも早く、小脇に男を抱えた思春が……駆け込む動作も見せず、立っていた。

 速ッ!! なんて速い! ───なんて驚いている暇はないっ!

 

「華佗!」

「あー……北郷? 俺に用か? 何も説明されないうちから無理矢理連れてこられたんだが……」

「再会の挨拶よりこっちだ! 冥琳が───!」

「───」

 

 小脇から解放された華佗が、岩に背を預けて呼吸の安定に集中している冥琳を見る。

 その目は、冥琳の言う通り……助けることの出来ない無力感を抱いており、ただ俯き、首を左右に振るだけだった。

 

「悪いが北郷、今のままでは俺に彼女は救えない。無力を噛み締めることしか出来ない俺は、もはや五斗米道を名乗る資格さえ……くっ!!」

「いや、“くっ!”じゃなくて! なぁ華佗! ひとつ訊きたいことがあるんだっ!」

 

 いっそ、胸倉を掴むくらいの勢いで顔を近づけ、口早に言う。

 

「な、なんだ……? 俺に訊きたいこと……?」

「───華佗、お前はたしか、体に宿る病魔をその目で見分けて、危険なものだけを鍼で突くことで消していく……んだったよな!?」

「ああ。我が五斗米道は氣の流れの中に蔓延る病魔を的確に突き、淀みを無くすことで人々を救う業。だが、しかし……! お前の病魔と周瑜の病魔、これを見分けることが俺には出来なかった……! それは俺がまだまだ未熟者である証拠! くああっ……! このままではこの技を授けてくれた師匠に顔向けすることもできん!!」

「わざわざ頭抱えて叫ばなくていいからっ! とにかくっ、病魔が何処に居るのかが判断できれば、助けることが出来るんだろっ!?」

「あ、ああ……それはそうだが……今の俺には見つけることが出来なかった。それは俺が未熟───」

「それはいいからっ!! ……ってごめん、もうひとつ訊きたい! 華佗がその目で見る病魔っていうのはどんな形をしてるんだ!?」

「形……形というよりは気脈に詰まった黒いモヤのようなものだ。それは体の中に幾つも存在するが、全ての病魔が悪というわけじゃない。善い方向に作用する病魔も居るからな。それを消してしまっては、逆に体調を崩すことに繋がる」

「モヤ……モヤだな!? ───よし!」

 

 ヒントは得た。得たら、待ってなんかいられない。

 冥琳の傍に座り、彼女の手を握ると───早朝、明命に教えてもらったばかりの方法で、氣を解放する。

 

「北郷っ……? なにを───」

「病人は黙ってるっ! ───華佗! ちょっと無茶をする! けど、意地でも成功させてみせるから、俺が指示した場所に鍼を落としてくれ!」

「なんだって……? まさか北郷、お前はすでに氣の変換を会得して───!? そうか! ならばいけるかもしれない!」

「いやごめん! 実は今朝教わったばっかりだ!」

「なっ……!? なにぃぃいーっ!? い、いや……だがそれでもやろうとするお前の意思、俺は覚悟として受け取ろう! 人を救おうとする男の覚悟を止める理由が、俺には存在しない!」

 

 正直に言ってみたら、しこたま驚かれた。

 絶対量の拡張はやっていたけど、自分の氣をべつの何かに溶け込ませる業は、本当に今朝教わったばかりだ。

 だがしかしだ。血を見てしまったからには、彼女がいつ力尽きてしまうのか気が気ではなく、一週間氣を鍛えてから~とかそういった悠長なことは言ってられそうもなかった。

 

「華佗……! なにを申し合わせたように熱く語ろうとしているのかはわからんが、止められるなら止めろ!」

「だめだ。北郷はもう覚悟を決めている。医術を学んだ者としては止めるべき行為だろうが、この俺も医者である以前に───一人の男! ……熱き男の魂は、たとえ病魔であろうが止められはしないっ!!」

 

 俺の覚悟に華佗が共鳴するように叫び、その肩越しに見える景色が赤く燃えてゆく! そうだ……やるって決めたなら、躊躇するだけ自分の覚悟にも失礼なんだ!

 

「な、なにを言っているんだこの男は……! 思春、お前からもなにか───」

「……今だけは北郷と同意見です。私は、貴女が死ぬ事実を呉にとっての善として受け取れない」

「っ……」

 

 思えば、ひどい“勝手”の押し付けだ。

 死んでほしくないから死なせない……本人が諦めているというのに無理矢理生かそうとすることに善はあるのだろうか。

 ……いや、たとえなくても構わない。今だけは本当に、自分勝手でもいいから“生きてほしい”って心から願える。

 願えるなら───人の命を救おうとしているのなら───!


 ▲ページの一番上に飛ぶ