61/病み上がりの朝に
「ん、んうっ、んんぅうぃい~っ……!!」
小鳥の囀りに目を覚ました朝。
ぐぅっと伸びをして辺りを見渡してみても、誰も居ないこの部屋。
思春はどうしたのかなと思考を回転させてみるが、おそらく風邪が伝染るといけないからと、別の部屋に案内されたんだろう。
「んん、と」
拳を作ったり開いたりをしてみる。
……異常無し。
動けなかった分、多少の鈍さは仕方ないとはいえ、体はすこぶる健康と見た。
「よしっ! 治った!」
我、完治せり!(多分)
「うん、なんだか腹が異様に減ってるし、体も少し重いけど、頭痛とかはないし……うんうん、よし、まずは軽く運動をして血流をよくしてから、水を貰いにいこう」
そうと決まれば行動は速い。
まずは寝台の上で仰向けの状態で両手両足を天井へ向けて伸ばし、その状態でバタバタと両手両足を振るうことで、身体の先に溜まりがちな血液を循環させる。
そうしてから寝台を下りると足踏み運動を開始。
付け根と平行か、それ以上に膝を持ち上げ、さらに血液を循環。
次いで始める柔軟体操でそれらを体全体へと流して。
消化吸収を良くするために、軽く胃袋を刺激させる運動もして、と。
さあ、これであとは水と食事を取るだけだ。
「今日の朝は何かなぁ」
わくわくしながら部屋を出る。
その頃には体の重さも無くなり、普通にてこてこと歩ける自分へと復活を遂げていた。
……。
……うん。
「はぁ~、満足~♪ やっぱり味がわかるって大事だよなぁ」
苛め抜いてきた体が欲したからか、異常とも言えるくらいの量を食べた。
咀嚼し、味わい、嚥下する。
食事が喉を通る感触がひどく懐かしく感じて、それはもうムッシャムッシャと頂いた。
なにやら厨房に居た侍女さんがやたらと驚いてたけど、何があったのかは教えてくれなかった。というか、「もう、良くなられたのですか?」「うん、もうすっかり」……会話がこれだけで終わってしまったのだ。
うーん、いったいなにが……?
「考えても仕方ないか。よし、胃袋を軽く刺激してやってから、桃香に復帰報告をしにいこう」
腹も膨れたところで、中庭で陽光を浴びながら、改めて軽い運動を開始した。
……その時の俺はまだ知らなかったんだ。
今がいったいいつで、自分がどれだけ風邪で寝込んでいたのかを……。
……。
…………。
「………」
おかしい。
おかしいよな、これ。
「なぁ璃々ちゃん? どうしてみんな、城に居ないんだ?」
東屋の椅子に座りながら、退屈そうに足をぷらぷら揺らしていた璃々ちゃんを発見、お願いされたので俺も座り、足の上に乗ってきた璃々ちゃんを撫でながらの言葉。
対する璃々ちゃんは首をこてりと傾げたあと、
「えーっと、がっこおが出来たから、見に行くって言ってたよー?」
「へぇ~……そっか、学校が……学校!?」
え……ええぇ!? 学校が!?
あれちょっと待て!? 今日何月何日だ!? ───や、それはわかるわけないな、うん。太陽光充電をした携帯電話でも、もう正確な時間も日時もわからなくなってしまっている。
しかしだ、ここで驚くよりも、いっそ学校へ───……行こうとしたんだが、璃々ちゃんがきゅっと俺の服を掴んで、寂しそうな顔をするわけで。
泣く子には勝てません……。
「黄忠さんが戻るまで、ここで遊んで待ってようか……」
「うんっ、あのね、璃々ねー♪」
途端に笑顔になるんだから、女の子ってこわい。
キミはきっと、立派な女性になれるよ……。
(けど、そっか。学校が出来たのか)
何日寝ていたのかは知らない。
見ていた夢が幸せすぎて、潜在意識が現実に戻ってきたくなかったのか、ただ単に疲れすぎていた体がこれを機に思い切り休んだだけなのか。
事実として体は軽い。起きた時に体が鈍るくらいは寝てたんだろうが、頭も体も目覚めてからは軽すぎるくらいだ。
……いつの間に学校が出来たのかは、あとで誰かに訊くとしよう。
今はもう少しの体のならしも兼ねて、璃々ちゃんと遊ぶことに専念する。
「ねぇ御遣いさまー? がっこおってなんなの?」
「学校? んー……いろいろなことを学ぶ場所……かな。自分の知らないことを、先生や同じ生徒から学んでいく場所、だと思う」
「?」
突然の質問に、答えてみれば首を傾げる璃々ちゃん。
そんな仕草に苦笑をこぼし、「えぇと」と受け取りやすい答えを頭の中から探す。
そうして軽く説明しながらも、鈴々にするみたいに高い高いをしたり肩車をしたり、その状態のまま走り回ったり木に登ってみたり。
その木の上に座りながら日本の御伽噺を聞かせてあげたり。
快晴の空の下、しばらくそうして平和な時間を堪能していた。
……。
……まあもっとも、そんな時間がそう長く続くはずもなく。
「一刀殿! いったい何を考えておいでか! 病み上がりだというのにあちらこちらと走り回るなど!」
「あ、や、やー……これにはいろいろと事情がー……」
「事情云々以前の問題ですっ!」
「うひぃっ!? ご、ごめんなさい……」
学校の見学もそこそこに、様子を見に戻ってきてくれた愛紗にこってりと絞られていた。
部屋に行ってみれば寝込んでいた俺の姿はなく、探し回ってみれば中庭で璃々ちゃんに肩車をしながら走り回るサワヤカボーイ。
うん、逆の立場だったとしても、それは呆れるか怒る。
けど、逆の立場だったとしても、俺にはこれほどまでの迫力は出せません。
……ちなみに。璃々ちゃんは先に逃がした。
中庭の中心で正座をする俺と違い、璃々ちゃんは東屋の椅子で俺の生き様を───
「聞いているんですかっ!?」
「はいぃっ!!」
───見ないでください、お願いします。
もう怒鳴られるたびに「ヒィ」とか「ごめんなさい」とか言っている俺を、璃々ちゃんは終始心配そうな顔で眺めていた。
楽しそうに、じゃないところに彼女の暖かさを知った、そんな晴れた日のことだった。
……。
そんなこんなで説教も終わり、こほんと咳払いをひとつ、俺と対面するように座った愛紗に、学校のことを持ち出してみる。
俺がどれくらい寝てたのかは、この際後回しか忘れてしまったほうがいいような気がしてきたから。
「ええ、学校は無事完成しました。先ほど拝見してきたところです。……その後、心配で戻ってみれば肝心の人物が部屋に居なかったわけですが」
「うぐ……」
ジトリと睨まれて、思わず声を詰まらせる。
しかし釘を刺したかっただけのようで、もう一度咳払いをすると、苦笑をもらしながらも学校の話をしてくれる。
病み上がりなのだからと部屋に戻るように言われたが、せっかくの晴れだからここがいいって言葉に頷きながら。
「上手く回転しそう?」
「物珍しさからでしょう。民も集まり、体験してみたいと進言する者も少しずつですが集まっています」
「そっか。じゃあその体験入学で、どれだけ意欲を掻き立てられるか……だね」
恐らくそれが一番難しいんだろうけど。
小さく呟く俺に、愛紗は「では」と唱える。
「何か工夫をしてみては?」
「工夫?」
「はい。一度目は“これは楽しいものだ”と思わせるもので固めてみるなどして」
「ん……ちょっと難しいかな。それをすると、二度目からが途端に辛くなる。かといって最初から押し付けるようにすると、二度目は来なくなる」
体験で終わってしまいそうだ。
だったらやっぱり段階を経て難しくするしかないわけで……あれ? じゃあ結局工夫は必要になってくるじゃないか。
「えと、ごめん。目は覚めてるんだけど、上手く頭が働いてくれない。……うん、愛紗の言うように最初は楽しいと思わせるものでいいと思う。二度目はそれから少しだけ難しくしていけば……───そうなると“楽しい”を維持できるかが一番難しそうだね」
「ええ、まあその、勉学に楽しさを混ぜるのはなかなかに難しいかと」
「一番怖いのが、教師が突っ走りすぎることで……後になって、“この先生嫌だ、あっちの先生がいい”なんて言われたら、軽く落ち込むよ……」
「……軽く、で済めばいいですが」
「だよねぇ……」
朱里や雛里が教師をしている場面を思い浮かべ、“別の先生がいい”と子供に言われた瞬間を連想してみる。
……落ち込む姿が、想像だというのに鮮明に描かれた。
だめだな、うん。立ち直るのに時間がかかりそうだ。
「よし、ここでこうして話してても思考がぐるぐる空回りするだけだし、やってみないとなんとも言えないよな。まずは体験入学生を迎えて、やってみることからだ」
「とはいえ、今日明日にでも即座に開始するわけでもありません。───一刀殿? 知識を拝借することにはなりますが、貴方には準備の間、大事をとって休んでもらいます」
「え? でも俺」
「問答無用です」
「ア……ハイ……」
有無をも言わせぬ眼光が俺の視線と交差した刹那、反論は不可能になっていた。
仕方もなしに立ち上がり、璃々ちゃんに手を振りながら部屋へと向かう。
大丈夫って言っても付き添うのをやめない愛紗に肩を貸され、同じく戻ってきていたのだろう、宛がわれた俺の部屋の前でおろおろする桃香や鈴々に、物凄く心配されることになる。
……うん、肩を貸してもらっている時点で重症と見られ、「寝てなきゃだめだよー!」とか「大人しくしてないとだめなのだー!」とか散々怒られて、
「いやあの……俺、普通に歩けるし───」
『病人は黙って(るのーっ!)(いてください!)(るのだー!)』
「……ハ、ハイ……ゴメンナサイ……」
口出ししようものなら、やっぱりクワッと怒られる始末……どうやら病み上がりの人に人権は存在してくれないらしい。
心配してくれるのは嬉しいけど、本当に歩けるんだけどなぁ……。
62/迎えた朝、勉学の日々
あれから数日。
“初めての授業”に向けての準備は細々と進められていき、現在。
挑戦して作ったチョークや黒板は思いのほか綺麗に仕上がり、出来も上々。
上々っていうのはあくまでこの時代での意味であり、天でいうチョークのように綺麗ではない。
黒板に走らせてみれば、きちんと引ける白線に安堵する……も、力を込めすぎると軽くポッキリいってしまうモロさ。
改良の余地ありだ。
魏に戻ったら、真桜と一緒に煮詰めてみよう。
「え、え……えーと、はい。みみみ、みなさん、おはようございます」
『おはよーございまーす!』
「あーっ、あいつたまに、まちをうろうろしてるやつだーっ!」
「あのにーちゃんが“みつかいさま”だったんだー」
……で、俺が今何をしているのかといえば。
とうとう来てしまった初授業って三文字と、正々堂々試合開始をしたところだったりするのだ。
予想以上に集まってくれた子供たちと、それに付き添い訪れた親。
仕事に出ている人が大半なのか、親とおぼしき人たちの数は少ないが、それでも教室の椅子を軽く埋めてくれるほどには集まってくれていた。
…………1クラスの椅子の数は、多いものじゃないけどさ。
「にーちゃんにーちゃん、あそぼー? じゅぎょーなんてよくわからないことしないでさー」
「おにーちゃん、かたぐるましてー?」
「………」
はい、早速ですが初授業の感想を。
(授業になるのか? これ)
いや、なるのか、じゃなくてするんだよ、うん。
頑張ろう、せっかく来てくれたんだから、楽しく元気に学んでもらうんだ。
「ごめんな、あとででいいなら遊ぶから。にーちゃん、今仕事中なんだ」
手元に教科書も持たない仕事っていうのもおかしなものだけど。
わやわやと騒ぐ子供たちにやんわりと声をかけると、仕事の大切さを知る親のみんなが、これまたやんわりと我が子を落ち着かせてくれる。
子供たちも初めての場所での体験だ、次に何を始めるのかを楽しみにしている様子もあり、大人しくしてくれた。
……よ、よし、始めよう。
まずは自己紹介から入ろうか? それとも……うああ、こうしようって考えてきたことが全部吹き飛んでしまっている……!
落ち着けー、俺のほうこそが落ち着けー……。
「……うん。じゃあまず、軽く“学校”の説明をします。知った上で来ている人しか居ないだろうけど、簡単に話すので聞いてください」
『はーいっ』
(素直だ……!)
じぃいんと無駄に感動した。
俺の言葉に素直に返してくれる生徒が居る……! これが、これだけのことがこんなにも嬉しいなんて……!
思えばこれまで、将って生徒にどれほど苦労させられたか……!
(じいちゃん、俺決めたよ……! この子たちを立派に導いてみせるよ……!)
……じゃなくて。だから落ち着こう俺。
導くのはいいけど、先を決めるのはこの子たちなんだから。
「こほんっ、あー……」
照れ隠しの咳払いをひとつ、学校の説明に入った。
教室の数、教師の数、ここで学べること、食事や料金のことなど。
教室の数は、現代の学校に比べればそう多いものじゃない。
教師の数も同じくであり、みんななんのかんのと忙しい。
軍師だった人の中からじゃなくても、知力に富んだ人に任せるのが無難と考え、今までしてきていた仕事は一先ず別の人に任せ、教師に専念してもらうことに。
その人が慣れたら別の人にも教える形で……教育実習生に教える感じで学んでもらい、少しずつ教師枠も増やしていく。
さすがに一人だけに任せてたら体が保たないし。
次にここで学べることは……国語、算数、理科、社会、体育など……いわゆる現代の小学生が学ぶものを教えるつもりだ。
国語は言うまでもなくこの大陸の文字の勉強。日本では子供でも文字を書けるけど、この時代は文字を知らない大人も居たりする。そういった人の多さに驚いたくらいだ。
算数も言うまでもなく、将(主に鈴々や文醜さん)を相手に教えたものとそう変わらないものを教えて、理科ではチョークの作り方や、別のいろいろなものの作り方などを教えていく。授業と称してチョークを作ってもらうって、少し利用しているようで嫌だけど。
社会では戦の歴史などを伝えていき、体育は……言うまでもないよなぁ。
あとは……食事と、学費のこと。
結局あれから数日間、みっちりと話し込んだ結果───教える側にも教えられる側にも安定が見られ、学校って場所がきちんと機能するようになるまでは三国が学費の大部分を負担することになった。
魏や呉から学びに来る人も出るだろうからと、話し込んだ上での決断だ。
負担と言えば格好はいいが、ようは出世払いみたいなものだろう。
学んだ知識を生かして、のちの国に活かしてほしい。そういった願いを込めて、お金のことは気にしないで学べるだけ学んでほしいって話だ。
教える人もころころ変わるわけだし、自分の仕事の枠が一つ増えたと思ってもらえれば。
俺からして考えれば、書類整理と警邏の他に、先生役って仕事が増えた、って……それだけの話だ。ずっと先生をやるわけじゃなく、さっきも言った通り知性に富んだ人と入れ替わりで教師役を務めるわけだ。
「そんなわけで、一番最初に教える役が俺になりました。まだ人に教えることには慣れてませんが、どうぞよろしくお願いします」
「よろしくー、にーちゃん」
「よろしくー」
「よろしくー」
(素直だ……!)
って、だから軽くガッツポーズ取ってじーんとくるのはいいんだってば。
ほら、そんなことやってるから親御さんたちもくすくす笑ってるし……。
「え、えと。じゃあまずは自己紹介から。一応、今回教師役を務めます、北郷一刀といいます」
「おにーちゃんへんー♪」
「つとめますー、だってー」
「いいますー、だってー」
(…………素直だなぁ……ほんと……)
いろんな意味で。
子供たちとは鈴々との付き合いで遊ぶことはあっても、敬語で話すことなんてなかったわけで。子供たちにとってはそれが違和感としてしか受け取れないのか、俺のことを指差して笑っていた。
いやいや、これくらいで寂しい気持ちになってる場合じゃない。
きちんと仕事をしないとな。
うんうんと頷きながら、一人ずつ自己紹介をしてもらう。
それが終わると、いよいよ授業開始だ。
簡単なことから、とはいったものの、いきなり授業を始めてはワケがわからない上につまらないだろうし───
「よし、じゃあここに居るみんなが、一人一人の級友ってことになるな。今日は体験するだけだから、どうか楽しむ気持ちで受けてほしい」
「“ます”はー?」
「つとめますー」
「ますー」
「いや……ああ、うん……もうどっちでもいいんだけどさ……」
───だからまず、書くことに慣れてもらう。
数は少ないけど、チョークと小さな黒板を用意出来た。
これを配って、机の上に置いたそれらに好きなことを書いてもらう。
名前を書いてもらうのもいいかなって最初こそは思ったものの、自分の名前の文字さえ知らない子も居るだろう。
だったらまずは、“書くこと”を学んでもらう。
遊びで書くんじゃなく、授業として書くことを覚えてもらう。
初歩の初歩、極々簡単なことだけど、それこそ初歩……第一歩として学んでもらおう。
「あ、最後に。今日は一通りの授業を体験してもらいますが、普段の僕……ああいや、“俺”でいいやもう。普段の俺が受け持つ授業は、天の知識を知ってもらうものになっています。真面目に覚える必要は特になく、いわゆる~……」
黒板にチョークを走らせる。書いた文字は“脳力”。能力ではない。
「……“
「……? 御遣いさま? その“のうりょく”というのはいったい……?」
さっき、俺に“肩車してー”と言ってきた娘の親らしき女性が、軽く質問を飛ばす。それに対して一度頷いてから、軽く説明を開始。
「細かに説明するのは逆に難しいし、俺も詳しく知ってるわけじゃないけどね。脳力は、いわゆる頭の力のこと。考える力とか、判断、決断する力のことだね。そういった記憶力や理解力の底上げをするための授業を、俺が担当することになりました」
敬語と普通の喋り方が混ざったおかしな言葉が出るが、みんなは興味津々のご様子で聞いてくれていた。
や、むしろわからないことは率先して訊いてくる始末で、“天の知識”をわかるように説明するのはこれで結構難しかったりした。
「つまりそのじゅぎょーってやつでは、御遣いさまがおいらたちに、そのー……天の知識を授けてくれるってぇわけですかい」
「ああいやっ、授けるなんて大げさなものじゃないからっ……! ただ、知らない知識を見て聞いて書くことで、脳に刺激を与えることが重要なんだ。難しいから諦めるんじゃなく、むしろこう……自分がわからないことを前にした時は、“脳を鍛える機会が巡ってきた~”って思ってみるのもいいかもしれない」
『…………?』
「あ、うん……まあ、細かいことはおいおい知ってもらうとして。難しい話だけど、なんでも楽しんでみよう。楽しめなかったら楽しむ努力をしてみるんだ。どうすれば楽しくしていられるのかを、心の片隅ででもいいから考えてみる。……それは些細なことだけど、子供の頃はいろんな人が持っている純粋な感情だから」
そういったものを持つことさえ出来なかった時代を生きたのなら、たった今知ってもらうのもいい。
そうして、少しずつ“楽しむこと”と“学ぶこと”を知ってもらおう。
教えて、知ってもらうのが教師だ。押し付けるだけなら誰にでも出来るもんな。
……言うだけで、思うだけでその通りになるのなら、誰も苦労はしないわけだけどさ。