まだまだ若輩者でおかしな日本語もあると思いますがよろしくお願いします。
day-1 (RIN)
翌日。
朝6時、起床。
うん。実に健康的な生活だな。
初夏の風が感じられるようになってきた6月。
(ん?初夏?梅雨の方が正しいんじゃね?)
まだ梅雨入りしてはいないものの、6月と言うと梅雨のイメージが強すぎて、なんかジメジメ…。
…考えただけでジメジメしてきた。
思い切って寝室でもある自分の部屋の窓を開け放つ。
5月ほどではないにせよ、まだギリギリ爽やかさを風の中に見いだせる。
(よし、今日もいい1日になりそう。)
俺は自分に暗示めいたものをかけ、朝食を食べに下界へ降り立った。
一体俺は天使なのか。はたまた天上人なのだろうか。それとも、古典でやった殿上人?
ま、なんでもいっか。どうせ上には変わりないしな。
自分で言っててかなり痛かった。やっぱ今のなし。
「お兄ちゃんおそよー。時間ないよー。」
「おう、おはよ。時間が無いのは本当だが、俺はそんなに遅く起きたわけでは…。」
「はいはい、そういうのはもういいから。とっとと朝飯食べなよ?ね?ね?」
妹の朱里は俺よりも早く朝ご飯を食べ終わり、制服姿に着替えていた。
女の子なのに「ご飯」と言わないで「飯」というところ、ワイルドでかっこいいと思うぜ。でも、もっと女の子らしくした方が身のためだぞ、朱里よ。
両親が作ってくれたと思われるおかずと、白米をすぐに体の中に入れ、俺も制服に身を包む。
弁当は持った。準備は万端。じゃあ、行こう。
一足先に出た妹はまさか待ってるはずもなく、途中までは1人で、そしてその途中からは光輝と共に学校へと向かう。
登校途中は昨日のようなシリアスな話はしない。
お互いの部活だったり、授業がどうのこうのだったり…という、他愛もない話をつむぎ出す。
光輝との登校は、俺にとってはルーティンのひとつ。
一緒じゃなきゃ、調子が狂う。
「着いたな。学校。」
「そうだな。」
俺は僅かな寂寥感を抱き、少ない言葉数の内にお互いの教室を俺らは目指す。
結局帰りも一緒だから…ってのは置いといて、と。
光輝と俺の教室は隣同士。教室を見渡すと、人影はまばらだ。
さて、授業の準備でもしますか…。
「おはよう。司。」
「ん、おはよう。凛。」
席に着くと、隣の木暮 凛と挨拶を交わす。
名前を呼びあってるからって、そこまで親しい関係ではない。
俗に言う”友達”か?
「なんか元気だね。どうしたの?なんかあった?キモチワルイ…。」
「いい加減ナチュラルに朝一番からディスるの、やめてくれませんかね凛さん…。」
うん、いつも通り。2ヶ月間毎日、朝イチはこんな会話から始まる。いい加減慣れた。
凛の方も同じに思ったのか、目を細めて「ニッ」と効果音がついてもおかしくない微笑みを俺に向け、席を立つ。
凛は中学からエスカレーターで上がってきた生徒の1人。
クラス内のトップカーストにいるのは見ていればわかる。
4月当初に席が隣になった時はどうに接すればいいのかと考えに考えて内心ヒヤヒヤドキドキしていたが、いざ蓋を開けてみればコミュ力を備えた高スペックな美少女だった。
しばらくの間は自分の境遇もあり(もちろん凛の境遇もあったのだが)、あまり話すことはなかったが、2週間経ったくらいのところでちょっとしたいざこざがあり、それからは気兼ねなく話せる友人の1人になった。
あの頃は若かったなぁ。たったの2ヶ月前だけど。
あぁー、なんか虚しいなぁ…。
「はぁぁぁ…。」
「どうしたの?そんなため息ついて。ジジイくさいよ?」
「いつからいらっしゃったのですか?凛さん。」
「んー、ついさっき?で?どうしたの。疲れてるなら私が癒してあげようか?ん?ん?」
明らかにさっきとは違う笑顔を浮かべながらこっちに上体を寄せてくる凛。
さっきのが「ニッ」だとすると、今度のは「ニヤニヤ」。
まぁ、こいつは能力も高い上にちゃんと女子らしい身体もしてるわけでして…って、反応するなよリトル司。今反応したら殺されるぞ。
「いや、いいわ。お前に癒してもらうとか正直恐怖以外の何物でもないわ。」
「あ、そ。バーカ。」
少しだけ拗ねたような顔をしながら前を向いた凛。
…ちょっぴり悪いことしたな。
「まぁまぁ、機嫌直せって。そんなに俺を癒したいのかお前は。」
「別に。隣でため息つかれるとただウザイだけだし。」
辛辣になった。後でどうにかしないとな。
今日も1日、地獄が始まるよぉ…。
担任が教室に入ってすぐに、HRの始まりを伝える予鈴がなった。
*
なんとか午前中の授業を乗り切った…。
さすがに進学校ともなると授業の進度は速い上に、中高一貫の恩恵を享受している方々のための授業。
つまり、高一なのに高一の範囲をやっていない。
もうとっくに終わってるってことだろう。
エスカレーターじゃない俺が辛いのはある意味当たり前…。
昼飯でも調達しに購買、行くか。
とてもじゃないけど弁当だけじゃ足りない。
「司ー、ひまー?」
そしてこいつの機嫌はいつの間にか直ってました。
「いや。これから購買で戦争してくる。」
「ん、りょーかい。」
凛が4限のノートをまとめながら話しかけてくる。
なかなか綺麗な横顔だ。凛は可愛いってより美しいってタイプだからな。
にしても、こいつ、いつもこの時間に話しかけてきたっけか?
ま、いっか。とりあえず購買だ。
購買に到着するとまさに地獄絵図。戦争も戦争。
高校生のパンの争奪戦がここまで熾烈になるだろうか。いや、なる。
反語すら成立しない。世間一般様が思っているよりは購買の戦争、熾烈だと思いたい。
満員電車程じゃないけどね。
なんとか昼飯は確保。購買だから安いわけでもなく、普通の値段。ついでに部活後の食料も買うか…。
自動販売機(こっちはそこら辺の路頭にあるやつより随分と安い)で今日の戦利品とマッチしそうな飲み物を買い、教室に戻る。
…席がねえ。
正確には「座る」席がない、と言うべきだな。俺は椅子を隠されるようないじめには会ってないと信じたい。
「うわー、凛のお弁当美味しそー!もらうねー!」
「ちょっとー、夏実ー?私のお弁当とったら怒るよー?」
「わわわ、ご勘弁を。ほら、ウチのもなんかとってっていいからさ!ね?ね?」
ちょっと夏実さん?だっけ?俺の席なんで取ってんの?ねぇ?
「えー?しょうがないなぁ…。あ、司だ。席借りてるから。ごめんね。」
軽く買収されてんじゃねーよ。俺が買収するぞ。
はい嘘です調子乗りましたごめんなさい。
「お前か、凛。そうか、だから俺に昼休み暇かどうか聞いてきたんだな。」
「いや、そうじゃないんだけど…。」
頬をほんのりと紅く染めて、凛は視線を合わせずに言い放った。ような気がする。
「司くん?だよね。ごめんね、席勝手に取っちゃって…。」
「いや、大丈夫だ。使ってくれ。だが凛。お前は解せぬ。後で死刑だ。」
「きゃー、司にシバかれるー。」
「そんな棒で言っても一切可愛げないからな。アホ。」
この夏実さんは凛が呼び寄せたに違いない。
この件は後で問いただすとして。
飯、どこで食おうか。
とりあえず困った時の光輝だ。
「わりぃ、隣いいか?」
「お?司か。どした?」
「購買から帰ってきたら椅子が占領されてた。」
「ふーん。もしかしてなっつんか?」
「なっつん?誰それ?」
「ん?夏実。お前が今座ってる席のやつだぞー。」
「あー、それだわ。夏実さんだわ。」
「お前がさん付けとかめずらしいな。なかなか聞かないぞ。」
「そりゃ、初めましてはそうなるだろ。」
「まぁ、確かにそうだな。で、お前はなっつんに席を占領されたから反撃しに来たわけだ。」
「ばっか、そんなんじゃねーよ。」
件の夏実さんの席に着くと、俺は待ちわびた飯にありつく。
光輝も俺と同様に飯を広げ、しばしの休息。
俺はこの学校生活についていくのですらギリギリだけれど、一体光輝はどうなんだろうか。
中学校時代からこいつは器用な方だったはずだ。
どうせ今でも器用に過ごしているんだろうな。
そういや、今、俺、夏実さんの席に座ってるんだよな。いいや、心の中でいちいち「さん」つけるのめんどくさいから夏実でいっか。呼ばなきゃ大丈夫。絶対。
夏実かー。凛とはまた違ったかわいい部類に入るよなぁ…。あいつよりは正統派の可愛いだからなー。あくまでも俺の主観以外の何物でもないけどさ。
それでもまぁ興味がない訳では無い。ちょっと凛に聞いてみるか。
「おーい、司?どした?顔怖いぞ?」
「ああ、ちょっと考え事しててな。」
「んー?そっかー。ま、悩みすぎんなよ。」
「おう。」
予鈴だ。5限がまもなく、始まる。
*
「だからごめんって言ってるじゃん。」
「全く。許せん。ま、いっか。今回は見逃してやる。次からは報告するように。」
「はいはーい。」
5限開始数十秒前。
とりあえず昼休みのことについて多少お説教。
もちろん、俺は凛をシバけるだけの立場ではないし、きっと凛もシバかれるなんて思ってもいないだろう。
もちろんシバくつもりなどさらさらない。
そういや、夏実のこと。聞いてみるんだっけか?
「そういえばさ、…「よーし、始めるぞ。」ちっ。」
「…?授業後、ね?」
凛は俺の方をちらと振り向き、あざとくウィンクをすると、すぐに集中モードに入ってしまった。
(まったく、あざとすぎるだろ。惚れかけたわ。)
とにかく、夏実のことは授業後に聞いてみよう。
-
あっという間に5限終了。
ごめんなさい落ちてました。
昼飯食った後はどうにも眠い。意識を睡魔に刈り取られる。
部活で日々疲れている司くんには、つまらない50分の授業は退屈なのです。だから眠くなっちゃうのは仕方ないのです。てへっ☆
…男がやると見苦しいだけだな。
「凛ー、悪いノート見せて。」
「は?司また寝てたでしょ。やだよ。」
「お願いします。何でもします。きっと。」
「ふーん?なんでもするってならいいよ。貸したげる。」
「常識的な範囲でお願いしますよ先輩…。」
「わかってるって。ほら。」
「サンキュ。でさ、凛。」
「ん?」
「夏実…さんってあれなの?内部生だったの?」
あぶねぇ、呼び捨てにしかけた。まだ当の本人ともあんまり仲良くないのに。
「あー、夏実?うん、一応内部生。なになにー?自分の席に今日たまたま座ったからって興味湧いてきちゃったのー?このこの!」
「そんなんじゃありません。俺は凛にしか興味はありません。」
ちょっとからかってやろう。いつもの仕返しだ。
「は…?え、あ、そ、その…。」
あれー?なんでそんなにお顔真っ赤っかなのー?
さすがに予想外ですよ、凛さん。
「なんてな、後半部分は嘘だ。」
「…死ね。」
あ、やば。ガチで怒らせた…。
「いや、だって、ね、その…。」
「うるさい。黙れ司。」
うわぁ。さっきの声女子が出しちゃいけないやつじゃん…。
「その、はい。ふざけてました。ごめんなさい。」
「…今週末、デートで、手を打つ。」
「仰せの通りに…。」
デートの約束を取り付けられました。
え?デート…?ちょっと待て。
「そもそも俺らの関係性って友だ…」
「つべこべ言わずにデートするんでしょ?」
「はい。させていただきます。」
「ん、それでよろしい。」
刹那、にこぱーと笑顔を咲かせる凛。
ニコッなどの生易しいものではない。
うわぁ、はめられた。と、思った時にはもう遅かった。
今日が月曜日だから…。デートはあと5日後、かな?
すっぽかしたら絶対殴られるわ。
女子相手に身の危険を感じた俺は、凛の意見に従うしかない。
つーか、普通に考えて誘う方逆じゃね?
あれー?んー?
はぁ…。
ま、しょうがないか。行ってやろうじゃねーか。
「あ、ちなみに全部司持ちね。」
はい嘘。一瞬で行く気失せた。
「あ、ごめん土曜日用事が…「司ありがとー!」おい。」
強制参加確定のようです…。
「べー。乙女の心を弄んだ罪は重いんだからね!」
本当あざといなぁ…。
「んじゃ!そういう訳で!司バイバイ!」
「おう、じゃあな。」
まぁでも、可愛げがあるからあざとくてもムリってわけじゃないな。
部活終わったらとっとと帰って寝よ。
帰る荷物をせっせとまとめる中、とあるノートを俺は手に取った。
ま、写してから返すんでいいよな。
にしても。デートのこと、考えなきゃな…。
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