少し間が空いてしまってすいませんでした。
気力も体力もほとんど残っていない。美鈴を動かしているのは1つの〝意思〟だけである。
残りの力を全て込めた右の拳でベジータの顎を狙う。しかしベジータの左手で止められる。
「負けられない…もう私は負けるわけにはいかないんだァァァ!」
「『龍拳』!!!」
「っ!!」
美鈴の拳を左手で防いだベジータだったが、その瞬間に美鈴から凄まじいほどの気を感じた。
「く、クソォォォォ!」
「はああああああ!!!」
美鈴の拳はベジータの防御を貫き、顎へクリーンヒットした。そのあとベジータは吹っ飛ばされてしまった。
「や、やった…」
全ての力を一滴残らず使い切った美鈴はその場に倒れて気絶した。
「フン…本当に大した奴だ」
倒れ込んだベジータだったがすぐに起き上がった。そしてスーパーサイヤ人を解いた。
「最後の一撃…本気にならなければやられていたかもしれんな」
あの一撃はベジータにとっては拳というよりデカイ龍が襲ってきたかのような感覚であった。
「戦うたびに強くなる…キサマもサイヤ人とは別の戦闘民族なのかもしれんな」
ふぅ…と一息ついて地べたに座り込むベジータ。すると、入り口の方から〝気〟を感じた。
「む?」
「流石のお前でも疲れたようだな」
やってきたのは神奈子だ。救急箱のようなものを手に持っている。
「フッ…そうだな」
「お?お前にしては素直だな」
珍しいと思った神奈子が笑いながら言った。
「美鈴を連れて帰ろう。こんな硬い床で寝させるのも可哀想だ」
「ああ。それと…そいつの用はないぞ」
ベジータは神奈子がもっている救急箱を指差す。
「なぜだ?」
「説明するのが面倒だ。それより…帰るぞ!」
「ふふっ、そうだな」
ベジータは美鈴をおぶって出口に歩いて行った。神奈子はそんなベジータが微笑ましくてまた笑ったのだった。
「……」
「…ん…?」
日差しが眩しい。ここはどこなのだろうか。むくっと起き上がった美鈴はまだ寝ぼけているようだった。
「……あっ!」
美鈴は思い出したかのようにパッと立ち上がった。しかし異変はすぐに現れた。
「いっ…」
「痛ったーーい!!」
身体に凄まじいほどの痛みを感じ、尻餅をついてしまった。
「き、筋肉痛でしょうか…痛すぎて全く動かない。どうしよう対決は今日なのに…」
美鈴が頭を抱えていると、誰かの足音が聞こえてきた。その足音はどんどん大きくなっていき、すぐに襖が開く音が聞こえた。
「フンッ、やっと起きたようだな」
勢いよく部屋に入ってきたのはベジータだった。口をモグモグさせながら何かを食べていた。
「し、師匠…おはようございます。あの…身体が動かなくて…」
「当たり前だ。一滴残らず全ての力を使い切ったのは初めてだったようだしな」
そう言いながら袋に手を突っ込み何かを探す。
「仕方ねぇ、これをやる」
「それは昨日の…ピーナッツ?」
「仙豆だ」
もらったこと自体は覚えていたが名前までは流石に覚えていなかった。そしてベジータが美鈴に仙豆を渡そうとすると、再びすごい勢いで足音が聞こえてくる。誰が来るのかは2人とも大体予想できていた。
「美鈴さん大丈夫ですか!?」
案の定やってきたのは早苗だった。美鈴の事が心配であったのですぐに駆けつけたのだ。
「あ、はい。大丈夫です!」
「よかったぁ!!」
笑顔になった早苗は美鈴に抱きついた。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッッッ!!!」
筋肉痛だった美鈴は早苗に急に抱きつかれ、死にそうなほどの痛みに襲われた。
「…おい、死ぬぞ」
「はっ!すいません美鈴さん!」
美鈴はガクガクと痙攣しながら大丈夫です…と小さく答える。
「まったく情けない奴だ!さっさと食え!」
ベジータは美鈴に仙豆を食べさせた。
というよりは無理矢理ねじ込んだ。
「ん〜!完全復活ッ!」
「えぇ!?」
仙豆を食べた美鈴は先ほどの瀕死状態から一変し、いつもの元気な姿になった。早苗は何が起こったかわからずに驚いている。
「今のは薬ですか…?まぁ何はともあれ元気になってよかったです!」
過程はあまり重要視しない早苗は、結果的に美鈴が元気になったことだけを喜んだ。
「オレはメシに戻るぞ」
「すいません師匠。朝御飯の最中だったんですよね?」
「何を言っている、もう昼だ」
「えっ!」
それを聞いて窓から外を見る。太陽の位置を見る限り確かにもう昼になっているみたいである。
「ほんとだ…」
美鈴はなんだか時間を無駄にした気分になってしまった。
「少し時間を取る。対決は夕方からだ」
それだけいってベジータは戻っていった。
「すいません早苗さん。時間を夕方に遅らせてしまって…」
少し悪い気がした美鈴は早苗に謝った。もちろん早苗はその事で美鈴を責める気はさらさらないようだ。
「いいんですよ!時間なんて!…でも」
座っていた早苗がスタっと立ち上がって出口の前まで行った。
「勝負は絶対に負けませんから!」
闘争心を露わにした顔でそう言って部屋から出て行った。早苗も神奈子と諏訪子の力を借りる以上は、負けられないのだろうと美鈴は思った。
「さて、夕方までなにをしようかな…お腹はいっぱいだし」
仙豆を食べたことにより美鈴の腹は満たされていた。
「…そうだ」
何かを思いついた美鈴はまた森へ向かって行った。
「へえ〜、仙豆っていうのを食べたら美鈴が一気に元気になったんだ」
「そうなんです諏訪子様!ほんと凄かったです!」
美鈴以外の4人は昼御飯を食べていた。早苗はさっきの出来事を神奈子と諏訪子に話していた。
「ふむ…急激な回復作用のある薬…いや薬はではないか。その豆をベジータはどこから手に入れたのだ?」
「カリンとかいう猫の仙人みたいなやつから貰っただけだ。快く5つもくれて助かったぜ」
ニヤッと悪い顔をしたベジータをみて3人は察した。
ああ…脅したんだな…と。
「オレも最初に食べたときには……」
「ベジータ?どうしたの?」
急にベジータが黙り込んだ。立ち上がり、どこかを見つめていた。
それを変に思った諏訪子がベジータに話しかける。
「いや、なんでもない」
「(美鈴の奴…森へ行ったのか)」
ベジータは美鈴の気が動いていることに気づいた。何処へ向かうのかはわからないが行くとこといえば森にある特訓施設ぐらいだろう。
食べ終わったベジータはなにも言わずに立ち上がり、何処かへ向かった。
はい、第27話でした。
次の話から美鈴VS守矢の神ということになります。
ではここで終わります。お疲れ様でした。