ライバルを超えるために幻想入り   作:破壊王子

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この小説はドラゴンボールと東方Projectの二次創作です。

今回からタグにW主人公を加えました。だってベジータの出番が…


【第42話】格上

 

 

ー龍球の世界ー

 

 

美鈴と悟空は修行をするべく、ひらけた場所へ移動した。

 

修行の第1レッスンはとりあえずお互いのことを知るための手合わせ、つまり〝組手〟をすることになった。

 

悟空は「よいしょっ」と声を出しながら屈伸したり腕を伸ばしたりして準備体操をしている。〝気〟を読まなくても、鍛え抜かれた身体は服の上からでも十分にわかった。

 

 

「じゃあ始めるか!」

 

 

準備体操を終えた悟空はニッコリと笑って美鈴を見る。戦うことを楽しみにしているのは言わずとも顔に出ていた。

 

悟空が構えたのを見ると、美鈴も同様に重心を低くして構えをとった。

 

「じゃあ…かかってこいッ!」

 

 

 

「はいッ!」

 

 

開始の合図ともとれる悟空の言葉にハッキリと答えた瞬間、美鈴はいつも戦う時のように、右脚に体重をかけて真っ直ぐに向かっていった。

 

格上相手に真っ直ぐ向かうなど無謀すぎる。

しかし、この戦いでは〝勝つこと〟が第1目標ではない。〝力を見てもらうこと〟が第1目標なのだ。

 

が、美鈴は忘れてはいない。

師匠であるベジータはこう言っていた。

 

 

『どんな戦いであろうが勝て』

 

 

強くなりたい者への真理である。どんな負け方であれ負け続けたら、人は〝負け癖〟がついてしまう。

それも格上と戦う時こそそれは顕著に表れる。

〝しょうがない〟 〝無理だ〟 このようなマイナス思考は思っているだけで動きを鈍らせ、隙を作ってしまう。達人同士の戦いならば、その隙で決着することもあるだろう。

 

だからこそベジータは美鈴にそう教えたのだ。表面的な強さだけではない。

心の芯から美鈴に強くなって欲しいと願っているから。

 

 

「はぁああああッ!」

 

 

 

 

 

悟空に向かって真っ直ぐに拳を突き出した。しかし悟空はそれを何事もないかのようにあっさり躱した。

 

このパンチが避けられることは想定内。

美鈴は身体を捻り、回転蹴りをくらわそうとした。

 

 

 

これも当たらない。

考えが見透かされているのだろうか。それとも身体能力に差がありすぎて、後手に回られても関係ないのか。

 

考えたところで攻撃が当たるわけではない。美鈴には連続で攻撃をし続けるしかなかった。

 

 

今度は弾幕を交えつつ攻撃を仕掛ける。が、依然美鈴の攻撃が当たる気配はない。

 

悟空は涼しい顔をし、時々笑顔を見せながら〝全て〟躱していた。

 

 

「こんなもんでおしまいか?」

 

地面にいる美鈴を、6、7mほど空中へ離れている悟空が言った。腰に手を当て、まだまだ余裕だということは誰の目にも明らかだった。

 

 

「まだですよ…ハァァァッ!!!」

 

 

美鈴は体全体に力を入れ、気を高める。どんどん気は大きくなっているが、悟空はあまり嬉しそうな顔をしていなかった。

 

 

「ふぅ…とりあえずこれが私の全力です!」

 

 

先程とは別人のように美鈴の気は膨れ上がった。

しかし、それでも悟空は退屈そうな顔をしている。

 

 

「…どうした?こんなもんか?」

 

 

美鈴はピクッと反応する。

悟空は決して美鈴を煽っているわけではない。つまり〝本心〟で言っているのだ。全力を出し切っている美鈴にとって、もちろん嬉しくはない言葉である。

 

 

「これから見せてあげますよ!」

 

 

その瞬間、美鈴は超スピードで悟空の後ろに回り込んだ。そして悟空のうなじめがけて蹴りを入れた。

 

先程とは違い、確実に攻撃は決まった。しかも急所に。

悟空は蹴っ飛ばされ大きな岩にぶつかり、岩は崩れ落ちた。

悟空の姿は見当たらない。

 

もちろんこれで勝負が決まったとは微塵も思っていない。しかしここで攻撃を途切れさせるのは勿体無いと思い、追撃の弾幕を撃ち込んだ。

 

 

既に土煙で前がよく見えなかったが、弾幕によりさらに土煙が舞ってしまった。

しかしこれでこそ美鈴の戦い方ができる。そう、〝気〟を読んで戦うのだ。

 

 

 

「…なかなか動かない。まさか今の一撃で?」

 

 

しばらく待ったが悟空は出てこない。まさか今のでかなりのダメージを負ったのか?と思いつつ、近づこうとしたその刹那。

 

 

「油断すんなッ!」

 

「!?」

 

 

 

 

気付かずうちに背後にいた悟空からパンチを浴びせられる。パンチは美鈴の背中にクリーンヒットし、先ほどの悟空のように美鈴は大きな岩に突っ込んでしまった。

 

岩は悟空がぶつかった時より派手に崩れ落ちた。ぶつかった衝撃が今の方が大きかった、つまり悟空の攻撃の方が強かったのだ。

 

 

「……ぐっ…」

 

 

 

美鈴は背中を右手で抑えた。岩にぶつかったダメージよりも当然悟空のパンチの方がダメージはデカい。

 

 

「(なんてパンチ…いやそれよりも…)」

 

 

〝どうやって背後に回り込んだ?〟

 

 

当然の疑問である。

 

あの時、悟空は確実に美鈴の見ている先、要するに直線上にいたはず。

土煙が舞っていたからそれに紛れ、回り込んで攻撃したというのが1番可能性が高い…が、それは相手が〝普通〟の者の場合だけである。

 

 

美鈴はただの達人ではなく、〝気〟を読んで戦うことができる。だからあの時悟空が密かに回り込もうとしたならば、美鈴はすぐにわかる筈であった。

しかし、あの時悟空の〝気〟は完全に吹っ飛ばされた岩のところから感じた。回り込んだという線は消えたと言っていいだろう。

 

 

「……」

 

 

美鈴は立ち上がった。目を見る限りまだまだやる気である。

そしてまた考えた。

 

 

この一瞬で美鈴は考えられる可能性を〝3つ〟思いついた。

 

1つ目は悟空が美鈴が反応出来ないほどの超高速移動で回り込み、攻撃を放った事である。

3つの内でも1番現実的な方法であった。

 

 

2つ目は自分の〝気〟だけをその場に『置いたまま』にし、土煙に紛れ密かに回り込み、美鈴が〝気〟に注意している内に攻撃したというものだ。

つまり、悟空が自分の〝気〟を自分から発するのではなく、完全にコントロールし、カモフラージュに使ったという方法である。悟空なら可能性がなくもない。

 

 

そして3つ目は咲夜のような時間を止める能力を使ったか、時空を歪める能力を使ったか、はたまた瞬間移動などという技を使う方法である。

 

 

美鈴が考えた結果はこの3つの例が出てきた。しかし考えたところで問題がある。

 

それは2つ目以外は〝今の〟美鈴では対処が不可能だという事だ。

2つ目ならばカモフラージュに警戒し、できるだけ視界を悪くせずに戦えば事なきを得るだろう。

 

しかし1つ目だったら、全力状態の美鈴が全く反応出来ないなら手の出しようがない。今はわざと回り込んで攻撃をしてくれたものの、正面から顔に攻撃されたらその時点で終わっていた。

 

3つ目も咲夜ならともかく、悟空は身体能力が美鈴に比べて圧倒的に高い。そんな者が〝時間操作〟や〝時空操作〟、〝瞬間移動〟など使うものなら反応できるわけがない。

今のように寸前で声を掛けられなければ絶対に気づかないだろう。

 

 

 

「…どうすればッ」

 

 

考えれば考えるほど〝勝機〟は遠のいていくような気がした。しかし考えなければ最低限の対処もできない。

 

 

「どうした美鈴。まだまだやれんだろ?」

 

 

「…もちろんです」

 

 

ギリッと歯をくいしばる。何もできそうにない自分への苛立ちで胸が一杯になった。

 

 

「…ゴチャゴチャ考えんな。オラはおめえの実力がみてえだけだ」

 

 

確かに考えたくはない。ベジータとやる稽古のように、がむしゃらに突っ込んでいきたい。

しかしそれでは格上の悟空には勝てない。美鈴はどんな戦いでも勝たなければいけないのだ。此処へ来て2度も負けるわけにはいかない。

 

戦いに関しては真面目な美鈴には、ベジータの言葉は大きな〝枷〟となっていた。

 

 

「いきますッ!」

 

 

「(…なんかしてくるな)」

 

 

悟空の思った通りに美鈴は何かをするつもりだった。右手に気を集中させたかと思えば、そこから気弾を作り出した。3つ、4つ、5つと美鈴の右手からはボンボンと気弾が出てきた。

 

 

合計5つの気弾は、1つ1つの大きさがハンドボールくらいであり、気弾はそのまま悟空に向かうのではなく、美鈴の周りをフラフラと飛び回っている。

まるで意思を持っているかのように。

 

 

「ハハハッ! 中々おもしれえことすんなあ」

 

 

「すぐに笑えなくなりますよ!…ほっ!」

 

 

笑いながらも感心していた悟空に、美鈴は向かっていく。悟空もすぐに集中を取り戻し構えた。

 

 

美鈴は気弾を身に〝纏っている〟といっていいだろう。そのまま悟空に向かってパンチを繰り出す。

周りの気弾が気がかりな悟空はそのパンチを受け止めず、先程みたいに躱そうとした。

 

 

「はああああッ!」

 

 

その瞬間、案の定5つの気弾が悟空に襲いかかる。しかしこうなる事を見越していた悟空は冷静に1つ1つ気弾を素手ではたき落としていった。

 

その途中にさらにパンチを繰り出すが、それすらも悟空は左手でガードする。そして右手で最後の1つもはたき落とそうとした瞬間…

 

 

「(ここだッ!)」

 

美鈴は小さく指をクイッと動かした。その瞬間、先ほど悟空に岩へ吹っ飛ばされた際に仕掛けておいた〝6つ目〟の気弾が地面から現れた。

 

 

「…!!」

 

 

左手は美鈴の攻撃のガード、右手は5つ目の気弾のガードで手がいっぱいである。地面から真っ直ぐ腹に向かって6つ目の気弾が襲いかかってくる。もうダメだ…

 

 

 

 

 

 

とは思わない。

 

 

孫悟空だからだ。

 

 

 

 

「効かねえぞーーーッ!」

 

 

 

 

「くっ…!」

 

 

悟空は瞬間的に気を爆発的に高めた。するとその衝撃により、気弾は消滅し、美鈴も少し後方に飛ばされた。

 

この技は『爆発波』といって気を高め一気に爆発させ、その衝撃で相手にダメージを与える技である。

 

 

〝気〟を爆発させるのだから当然楽な技ではない。体力や〝気〟を消費するし、何より発動後の隙が大きすぎて相手が初見でなければそこを狙われてしまうからだ。

 

しかし美鈴とは初めて戦う相手。だからこの技は結果的には使用として良かった。

 

 

 

 

 

 

 

と悟空は思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと見つけました…悟空さんの〝隙〟を」

 

 

「いっ!?」

 

 

既に美鈴は悟空の背後に回り込んでいた。右手を真っ直ぐ悟空に向け、技を出す態勢に入っていた。

美鈴の先程までの技はこの技のための餌だったのだ。

 

 

 

「いきますッ!」

 

 

「『ビッグ・バン・アタック』!!!」

 

 

 

高威力かつ高密度な球体の気功波が悟空を襲う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…へへッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー幻想郷ー

 

 

 

「だからー!私は修行なんかしてないって言ってるだろ!」

 

 

魔理沙の声がアリスの家に響く。ここは森の中だが、もしここが村や町なら迷惑もいいところだ。

 

 

「ほう、ならばさっきの話はなんだ?修行をしたとオレは聞いたが」

 

「…ああーそうだよ修行しましたよ!それがなんだ!?」

 

魔理沙は何故か逆ギレする。しかしベジータはそんな事はどうでもよく、ニヤリと口角を上げた。

 

 

「オレに負けたのが悔しかったようだな」

 

「べっ別にベジータは関係ないさ!私が修行したかったから修行しただけだぜ!」

 

 

なんとなく恥ずかしくなった魔理沙はテーブルの上に置いていた帽子を取り、深くかぶった。

 

魔理沙の反応からするにまだまだベジータには追いついていないようだ。そもそも追いつくのかどうかが甚だ疑問ではあるが。

 

 

「悔しさはとっておけ。それはキサマ()を成長させる〝何か〟になるかもしれん」

 

ベジータは魔理沙の後に霊夢の方も振り向いた。この言葉は2人に向かって贈った言葉なのだろう。

プイッとそっぽを向いたが、霊夢のことだ。ちゃんと伝わっているだろう。

 

「…負けないぜ、次こそは。 首を洗って待ってろよ!」

 

「フッ、期待しないで待っておいてやろう」

 

 

この幻想郷にきてから、ベジータもどこか変わったと自覚していた。

 

ベジータは関わりがある者以外は、弱い奴など興味がなかった。しかし、この幻想郷にきてから以前とは変わったのだ。

明らかに自分より弱い者に対しても、〝戦いたい〟と思うようになっていた。

 

それはこの幻想郷には不思議な力を持つ者が多いことも理由ではあるが、それ以外にも何かを感じるようになった。その〝何か〟までは自分の中でもモヤモヤとしていてハッキリとはわからない。

 

 

 

しかし本当に変わったのは、ベジータが〝変わったことに嫌悪感がない〟ことだ。

今まではたとえ変わっていたとしてもそれを認めたくなかった。

幻想郷にきてからは違う。ベジータは『新しい自分』を見つけ始めていた。

 

 

「そういえばベジータは何しにここにきたの?」

 

 

本来の目的をアリスからの質問で思い出した。

霊夢と戦えた時点でこの森にきた甲斐は既にあったが、サイヤ人の血はこんなものでは物足りないと騒いでいる。

 

 

「強い奴と戦うためだ。 …アリス、キサマはどうだ?」

 

 

もはや強い者でなくても良い。

ベジータはそう考えつつあった。

 

 

 

「遠慮しとくわ。お気に入りの服が破けたら困るし……って!!!」

 

「アンタその服…また破けてるじゃない!」

 

 

 

先程までは気づかなかったが、ベジータの服はまた破けていた。

ところどころ焦げており、ボロボロになりつつあった。

 

 

「それがどうした」

 

 

 

 

「それがどうしたって…アンタその服どうするつもりよ」

 

 

「また作るだけだ。 …きさまがな」

 

 

当たり前のような態度。

当たり前のような表情。

 

アリスは怒りを通り越して泣きたくなっていた。

 

 

 

「はぁ…まあいいわ。夕食の後に作ってあげる」

 

それでもアリスは服を作ってくれるみたいである。

バカ親切な魔法使いだ。

 

 

「それよりアリス、お腹空いたわ。はやく準備してちょうだい」

 

「そうだぜアリス、腹が減ったら戦はできないぜ!って言うだろ?」

 

 

 

「うるさいわよ!大体運ぶだけなんだからアンタ達も手伝いなさいよ!」

 

 

紅白、白黒共に動く気配はない。

 

 

「フッ…」

 

 

家族以外でここまで居心地のいい場所へ来たのは、ベジータは初めてである。それもこれもアリスがブルマに若干似ているからであろうか。

 

 

「…悪くない」

 

 

ベジータは3人に聞こえないようにそう呟いた。

そして霊夢と魔理沙と同じく、アリスに夕食の準備を急かした。

 

 




はい、第42話でした。

折角幻想入りしてるので、〝新しいベジータ〟というのは大袈裟ですが、皆様が見たことのないベジータの一面を見せたいです。

ではお疲れ様でした。
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