ライバルを超えるために幻想入り   作:破壊王子

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この小説はドラゴンボールと東方Projectの二次創作です。

お久しぶりの投稿です。


【第49話】殺し合い

 

 

 

 

「………………ん…?」

 

 

 

美鈴は何か小さな違和感を覚え、目を覚ました。

ここはベッドの上。バーベキューを楽しんだ後、風呂に入りそのまま就寝した。

しかし今日はいつもより早く目が覚めた。何か嫌な予感がしたからである。

 

 

「なんだろう…」

 

 

とりあえず美鈴は寝間着からいつもの華人服に着替え、家の外に出た。

 

辺りは少しずつ明るくなっていた。美鈴は外に出た後、目を閉じ周囲の〝気〟を探った。何故と言われてもわからない。強いて言えば本能がそうさせたのだろう。

 

 

「……あった!」

 

 

するとすぐに大きな〝気〟が見つかった。もちろん悟空のではない。その〝気〟はここからあまり近くはない。美鈴が感じ取れる〝気〟の範囲は前より確実に広くなっていた。

そしてそのまま〝気〟の方向へ向かおうとする。急に目が覚めた理由がその〝気〟の持ち主だろうと考えたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

すると急に『何者か』の〝気〟が急に燃える様に上昇し始めた。

 

 

「えっ……? な、何を…!」

 

 

 

 

 

「うわッ!?」

 

 

 

木が揺れる。地面が割れる。距離があるとは言え、ここは安全ではない、むしろ危険な場所になった事が美鈴にはわかった。それほど相手の力量は大きい。

 

 

 

「…急がないと!」

 

 

 

恐らく相手の力は自分より上だ。美鈴は相手の力量を測るのがあまり上手くないため、『自分と比べて』でしか相手の強さがわからない。

それでも悟空より上という事はないだろう。確実な勝利を求めるならば悟空と共に行くべきだ。しかしそれをしないのには理由があった。

 

まず悟空が家に居ないことだ。

悟空はたまに朝から何処かへ出かける事がある。適当に修行をして、その後朝ご飯の食材を採りに行くのだ。しかし今日は幾ら何でも早すぎるという疑問も残る。

 

そしてもう1つは自分のためだ。

美鈴が感じ取るに、『何者か』は敵である可能性が高い。その敵と戦う事で自分をさらに高めたいという気持ちがあるのだ。

 

 

 

「……」

 

 

いつものように颯爽と地面を駆ける。自分の中でドクンドクンと大きく、いつもより早いリズムで心臓が鼓動しているのが聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…!」

 

 

そして見えた。『敵』と思わしき人影の元へ。

いや人と言えるのだろうか。それ(・・)は白と黒っぽい色を基調としたカラダをしており、頭は長く、背中から戦闘において邪魔ではないかとまで思わせる出っ張りがあった。そして大きなたらこ唇がなんとなく不気味さを醸し出していた。

 

 

「(〝気〟を消さなきゃ…!)」

 

 

まずは相手の様子見をしようと、美鈴は〝気〟を消して岩陰に隠れた。

 

 

「……ハァー!力もちゃんと確認できたし…人間どもを皆殺しに行くか。ここにはもう用はねえな」

 

「(み、皆殺し!?)」

 

 

ハッキリとわかった。こいつは〝敵〟だと。

自分が何とかしなければいけないと美鈴は決心し、敵が後ろを向いた瞬間に飛びかかった。

 

 

「フハハッ!死ねぇいッ!」

 

「なッ…!」

 

 

 

 

「痛っ…」

 

 

敵は後ろを振り向いたかと思ったらすぐにこちらに振り向き、手からビームのようなものを繰り出した。美鈴はその攻撃を間一髪で避けたつもりだったが、頬にかすり、血がボトボトと出ていた。

 

 

「ほう、今のを避けるか。まさかあいつらの仲間か?」

 

「はぁ…はぁ…!?」

 

 

相手の言葉が耳に入らない。それもそのはずだ。

美鈴はこれほどまでに〝純粋な殺気〟を向けられたことがなかった。手合わせとも違う、修行とも違う、これは殺し合いだ。

 

今まで格下の妖怪からの殺気は何度も向けられた事があった。しかし今は違う。格上からのなんの混じり気のない殺気がこれほど身に突き刺さるとは思ってなかった。

自分の成長のためと思っていた先程までの甘い考えは既に消えていた。

 

相手が一瞬本気になった時の〝気〟は今自分がどうこうできるレベルではないと判断でき、今美鈴の頭にあるのは、この敵相手にどう〝生き延びるか〟

ただそれだけだった。

 

 

「(でも私がここで逃げたら他に犠牲者が出る…やるしかない…!)」

 

 

それでも戦意喪失をしたわけではない。今自分が何をやるべきか、そういう事は冷静に考えることが出来る。

そう、時間稼ぎだ。悟空が来るまでの間、この敵を此処で足止めできればそれはもう美鈴の勝利と言っていいだろう。

 

 

「なに黙ってん…だよッ!」

 

 

相手が真っ直ぐ突っ込んで来る。美鈴程度の相手にいちいち策を講じる必要がないと判断したらしい。

素早いパンチ、キックを繰り出すが、美鈴は思ったより対応できていた。パシッパシッパシッと攻撃をいなすように躱していく。

 

 

「(やれる…闘える…!)」

 

 

思っていたほど絶望的な力の差ではないようだ。もちろん今までの美鈴だったら相手にもなっていないだろう。その美鈴がまともにやり合えているのは間違いなくベジータ、悟空との修行の賜物だ。

 

 

「ハァッ!!!」

 

 

先程不意打ちとして使ってきたビームをまた使ってきた。しかし集中力が最大限にまで達してる美鈴には当たらない。

 

 

「フンッ!」

 

「チッ…ィィィッ!」

 

 

隙が出来た相手にすかさず蹴りを入れる。大きなダメージにはならないものの、確実に効いていることがわかる。

 

 

「ちょこまかしてんじゃねえぞハエがッ!」

 

 

敵は怒りの蹴りを繰り出す…が、そんな大振りで当たるわけはない。美鈴は基本避けるのに専念していて、攻めは確実にいける時だけ、という作戦を立てていた。その作戦は大当たりで、相手を苛立たせることによって大振りの技を使わせ、さらに攻撃するチャンスを生んでいた。

 

 

「ハエではありません。紅美鈴と申します。以後お見知り置きを」

 

 

戦い始める前の美鈴とは違う。完全にいつもの美鈴に戻っていた。右脚を曲げ左脚だけでピンと立ち、右手を下げて左手を上げる、美鈴の得意な構えだ。その構えで相手を迎え撃とうとしている。

 

 

「へへッ…」

 

 

その美鈴を見ながら敵は不気味に微笑んだ。

 

 

 

「プイプイ…」

 

 

急に敵がそう言った。何かの呪文か?と美鈴は警戒を怠らない。

 

 

「オレの名前だ。聞き覚えはないか?」

 

「ないですね、全く」

 

「そう身構えるなよ…オレはお前の仲間だぜ?」

 

 

そう敵は言った。あるはずもないそんなことに美鈴は騙されない。

 

 

「愚かですね。私はそんな事で騙されたり…」

 

 

 

「ベジータ」

 

 

 

 

「……え?」

 

 

『ベジータ』と確かに敵は言った。聞き間違えるはずもない。自分の師匠の名なのだから。

 

 

 

「オレはベジータの仲間だ。仲良くしようぜ」

 

 

「…貴方が師匠の仲間?そんな筈は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵がニヤッ…と笑った後に鈍い音が響く。敵のキックが美鈴の腹にモロに入った音だ。

 

 

 

「が…がはッ…!」

 

 

動揺していた美鈴は相手のキックに反応できず、受け身すら取れなかった。敵はガクッと崩れ落ちる美鈴の顔面にさらに蹴りを入れた。すると美鈴は数十メートル先の岩まで吹っ飛ばされた。

 

 

「ギャハハハハハッ!やっぱりあいつらの仲間だったのかよ」

 

 

敵はすぐに吹っ飛ばされた美鈴との距離を詰める。美鈴はまだ立ち上がれない。

 

 

「言ってみるもんだなぁ…いいか?ベジータってのは…

 

〝オレを殺したヤツ〟だ。そんな野郎の名前を覚えてて何になるかと思えば…使えるもんだな案外と」

 

 

ベジータは直接プイプイに名乗ってはいない…が、宇宙船での悟空達の会話を聞いている時に覚えたのだ。

 

 

「これは〝殺し合い〟だぜぇ?油断したお前の負けだな」

 

 

プイプイの言う通りだ。これは試合でも何でもなく、殺し合いだ。油断した方が死ぬ…殺し合いとはそういうものだ。

 

 

「ベジータって野郎にも見せてやりたいぜ…仲間をぶっ殺される所を…」

 

「……」

 

「…意外だな。立ち上がるとは…」

 

 

美鈴は立ち上がった。まるでこれ以上敵に話させないように。

 

 

「……すな…」

 

「ああん?」

 

 

 

 

 

 

 

「貴様が師匠の名を口にするなッッッ!!!」

 

 

 

 

真紅の〝気〟を纏った美鈴が怒りの表情で怒鳴ってみせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー神殿ー

 

 

時は美鈴と『敵』が出逢う少し前の頃。

 

 

 

 

「悟空!おい起きろ悟空!」

 

「なんだよピッコロ…もう朝か?」

 

 

肩をユサユサと大きく揺らされて起きる悟空。無理矢理起こされて微妙に不機嫌だったが、ピッコロからすればそんな事はどうでもいい。

 

 

「いいからしっかりと目を覚ませ!

…急にデカイ〝気〟が出現した。きさまの家の近くにな」

 

「!! …ほんとみてえだな」

 

 

頭をボリボリと掻きながらも悟空はしっかりと目を覚ました。

そして目を瞑りその〝気〟を細かく探る。

 

 

「あれ?こいつ…あん時の…」

 

 

悟空は謎の者について知っているような様子だった。

 

 

「知っているのか?悟空」

 

「おめえも知ってるはずだ。

うーん…よし!ちょっと待っててくれ!」

 

 

すると悟空は額に指を当てる。『瞬間移動』をするつもりだろう。

 

 

「お…やっぱかなり遠いな」

 

「おい…」

 

 

 

 

 

 

 

有無を言わせずに悟空は何処かへ行ってしまった。

しかし1分ほどしてすぐに神殿に帰ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃじゃーん!コレなーんだ!」

 

 

帰ってきた悟空の手には見慣れない水晶玉があった。悟空はそれをニヤニヤしながらピッコロに渡す。

 

 

「こ、コレは…!」

 

 

水晶玉に『謎の者』の姿がバッチリと映っている。コレがあれば戦況を現場に行かなくても把握することができるのだ。

 

 

「へっへーん!界王神のじっちゃんに借りてきたんだ!コレ便利だよな〜!」

 

 

この水晶玉は以前悟空が界王神界にいた時、ゴテンクスと魔人ブウとの闘いを「みたい」と行った際に老界王神が出してくれたものだ。これがあれば遠くであっている闘いを見ることができる、それを思い出した悟空は界王神界まで行って借りてきたのだ。

 

 

「き、きさま…界王神界というのはそう簡単に行き来できるものでは…」

 

「細かいことは気にすんな!ほら、美鈴が着いたみたいだぞ」

 

「……」

 

 

水晶玉など使わずとも実際に行けばいいだけだろう、とピッコロは言おうとしたがやめた。もちろんそんなこと悟空もわかっているだろう。それをしないのはその気がないだけだ。

つまり〝美鈴に任せている〟のだ。

 

悟空は闘うことが好きだ。しかし誰かと誰かが闘っているのを見るのも勿論好きだ。見た後に自分も闘いたくなることもしばしばだが。

 

 

「!! こいつ…プイプイとかいう奴じゃないか」

 

 

水晶玉に映った者をよく見ながらピッコロが言う。

そう、美鈴と対峙していたのは以前悟空達と闘ったプイプイという者だ。

あの時はバビディに洗脳されていて、額に『M』の文字があったのだが今は無くなっている。

 

 

「プイプイ?わりいオラ名前まではおぼえてねえな」

 

「オレも直接会った訳じゃないからあくまで恐らくだがな」

 

 

ピッコロはプイプイと実際に会った訳ではないのだが、遠くから見ていた時に、バビディがあの者の事をプイプイと呼んでいたのを思い出したのだ。勿論ピッコロ以外は聴き取れなかったのでこの事はピッコロしか知らない。

 

 

「でもおかしいよな…あいつなんで生きてんだ(・・・・・)?」

 

 

これが問題なのだ。プイプイはあの時確かにベジータが消し飛ばした筈だ。それも跡形もなく。だから生きている筈がない。

 

 

「いやよく見ろ悟空。輪っかがあるぞ」

 

「え?…あ!ホントだ!オラに前あったのと同じやつだな」

 

 

ピッコロの指摘により、悟空はプイプイの頭の上に輪っかがあるのに気づいた。

この事からプイプイはやはり生き返ってない事がわかった。

 

それでも疑問は消えない。なぜ死人であるプイプイが下界にいるのかということだ。

 

 

「よくわかんねえな…」

 

「悟空…まずいかもしれんぞ。今までオレやきさまが倒した悪人が一斉に下界に降りてきたりしたら…」

 

「うーん…たしかにやべえかもな。ベジータもいねえし」

 

 

プイプイだけなら何のことはない。しかしセルや魔人ブウなどが地球へ来たら大変なことになってしまうかもしれない。その事に2人は焦り始めていた。

 

 

〔恐らくその心配はないだろう〕

 

 

急に何処からか声が聞こえる。2人にはこの声に聞き覚えがあった。

 

 

「界王さま!ちょうど良かった、聞きてえことがあるんだけど…」

 

 

〔わかっておる。お前たちの言いたいことも。

先ほど閻魔に聞いたが、他の悪人たちが抜け出す様子はないらしい。だから今のところは心配いらん〕

 

 

「へ〜 抜け出せるもんなんか地獄って」

 

 

〔そ、そんなわけあるかッ!何かの時空の歪みでそちらに偶然飛ばされたんだろう〕

 

 

確かにプイプイで抜け出せるものなら、フリーザやセルはあっさり出ているだろう。

 

 

「時空の歪み?なんだそりゃ」

 

 

〔わしにもわからん!…気になるのはプイプイが地獄から消える時に一緒にいた奴はこう言っとったらしい。

 

謎の空間に吸い込まれた(・・・・・・・・・・・)ようにみえた…と」

 

 

「…時空の歪みとか謎の空間とかオラよくわかんねえぞ。くわしく説明してくれよ界王さま」

 

 

〔ばかもの!わしにもわからん事くらいあるわッ!とにかく他の悪人が地球に行くことはない!ならばお前たちがすべきことはわかるな?ピッコロ〕

 

 

悟空では話にならないと思った界王がピッコロに話を振る。確かにその判断は正しい。

 

 

「プイプイを地獄へ連れ戻す…か」

 

 

〔その通りじゃ!わしも忙しい!頼んだぞお前達!〕

 

 

そう言い残し界王の声は聴こえなくなってしまった。

 

 

「地獄へ連れ戻すたって…どうすりゃいいんだ?」

 

「…それは後から考えればいい。

そんなことより悟空、気づいたか?」

 

 

え?と悟空はピッコロが言いたいことをわかっていないようだった。首をかしげる悟空を見たピッコロは、ゴホンと咳払いした後に答える。

 

 

「いま界王様は〝謎の空間〟と言っていたな。昨日きさまが言っていたのと同じ可能性があるのではないか?」

 

「…あ!」

 

 

「…紅美鈴とかいう女をこっちに連れて来た能力と〝謎の空間〟とやらが同じならば…さらに目的がわからなくなるな」

 

 

ギリッとピッコロは歯をくいしばる。わからない情報だけがどんどん増えていくことに苛立ちを隠せない。

 

 

「まぁ…それも後で考えようぜ。今はプイプイ相手に美鈴がどこまで闘れるかみてみてえ。ピッコロ、おめえの出番が取られちまったな」

 

「フンッ…その割には死にかけてるみたいだが、本当に行かなくていいのか?」

 

 

ピッコロは腕組みをしながら水晶玉を見る。それは丁度美鈴がプイプイに顔面を蹴られた所だった。

 

 

 

 

 

 

 

「美鈴…限界を超えてみろッ!」

 

 

しかし悟空は美鈴を信じて見守るだけなのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、第49話でした。

ピッコロ大魔王戦と言ったな?アレは嘘だ。
…展開を変えて申し訳ないです。考えた結果こうすることに決めました。
あと、「ここおかしいんじゃね?」と思われた時に報告してもらうとありがたいです!(誤字報告はよくあります)

ではお疲れ様でした。

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