あけましておめでとうございます。
「いやぁ四季様、いくらなんでも私達には荷が重すぎるんじゃ……」
赤い髪、赤い瞳、大きな背丈、そしてそれらの個性を差し置いてさらに人目を集めそうな巨大な鎌を肩にかけた少女が、頭を掻きながら映姫に言う。
「何ですか小町。貴方が気になるからと私に言ってきたんでしょう」
「それはそうなんですけど……」
呆れ顔の映姫の側でまた頭を掻きながら少女は狼狽えている。
彼女の名は
四季映姫・ヤマザナドゥの部下であり、種族は死神である。
その可愛らしい見た目だけを見れば、誰もが死神だとは思わないであろうが、彼女が常に持っている大きな鎌を見れば納得せざるを得ないだろう。
昨日の事だ。彼女は休憩もといサボり中に森でブラブラしている所、白黒の魔法使い・霧雨魔理沙を発見した。
声を掛けようと右手を上げた瞬間、凄まじいスピードでもう1人現れ、2人は拳をぶつけ合い、そのまま再び超スピードで向こうへ行ってしまった。
そのもう1人こそがベジータだった。
小町は2人の戦いを眺めている内に、ベジータという存在が幻想郷にとって危険
「貴方の言う通り、このベジータという者は危険よ。直接会いにいって裁きを下す必要があるわ」
浄玻璃の鏡で全てを見た映姫。これほどの罪があり、さらには外来人であるベジータを閻魔である映姫が放っておく筈がない。
「確かに腕が相当なのは確かですけど、さっきは浄玻璃の鏡で見た過去の彼のようなドス黒くて悪い感じには見えなかったんですよねぇ……もう少し様子を見るべきでは?」
「小町、この様なケースは一手遅れるだけで取り返しのつかないことになるわ。幻想郷の為にも私たちが動かねばならない」
映姫の発言、行動は正義感の為だ。しかしそれは誰かに認めてもらいたいわけでも、褒めてもらいたいわけでもなく、幻想郷の為。
己の立場からするとそれは当然ではあるのだが、彼女はその気持ちが他の閻魔よりも強い。
良くも───そして悪くも。
「しかし直接会ったところでどうするおつもりですか?自分で言うのもアレですけど、私じゃ彼を取り押さえられませんよ?」
小町はベジータと魔理沙の闘いを最後まで見届けた。それはつまり、ベジータの
アレほど生体エネルギーに満ちた人間を小町は初めて目撃した。驚愕、そして同時に自分ではどうする事もできないという敗北感を味わった。
「地獄でも……見た事ない。あんな生き物は」
目線を外しながら先程の感覚を思い出す小町。その際、肩を震わせている事に映姫は気付いた。
死神である小町にここまで言わせ、若干ではあるが恐怖感を植え付けるほどの実力の持ち主。映姫は覚悟を持って決心した。
「小町、貴方にそんな重荷は背負わせないわ。貴方の役目は────」
「さあ……行くわよ」
お祓い棒を右手に、お札を左に持ち、それらを交差し構える。赤と青の霊力がカラダの中から溢れ出し、霊夢のカラダ全体を包み込む。
小町の役目。
それは能力を使い、幻想郷の強者を映姫の指定した場所に連れてくるという事だった。霊夢はもちろん、レミリアと咲夜、神奈子と諏訪子、さらには妹紅や慧音など。
そして奇しくも妹紅以外はベジータと面識のある者達が集まった。
「覚悟はいい? ベジータ、私はアンタを止めるわ」
ブラウンの瞳で睨みつけながら霊夢はそう言い放つ。魔力は徐々に上昇していき、完全な臨戦態勢へと突入していった。
金色の〝気〟を己を周りに放出させながらベジータは霊夢の目をジッと見つめる。
いつどの瞬間に飛びかかってくるかと集中して身構えている霊夢には、この時間がまるで
「……何よ。怖気付いた?」
いつまで経っても動かないベジータ。そんな彼に痺れを切らした霊夢が以前闘った時のように軽いを挑発する。
「オレを〝止める〟と?」
「……は?」
開口したベジータの言葉がよく理解できなかった霊夢は、戦闘中と言うことを一瞬忘れ、いつもの様な返答をしてしまった。
「オレを〝止める〟と言ったか?」
「……何よ。私じゃ無理だって言うの? 随分な自信───ッ!!!」
返答中に金色の風が霊夢に襲いかかる。
1、2、3とバックステップをした後、霊夢は超スピードで後方に下がり何とか金色の風から逃れた。
急な攻撃────だと思った。
しかしそれは攻撃ではなく、ベジータが荒らげたただの〝気〟である事に直ぐに気づいた。恐らく自分が言った事に対して、ベジータの気に障ったのだろうと即理解して、先程の倍くらいの距離をとった場所へ着地した。
再びベジータの目を見る。すると、彼の目からは怒りに満ちたような、それでいて失望したような感情を読み取れた。
「この期に及んで〝止める〟だと!? 生ぬるい事を抜かすな!
オレを殺しにこいッ! 粉々になるまで攻撃してこいッ!
甘い考えを捨てろ。でなければ……
霊夢だけではなく、その場にいた映姫以外。つまり神奈子、諏訪湖、レミリア、咲夜、そしてさとりが思わず唾を飲み込んだ。
同時に、自分達が思っているよりもよっぽど大変な事態であるという事を改めて理解した。
神奈子と諏訪湖は、目はしっかりとベジータに向けながらも小声で何かを話し始め、咲夜は盾の様になってレミリアの前に出た。
「だぁれがアンタの言うことなんて聞くっての。
私は私の好きなように闘う! それだけよ!」
「夢想天生───!」
今まで以上に集中しながら霊夢はそう呟き、霊夢は夢想天生を発動した。
以前のように薄っすら半透明になり、攻撃を全く受けない状態になった。
しかし、夢想天生は一度ベジータに破られている。そんな技をいきなり出すというのは普通に考えれば無謀で有るのだが、そんな悪手を霊夢がする筈もなく────
「これは……」
前とは違い周囲に八つの陰陽玉が出現し、それらが霊夢を守るように回っている。
一目見てわかった。以前の夢想天生、いや博麗霊夢は本気ではなかったという事に。
「人の事を甘いだの言ってるけど、自分はどうなの?
アンタ、
冷たい目をしながら、3メートルほど浮いてベジータを見下しながら霊夢はそう宣言する。
その言葉がハッタリでも慢心でもない事に他でもないベジータだけがわかっていた。
「あと少し……」
2人の闘いを見つめながら小さな声でそう呟いた映姫。
その映姫の言葉が聴こえていたさとりはその意味を考えたが、今この瞬間に理解するには至らなかった。
はい、第64話でした。
皆様お久しぶりです。
私の今年の目標は『去年よりも1話でも多く投稿する』です。
ではお疲れ様でした。