何がヤバイって
というわけで、どうぞ!
「フンッ!」
中国四班とアドルフとディートハルト。
まず最初に攻撃を仕掛けたのは、煙管型の吸入器で変態を遂げたジェット。
つまり中国四班からだった。
彼の手術ベースは甲殻類の『ニシキテッポウエビ』。
能力は衝撃波を飛ばすこと。
その能力を使い、自身から離れた位置にいたアドルフを狙ったのだ。
それは、
バシンッ
「ッッ!?」
「…何かしたのか?」
変異したディートハルトが衝撃を遮るように手を翳しただけで、それは防がれた。
確かにジェットの衝撃波は、アドルフを倒すには充分な威力だった。
だが、ディートハルトの手を吹き飛ばすには、不十分だった。
それだけのこと。
「…ッ!この規格外が!!」
それだけのことが、どれだけ規格外なことであるのかは別の話ではあるが。
変態前の時点で身長2m32cm・体重320kgの巨漢が、『アフリカゾウ』の特性で3mを越す巨体となっている。
もちろん、体重もそれに伴って増加していることを考えると、その重量は相当のもの。
いくら
「どうした?その程度か拳法家。…なら」
左右の指をゴキゴキと鳴らし、火星の荒れた大地を踏み締めジェットに近付くディートハルト。
その歩みは一歩ごとに地面にしっかりとした跡を付けていった。
そして、
「今度はこっちからだ!!」
「ッッ!?」
突如走り出し、加速。
迎撃のため、より強い衝撃波を出すための一瞬の『間』すらを与えない速度で、ディートハルトとジェットは肉薄した。
図体が大きいと、人は『遅いだろう』と考える。
実際、それは間違いではないケースは多い。
人体を動かす筋肉量がその肉体の大きさと釣り合わせて、求められる速さを生み出すためには足りないからだ。
その点、ディートハルトは違う。
軍人として鍛え、絞り上げた肉体は素の状態での体脂肪率、なんと3%。
320kgの体重の内、約155kgが筋肉で構築されている。
鍛え上げられた肉体と、長身が生み出すストロークの長さは、爆発的な加速と速度を生み出す。
その姿はまるで、人類が持ちえる陸上最強の兵器。
『戦車』が迫り来る様。
「オォォッッ!!」
「ガッハ…ッ!」
「うおっ!?」
ただ、全速力で走り、体当たりをする。
それだけでジェットは吹き飛ばされ、少し離れた場所にいた味方の廈門と衝突することで、ようやく止まった。
その甲殻には
「…おぉ、凄いね」
劉がその光景を見て、感想を漏らす。
ジェットは班の中でも腕利きの存在。
それがこうも一方的に一撃を喰らうのだから、相当だ。
「部下を心配している暇があるのか?」
ジェットに気をとられた不意を突き、その劉の心臓目掛けてアドルフの手裏剣が投げられる。
たとえ肉体がボロボロでも、磨き上げられた投擲術は彼を裏切ることはなく。
手裏剣はまっすぐに、劉へと向かった。
「ああ、もちろんだとも」
しかし、手裏剣は呆気なく避けられ、劉の背後へとそのまま飛んでいった。
不意を突いての投擲のはずなのに。
「アドルフ君。確かに君たちが来たおかげで、僕たちは
ニヤリ、と笑いながら、劉は何故だかわかるかと問う。
「…知るか」
その言葉の直後、アドルフの手裏剣が再び投げられるも、その前の焼き直しのように避けられた。
そして、数名の中国班員が銃を構えてアドルフとディートハルトへ向ける。
中国四班が持つ、最大のアドバンテージ。
それは近代兵器を行使できるということ。
分厚い皮膚を持つディートハルトも、銃に対しては無防備に近い。
現に、地球の象も銃によって狩られている。
「勝つのは
「良いか、加奈子」
「…私は大丈夫ですけど、でも………」
アドルフとディートハルト、四班が戦闘をしている最中。
日米合同班では小吉が一つの判断をした。
その作戦は一つの大きな障害があり、一般的には不可能と思われる。
それゆえに、この作戦で重要となる『三条 加奈子』も逡巡していた。
「大丈夫だ」
しかし、小吉は大丈夫と言う。
彼は信じていたから。
何よりも仲間を、信じていたから。
「アレックス、慶次。頼んだ」
「「…分かりました」」
そして魔球は、放たれた。
この世には『偶然』と言われる現象がある。
それはありえるはずのないことが、奇跡的に起こること。
おそらくこれも、偶然なのだろう。
だが、それを『偶然』と呼ぶにはあまりに出来過ぎていた。
人の強い想いは、時に『偶然』を引き寄せる。
その引き寄せられた偶然は、なんと呼ばれるべきであろうか。
バガンッ!
「ッ!?」
劉の背後で起きた音。
それは対空シールドの極々僅かな隙間を縫い、アレックスの投げた金属製の野球ボールが対空シールドの本体に当たった音。
それによって中国四班の銃撃のタイミングは、劉の命令のタイミングは失われた。
そして、劉の背後といえば、
カツン…
避けられたアドルフの手裏剣が、飛んで行った先。
アレックスのボールはそのまま基盤にめり込み、そのボールに手裏剣が触れた瞬間。
バチンッ!
アドルフの電撃が、手裏剣の避雷針に
その結果、金属製のボールを通じて対空シールド本体内部は電撃で焼き尽くされた。
「「「「「「「「…なっ!?」」」」」」」」
そのことに、中国四班全員が驚く。
当然だろう。
こんなことは、想定できなかったのだから。
だが、驚いている暇など存在しない。
彼らの頭上を一羽の『ツバメ』が飛び去り、その後に強烈な突風が吹き荒れた。
「…ああ、そういやいたわ。ジェット機と同じ形をした鳥…。まったく…」
思わず、劉がぼやく。
その目の前には、
「おいおい、パオパオマン。何でそんなにボロボロなんだ?」
「…この状況でふざけるな、路上最強」
路上最強の男、『幸嶋 隆成』と。
「…二人とも、ありがとうな」
「いいえ…、いつ来るかとヒヤヒヤしましたよ」
「そうか、すまなかったな。…さて、重大な反逆行為により他の全乗員を命の危機に晒した者達、幹部『劉 翊武』ならびに以下十六名。武器を持ったままで構わん」
憤怒した艦長、『小町 小吉』がいた。
『三条 加奈子』の手術ベースは、『ハリオアマツバメ』。
そのツバメは、水平飛行時の最高速度が170km/hとも350km/hともされている。
空を誰よりも速く駆ける、最速の鳥類。
小吉の作戦は本来、アレックスのボールによってメイン基盤を壊された対空シールド本体が、予備基盤で復旧するまでの極々僅かな時間の間に、三条の能力で『アネックス一号』に近付くこと。
この作戦で許された時間は、僅か0.8秒。
小吉の突入が成功しても、三条の安否の保障はできない時間だった。
それが、アドルフの電撃により対空シールドは完全に破壊され、三条は何事もなく通過できた上に、今後援軍が到着するにしても遮るものは地雷だけという状況になった。
引き寄せられた『偶然』は、なんと呼ばれるべきか。
それは人の意思によって行われた、『必然』と呼ばれるべきなのだろう。
「一列に並べ」
中国四班対日独精鋭四名。
自分で書きながら自分で興奮するという、どうしようもない自給自足ガソリン補給の末が今話です。(
いえ、勿論最新8巻とOVA・アニメ化決定も多大なガソリンになりましたが。
…なにか企画物をやりたい。
そういえば今日は2月22日、にゃん・にゃん・にゃんで猫の日ですね。
シーザー…。(遠い目
さて、次回分を書くのが今から楽しみです。(