インペリアルマーズ   作:逸環

24 / 73
久しぶりの更新です。
とうとう、とうとう輝くあの方が出ます!!


Pressure 重圧

この戦争の決着は、極々単純につく。

どちらかの大将が倒れること。

それだけで。

 

現在、劉とアシモフの戦況は拮抗していた。

…いや、実際はアシモフの方が不利。

班員たちが衝突するわずかな時間で繰り返されたやりとり、すでに数十合。

アシモフのつけていたマスクは、劉の初撃で擦り取られている。

劉の口から霧状に吹き出る『ハパロトキシン』が、その身を蝕んでいく。

しかし、アシモフの体は大きい。

それゆえに毒の周りは遅くなる。

だから、まだ動ける。

幾重にも続いた攻防の中で、二人が導いた結論。

 

『掴めば勝てる』。

 

劉から見ると、アシモフを掴んで拘束すれば『ハパロトキシン』で殺せる。

アシモフから見れば、劉を掴んで投げれば脊椎にダメージを与えられる。

どちらも、同じことを考えていた。

しかし、どちらも掴めない。

劉の二本の腕と三本の触腕がアシモフの腕を阻み、アシモフの二本の腕が劉の手を捌く。

開始から数十合。

未だその時は来ない。

だが、近づいている。

二人の距離も、その瞬間も。

 

 

 

 

 

 

ジェットは考えていた。

どうすれば目の前の男(幸嶋)を倒し、そしてスリング・ショットで狙撃してくる女(ライサ)を排除できるのか。

その思考の合間にも、掌は向かってくる。

掴まれれば終わる、その掌が。

腕を狙ってきているのは、衝撃波という遠距離からの攻撃をつぶすためなのだろう。

そして、ジェットが攻め込めない理由はもう一つ。

 

 

「シッ!」

 

「くっ!」

 

 

風切り音をあげてジェットに迫る、ローキック。

バックステップでそれを避け、僅かばかりに距離を取る。

この蹴りが曲者だった。

その理由は、リーチと速さ。

掌を広げて伸ばされた腕よりも、長いリーチの蹴り。

発達した筋肉と、最短の軌道が生み出す速さ。

腕が届かない間合いにいても、この蹴りが飛んでくる。

 

…ということではなかった。

 

本当の理由も、やはり二つ。

一つは、この蹴りを避けても軌道が変化して足を踏みにかかられていること。

もう一つは、蹴りの軌道がそのまま踏み込みへと変わること。

この二つが、大きな理由だった。

間合いを開かせない踏み付けと、間合いを潰してくる踏み込み。

この二つを、攻撃と同時に行ってくるのだから性質(タチ)が悪い。

掌を避けるために内側に踏み込もうものなら蹴られる。

外に逃げても距離を潰される。

攻撃して離れようにも、薬の効果で大きくなったジェットの腕は掴むには丁度いい的。

蹴りを放てば片足が離れた瞬間に掴まれ、終わる。

 

仲間の応援は期待できない。

ロシア班と交戦している中、仲間もそちらで手いっぱいなのだから。

 

この状況は、ジェットにとっては人生最大級に不利な状況だった。

 

…だが、これでいい。

この男(幸嶋)を自分に引き付けておければ、全体の作戦の成功率が上がる。

劉将軍が勝つまで、自分は粘っていればいい。

 

そう、ジェットは考えていた。

そして、それは正しい。

彼の目的は、幸嶋を倒すことではないのだから。

 

 

それが、幸嶋が相手でなければ正しかった。

 

 

「…ちょっと、あれやるか」

 

 

ポツリと、攻撃の嵐の中聞こえた呟き。

その直後、全身の怖気を感じたジェットは横に跳んだ。

 

チッ!!

 

ジェットの甲殻で覆われた、左の上腕。

そこに、一筋の傷ができていた。

その傷をつけた物の正体、それは。

 

 

「…お前、貫手までできるのかよ」

 

「稽古で艦長が使ってたのを見てなぁ。便利そうだから練習した」

 

 

五指を伸ばし、力を込めて固めることで刺突の力を持たせる、空手や中国拳法に見られる貫手だった。

本来貫手は、手指を強靭に鍛え上げる『硬功夫(イーゴンフー)』の鍛錬を経て習得される。しかし、今の幸嶋の手はヤシガニの固く鋭い甲殻に包まれ、そして飛躍的に向上した握力は固めるための力の底上げになっている。

貫手を使うには、絶好の代物だった。

それでも、手が適しているからといって易々とできるものではないのだが。

こともなげに、練習したからできたという言葉の裏に、どれだけの汗が隠れているのか。

ジェットにも察することはできた。

 

『路上最強』の称号(タイトル)を支えるものは、あらゆる技術・技・肉体の強化を収めてきた柔軟な思考と膨大な汗。

どのような状況でも戦える、どのような相手でも戦えるだけの技と技術。

それが裏打ちする絶対の自負と自信。

幸嶋が『路上最強』と呼ばれるようになってから数年。

彼が勝てない相手は、いまだ出てきてはいない。

そう…、それがたとえ、最新の人類であろうとも。

 

 

「(まずい…、これ以上はまずい!!)」

 

 

そして、ジェットにはそろそろ限界が来ていた。

必殺を躱し続けるという重圧(プレッシャー)と、『路上最強』と対峙するという重圧。

この二つが莫大な精神的負荷となり、彼の体力を削っていた。

見れば、自身の上司は両腕のないアシモフに足で挟まれて、地面に転がって締め上げられている。

仲間たちは数人が銃を使ってライサの狙撃を封じ込め、もう数人で格闘戦をしている。

だが、そちらはもう終わりそうだった。

既にロシア班の数人は、殺されている。

状況を考えると、7対3でこちら(中国班)が不利か…。

そう、戦いの合間にジェットが思考していると、

 

 

ダァァァンッッ!!!

 

 

一発のやたらと響く銃声がした。

そちらを向けば、

 

 

「はーい、全員戦闘行為は即時やめろー」

 

 

いた。

日の光に照らされて輝く、スキンヘッド。

それと頭部に生える、クワガタの顎。

 

 

「じゃないと撃っちゃうよ?拾ったミサイル!!」

 

 

通称、アレキサンダー。

ロシア第四班班員、『アレクサンドル・アシモフ』がミサイル搭載車を、奪い取っていた。

 

 

 

 




戦闘シーン難しい…。
もっと臨場感というか…、そういうのが欲しい…。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。