インペリアルマーズ   作:逸環

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さー!
書きたかった奴が出せた!

というわけで、どうぞ!


Imperial 混迷

アレキサンダーの傍らには、一人の遺体。

アレキサンダーが乗っているミサイル搭載車を操縦していた、『高俊(ガオジュン)』の遺体。

 

 

「ミサイルの発射コードは、こいつの7本目の指が教えてくれた」

 

 

遺体には、明らかな損壊があった。

その損壊の理由、それは拷問。

ミサイルの発射コードを知るために、痛めつけられた跡。

 

 

「撃てるぜ」

 

 

アレキサンダーの言葉は、事実上の勝利宣言。

彼が撃てるミサイルは、火星の半球に電波妨害を起こしているアンテナを破壊することができる。

それはつまり、中国班の反逆が地球に知れ渡るということ。

国家は自分たちを切り捨てることで生き残れるかもしれない。

だが、それで自分たちはどうなる?

 

 

「…チッ」

 

 

劉がアシモフの足でタップをし、降参する。

その口から蒸気のように出ていた『ハパロトキシン』は、もう出ていない。

それに伴って、ジェットもマスクを外した。

その肩は、幸嶋の右腕によって抑えられている。

今の中国班は、アレキサンダーの要望を飲むことしかできない。

 

 

「…話、続けろよ」

 

 

ジェットがアレキサンダーの話の続きを促す。

 

 

「オーケー、ベリィーグー。まあ、俺だってこれを撃って死にたくはないからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼らは忘れていた。

中国班とロシア班、そして幸嶋も。

さらに言うなら、この騒乱に関わっている全ての人員が忘れていた。

『ここ』が『火星』であり、『本来』の『任務の対象』が何であるかを。

 

 

「!?」

 

 

何かに驚いたように、幸嶋が一歩後退した。

だが、ジェットを抑えていた右腕が、残った。

 

 

 

ゴッ!!

 

 

「「「「「「「「ッッッ!!!???」」」」」」」」

 

 

一瞬黒い何かが横ぎったかと思うと、幸嶋の右腕が消えた。

正確には、『奪われた』。

そう、ここは火星。

火星の帝王(インペリアル)は、やつら。

 

 

「…じょうじ」

 

 

黒い悪魔(テラフォーマー)たち。

 

 

 

 

 

 

 

 

幸嶋の目は、目の前を過ぎていったものを視認することはできなかった。

ただ分かったのは、自身の腕が引っ張られ、引き千切られる感覚だけ。

彼は遭遇していなかったが、幸嶋の動体視力は『メダカハネカクシ』ベースのテラフォーマーの動きですら、ある程度までなら見切ることができる。

先ほどシーザーに殺された、『オニヤンマ』べースの個体の速さまでなら、問題なく見切れるほど。

だが、見えなかった。

ただ、通り過ぎる黒い影が見え、圧倒的な熱を感じただけだった。

 

 

「(…なんだ!?『バグズ二号』に、『メダカハネカクシ』より速い昆虫が…、いや!そもそも昆虫界に、あれより速い生物がいたか!?)」

 

 

小吉から20年前の話を聞きかじった幸嶋が、自身の腕を持ち去った特性の秘密を探る。

だが、いない。

『バグズ二号』には、そんな生物はいない。

なら、どうするか。

『バグズ手術』によって起きた変化。

自身の腕を捥ぎ取っていった個体の、変化を観察する。

数瞬の間。

 

 

「(…あった!背中に孔が二つ!)」

 

 

しかし、その特徴はロシア班が遭遇した『メダカハネカクシ』の物。

それだけでは、答えにならない。

幸嶋が焦りを感じたとき、軍神(アシモフ)が唸った。

 

 

「…二種類以上での、『バグズ手術』か」

 

 

アシモフは、見た。

テラフォーマーのその両手に、二つずつ孔が空いているのを。

背中と、両手に孔。

背中の孔は、『メダカハネカクシ』の。

では、両手の孔は?

 

 

「…まさか」

 

 

幸嶋には、覚えがあった。

火星に来ての、最初のテラフォーマーとの交戦。

初めての殉職者が出た戦いで、そいつはいた。

 

 

「…『ミイデラゴミムシ』か……?」

 

 

仲間(シーラ)の、仇。

そしてかつて火星で散った戦士(ゴッド・リー)の能力。

『過酸化水素』と、『ハイドロキノン』を混ぜて化学反応を起こし、摂氏100℃の『ベンゾキノン』を放出する『ミイデラゴミムシ』能力。

以前の時は両手に一つずつだった孔が、今では両手に二つずつ。

片手で『ベンゾキノン』を放出するための、改良が施されていた。

もし、その『ベンゾキノン』の威力を、推進力としたら。

もし、『メダカハネカクシ』の推進力と合わさったら。

各生物の特徴のみを発現する、言うなれば『テラフォーマー式バグズ手術』だからこそできたこと。

 

その速さは、計り知れない。

人間がジェットエンジンを積んだ車を間近で見て、目で追うことすら難しいのだから。

 

彼らはこの20年で進化はしなかった。

しかし、変化と進歩をしてきた。

彼らは欲しかった。

何もないこの星を、豊かにするものを。

技術が欲しかった。

それを持ってくる侵略者たちは、強いということを学んだ。

そこから、考えた。

どうすれば、より多く奪えるか。

答えは、簡単に出た。

 

自分たちが、より強くなればいい。

 

強いものからパーツを奪い、強くなる。

そうすれば、技術はもっともっと奪いやすくなり、より多くを奪える。

だからこそ、幸嶋がまず狙われた。

彼らは、成長していた。

黒い悪魔たちは、成長していた。

 

 

「…なるほど」

 

ズボッ

 

冷や汗を流しつつも、右腕を甲殻類共通の再生機能で生やした幸嶋。

テラフォーマーは次の獲物を選別するかのように、こちらを眺め回している。

これは、決定的にマズイ状況だ。

アレキサンダーが作った優位性を根底から覆されている。

将棋で勝っていたら、第三者が横から盤を蹴り飛ばしてきたようなものだ。

 

テラフォーマーが、幸嶋の腕を咥えて両手を後ろに向ける。

それが、彼のフルスピードの構えなのだろう。

言い忘れていたが、『ミイデラゴミムシ』が『ベンゾキノン』を放出する連射数。

なんと29回。

彼は加速を重ねることができる上、左右の放出回数を減らして舵取りもできるということ。

次はいったい誰に来るのか。

 

 

ボッ!

 

 

 

 

「ガルルァァァッッ!!」

 

「じょうじぎ!」

 

 

誰にも、来れなかった。

加速した瞬間、『ブルドッグアント』の脚力と『ライガー』の性能を駆使したシーザーが、テラフォーマーに横合いから体当たりをしたから。

加速そのままに、予測しなかった衝撃で吹っ飛ぶテラフォーマー。

だが、まだ生きている。

まだ、戦える。

 

シーザーは、別に人類を助けようとは思っていなかった。

ただ、自らの血に流れる本能に従っただけのこと。

それは、二種の王の遺伝子が訴えてる本能。

『俺より強いやつは、いてはいけない』。

だから、戦う。

捕食ではなく、戦う。

 

『万獣の帝王』対『火星の帝王』。

人類を置き去りにして、開戦。

 

 

 

 

 




置いてけぼりになった人類。(

複合バグズ手術テラフォーマー、ようやく出せた!
半年前に思いついてようやく!
長かった!
よく忘れなかった自分!(
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