どうぞ!
野生の世界において、基本的に一撃必殺はあり得ない。
なぜならば、皮膚が厚く、爪も牙も主要な血管や臓器を傷つけられないから。
なぜならば、動物の体は急所が隠れる構造になっているから。
なぜならば、速いから。
速いということは、それだけでアドバンテージとなる。
現在、人類が認識できる内での火星最速は、目の前の
『メダカハネカクシ』と『ミイデラゴミムシ』の能力を持つ、いうなれば『速度特化型テラフォーマー』。
それに勝負を挑むのは、地球に生息する全ての生物の頂点。
『万獣の帝王』、シーザー。
『ライガー』本来のスペックと、『ブルドッグアント』の能力。
最速ではなくとも、間違いなく最強。
だが、この速さが厄介。
シーザーの爪も、牙も。
当たらなければ意味がない。
「ハルルル……ッ」
「じょう…」
お互いから、目を離さないように。
一切の挙動を、見逃さないように。
いつどちらから動いてもおかしくない状況で、先に動いたのは-----
「…………………」
中国四班班長、劉だった。
正確には、動いてはいない。
ただ、漏らした。
猛毒、『テトロドトキシン』を。
その臭いを感じ取ったシーザーが、その瞬発力を活かして劉からさらに距離を取る。
それを好機と見た速度特化型が、自慢の加速と速度を持ってして追従。
幸嶋の腕を離して空いた
ほぼ、挙動なし。
しかし、確実に状況は動いた。
劉によって、動かされた。
この劉の動きが、それぞれの班員たちに動きを与えた。
「ッ!!後ろだ!ハゲ!!」
速度特化型に意識を集中させていたせいで、幸嶋の強者を見つける感知範囲が狭まっていたし、鈍っていた。
だから、シーザーの登場で余裕ができるまで分からなかった。
「なんだ」
彼女が、中国第四班の
「パスワード、聞き出せてねーじゃん」
「なっ!?」
アレキサンダーが振り返った時には、もう遅かった。
ジェットが踏み込み、衝撃波が飛ぶ。
その威力は、咄嗟に間に入った幸嶋を弾き飛ばし、ミサイル搭載車の車体を浮かせるほど。
混沌と化した戦場で、それぞれが分断・対面したことで少しずつ纏まった戦いに戻っていく。
「随分!嘗めた真似をしてくれたな!!」
「…ッウ!さすがに吹き飛ばされりゃあ痛えな」
怒るジェット対、立ち上がる幸嶋。
「仕切り直しだけど…、毒で辛いんじゃないかい?」
「…お前もだろ」
再び戦闘態勢を整える、劉対アシモフ。
「…困りましたわね」
「だか、やるしかないだろう」
「
「は、はひぃぃっっ!!」
身構えるロシア班対、待ち構える中国班。
「高俊…、本当の軍人だったよ」
「いや、お前らあいつのこと信用してなかっただろ?」
周囲の環境と同化する西対、冷静に言葉を挟むアレキサンダー。
「ゴルルルァァァァッッッ!!!!」
「じょうじ!じじょう!!」
四肢に力を蓄えるシーザー対、空気と化学物質を蓄える速度特化型テラフォーマー。
戦場は、整っていく。
大きくは動かなかったけども、それぞれが動きやすい下地ができました。
これは余談というか、なんというかですが。
ディートハルトの絵を描いたので、二話目の最後に載せました。
文書以上に拙い絵ですが、少しでもイメージしやすくなればと思います。