インペリアルマーズ   作:逸環

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久しぶりの更新です。
どうぞ!


Future 進化と変化

劉の『テトロドトキシン』を切欠に、整えられた戦場。

まず真っ先に動いたのは、

 

 

「じょー――――うじぃぃ―――――――ッッ!!!」

 

 

首と両手首にバンダナのような布きれを巻いている、速度特化型テラフォーマー。

四機のジェットを一気に吹かし、シーザーとの距離を詰める。

その姿を見ることができるのならば、まるで飛んでいるかのようと形容するだろう姿。

口を開き、肉を引き千切るために研ぎ澄まされた牙を露出させる。

圧倒的な速度で迫り、食い千切り、過ぎ去っていく。

それが、速度特化型の戦闘方法。

クロカタゾウムシ型のような、硬すぎて歯が文字通り立たないような相手以外では、確実に必殺となりうる戦闘方法。

また、たとえクロカタゾウムシ型でも、勢いに任せて間接から引き千切ることのできる圧倒的速度。

これまで実験台として葬ってきた同族たちも、皆自身の速度に反応することすらできなかった。

 

 

「グルアッ!」

 

「じじょ!」

 

 

それを、シーザーはたやすく回避した。

その脚力を使い、真横に跳ぶことで。

元々、テラフォーマーの動体視力と、シーザーの動体視力には差がある。

さらに、シーザーの目は『ブルドッグアント』の特性で強化されている。

人類やテラフォーマーが見きれなくても、シーザーには見える。

あとはただ、直線から来る相手を横に回避すればいいだけのこと。

もっとも、

 

 

「…グルル」

 

 

速度特化型の攻撃全てを避けきれるわけではない。

周囲に漂いだす、焦げ臭さ。

その正体は、シーザーの体毛がわずかに焼けた臭い。

体当たりそのものは避けられても、後に軌跡を描く『ベンゾキノン』の熱まではかわせない。

そして、痛覚の存在しないテラフォーマーである速度特化型は知らなかったことだが、『ベンゾキノン』は粘膜に付着しやすく、激痛を起こす。

今はまだ粘膜に付着してこそいないが、これ以降攻防を続けていけばいずれその時は来る。

 

どちらが不利であるか。

それは明白。

 

 

「じょう!」

 

「あら、避けられちゃったわ」

 

 

不意に、速度特化型の背後を狙って放たれた、スリング・ショットの一撃。

ライサが中国班との攻防の合間に、放ったものだった。

尾葉が空気の動きを察知したことで、回避できた。

 

シーザーには、現状で敵が増えることはない。

詳細は一切分からないが、テラフォーマーに対する強力な戦力だから。

人類のミッションは、テラフォーマーの捕獲とテラフォーマーに殺されないこと。

シーザーがテラフォーマーを狩り、人類に危害を加えない限りは敵ではない。

対して、テラフォーマー。

元より、人類の敵。

周りは全て敵。

もちろん、シーザー自身も脅威だ。

 

 

「…じょう」

 

 

不利。

圧倒的に不利。

テラフォーマーは考えた。

この不利は、どう覆せばいいのか。

自身の速度で殲滅?

いや、シーザーがいることを考えると、リスクは高いと言わざる負えない。

 

ならば、どうするか。

簡単なことだ。

 

 

「じょぉぉぉう!!」

 

 

呼べばいい。

数を、仲間を、同胞(はらから)を。

すぐに、周囲は羽音と黒に包まれた。

 

 

「なんだよ…!?こいつは…!?」

 

 

最初に声をあげたのは、アレキサンダー。

空を覆うは、無数のテラフォーマー。

 

一騎当千?

なら、万の軍勢を当てよう。

それを超える?

なら、億の軍勢を当てよう。

数は、絶対の優位。

 

これは、戦争だ。

略奪だ。

何もないものが、得るための攻撃。

『自分が』勝つ必要など、どこにもない。

 

 

「…おいおい、こりゃあ流石に………」

 

 

空を覆うテラフォーマーたちを見上げながら、幸嶋が煙草に火をつける。

その頬に伝う汗を、誤魔化すために。

 

 

「ハルルル………」

 

 

シーザーも、今は動けない。

先ほどテラフォーマーたちの黒雲(群れ)とやりあって完勝したとはいえ、状況が異なる。

周囲が囲まれているというのは同じ。

しかし、異なる点は先ほどの群れとの戦いが、実質一対一だったということ。

シーザーが交戦した相手、オニヤンマ型テラフォーマーは終始単騎での攻撃だった。

周囲のノーマルタイプたちは、あくまでも囲むための壁か進路を妨げるための壁としてしか運用していなかった。

だが、こいつ(速度特化型)は違う。

自分で狩らずともいい。

あくまでも、全体的視野で物を見ている。

 

緊張が張り詰める中、おもむろに速度特化型が腕を挙げ、指を三本立たせた状態で、振り下ろす。

 

一斉攻撃が始まるか。

人類たちが身構えるも、降りてきたのは十数体の――――――

 

 

「………ガキ…か?」

 

 

――――――テラフォーマーの幼体だった。

予想外のことに、面食らう人類たち。

だが、そんな暇などはなかった。

 

 

「なっ!?」

 

 

幼体たちは、速かった。

もちろん、速度特化はおろかノーマルタイプたちには劣る。

だが、速かった。

そして、肉体の使い方が段違いに上手(うま)かった。

小柄な肉体を十全に発揮し、まず二人がかりで一番弱っていたロシア班の『ニーナ・ユージック』の足を取り、集団から引き離す。

さらに、他の面子の前にも必ず複数で、より強い者にはより多く立ちふさがることで、それぞれが独立して戦えるように、そして有利に戦えるように戦場を区分け(・・・)した。

 

この幼体たちも、シーザー一頭がいればそれで殲滅はできる。

だが、できない。

シーザーを相手するは、速度特化型のみ。

間違いなく、相手に合わせてきている。

 

戦場が整えられると同時に、この状況がどういうことなのか、数名の頭が切れる面々は理解していた。

即ち、『教育を受けさせている』のだと。

 

 

 

 

彼ら(テラフォーマー)は、危機が訪れるたびに『進化』してきた。

500年前、火星に送り込まれた先祖たちは、環境に適応し乗り越えるため進化した。

二十年前、侵略者たちの訪れにより、二体の天才が生まれた。

そして今回。

彼らは『進化』はしなかった。

更なる天才が生まれることもなく、凡庸な個体たちが新たに生まれただけだった。

だが、『変化』してた。

彼ら全員が、『変化』した。

 

有能な…、実に有能な指揮官(天才)を失った。

彼らに指示を与え、ヴィジョンを与えていたものがなくなった。

だが、だが、だが。

指示を与えるものがなくなったということ=ヴィジョンの消失ではない。

 

『天才』は死んだ。だが、『ヴィジョン』は残っている。

 

そして、指揮官は本当の意味で優秀だった。

残していた。

自身がいなくなろうとも、種が繁栄するための方法を。

全ての『知識』を、残していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僅かな灯火しかなく、ようやく視界が得られる暗い空間。

そこに、何十体もの幼体たちが座っていた。

彼らの視線の先にあるものは、明かりに照らされた壁。

そこに残されていた。

全ての知識が。

 

 

 

「…じょうじ」

 

 

『文字』が、残されていた。

 

 

 

 




来☆襲!(

あー、ようやくここまで来た…。
でもまだまだ長いぞー。
ファイト、自分。

…そろそろ、地球サイドも書かないと。
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