インペリアルマーズ   作:逸環

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新規!
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新規の手術ベースがぞろぞろとな回です。
どうぞ!


Assassins 暗殺者たち

「…いつだ?」

 

 

マリアンが疑問を呟く。

いったい、キースはいつ薬を使ったというのか。

いつの間に薬を使用したというのか。

 

だが、そんなことは後回しにしなければならない。

 

 

「クロティルド!レナルドはもうダメだ!レナルドごと()れ!!」

 

「…ッ!アイ、サー!」

 

 

デンキナマズは体表に発電機能を備えている。

デンキウナギのアドルフは筋肉に発電機能を備えているため、自身も感電するというリスクを持っているがクロティルドは違う。

体表のすぐ下の脂肪層。

そこが絶縁機能を果たし、自身への感電をさけている。

 

 

「レナルド、ごめん!!」

 

 

仲間ごと攻撃するという一瞬の逡巡の直後。

銃の形にした手、その指先から指向性を持たされて紫電がレナルドに刺さった包丁めがけて奔る。

その電圧、350ボルト。

人が感電死するのには、十分な電圧。

 

 

「ふん、遅いな」

 

 

だが、遅かった。

電撃が、ではない。

クロティルドの行動が、だ。

仲間ごと攻撃する。

そのことによって生まれた一瞬の隙が、キースに針を引き抜きレナルドの体を絶縁性のある乾いた革靴で蹴り押すだけの時間を与えてしまった。

つまり、放電は全くの無意味。

ただ、レナルドの死体を焦がすだけ。

 

 

「なら、これならどうだ!!」

 

 

中東系の顔立ちをした男性、『セドリック・エマール』がシート状の薬を服用し、変態。

レナルドを蹴り押した体勢のキースへ肉薄し、毛むくじゃらになった腕を振りかぶる。

その力を全て使えるよう、まるでマサカリ投法のようなフォームで。

 

その生物は、森に生きている。

人に近い、しかし隔絶して違う遺伝子を持ち合わせたヒトの近縁種。

樹上での生活がメインのためか、その握力はなんと300キロ。

だが、森林の減少により住処を奪われ、今ではレッドデータに載る、儚くも力強い絶滅危惧種。

 

森の賢者(オランウータン)』。

それがセドリックの手術ベース。

 

オランウータンの握力は300キロ。

握力300キロの力で拳を固め、殴りつければどうなるか。

きちんと訓練を受けた軍人が、その力を使えばどうなるか。

オオスズメバチの針も顎も通じないチャイロスズメバチの外骨格でも、容易く砕けるだろう。

 

 

「ふん、一人相手程度なら…」

 

 

それでも、キースの実力ならば捌くことはできる。

還暦を手前になお、日夜鍛え続けているキースの実力ならば。

 

だが、それも一対一ならの話。

 

 

「おっと、ワタシたちもいますよ?」

 

「レナルドを倒したくらいで、良い気にはなっていないか?」

 

「俺たちのこと、忘れてるんじゃないぜぇッ!?」

 

「ッ!?」

 

 

左右から聞こえてきた三人分の声。

右には腕を黒い羽根に変えた白人女性と、背中を無数の針で覆った白人男性。

左には腕から狂暴な牙を生やしたエキゾチックな男性。

 

毒を使う生物は、決して珍しくはない。

むしろ、相当種がこれに該当する。

だが、それが鳥類と限定した場合には話が異なる。

その筋肉と、黒とオレンジの警告色に彩られた羽根。

そこに毒が含まれている。

自衛のために武器()を獲得した、特異な鳥。

 

華麗に舞う警告者(ズグロモリモズ)』。

それが彼女、『ブリジット・ブロンドー』の手術ベース。

 

その体は、非常に特異的だ。

全身を針で覆われ、あらゆる外敵からの攻撃を阻んでいる。

守るために特化し、そして防御力に比例し攻撃力と荒い気性を持った。

その守るための能力が、仲間と身を寄せ合うことも許さないジレンマを生み出してしまった生物。

 

猛き串刺し刑場(インドタテガミヤマアラシ)』。

それが彼、『ドミニク・ブランヴィル』の手術ベース。

 

乾燥地帯の闇に潜み、獲物を狙う捕食者(プレデター)がいる。

主にクモや昆虫を食らい、しばしばタランチュラすら捕食対象とする。

その上、時にネズミや小鳥なども襲い、食らってしまう獰猛なハンター。

強力な顎は、まさに命を絶つ鋏の様。

 

荒れ地の捕食者(ヒヨケムシ)』。

それが彼、『オーギュスタン・オートゥイユ』の手術ベース。

 

 

「フンフンフンフン!!」

 

 

ヤマアラシの針は毛が硬質化したものであり、実は抜けやすい。

自身の背から生える針を抜き、毒を持つブリジットの羽に擦り付けてから投擲するドミニク。

『ズグロモリモズ』の毒は、『ホモバトラコトキシン』と呼ばれる強力な神経毒であるアルカロイド化合物。

その針が刺されば、一溜りもない。

右からはオーギュスタンの攻撃。

キースの義手を狙った一撃は、確実に義手を破壊する威力を持っていた。

正面には、大ぶりで振りかぶられたセドリックの拳。

背後、そこにはグンタイアリのマリアンがいる。

 

だから、選んだ(・・・)

 

 

キュボッ!

 

「…は?グベラバッ!?」

 

 

瞬間。

義手の前腕、その中心に仕込まれていた電磁石が作動。

前腕部が前後に分かれ、電磁石が反発する作用に従い超速で前半分を発射される。

そのリーチと威力で胸を殴られたセドリックが吹き飛び、オーギュスタンの腕から生えたヒヨケムシの牙が、前半分を発射したことで露出した義手の前腕部の中心部を砕く。

ヤマアラシの針は、チャイロスズメバチの堅牢な外骨格には刺さってもその先、筋肉にまでは突き刺さらず毒が効果をなしていない。

 

義手は失った。

だが、これで一撃必殺は防げた。

さらに、右腕一本、それも義手と引き換えに敵を一人戦闘不能に。

 

 

「右腕一本か…。まあ、悪くはない」

 

 

不敵に笑うキース。

左腕一本となっても、その余裕。

 

 

「セドリック!?…クソが!」

 

 

オーギュスタンが即座にキースの胴体を狙い、攻撃を開始する。

キースの右腕がない今、それは簡単なこと。

 

 

「…まあ、そう簡単にはさせないがな」

 

 

カッ!

 

 

「なっ!?目がぁッ!!?」

 

 

突如壊れた義手の上腕部が発光し、フランス勢の視界を塞ぐ。

そして行動の止まったオーギュスタンを狙い、キースの毒針が、

 

 

「させるかよ!!」

 

「…視界をやられても動けるか」

 

 

刺さらなかった。

キースの腕は、額から角のような器官を生やしたラテン系の男に止められた。

 

その生物は、実に奇怪な容姿をしている。

突き出た角のような額。

普段は仕舞われ、捕食時に飛び出す顎。

その姿から付いた英名は、ゴブリンシャーク。

だが、奇怪な姿には理由がある。

角、正確には吻は電気受容体、つまりはレーダーの役目を果たす『ロレンチーニ瓶』が多数備えられており、獲物を探すのに活用されている。

深海に棲む、一属一種の古代鮫。

 

深水を見通す鬼(ミツクリザメ)』。

それが『ヴァンサン・モルガン』の手術ベース。

 

ヴァンサンは、その吻が感知した位置情報によって、視界が封じられた中を移動。

キースの攻撃を阻止したのだ。

 

 

「…我々が、やられてばかりと思うなよ?」

 

「…なるほど、厳しいねどーも……」

 

 

暗殺者の、反撃が始まった。

 

 

 

 




義手が万能。(小並感

はい、そんなわけで苛烈さを増してゆく地球編、もうちょっと続きます。
次回の更新を、お楽しみに!
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