どうぞ!
Stairway To Heaven 天国へのきざはし
「…さってと~、
キースが暗躍した地球での会議から四日後の火星。
紅を拉致したハリーは、
そこは、本来ならば極々一部の人間しか知らない物がある場所。
だが、イギリスの諜報部員はそれがあることを知っていた。
それの存在をハリーに伝えられたのは、『アネックス一号』が地球を発つ直前。
なんと出発の前日のことだった。
だが、伝えられた。
そしてその時、ハリーのプランが完全に固まった。
元々ハリーが請け負っていた任務は、『中国が保有する『不完全変態術』のデータおよび
データに関しては、地球にいた時に流すことができた。
だが、
サンプル、つまり火星へ行く『中国第四班』の班員を拉致し、イギリスへ連れて帰ることだったから。
人一人を拉致し国外へ連れていくのには、多大なリスクがある。
そのリスクをカバーできるだけの状況が、彼にはなかった。
しかし、火星という地球のあらゆる防御網から離れ限られた空間で、その状況は実現したのだ。
「待ってろよ~」
そう、全てはイレギュラーな
「『
イギリス諜報部員が突き止めた極秘情報。
それはイレギュラーな存在、『M.O.手術』を受けた人類以外の唯一の存在。
『万獣の帝王』、『シーザー』の火星打ち上げのことだった。
シーザーが乗ってきた宇宙船、『バグズ三号』には宇宙船の操作ができないシーザーしか乗らない。
更には、所詮シーザーは実験のためだけの動物。
経費削減のため片道燃料にして、火星に捨て置いても構わない。
そのため、『バグズ三号』には片道分+不測の事態に対応するための予備燃料しか積まれていない。
………はずだった。
資金提供は、イギリス。
その極秘の出資金を元手に、『バグズ三号』には往復分の燃料が積まれた。
『ハリー・ジェミニス』が、任務を遂行して帰還するために。
「…っとお~?あららららのら~」
車を走らせるハリーの目に留まったのは、身に着けている攻性防御甲冑『プレデター』に搭載された高性能レーダーに表示される反応。
そこには、大量のテラフォーマーたちがこの先にいることを示す反応があった。
ハリーの手術ベースはケシ。
物理的な戦闘能力は、ほぼ皆無といっていい。
この先にいるテラフォーマーの群れに対し、ハリーが無力なのは間違いのない事実。
「こりゃ~ちっとマズイなぁ~。なあ」
そう、ハリーは無力だ。
「…
「…あれぇ……?らんれすかぁ…?」
だが、彼にテラフォーマーが危害を与えることはできない。
「ほ~ら、気持ち良くなるお薬だぞ~?」
「ッ!!お薬!お薬ください!!」
力が入らないのか舌足らずになり、焦点の定まらない紅の目の前に注射器をチラつかせるハリーと、それに反応して目を輝かせる紅。
注射器の中身は、ハリーの体内に埋め込まれたもう一つの専用装備、『ヘブン・ステイアス』によってハリーの体液中に含まれるモルヒネを精製して作った、世界最高最悪の薬物ヘロイン。
着実に紅は、薬物依存者になっていっていた。
「あげたいんだけど、その前にやってほしいことがあるんだぁ~」
「らんれすか!?早く!早くお薬くらさい!!」
彼が、なぜ紅を連れ去ったのか。
他のメンバーではなく、なぜ紅なのか。
それにはいくつか理由がある。
1.紅がほぼ素人であり、拉致した際に抵抗が弱い
2.紅が孤立状況にあったため、拉致しやすかった
「『人為変態』して、毒撒いてちょ」
そして、3.紅の能力が、対テラフォーマーおよび対人において最も効果を発揮したから
「はひ!まかへてくらはい!!」
クスリのために、紅は即座に能力を使った。
使うのに躊躇していた、能力を。
「ふんふふ~ん」
「あはは…。気~持ち…良~い~……」
本来火星は、苔で覆われ緑の大地のはずなのに、その一角だけは黒で覆われていた。
その黒の正体は、紅の毒によって死んだテラフォーマーたちの死骸。
ハリーの道を遮るものは、なかった。
『ハリー・ジェミニス』が『バグズ三号』に到着するまで、残り四日。
ダメ、絶対!(合言葉)
舞台が火星でも地球でも、イギリスの陰謀が止まらない…。