インペリアルマーズ   作:逸環

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OVA付き10巻が発売されましたね!
まだ買えてません!(

では、どうぞ!


Tracker 追う者と追われる者

「…さーて、と~。なにも馬鹿正直に相手をする必要は、ねえよなぁ~」

 

 

ハリーが身に着けている、攻性防御甲冑『プレデター』。

その機能の中には、腕に搭載された高周波ブレードなどもある。

シャキンッ、と引き出されたブレードを振りかぶり、糸に向けて振り下ろす。

 

 

プツンッ

 

 

それで糸は、容易く切れてしまった。

それで再び、前進する車両。

なにも、馬鹿正直に戦う必要などない。

ハリーと『捕獲特化型』の間に、元より因縁などなかったのだから。

ハリーはただ、『バグズ三号』を目指すだけ。

 

だが、

 

 

「ッ!?糸を切ったのに動かねえ!?」

 

 

糸は間違いなく切った。

それなのに、車両はまだ動かない。

 

因縁がないのはあくまでも、ハリーから見た話。

捕獲特化型からすれば、目の前で仲間を大量虐殺した犯人が逃げているようなもの。

それに、彼らは求めていた。

車両(技術)』を、求めていた。

 

 

「じょう」

 

 

逃がすわけが、ない。

テラフォーマーは、総じて賢い。

『工夫』をするための知能なら、あるのだ。

ハリーが一本の糸に気を取られている間に、その工夫はされていた。

一本の太い糸ではなく、肉眼では見えないほど細い糸を、無数に車両に張り付けていたのだ。

一本一本は弱くとも、見えずか細くとも、集まれば強靭な力を持つ。

今や車両は、先程の一本よりも強い力で動きを奪われていた。

 

 

「…いいぜぇ〜。相手してやるよ、クソッタレが〜…」

 

 

逃げられない、ならば交戦するしかない。

ハリーはその決断をした。

 

 

「だけど、後悔しろよ〜…」

 

 

紅の毒は効かず、ハリーの能力は戦闘向きではない。

だが、ハリーは負けるわけがなかった。

そう、今乗っている車両はテラフォーマーが欲してやまない、『技術』が詰め込まれているのだから。

 

 

「………そら…」

 

 

荷台置かれていた、大きく長い何か(・・)が用意された。

それは、中国第四班が極秘裏に火星へ持ち込んだ代物。

それは、まさしく文明の利器。

本来他班やテラフォーマーが扱えないように音声認識によるロックがかかっているそれは、

 

 

「音声認識、『廈門』」

 

 

中国第四班班員として潜入していたハリーの偽名で、あっさりと解除された。

 

 

「蜂の巣になれ〜ッッ!!!」

 

ドガガガガガガガガッッッ!!!!

 

 

その名は、ガトリングガン。

 

瞬間、火星に火薬の爆ぜる音が響き渡った。

それが、『捕獲特化型』が最後に聞いた音。

回転する銃口から輝くマズルフラッシュ。

それが、『捕獲特化型』が最後に見た光景。

いかに素早いテラフォーマーでも、音速の数倍の速さからは逃れられない。

まるで空間から削られるかのように、被弾する毎に失われていく肉体。

全てを破壊し、そして全てから自身を守ってきた『パラポネラ』の筋肉。

それが今、何の意味もなく抉られる。

当然と言えば当然だ。

音速の数倍で迫る重厚な金属の塊を防ぐタンパク質の塊など、世界には存在しないのだから。

 

 

「いや〜、ハハハ〜。こりゃあ、劉のおやっさんに言わせりゃ、あれかな〜?」

 

 

形を失い、物理的に消えていく捕獲特化型を見て、ハリーは笑う。

 

 

「文明の利器ってスゲ〜ッッ!!!」

 

「あはは〜…、すごいれすね〜…」

 

 

火星の空に、哄笑が渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《楽しそうだなぁ…、このクソヤロウ……》

 

「…ッ!?」

 

 

瞬間、背筋が凍り付いた。

地獄の底から来るかのような、その女の声のせいで。

 

 

「…この声は…」

 

《…テメエ……、よくも紅を攫ってくれやがったな…?》

 

西(シイ)〜ッッ!?」

 

 

その声は、先程まで潜入していた中国第四班班員、西の声。

だが、ありえない。

この車両に無線が届く距離には、何の反応もなかった。

確かにアネックス本艦には巨大なアンテナがあるが、それも電波妨害用。

咄嗟に無線の画面を確認すると、その画面に現れた文字は----------

 

 

「……第三班…ッ!ロシアの高速脱出機だと〜ッ!?」

 

《固定砲台にぶつけて、しかも爆発に巻き込まれてだいぶガタガタだけどよぉ…。ゲス野郎を追いかけるのに問題はなかったッッ!!!》

 

 

----------アネックス本艦に放置されていた、ロシア第三班の高速脱出機だった。

 

そもそも、あくまでも比較した際の話だが、今ハリーが乗っているのはプランα(通常時)に使用されることを想定した物で、足が遅い。

緊急事態のために作られた高速脱出機とはそもそもの最高速度が違う。

その上、テラフォーマーによる足止め。

いくらハリーが先行していようとも、追い付かれるのは当たり前だった。

その追い付かれ、無線の圏内に入ったのが『今』だったのだ。

まだ、肉眼でお互いを見ることはできない。

だが、レーダーと無線の圏内には入った。

入ってしまった。

 

 

「…なるほど〜……」

 

 

ハリーは即座に考えた。

まだ、車両は動かない。

ここに来られるのは時間の問題。

紅は捉えている。

人質にもできる。

西はどうする?

確実にこちらを殺しにかかる。

ヘロインで堕落()とせるか?

いや、その隙すら与えてはくれない相手だ。

致命傷を負わせないよう、単純な武力で勝てるか?

否、西は自分よりも強い。

そして、持ち帰るサンプルは既に確保済み。

 

ならば、どうするか。

 

 

 

「…よし、決めたぜ〜……」

 

《こっちはとっくに決まってるよ…!》

 

 

その答えは、重なった。

 

 

「お前をぶっ殺す〜ッ!!」《テメーはブチ殺すッ!!》

 

 

裏切り者対裏切り者。

開戦。

 

 

 

 




はい、来ちゃいました。(
怒れる保護者、西さん登場です。(

どうなるでしょうねぇ、この勝負。
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