毎週日曜日。
世界を作った神すら休むこの日には、アネックス計画のメンバーたちも休日となり、思い思いに過ごしていた。
そう、思い思いに。
U-NASAの中にある施設の一つ、トレーニングジム。
不規則な時間帯で仕事をしている職員の健康管理のために、24時間解放されているそこ。
そこで彼らは、ディートハルトとアシモフは毎週集まっていた。
何のために。
「いやー、素晴らしい僧帽筋ですな」
「いやいや、お前の大胸筋もスゲェじゃねえか」
「そんなそんな。アシモフ班長の上腕二頭筋には負けますよ」
「何言ってんだ、お前の広背筋だって」
「おーい、お二人さーん。周りが引き始めてるぞー」
「おーう」「アイアイサー、艦長」
お互いの高め、鍛え上げた筋肉を褒め合う二人を、小吉が止める。
そう、彼らは筋肉を愛するために来ているのだ。
毎週日曜日は、全ての班が休みとなる。
筋肉を愛する彼らは、筋肉と語らい、筋肉とふれあい、そして筋肉を愛しに来ているのだ。
もちろん、毎週。
「そういやオメエよぉ。スゲェ身体だが、体脂肪率はいくつだった?」
「3%ですね。生まれつき男性ホルモンが多いみたいでして」
「天然でステロイド使っているようなもんなのか」
「ええ、そういうことです」
「お宅の班員はー、なんだ。お前以外に身体鍛えたりしねえのか?やたら丸いのとかいるけどよ」
「ウチは戦闘職は少ないので。ボスだって最低限鍛えている程度ですね。どちらかというと、投擲練習の比率の方が多いかと」
「まあ、
和やかに会話をしている二人だが、二人ともベンチプレス(80kg)をしながらなのだから驚きだ。
この二人からすれば、80kg程度は軽いということなのか。
余談だが、ディートハルトの様な身長が2m以上になる人は、成長ホルモンの過剰分泌による『巨人症』である事が多い。
成長ホルモンには骨を伸ばし身長を伸ばす効果の他に、筋肉を増大させる効果もある。
ディートハルトの恵まれ過ぎた体型には、これも関係しているのだろう。
「…さて、そろそろスクワットといくか」
アシモフがバーベルを台に置き、スクワット用のバーベル台へと近づく。
ガッチャガッチャと次々にウェイトを増やしていき、300kgにまで増やしていった。
それにディートハルトも続き、アシモフの後ろに立つ。
「では、私が補助につきましょう」
「ああ、頼む」
「フルですか?ハーフですか?」
「フルだな」
※フル=フル・スクワット
パワーリフティングの大会等でルールとなっている、足を平行よりも深く曲げるスクワット。
ハーフ=ハーフ・スクワット
ひざの角度が90度になったところで止めるスクワット。
どっちも凄くしんどい。
「では…」
「ああ」
アシモフの肩にバーベルが担がれ、浮く。
「「イェアー!!ライウェイベイベ!!ライウェイベイべ!!!」」
※「ライウェイベイベ」とは、「light weight baby」のこと。
大雑把に訳せば、「こんなモンクソみてえに軽いぜベイベー!!」。
調べてみたら、すごいのが見れる。
と、まあボディビル界でも極一部の人しか使わない掛け声で、スクワットを始めるアシモフと補助のディートハルト。
その掛け声に合わせ、鍛え抜かれた肉体が躍動感を溢れさせ過ぎながら上下する。
迸る汗が、膨れ上がる筋肉が全身にかかる300kgという重さを教える。
そして、合計八回のスクワットが終わったところで、バーベルが台にかけ直された。
「…アアァァァー……」
「お疲れ様です」
全身の力が抜かれ、バーベル台で体を支えるアシモフ。
いかに屈強な軍人であり、趣味が高負荷トレーニングの彼でも、それだけ辛いのだ。
「では、次は私が…」
そう言って準備をするディートハルト。
バーバルにウェイトを追加していき、最終的にアシモフよりも150kg重い450kgとなった。
バーベル自体が重さで曲がっているが、折れないのだろうか。
しかし、準備を進めるディートハルトに、残酷な言葉がかけられた。
「…すまねぇ。俺は今日はもう限界だ…、補助もできそうにねぇ…」
「え!?」
単純に、アシモフに限界が訪れたという言葉が。
「ちょっ!?アシモフ班長!?私はどうするんですか!?自己ベスト更新する気だったんですよ!?」
「…いや、本当にすまねぇ……。俺も歳だな…」
「消化不良になるじゃないですか!どうしてくれるんですか!?」
「やーやー、お二人さん。元気そうだね。どうしたの?」
消化不良のディートハルトと、疲労困憊のアシモフのもとに来たのは、中国四班の班長。
劉だった。
劉の背は高く、おおよそ2mほどにもなる。
その身長の高さゆえにのっぽの様になってしまい分かりづらいが、彼自身も非常によく鍛えられた肉体をしている。
つまり。
「補助お願いします劉班長!」
「うん、いいよー」
ディートハルトの補助ができる、数少ない人材だという事だ。
安請け合いした劉が、そっとバーバルを確認する。
「ッ!!?」
流石に陰謀を張り巡らす中国四班の長でも、450kgのバーベルは驚愕だったらしい。
ただ、口と目を思いっきり開け、驚愕していた。
「…え、えーと。本当にこれやるのかな…?」
「もちろんです」
そう言ってバーベルを担ぐディートハルト。
すでに準備は万端だ。
「…わかった、行くよ」
遠い目をしながら、劉が後ろに立って補助につく。
そして。
「「イェアー!!ライウェイベイベ!!ライウェイベイべ!!!」」
U-NASAでは、この掛け声が流行しているのだろうか。
その後、自己ベストを更新したディートハルトの雄叫びが轟き、周囲の視線をすべて集めることとなった。
なお、完全な余談ではあるが、その二日後に力み過ぎたミッシェルがパラポネラの能力を発揮し、500kgのバーベルでスクワットをしたらしい。
ディートハルトだって軍人。
普通に上官に敬語は使います。
ちなみに、トレーニング後の会話が以下。
ディートハルト(以下ディ)「そういえば、プロテインはどんなものを?」
アシモフ(以下ア)「俺は自前で用意したホエイパウダーだな。長年愛用してる、プロテインの王様ってやつだ」
劉「僕はトレーニングルームに用意されてるやつだね。結構美味しいんだよ、ここの。イチゴ味でさ。君は?」
ディ「私は牛乳で腹を壊す体質なもので…。必然的にソイプロテインですね」
劉「あー、ホエイは牛乳が原料だものねぇ」
ア「でもソイプロテインっていやあ、イソフラボンがエストロゲンと同じ働きをするから、脂肪もちっと付きやすくなるんじゃねえか?」
ディ「脂肪が付く以上に動いているので。それに、男性ホルモンが多いので」
ア劉「「あー、なるほど」」
以上、トレーニングが終わっても、暑苦しいマッスルたちでした!
今度マッスルな回をやるとしたら、ボディビルコンテストでもしますかね?(