インペリアルマーズ   作:逸環

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さて、今回はロシア三班の話です。
どうぞ!


Chimera 海月蟻

火星について、500も昔から囁かれ続けて噂がある。

曰く、火星には他の知的生命体がいた痕跡があると。

そう、衛星写真には、写っていた。

人面岩が、チューブ状の物体が、ドームが。

 

そして、

 

 

「到っ(ちゃ)ーく!!」

 

 

ピラミッドが。

 

 

 

 

「隊長、まさか本当にこんなのがあったんですね」

 

「ああ…、妙だがな」

 

 

ロシア第三班が辿り着いた、ピラミッド。

しかし、それは実に妙だった。

火星に人為的建造物があることもそうだが、それ以上に妙なこと。

 

 

「…ここに、一体もテラフォーマーがいないなんてな」

 

 

建造物というものが殆どない火星において、ピラミッドは重要な施設だということは想像に難くない。

なのに、一体も敵がいない。

見張りも、警備も、それどころか出入りするテラフォーマーすら。

一体も、いない。

 

 

「そんじゃ始めるか。俺たちの任務をな」

 

 

いないと、油断してしまった。

 

 

「じょおじ!」

 

「「「「「「「ッッッッ!!!!!???」」」」」」

 

 

突然だった。

突然背後から襲われ、一人が頭部を抉られて死んだ。

そのままの勢いで『エレナ・ペルペルキナ』まで殺傷しようと襲いくるが、班長である『シルヴェスター・アシモフ』がその体を押すことにより、右腕を犠牲にして助けた。

 

 

「ふんっ!!」

 

 

残った左腕で口を掴み、遠くへ放り投げるというおまけ付きで。

 

 

「エレナァッ!サイン(ヴェー)でいく!『網』を出しな!」

 

「はい!」

 

 

エレナが脱出艇に駆け寄り、ハッチを開いて『網』を取り出す。

テラフォーマーたちを捕獲するための、『網』を。

 

 

「敵は一匹!薬は節約!!訓練通りにこの単体のアホを生け捕りにする!!!」

 

 

アシモフの命令で、各員が薬を用意し身構える。

エレナだけが、『網』を持って構える。

そしてテラフォーマーは、『網』を持ったエレナへとまっすぐに駆けていく。

 

この『網』、正確には『対テラフォーマー発射式蟲取り網』という。

地球に存在するテラフォーマーたちのクローンの筋力データを基に、たとえその3倍の筋力で持ってしても決して切れることのないそれは、発射筒から放たれると対象を包み込み、もがけばもがくほど絡まるという性質を持っている。

 

 

「ターゲット、捕獲」

 

 

ボッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

使えればの、話だが。

 

まるで瞬間移動のように突如加速したテラフォーマーが、エレナの首を持っていた。

そう、彼女の首を、速度と筋力でもぎ取っていったのだ。

それは、『バグズ2号』の遺産。

ガス噴射による高速移動術、『メダカハネカクシ』の能力。

 

 

「じょうっっ!!!」

 

 

そしてテラフォーマーは呼ぶ。

害虫(ゴキブリ)は、1匹いれば30匹はいるのだとでも言うように。

 

 

 

 

 

 

 

ゆるくウェーブのかかった金髪に、軍隊の荒くれ者の多いロシア3班において気品ある顔立ちと物腰。

その女性が粉末状の薬を服用すると、姿が大きく変容した。

額からは触角が現れ、服の袖や裾からは夥しい数の長く、そして黒い触手が出現する。

 

 

「…わたくしに触れない方が、良くってよ?」

 

 

その言葉を合図にしたのか、数体のテラフォーマーが彼女へと、『ライサ・アバーエフ』へと駆け寄る。

その腕で、棍棒で、彼女を殺傷せしめんと。

 

 

「…せっかくご忠告申し上げましたのに。残念な方々………」

 

 

彼女の触手が動き、近付ききられる前にテラフォーマーたちの皮膚に触れる。

そのまま彼女は、もう見る必要がないとでも言うかのように目を閉じた。

 

 

どしゃっ!

 

 

っと、触手が触れた全てのテラフォーマーたちが、膝から崩れ落ちる。

目は反転して白目を向き、口からは唾液が流れている姿から、間違いなく絶命していることが分かる。

 

 

「わたくしと出会わなければ、後数秒は長生きできたでしょうに…」

 

 

 

 

 

艦長である小町を除く全ての隊員たちは、全員二度『M.O.手術』を受けている。

正確には、その二度でワンセットの『M.O.手術』なのだが。

『M.O.手術』では能力を得るための手術とは別に、『バグズ手術』の目玉である『開放血管系の併用』と『強化アミロースの皮膚』を獲得するために、多種多様な形状に合わせられる『ツノゼミ類』をベースとした手術が施される。

しかし、『ライサ・アバーエフ』は違う。

『ツノゼミ類』ではなく、別の昆虫で『バグズ手術』の恩恵を得たのだ。

何故か。

それは、彼女の手術ベースに関係する。

 

世界最強の猛毒を持つ生物、『キロネックス』。

それが、彼女のメインの手術ベース。

触れる者皆毒に(おか)し、死に至らしめるこの生物の、一体何が問題であるか。

クラゲであるから、肉体が脆弱であるということだ。

さらに、毒を打ち込むための刺胞も、魚の鱗は通せてもテラフォーマーの甲皮には通用しない。

故に、テラフォーマー相手では、ただ殺されるだけの存在となることが予測されていた。

 

しかし、偶然にも『開放血管系の併用』と『強化アミロースの皮膚』を持ち、突き刺すための針を持った生物が、彼女の手術適合生物の中にいた。

 

そして、その異例の『M.O.手術』は行われた。

『ツノゼミ類』の代わりに『オオサシハリアリ』を使用するという、異例の『M.O.手術』が。

 

彼女が駆使する触手に存在する刺胞その全てが、彼女が適合したもう一体の生物『オオサシハリアリ』の物となっている。

 

そう、彼女はアリの筋力と持久力に針を持ち、クラゲの猛毒の触手を操る魔の生物。

 

 

淑女(わたくし)に無断で触れようとするから、そうなるんですのよ?」

 

 

『マーズ・ランキング』16位。

ロシア貴族の血をひく女性、『ライサ・アバーエフ』。

 

 

 

 

 

 

ライサ・アバーエフ

27歳 女性 ロシア

ロシア第三班戦闘員

手術ベース:キロネックス

マーズ・ランキング:16位

瞳の色:青

血液型:A型

誕生日:11月24日(いて座)

好きなもの:婚活・女子会・恋愛話

嫌いなもの:結婚を急かされること

 

艦長を除く全隊員の中で、唯一の『ツノゼミ類』以外による『M.O.手術』をした存在。

没落したロシア貴族の血を引いているらしく、その物腰は気品がある。

そして傍から見ると軍人勢のロシア3班の中で浮いている。

しかし、ライサも軍人であることには変わりない。

最近同僚たちが寿退役していく中婚期で焦っており、よくエレナや他の班の女子を集めて女子会を行い、恋愛トークに花を咲かせることが多かった。

密かに同班のイワンを狙っていたりするが、歳の差やその姉であるエレナの睨みにより行動に移せたことはない。

Eカップ。

 

 

 

 




ツノゼミの代わりに、他の昆虫を使用した『M.O.手術』でした。
タイトルのキメラは、まあ、そのままですね。


P.S.
拙い自分絵のシャーペン描きですが、1話目で幸嶋の絵を載せました。
人様にお見せできるほどのものではありませんが、イメージしやすくなっていただければと思います。
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