予告していたハロウィン特別編です!
カボチャのランタンが笑う今日。
アネックスメンバーたちはどう過ごしていたのでしょうか。
どうぞ!
「10代集まれー!!燈と八重子もカモン!」
「なーにー?晶ー?」
「なんか面白えことでもすんのか?」
「…俺と八重子がついでなのはなんでだ…?二十歳だからか…?」
10月20日、牧瀬が日米合同班の若い連中を唐突に集めた。
勿論、理由なく集めたわけではない。
「問題!今日から11日後には何がある?はい!シーラ!!」
「え!?あ、あたし!?え、えっと、ハロウィンでしょ?」
「正解!第二問!トリック・オア・トリートとはどういう意味か!!はい!マルコス!!」
「お菓子をくれなきゃ悪戯すんぞイカ野郎!!」
「イカ野郎は余計だけど正解!第三問!ハロウィンで欠かせないものは?はい!リース!!」
「ふえっ!?わ、分からないわ!」
「はい!八重子!!」
「私なの!?えーと…そうだ!仮装!」
「正解!第四問!お菓子をもらえなかったら何ができる?はい!アレックス!!」
「さっきのマルコスの答えにもあったけど、悪戯だろ?」
「正解!第五問!つまりハロウィンはどういう日?私の望む答えを出すように!はい!燈!!」
「晶の望む答え!?ハッ!?」
「いーち、にーい、さーん」
「何のカウントダウンだよ!?ちょっ!?なんか怖い!?」
「しーい、ごーお、ろーく」
「なんか手をワキワキさせてるゥゥッ!?ダメだったら美味しく頂かれちゃうのか!?」
「しーち、はーち、きゅーう」
「合法的に悪戯ができる日!!」
「………ファイナルアンサー?」
「…ファイナルアンサー………」
「……チッ。正解!」
「ヨォォォォッシャアアァァァァァッッ!!!!」
「「「「(………今、舌打ちしてた…)」」」」
牧瀬による怒涛の問題攻めを切り抜けた面々は、心に少しのトラウマを抱えながらも彼女が言いたいことを理解した。
ラストの燈に関しては貞操の危機もかかっていたが、それについてこれ以上追及する者はいない。
だって(性的に)食べられちゃうから。
そして、牧瀬が高々という。
「名付けて!『ハロウィンにかこつけて悪戯(意味深)大作戦』!!」
「「「センスがねぇ!?」」」
あまりにセンスのないその作戦名に、3バカトリオからツッコミが入る。
何せ、欲望をそのまま言っているだけなのだから。
アネックスの皆、逃げて。
超逃げて。
「で、でもアキラ!そんなことはいくらなんでも「悪戯の代わりってことで、艦長とデートできるかもしれないわよ?」気合い入れて仮装するわよ!!」
「…あー、シーラ艦長のこと好きだから」
「脈はないのにな…」
「まな板のくせにな」
「そこの3馬鹿!うるさい!!」
3馬鹿の容赦のない
だが、
「…ま・な・い・た?」
まな板と罵倒された
「…テメーら………殺す」
「「「ギ、ギャアアアアァァァァァァッッ!!!?」」」
こうして、騒動と喧騒と流血から、日米合同班の若者たちによるハロウィン大作戦が開始された。
「……劉さん、静花は(周りのノリに着いていけなくて)辛いことも多いけど元気です……」
なお、リースの悲しい呟きは、騒いでいる誰にも聞かれることはなかった。
そしてハロウィン当日の朝。
彼らは皆仮装をし、準備は万端となった。
・TARGET1:幸嶋 隆成
最初のターゲットとなったのは、『路上最強』こと幸嶋だった。
最初からハードルが高すぎる気がしないでもないが、高いハードルから先に済ませていこうという考えなのだろうか。
部屋の中からはプロレスであろうテレビの音が聞こえており、中に人が居ることが分かる。
「…行くわよ」
言いだしっぺの牧瀬が、幸嶋の部屋の扉をノックする。
数秒後…。
「どうしたー?」
「「「「「「「「トリック・オア・トリート!!」」」」」」」」
扉が開き、幸嶋が顔を出したところを全員でお決まりの文句を口にする。
が。
「……ほーお?悪戯?俺相手に?」
「ヒッ!?」
実は一番年下のリースの喉から、引き攣った悲鳴が上がる。
根本的な相手が悪かった。
幸嶋は千葉県の過疎からギリギリ免れているような村の出身だ。
英語は世界中を喧嘩旅している内に覚えたが、ハロウィンがどういうものなのかなんて、全く知らなかった。
せいぜい、ネズミーなランドで10月くらいにハロウィンがどーちゃらやってるくらいにしか知らなかった、
勿論、世界を回っていれば10月31日にハロウィンでお菓子を貰いに行く子供たちを見かけることがあっただろう。
しかし、この男が世界を回っていた理由は『強い奴と戦いたい』というものだったため、自然と都市部の住宅が少ない地域にいることが多かった。
その結果、ハロウィン商戦を見ることがあってもハロウィンを理解していない22歳が出来上がり、
「……できるとでも…?」
『
「ブクブクブク……」
「八重子が泡吹いて倒れたぞ!?」
「担架!担架ァァァッッ!!」
そのプレッシャーに八重子が倒れ、隣にいたアレックスが驚き、燈が担架を求めるという大惨事に発展していく。
正直火星をこいつらに任せて大丈夫なのかと不安になる光景だが、若い連中がハッチャケているだけなので大丈夫だ。
そのはずだ。
そう信じている。
そんな恐慌状態に陥っている幸嶋の部屋の前だが、捨てる神あれば拾う神ありとはよく言ったもの。
「あんたらどうしたの…?」
幸嶋の部屋の奥から、
「こいつらが俺を嘗め腐ってた」
「…はい?」
「
「……え?それってハロウィンの…。え、まさかハロウィンを知らないのかい、あんた?」
「は?」
「………マジか。ちょっと待ってなよ」
どうやら、イザベラは全てを理解できたらしい。
部屋の奥へと戻り、戸棚から常備されていたらしい板チョコを持って戻ってきた。
「ほら、これしかなかったけど、これで我慢してくれよ」
「アザーッス!!」
「ほら!行くわよ皆!!」
「マルコス!八重子運ぶの手伝え!!」
「任せろ!」
若い連中がドタバタと逃げていく中、展開がよく掴めなかった幸嶋がイザベラに訊く。
「…なあ、ハロウィンってなんなんだ?」
「…まあ、教えるよ」
・TARGET2:小町 小吉
「今度は艦長よ!」
「イエーッ!!」
今度はハードルがグッと下がり、艦長である小吉がターゲットとなった。
小吉に恋する乙女のシーラも、この日一番の盛り上がりを見せている。
「八重子はどうした?」
「保健室に寝かせてきた」
おそらく一番簡単であろう人に行くのに、残念ながら参加できない者もいるが。
そして、全員で小吉の執務室の前に集まり、今度はシーラがドアノブに手をかける。
「トリック・オア・トリート!!…………あれ?」
「どうしたの?」
「………いない」
シーラが扉を開けるも、その中には誰もいなかった。
いつもならば仕事をしているはずの時間なのに。
ならば、どこにいるのだろうか。
「「「「「「「「んー…?」」」」」」」」
とりあえず全員で執務室の中に入り、小吉がどこに行ったのかを考える。
トイレにでも行ったのか?
それとも小腹が空いたので食堂か?
もしくは他班の班長と話しているのか?
はたまたどこか外に行ったのか?
等と全員で頭を捻っていても、解決するものではないが考えてしまう。
そうして考えていると、自然と注意力や警戒心は散漫になってしまうもの。
「…おい、お前らそんな恰好で何をしているんだ?」
「「「「「「「「ッッッ!!!??」」」」」」」」
突如彼らの背後、つまり扉の方から掛けられた声、
その声に驚き振り向くと、そこにいたのは日米合同第二班班長にして、副艦長のミッシェルだった。
「…あー、なるほど。そうか、今日はハロウィンだったか」
「あー、そうなんですよ。…艦長、どこにいるのか知りません?」
一同を代表して、牧瀬がミッシェルに小吉の居場所を訊く。
日頃男性陣(ただしイケメンに限る)にちょっかいをかけてはミッシェルに制裁を受けているというのに。
イケメンのためなら死をも厭わない姿勢が持ち味の彼女だからこその行動だ。
「…お前に教えたくはないんだけどな」
「失礼ですよ、副艦長」
「お前の存在が失礼だ」
「存在否定!?」
日頃の行いのせいか、ミッシェルから全く信用されていないという事実に牧瀬がショックを受けるも、周囲は全くの自業自得であると知っているため一切の同情もない。
むしろ、一部は被害者なのでもっと言ってやれと思っているほどだ。
この女、本当に業が深い。
「…まあ、良いか。お前ら全員いるんだし、ストッパーにもなるだろうからな」
が、今日はハロウィン。
多少のお祭り騒ぎなら、ミッシェルも見逃してくれるようだ。
あくまでも、牧瀬に対するストッパー付が条件ではあるが。
「艦長はな―――――――――」
「…まさか、
「想像もしていなかったわ…」
「艦長なら、ありえなくはないけどな」
ミッシェルから教えられた場所で、彼らは小吉を見つけた。
そこは――――
「病院の小児科病棟の、ハロウィンパーティーか…」
「「「「「「「「トリック・オア・トリートーー!!!」」」」」」」」
「なんだって?!悪戯は嫌だなー…。よーし!オジサン奮発しちゃうぞ!!」
「「「「「「「「やったー!!!」」」」」」」」
――――――彼らが扉の陰からハロウィンらしい飾り付けをされたプレイルームを見ると、U-NASAの病院、その小児科に入院している子供たちがそれぞれ可愛らしく仮装をし、小吉からお菓子を貰っている光景があった。
「…結構前から企画していたらしいな、あれ」
「みたいね…」
「この後も、プレイルームに来れない子たちのために病室を回るらしいわよ」
U-NASAが誇るこの最新設備の病院でも、中々病状がよくならず入院が長引く患者たちはいる。
その事実は患者たちの精神面にネガティブな影響を与え、闘病に対する意欲の減退もしばしば見られるほどだ
特にそれは、小児では顕著となる。
幼く精神は未発達で、何より本来ならば親と過ごしているはずの時間を孤独に過ごすこととなるため、その不満や不安、孤独感から治療を拒否したり悲嘆にくれる子供までいるほどだ。
そのことを直接関係はないとはいえ、自分の職場と同じ敷地内で起きていることに胸を痛めていた小吉は、以前からこのハロウィンイベントを企画していたのだ。
少しでも、子供たちの心が軽くなるように、と。
「「「「「「「「流石アネックスのお父さん…」」」」」」」」
物陰からこっそりとその姿を見ていた彼らの心は今、一つとなっていた。
「…邪魔しちゃ悪いし、行きましょう」
「……そうね。今日くらい、艦長はあの子たちに譲ってましょう…」
「…シーラとアキラが…!」
「
シーラと牧瀬の、小吉を子供達に譲るという発言は他のメンバーに強い衝撃を与えた。
特に、牧瀬がそう言ったことが強い衝撃だった。
まあ、普段の行いが行いだからしょうがない。
「…私だってね、イケメンに手を出すばっかりじゃないのよ」
そう言いながら、メンバーたちの背を押して来た道を急かしながら戻る牧瀬。
その顔は俯いてよく見えないが、頬は少し気恥ずかしそうに染まっていた。
「あ、そうだ」
「どうしたの?」
ふと立ち止まった牧瀬に、加奈子が首を傾げながら声をかける。
さっきの地点で終われば、まあまあの良い話で終わったのだろうが、そうはいかない。
牧瀬がいるのだから。
「トリック・オア・トリートよ。イケメンたち」
「「「ッッ!!!??」」」
彼女は捕食者。
何も獲物を捉えずして、終わるわけがなかった。
「大丈夫…。痛くはしないし…、むしろとッッても気持ち良くしてあげるからッ!!」
「「「ぎ、ギャアアアァァァァァッッ!!!??」」」
その後、牧瀬の手によって全身を弄られ、体のあちこちにキスマークを付けられた三馬鹿が発見されるのだが、この件はアネックスメンバーの精神保険のために『ハロウィンの悪霊が三人を襲った』ということとされた。
なお、牧瀬はミッシェルによってフランケンシュタイナーからのキムラロックという手酷い折檻を受けた。
番外編:ハリー・ジェミニス
「……なあ、西~」
「あん?」
中国四班の談話室。
数日前にカボチャと悪戦苦闘しながら紅が作った不恰好なランタンがロウソクを燃やすそこで、廈門ことハリーと西が話していた。
ハリーの手には、一枚の手紙が握られている。
そこに書かれていたのは、
「……いっそお前でいいから結婚を前提に付き合ってくれないか~…?実家の親から、結婚を催促する手紙が来てな~……」
中国語で書かれた、彼の結婚を催促するものだった。
実際、彼ももう三十代。
そろそろ、と言うよりだいぶ前には結婚を考えていなければいけない歳だ。
「お断りだよ、他当たりな」
「だよなぁ~…」
それをにべもなく断る西と、断られるだろうと予想してはいたハリー。
実際のところ、立場上断ってくれなければ困るので、絶対に断りそうな西だからこそ、そう言えたのだが。
「与太話は終わりか?」
「わあ、ひで〜…。まあ、元々冗談のつもりだったしな〜。俺もまだ結婚する気はね〜よ〜」
「なら、私は紅のところに行く。…あ、そうだ。同じ質問、紅にもしたら金玉潰すぞ…?」
「しね〜よ〜。紅はまだ子供だろうが〜」
「なら、良い」
そう言うと立ち上がり、スタスタと部屋を出て行く西。
残されたハリーが、手紙を読み返しながら呟く。
「…なーにが『
キースからの連絡のために使われる偽装された住所と、手紙の冒頭に書かれていた一文。
それだけで彼は理解した。
あの首相から強制的にトリートされた、と。
こっちからはお菓子をまず送れないからとはいえ、あの野郎という怒りが募る。
手紙の字が女性の字ということから考えると、おそらく秘書のルクスかウェルに書かせたのだろう。
手紙の差出人が存在しない母親名義ではあるが、変なところでリアリティを求めて来たものだ。
「…まったく〜……。こんなことのために偽装住所はあるんじゃねぇぞ〜…」
手紙を仕舞い、珈琲を淹れるために立ち上がる。
イギリスといえば紅茶のイメージがあるが、彼自身は珈琲の方が好みだった。
そもそも、イギリス自体はコーヒーハウスの国だったのだから、珈琲党の人間がいてもおかしくはないだろう。
少し濃いめに淹れた珈琲に、砂糖を二杯とミルクを少々。そこにカレーのスパイスにもなるクミンを挽いた物を香り付け程度に加えて一口。
「……ふぅ」
常に敵地の中にいる彼の、安らかな午後の一時。
ふと見れば、備え付けで用意されている茶菓子のチョコレートが目に入る。
それを一つ手に取りラッピングの文字を読むと、どうやら中にオレンジピールが混ざっているタイプのチョコレートらしい。
「…トリック・オア・トリート………か…」
お菓子か、悪戯か。
子供の頃、毎年言っていたこの言葉。
いつの間にか言われる側になっていたが、今でもあの特別な時間は忘れられない。
トリック・オア・トリート。
「…今日は
封を開けて、一粒口に放り込む。
口に広がる、濃厚な甘さと爽やかな酸味が、甘苦い珈琲と良く合う。
今日はハロウィン。
たまには休んだってバチは当たらないはずだ。
「…ああ、そうだ。紅に菓子をやらないとな〜」
いくつかお菓子を手に取り、ポケットの中に入れる。
そう、もう自分はお菓子を貰う側ではなく、あげる側。
紅がどんな顔をするのか想像し、思わずククッと笑いながら珈琲を飲み干す。
ハロウィンは子供だけが楽しいイベントではない。
大人には大人の楽しみ方があるのだ。
部屋を出るハリーを見送るのは、不恰好なカボチャのランタン。
そのランタンの顔は、楽し気に笑っていた。
ハロウィンにも、色々な楽しみ方があります。
自分が最も楽しい方法で、ハロウィンを楽しみましょう!
それでは!トリック・オア・トリート!