中々本編が進まない…!
でも頑張ります。
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静花が敵を引き裂いたのと同じ瞬間。
燈もまた、戦っていた。
相手は『マイマイカブリ』をベースとした、バグズ手術を施されたテラフォーマー。
その特性は、タンパク質を分解する酸の放出。
そして燈のベースは『オオミノガ』
その特性は、タンパク質で構成された鋼鉄の糸。
現時点で言えることは、燈にとって相性は最悪だという事。
特性である糸が腐食され、溶かされてしまうのだから意味がない。
ならばどうするか。
燈は別に、この能力頼りの戦い方しかできないわけではない。
寧ろ、それは戦闘における手段の一つ
彼は古流柔術である『膝丸神眼流』を修めている。
つまりそれは、無手でも戦えるという事。
「グ…ガハァ…ッ」
「じょうじ」
もっとも、戦える=勝てるというわけではないが。
今、燈は膝をつき、マイマイカブリ型は片腕を失いながらも立っていた。
二人をこの状況にした原因はいくつかあるが、大きく上げてしまえばそれは、そう。
ヒトとテラフォーマーの違いだろうか。
途中まで、燈は優勢だった。
打製石器のさすまたによって攻撃を受けるも、腕を伸ばした構えを事前に取っておくことで相手の肩に触れることができた。
そこからは、体に染みついた反射行動。
マイマイカブリ型の左腕を取り、そのまま
これがルールのある試合か、人間が相手ならばこの時点で燈の勝利だっただろう。
テラフォーマーに痛覚はない。
だからこそ、片腕を
マイマイカブリ型が無理矢理、左腕が圧し折れ引き千切れながらも上体を起こし、袴の中に隠し持っていた銃で超至近距離から燈に発砲。
そのダメージで動けなくなった燈はそのまま蹴り飛ばされ、なんとか体を起こしたというところまでが現状だった。
一応、事前に身体中に糸を巻き付け、防弾チョッキの様にしていたおかげで弾は身体を傷付けてはいない。
しかし、衝撃によるダメージはある。
実際、今の攻防で肋骨が何本か折れてしまった。
この時点で燈は気付いた。
彼らがこの二十年間、強くなるための努力を続けてきていたことに。
二十年ごとに訪れる外敵から身を守り、そして奪うための努力を。
そして目の前の敵が、強いという事を。
「……だからなんだってんだ」
それでもなお、彼は立ち上がる。
「…絶対に帰って!ワクチンを作るんだ!!」
負けられない理由が、死んでなどいられない理由があるから。
気合いを入れて、無理矢理立ち上がる。
だが、勝算などはない。
目の前の敵は、自分の糸も技術も通用しない相手。
ならば、どうするか。
「こんなところで死ねるか!!」
それでも、拳を握る。
地球に残してきた、約束を果たすために。
その同時刻。
「……お願いです」
奇跡の子たちとは別行動をとっていた日米合同班の八重子から、震える声で中国第四班に向けて通信がされた。
「…三人の場所を教えるので、私たちは助けてください……。もう…限界……!」
通信用のマイクに向け、その眼に涙を湛えて懸命に訴えるその内容は、仲間を売っての命乞い。
必死に、必死にその命を繋ぐために、折れた心で訴える。
「……罠じゃないかな?」
「どうだろうな…?」
その通信の先にいる者は、戦車に乗る中国第四班のジェットと死んだはずの
しかし、悩む。
これが嘘、もしくは罠である可能性があるのだから。
もし罠であった場合、これで迂闊に近寄ってしまっては自分たちが危ういかもしれない。
それならば、アネックス本艦に籠城し続けた方が良い。
「一応、この地点から動いてはいないみたいだけど?」
「そうだな…」
本来、自分にはそこまでの権限はないが、この状況で一番安全な手を打つならば、
そこまで思考し、その考えを伝える。
「…よし、ミサイルを使うぞ。それで
「了解」
ミサイルで遠距離から、安全に危険因子を排除し、その上で目的の二人を誘き寄せる。
おそらく
そもそも、たとえ巻き込まれようともミッシェルと燈さえ捕えることができればいいのだ。
更に言うならば、偶然の産物であるミッシェルも不要であり、あくまでも欲しいのは燈だけ。
「設定完了だよ」
「…撃て」
「発射」
だから、これで良いのだ。
躊躇いなど、ない。
ミサイルが飛び、八重子がいる高速脱出機へと飛来する。
それは彼女にも目視できた。
どれだけ速かろうとも、遠くから迫るのだから見ることはできる。
「……恨んでやる…」
迫り来るミサイルを前に、震える声で呟く。
「外したら…恨んでやる……」
「当たれオラァァァァーーーーッッ!!!!」
ミサイルを放った中国班にではなく、ミサイルを迎撃するためにボールを持って待ち構えていたアレックスに。
メジャーリーガーを目指してきた彼のコントロールと、オウギワシの握力によってボールが、彼の専用装備である『ランディ・ジョンソン(ズ)』が、ミサイルに向けて放たれた。
そもそも、八重子は仲間を売ってなどいなかった。
通信をすればおそらく、
それをアレックスが迎撃し、その爆炎を狼煙として離れ離れの仲間たちと合流する。
そういう作戦だったのだ。
真っ直ぐに、真っ直ぐにミサイルへと飛んでいくボール。
二つの飛行物体が当たる瞬間、
「「ッッ!!?」」
突如ミサイルの飛行軌道がブレ、ボールは外れてしまった。
いったい何故?
回避装置でもついていたのか?
それとも他の理由?
不幸な偶然?
「…クソッ!」
様々な要因が頭をよぎるも、時間はない。
即座にアレックスがボールを構えるが、
「………恨んでやる…」
その瞬間には、間に合うことはない。
涙目で、半笑いで八重子が呟き、諦める。
「八重子ォォォォーーーーーッッ!!!」
ミサイルが、着弾した。
「………………あれ?」
何も起きなかった。
着弾の直前に更に軌道がブレ、ミサイルは地面に墜落しそのまま爆発することはなかった。
「何が起きた!?」
「不発しちゃったのかな…!?」
「いや、違う!」
その結果をレーダーで知った中国第四班では、混乱が起きていた。
何故、高性能のミサイルが不発したのか。
それも、軌道が途中でブレたのか。
回避装置は積まれていなかったのに。
だが、ジェットの脳裏にはあることがよぎり、そしてそれが真実であろうと直感していた。
「あの時だ!ロシア班のハゲが俺たちの戦車を奪った時!俺たちがアネックス内で切断された砲塔を確認した時!あの時既に工作されていたんだ!!ミサイル
アネックス本艦から離れた、ロシア三班とアドルフ、ディートハルトがいる荒野の一地点で、『アレクサンダー・アシモフ』は一人祈る。
「……ちゃんと、届いてくれよ…!」
自身が仕掛け、そして託した物が無事に目的の人物へと届くことを。
「………受け取ったぜ…」
それは武器庫に仕舞われていたため、脱出時に持ち出すことはできなかった。
だが、それは今届いた。
アレクサンダーがミサイルの砲塔を切断するのに使用し、そして砲弾が爆発しないよう細工した後、そのミサイルに括り付けていた
兵器に使用される合金すら切断する圧倒的な切れ味を誇り、彼の特性に合わせた複数の機能を持つ
その機能の内の一つは、特殊な音波によって持ち主のみにその在処を伝えるもの。
それが先程、ミサイルが発射されたことで外に出たことにより、彼の感覚野に感知することができるようになった。
後はそれを、鋼鉄の糸を伸ばして捕まえただけの事。
「……さあ、ここからは俺も武器を使わせてもらうぜ」
鞘から抜き、目の前のマイマイカブリ型に対して構える。
これで彼はとうとう、十全となった。
これで彼の持ちうる技術の全てが
彼の手に握られたそれの名は、
「膝丸神眼流、『膝丸 燈』…。いくぞ!!」
対テラフォーマー振動式忍者刀『膝丸』。
燈のもとに届いた
次回、決着です。
そしてそれだけではなく…。