いえ、やらかしてる方ではなく。
「あー、班長?」
「…なんですか?」
「班長の日頃の行いのせいでしょうかねぇ、この状況は?」
「怒りますからね?先輩」
「へいへい、黙ればいいんだろう?」
停止したヨーロッパ・アフリカ脱出艇の中、2人の男が気安く会話をしている。
片方はヨーロッパ・アフリカ第六班班長、プレイボーイな言動が多い美青年『ジョセフ』。
『アネックス1号』からの脱出時に、テラフォーマーを両断した
もう片方は、とてもとても小柄な男だった。
身長は160cmあるだろうかというところ。
しかし、その身体は身長というハンデを補って余りあるほど、筋肉質で力強かった。
「班長!バルトロメオさん!何でそんなにリラックスしていられるんですか!?」
「「いや、だって、ねえ?」」
『アネックス1号』が落とされたさいに発令された、六つの班に分かれて避難・集合する『プラン
高速脱出艇でヨーロッパ・アフリカ六班が逃げた先にあったものは、テラフォーマーたちによる待ち伏せ。
それも、網を使って脱出艇を捕獲するという方法だった。
そして待ち伏せというだけあり、周囲には何体ものテラフォーマー。
目算で30体以上は軽くいるだろう。
そして、その数は徐々に増えていく。
黒き害虫の軍勢は、正しく絶望の象徴。
「「こいつ(この人)がいるし」」
しかし、2人にとってそれは違った。
自分が指差す男がいるならば、この状況はさしたる脅威ではない。
そう、認識していた。
「皆はこの中で待ってて」
「ここは俺たちが」
「「殲滅する」」
そして2人はハッチを自分たちが出る分だけ開け、外へと飛び出した。
「さーて、テラフォーマーたち。今すぐ神の御許へと跪き、改心し改宗すると言うのならば助けてやろう」
バルトロメオは錠剤を口へ放り込むと、胸元で輝くクロスを手にテラフォーマーへと語りかける。
いささか高圧的で上から目線なのは彼の性格によるところであり、本心からの言葉ではあるのだが説得力がない。
欠片も助ける気がないように聞こえてしまう。
さらに、相手はテラフォーマー。
人の言葉に、耳を傾けるはずもない。
徐々に、徐々に彼を囲む包囲網が縮んでいく。
「…はぁ。神の尊きお言葉も、害虫には届かないか。…なら」
嘆息。
その直後、経口摂取した薬の影響により、彼の身体が変異し始める。
しかし、火星の敵は地球の敵とは違う。
敵の準備が整うのを、待ってくれはしない。
岩石を削って、砕いて作られた棍棒が、バルトロメオの頭部に振りぬかれる。
ゴガンッ!!
それはまるで、岩石と金属がぶつかり合ったかのような音だった。
いや、違う。
「異教の害虫よ、覚悟しろ」
その通りの音だった。
金属質な鎧が、彼の頭部を覆う。
彼の全身は今、硫化鉄の鎧に包まれていた。
『M.O.手術』では、地球上の生物が用いられる。
そして、金属を扱える生物は、人間だけしかいない。
金属を加工し活用してきたからこそ、ここまで人類は発展してきた。
が、その前提が21世紀初頭に覆った。
金属を扱う生物は、人類以外にもいる。
『ウロコフネタマガイ』。
この体長4cmほどの深海に生息する貝は、体表に硫化鉄でできた鱗を持つ。
そして捕食者である海老や蟹が近付くと、鱗を持った足を縮めて防御するのだ。
なぜ、このような進化を遂げたのかは、誰にも分からない。
神のイタズラと、ある人は言うかもしれない。
しかし、これだけは事実だ----。
「ぬうりゃっ!!」
バルトロメオの右手から剣が生え、テラフォーマーを両断する。
周りを取り囲むテラフォーマーたちを睨みつけ、言う。
「さあ、悔い改めろ」
----金属を使う生物は、いる。
バルトロメオ・アンジェリコ
31歳 男性 ローマ
ヨーロッパ・アフリカ第六班戦闘員
手術ベース:ウロコフネタマガイ
マーズ・ランキング4位
瞳の色:翡翠色
血液型:AB型
誕生日:5月31日(ふたご座)
好きなもの:息子・娘・新婚だったときの妻
嫌いなもの:夜中に帰ったときの妻
敬虔なキリスト教徒の家に生まれたため、本人も信心深い。
5年前に結婚し、三人の子宝に恵まれたマイホームパパ。
班長であるジョセフの学生時代の先輩であり、軍隊でも先輩。
同部隊に配属されており、ジョセフのプレイボーイっぷりに振り回されて大変だった。
ジョセフが火遊びをした後の後始末は、この男の仕事。
そのためジョセフは班長なのに頭が上がらず、六班影の班長と呼ばれている。
今回の生物のコンセプトは、人類の強さです。
金属を利用して発展してきた、人類特有の強さを使える手術ベースでした。
タイトルのアイギスは、ギリシャ神話に出てくる盾です。
あらゆる災厄を退ける盾を、今回のイメージとしました。