マスター大好きなキル姫達がマスターに新年会の開催を要望する。

そのキル姫達とはいつものロンギヌス、シェキナー、カドケウス、ケーリュケイオンに加えて、レーヴァテイン、ミストルティン、ナーゲルリングにフォルカスと言った面々である。

マスターはそれを快諾して自室で新年会を開くのだが、キル姫達の考え抜かれた少しエッチなマスター成分補給作戦により、色々と振り回されてしまうことになるのであった。



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どうもお久しぶりです。
またもや、少し真面目(?)にファントムオブキルの二次創作作品を書いてみました。

ちなみにけっこう長編です。
40000文字あるのでどうか暇すぎる時に読んで下さい。

ではでは、よろしくお願いします。
(^^)/



キル姫達の新年会(読みやすくしてみました)

 遠くで除夜の鐘の音が聞こえる。

 テレビではもう新年を迎えるカウントダウンが始まっていた。

 

 ……5…4…3…2…1…0…!

 

 年が明けた。

 テレビの中では晴れ着を着た人々が楽しげに明けましておめでとうと言い合い、次の場面では大きな花火を夜空に打ち上げて新年を祝っている映像が流れている。

 

 ファンキル学園で臨時講師を勤めているマスターは、コタツに入りながら一人でその映像をぼんやりと眺めていた。

 コタツのテーブルの上にはコンビニ弁当の空容器が侘しげに乗っかっている。

 

 一人で年を越すことになったマスターには、そんなに今が年末年始と言う実感はない。

 昨日の夕方に、このファンキル学園のあるフジグミシティに遠方の出張から帰って来て、またすぐに違う地方に出かける用事もあるからだ。

 何か本当に忙しすぎて、気を緩めてのんびりする様な気分にもならない。

 

 マスターは一応年が明けるのを確認したし、取りあえずもう寝ようとリモコンでテレビの電源をオフにした。

 その時自分の携帯電話が目に入り、そのランプがピコピコと光っているのに気が付いた。

 メールを受信している明滅である。

 マスターはコタツに入ったまま、その携帯を開いて中をチェックしてみた。

 

 その携帯の画面を眺めていたマスターの頬が次第に嬉しそうに緩んでいく。

 受信したメールは、このマスターに付き従うキル姫からの、何通ものいわゆる『あけおめメール』であったのだ。

 この都市に住む姫はもちろん、地方に遠征や留学させている姫からも来ている。

 あまり飾らない素朴な文面のもあれば、デコメールのような賑やかなものまで様々であった。

 

 マスターはその一つ一つに返事を書く事にした。

 マスターが返事を送った途端に、またすぐに返事を書いて送ってくる筆まめなキル姫もいたが、それはもう後回しにしてとにかく全てのメールに返事を書いていく。

 少し時間はかかったが、取りあえず一通り送ってきた全員のメールに正月の挨拶の返信は出来た。

 

 だがマスターは最後に残していたメールを開いて少し悩んでしまっていた。

 それはあけおめメールとは別の内容で、自分に対してのある要望を書いたメールだったからだ。

 その要望とは、ファンキル学園の生徒と自分とでの新年会の開催である。

 そのメールの差出人はファンキル学園に在住している古参の少女ロンギヌスで、彼女の書いたその文面はかなり奥ゆかしく遠慮深げな言い回しであったが、その新年会の開催をとても熱望しているような雰囲気が、その文脈の至る所に滲み出ていた。

 

 マスターはコタツに入ったまま仰向けにゴロンと寝そべると、携帯を掲げ上げて眺めながら唸った。

 

「ん~……『マスターが、今この時期この都市にいるのなら』……か。ん~、むむ~……」

 

 しばらく悩んだマスターは諦めた様に溜め息をついて呟いた。

 

「……はぁ、しょうがない。あいつらには最近何もしてやれてないからな。それにこれは忙しい俺にとっても、いい気分転換になると思うし……。よし。……え~と……。『いいぞ。それでいつやるんだ?』……と、送信」

 

 マスターはメールを送ると携帯を閉じて起き上がった。

 もう夜中の1時を回っているので、返事がすぐに返ってくるとは思っていなかったのである。

 だが、携帯がまたメールの着信を告げるランプを明滅させてきた。

 マスターが再び携帯を開いて見てみると、差出人はまたロンギヌスである。

 だが今度の文面はかなり短かった。

 

 そのメールには『夜中にすいませんっ!(>_<)あの、今、お電話で少しお話し出来ますか?』と書かれてあった。

 

 それを読んだマスターは取りあえずこちらからロンギヌスに電話をかける事にした。

 すると呼び出し音がワンコールも鳴らない内に相手が電話に出てきた。

 

「あ、あの、も、もしもしっ!マ、ママスターですかっ?あ、えと、お疲れのところこんな夜更けに大変申しわきゃっ!あ、あうう……」

 

 マスターは苦笑した。電話越しにロンギヌスが盛大に舌を噛んだと分かったのだ。

 

「落ち着けって、ロンギ。別に大丈夫だから」

「は、はい……すみません」

「はは、だけど、こうやって話すのも何か久し振りだな。あ、メールでは挨拶したが改めて、明けましておめでとう」

「あ、は、はいっ!!明けましておめでとうございます!マスター!今年もどうか宜しくお願いしますっ!」

「ああ、よろしく。それでどうだ最近は……」

 

 マスターはロンギヌスと近況報告がてらの雑談をし始めた。

 ロンギヌスはとても楽しげに色々な事をマスターに語りかけていく。

 

「うふふ。それでですね、マスター。その時に……きゃうっ!」

「ん?どうしたロンギ」

 

 ロンギヌスが唐突に小さい悲鳴を上げると押し黙ったのだった。

 

「(………モウ!ヤメテヨネ……エ?…ア…ウ、ウン…ワ、ワカッタワヨ……)」

 

 電話の向こうで何か囁き合うような声が聞こえる。

 

「……あ、ご、ごめんなさいっ!マスター。えと、その、あの、お部屋にちょっと、ゴ、ゴキブリが出て……うっひゃう!!」

「(……アンッ!ダメッ!!チョット…ゴメンッテ!……ヤンッ!…モウッ、カドチャン!…)」

 

 今度は電話の向こうでドタバタと騒いでいる雰囲気がハッキリと伝わってきた。

 

「……お~い、ロンギ~?」

「あ、ご、ごめんなさいっ!……も、もう用件を言いますね。あの、それで新年会の件なんですけど」

「ああ、別にいいぞ。俺は今日明日あさってと、このアパートにいるし」

「わ!それじゃあ、本当にやって下さるのですねっ!?」

 

 ロンギヌスはかなり嬉しそうな声色である。

 

「ああ。大丈夫だ。……でどうするんだ?場所とか日時は?」

「はい!あ、あのっ……マスターのお部屋でってのは、どうでしょうか?」

「俺の部屋でか?……まあいいけど。それで何人くらい集まりそうなんだ?食べ物とか飲み物を用意しなきゃならんだろ」

 

 マスターは正月料理の定番を思い返しながら言う。

 

「わあ!やったあ!(…マスターノオヘヤデイイッテ!…)あ、人数的にはこの寮にいるウチの隊のみんなです。ちょうど他校に留学してる子とか、風邪を引いたりして調子の悪い子を除いて総勢8人ですね」

「8人か」

「はい。あ、でも、マスター。食事の用意はこちらでするつもりです。ちゃんと飲み物も持っていきますので、マスターはのんびりお家で待っていて下さい」

「ん?それで大丈夫なのか?何か悪いな」

「いえ、そんな。マスターはお疲れだと思うので。それではお昼頃に皆で伺いますね!よろしくお願いします!」

「ああ、分かった。じゃあお休み。また明日……おっと、違うか。また昼に」

「はいっ!またお昼に!楽しみにしてます!!」

 

 

 マスターは電話を切るともう寝室に向かった。

 自分に従うキル姫達と今日の昼に、新年会をすると思うと何か心がウキウキしてくるのを感じた。

 マスターは今夜は良い夢が見られそうだと思いつつベッドに横になったのだった。

 

 

 

 その頃、ファンキル学園の学生寮のロンギヌスの部屋では、5人の少女が思い思いの場所に座ってロンギヌスの電話の様子を真剣な様子で眺めていた。

 

「やった!やったよ!アポイントゲットだよ!!」

 

 嬉しさで顔を輝かしたパジャマ姿のロンギヌスが、携帯を置いて皆に向かって言った。

 

「さすが、ロンギ」

 

 そう言って笑顔で親指を突き出してナイスのジェスチャーをしてきたのは、短パンとロングTシャツ姿のレーヴァテインだ。

 

「ええ、そうね。ロンギヌスさんはやはり頼りになるわ。私はマスター相手の電話だと凄くあがってしまうから……」

 

 色っぽいネグリジェ姿のシェキナーは少し羨ましそうな表情でロンギヌスを眺めている。

 

「でもひどいよ、ロンギ!まるで私がゴキブリのような扱いするんだもん!」

 

 ぷりぷりと怒っているのはパジャマ姿のカドケウスだ。カドケウスは頭に付けているリボンの柄と同じ様な紫のチェック柄のパジャマを着ている。

 

「……まあ、どっちもどっちよ。あんな事して会話を邪魔したカドケウスも悪い。でも、本題になかなか入らないロンギも良くなかったと思うかな。皆で話すとマスターが混乱してしまうと思ってロンギが代表して電話したのに、貴女がずっと楽しそうにマスターと関係ないお喋りをしているから」

 

 落ち着いた口調で2人に話しかけているのはケーリュケイオンだ。彼女は紺色の綺麗なネグリジェを身に纏っている。

 

「はうぅ……ごめんなさい。つい嬉しくて」

 

 ロンギヌスはしょげたような表情で皆に謝ってきた。

 

「そうよ。だから私が修正してあげたの。なのに私をゴキちゃん扱いして~」

 

 カドケウスはぷうと頬を膨らませてロンギヌスを睨む。

 だがその2人の様子を見ていたケーリュケイオンは妹のカドケウスを少したしなめる様に言い出した。

 

「だけど、カドケウスがロンギの脇腹をつつくから、ロンギがあんなに驚く事になってあんな言い訳をしてしまったのでしょ。貴女のそのイタズラ心がなければ、たぶんそれも起きなかったはずよね」

「……むー、お姉ちゃん。……それはそうだけど」

 

 カドケウスは少し不満そうだ。

 

 そのやり取りを遮ってシェキナーが口を出してきた。

 

「ねえ待って。それよりも、とにかくその新年会の事を考えましょう」

 

 レーヴァテインも真剣な顔で頷く。

 

「そうだね。マスターがくれたこの数少ないチャンス。……絶対に逃さない……」

 

 ロンギヌスは久し振りに見るようなこのレーヴァテインの氷の様な表情に少し怯えるように訊ねた。

 

「でもうまくいったら本当に最後にアレを狙うの?」

 

 レーヴァテインはキッと鋭い目でロンギヌスを睨む。

 

「……いい?マスターが私達の前でお酒を飲む機会なんて滅多にないのよ。しかも今はお正月。心がかなり緩む時期でもあるわ。あのマスターの事だから、たぶん無礼講って言葉も口から出て来ると思うわ。知ってるでしょ?無礼講って何してもいいって事なのよ」

「(そ、そうだったかな?)……でもそんなにたくさんお酒飲んでくれるかなぁ?」

 

 ロンギヌスは不安げな顔だ。

 

「一応かなり良い酒は手に入っているけどね」

 

 そこにケーリュケイオンが話に加わってきた。

 カドケウスが楽しげにその話を継ぐ。

 

「そう。そのお酒ってねー、いま地方の遠征に参加しているマサムネっちが、向こうから送ってきたお酒なんだけどさ。ここでは何か幻のお酒らしいよ。話に聞くとお酒なのに凄い飲みやすいんだって。お水みたいにコクコク飲めるって言ってた。それなのにちゃんと酔っ払えるすぐれものとか。あとそのお酒って『腰砕き』って言う恐ろしい異名を持ってるんだって」

 

 カドケウスはそう言ってから、チラリとシェキナーのほうを窺った。

 

「でもさ、もし作戦がうまくいって、その時になっても止めないでよ。シェキ姉」

 

 シェキナーは少し困った顔をしていたが、諦めた様に首を横に振った。

 

「……止めるべきなのだと思うけど、たぶん止められないわね。『このシェキナーの前でそんな不埒な行動は許しません!』……と言いたい所なのだろうけど、そんな夢のような状況になったとしたら、私も平静ではいられないと思うから……」

 

 ケーリュケイオンが話をまとめるように言い出した。

 

「私達のマスターは最近この時期はホント忙しくて、これからもなかなか会えないと思うわ。去年のあの寂しさを思い出したらよく分かると思うけどね。だから私達はこの限られた機会に出来るだけマスター成分を補給して、更には今回の新年会に参加出来ない皆へのお土産もゲットしなければならないの。そしてあわよくば、私達だけの秘密の思い出も……ね♪」

 

 ケーリュケイオンは妖しく笑った。

 

 ロンギヌスはその時を思って真っ赤になってごくりと唾を飲み込み、カドケウスはその時を夢想してえへへと嬉しそうに笑い、レーヴァテインは真剣にそのシチュエーションを想像して秘かに頬を染め、シェキナーはその光景を妄想して恥ずかしそうに身悶えている。

 

「……よし!じゃあもっともっと策を煮詰めていこうか」

 

 レーヴァテインが色々と細かい文字でびっしりと書いてあるノートを手元に引き寄せて催促してきた。

 皆がそれぞれ工夫を凝らした案を出しあって熱い議論が続く。

 何やらかなり熱心に策を練る彼女達の夜は、まだまだ終わりそうもなかった。

 

 

 

(ピンポーン)

 

 元日の昼過ぎ、マスターの部屋のドアのチャイムが鳴る。

 マスターは玄関に向かってドアを大きく開けた。

 

「「明けましておめでとうございます!!」」

 

 マスターの目の前できちんと隊列を組んだ可愛らしい少女達が一斉に新年の挨拶をしてくる。

 この綺麗に揃った挨拶だけでも、この少女達の戦闘時の練度が分かるようである。

 

「明けましておめでとう。今年もよろしくな。みんな。……さ、どうぞ」

 

 マスターは微笑んでそう言うと、脇にどいて皆を部屋に向かい入れた。

 

「わーい♪」

 

 靴を玄関に脱ぎ散らかして1番に部屋に飛び込んできたのはカドケウスだ。

 その他の面々はそれに苦笑しながらも、整列して順番に家の中に上がっていく。

 初めは皆キョロキョロして、マスターの家の様子に興味津々と言ったところであった。

 

 マスターは初めは放っておいたが、荷物を置かずにずっとテクテクと歩き回っている一人の少女に声をかけた。

 

「なぁ、ナーゲル……せめて荷物くらい置いたらどうだ?」

 

 ナーゲルリングはハッと気が付いたような顔を見せて返事を返してきた。

 

「あっ!はい、マスター。つい色々と気になってしまって……。あのっ、それでマスター!質問です!そこにあるお布団が巻いてある様なテーブルは何ですか?」

「ん?これか?これはコタツっていうもんだ。……まあ論より証拠。みんなも荷物を置いてとりあえず一度落ち着かないか?」

 

 マスターはそう言って一人先に長方形の大きなコタツに足を入れる。

 

 キル姫達は少々戸惑いながらも、言われた通りに一度席につくことにした。

 だが、こう言った状況も予測しておいたのだろうか、彼女達は言い合いや譲り合いもなく皆スムーズに席についていく。

 

 まず1番初めにちょこんと座ったのはロンギヌスだった。

 彼女が女座りで座ったのはマスターのすぐ右隣の位置である。

 彼女はゆるめの白いタートルネックセーターとピンクのスカートを身に付けて、とても女の子らしい可愛い格好をしている。彼女はマスターの傍に寄れて嬉しいのか、ずっとニコニコとマスターに微笑みを向けていた。

 

 2番目に席についたのはレーヴァテインであった。

 彼女はどっかりとマスターの左隣に座ると、寒い寒いと言いながら、腕までコタツの中に入れている。

 彼女は分厚い緑のミリタリーっぽいアウターを脱いだら、白いブラウスと黒のセーターのベスト、そしてスマートな白のパンツと言ったモノクロな格好良い服装であった。彼女の雰囲気にとても合っていた。

 

 3番目はシェキナーだ。

 彼女はロンギヌスの右隣に腰を掛けていた。彼女は足は伸ばさずにきちんとした正座で座っている。

 彼女の服装は赤いVネックのセーターと淡い黄色のハーフパンツであった。それは何か大人びた印象を与える服装で、しかも彼女のVネックのセーターからは深い胸の谷間がばっちりと見えて、マスターはついそれをガン見をしてしまっていた。シェキナーはマスターのその視線に気が付いたようだったが、特に隠しもせずに逆に背筋を伸ばしてそれを強調しているようだった。

 

 4番目に座ったのはカドケウスで、彼女はレーヴァテインの左隣に滑り込むようにしてコタツに足を入れていた。

 彼女は丸首のセーターからその下のシャツの襟と裾を覗かせていて、そして短めなスカートをはいて動きやすそうな何かボーイッシュな感じの服装であった。カドケウスはレーヴァテインの真似をして、あーぬくいぬくいと言いつつ肩までコタツ布団をかけている。

 

 5番目はケーリュケイオンだ。

 彼女はシェキナーの右隣に腰掛けた。彼女も足はコタツの中に伸ばさずに女座りの姿勢で座っている。

 彼女のその服装は綺麗な紺色のワンピ-スで、その服の丈が少し短かくて膝が見えていたりして何か色っぽさがある服装だった。

 彼女は席につくととすぐに隣のシェキナーと何やら会話を始めている。

 

 6番目はナーゲルリングであった。

 彼女はカドケウスの左隣にチョコンと腰を掛けた。

 彼女もダウンジャケットを脱いだら結構軽装な服装で、薄めな黒のタートルネックセーターと、同じ黒の短めのスカートを身に付けているだけだった。だが彼女がはいている黒いニーソックスが印象的で、可愛らしさの中に色っぽさが混じっているように感じられる服装であった。

 

 7番目に動いたのはミストルティンだ。

 彼女はケーリュケイオンの左隣におどおどと言う感じで座った。彼女の座り方も正座であり、彼女は全く落ち着かない感じで、何か困った様な感じの視線を宙にさ迷わせている。

 彼女も分厚いダッフルコートの下は、春らしい薄手の淡い黄色のセーターと柔らかい見た目の長めなスカートを身に付けていた。彼女らしい何となく春っぽい印象を感じさせる服装であった。

 

 最後の8番目がフォルカスの順番だった。

 彼女は皆が席に着くまでその場で行儀良く待ち、順番がくるとスタスタとナーゲルリングの左側に座った。彼女もまた背筋を伸ばしてきちんと正座で座り、その座った時の姿勢がかなり良くて何か気高い様な気品が感じられる様な座りかたであった。

 彼女の服装はと言うと、紺色のブラウスとそれに似た色合いの丈の長いスカートをはいて、薄手の青色のカーディガンを羽織っていた。その服の雰囲気が彼女の長い黒髪ととても良く合っていた。

 

 

 皆が席に着いて少しずつ雑談が始まった。

 基本的にマスターが話の中心になるのだが、皆が仲間全員で平等にマスターと話せるように気を遣い合っていたので、大人数でありがちの誰か取り残されたようになってしまう様な気まずさはほとんど出なかった。

 

 マスターはふと目と目が合ったナーゲルリングに話しかけた。

 

「あ~どうだ?ナーゲル。もうこの学園の生活のほうには慣れたか?」

 

 ナーゲルリングは最近までずっと地方の分隊で離れて生活していたので、この学園にはまだ全然日が浅いのだった。

 

「はい!全然問題ないですよー。先輩お姉様方が色々教えてくれますから」

 

 ナーゲルリングはニコニコと笑い笑顔で返事を返してくる。

 

「あっ!そうだ。マスター聞いてください!この前シェキナーお姉様とメイドカフェに行ったんですよ!ちゃんと初めはお客さんとして行ったのですが、あまりにもそのお店のコスチュームが可愛くて、一度その店で衣装を借りてメイドさん体験をさせて貰う事になったんです!その時に撮ってもらった写真もたくさんあって……。あ、シェキナーお姉様。マスターにその時の写メを見せてあげてもらえませんか?」

 

 シェキナーはいきなり話を振られて驚いたようだった。

 

「えっ……!?……も、もう、ナーゲルったら。私はあの衣装をマスターに見られるのは、少し恥ずかしいのだけど……。まあ、でも……ちょっとだけ見てもらいましょうか」

 

 シェキナーはそう言うと、顔をうっすら赤らめながらも自分の携帯を取り出してきた。

 そしてシェキナーは少し携帯を操作をするとマスターに画面を見せるように差し出した。

 

 マスターは少し身を乗り出してその画面を覗き込む。

 そこには可愛らしいメイド服を着たナーゲルリングとシェキナーの姿が写っていた。

 ナーゲルリングは猫耳と猫尻尾をつけて胸の前で猫の手を作って可愛くポーズを取っていて、シェキナーは片手にお盆を持ちもう片方の手で短いスカートを摘まんでカメラに向かってポーズを取って微笑みかけている。

 どちらも布地が少なくて少しエッチな感じのメイドの衣装であった。

 シェキナーが携帯を操作して何枚かの色んな場面の写メを見せてくれたが、マスターはどの画像でもつい彼女らの露出してる白い肌に目が行ってしまっていた。

 

「……どうでしょうか?マスター」

 

 シェキナーは食い入るように画面を見ていたマスターに訊ねる。

 マスターは若干慌てながら答えた。

 

「……えっ!?……あ、ああ、どちらも凄い似合っているよ。とても可愛らしい衣装だね」

「うふふ、ありがとうございます♪」

 

 それを聞いたシェキナーはとても嬉しそうに微笑んだ。

 そしてマスターが別の会話を始めた時に、シェキナーはナーゲルリングに感謝のウインクをする。

 ナーゲルリングも嬉しそうにシェキナーに微笑み返したのだった。

 

 

 取りあえず皆の話が一区切りして落ち着いた所で、キル姫達皆で持ち寄った料理をテーブルに並べて新年会を始める事にした。

 

 マスターにはその場に座って待っていて貰い、全員でテキパキと料理を並べて準備をしていく。

 三段重ねの重箱に入ったおせちがテーブルの真ん中に置かれ、取り皿とお箸が人数分配られて、そしてガラスのコップと小さなお猪口もそのお皿の脇に同じ様に配られた。

 飲み物は一升瓶に入ったお酒が2本と果汁100%のオレンジジュースと葡萄ジュースが1本ずつ用意されていた。

 取りあえず一杯だけは全員が形式的に飲む為なのか、配られたそのお猪口にはすでにお酒が注がれている。

 

 全ての準備を終えると、また先程の位置に全員が座った。

 そして皆がマスターのほうを見つめる。マスターの言葉を待っているような感じだ。

 マスターは開始の音頭を取るべくお猪口を手に取った。キル姫達も真似してお猪口を手に持つ。

 マスターは皆を見回すと嬉しそうに言った。

 

「それでは新年会を始めようと思う。こんなに豪勢な料理をありがとう。もう今日は無礼講で構わない。楽しい新年会にしよう!では、今年一年もよろしく!乾杯!!」

「「よろしくおねがいします!乾杯~!!」」

 

 全員がお酒の入ったお猪口に口をつける。

 そのお酒は淡いお酒の香りがする少し甘めのとても飲みやすい美味しいお酒であった。

 下戸なマスターはおそるおそる口をつけて、ただ舐めるだけにしようとしていたのだが、とても美味しく感じてつい全部飲み干してしまった。

 

 それを見たレーヴァテインがすかさずマスターのお猪口にお酒のお代わりを注ぐ。

 

「どう?マスター、このお酒、すごい飲みやすいでしょ。マサムネが向こうから送ってくれたんだって」

「え?そうなのか?……どうりであまり見た事のない酒瓶だと思った。ん?マサムネが行っている地域から送って来たって事は、これはあの『ニホンシュ』って事か。幻の酒と言われる……」

「そ。あの娘がお酒の苦手なマスターのために送ってくれたんだからちゃんと飲んであげてね」

「ああ、うん。これは飲めるよ。……うまいな」

 

 マスターはチビチビと美味しそうに飲んでいる。

 

 今度は隣のロンギヌスが取り皿を手にマスターに訊ねてきた。

 

「マスター。おせちお取りしますね。……えと、この中で何か苦手な食べ物ってありますか?」

「ああ、すまない、ロンギ。いや大丈夫だよ……でもホントちゃんとしたおせちだな」

「はい。前もって皆で色々と準備をしてあったのです。マスターと過ごせるかは分からなかったのですけど」

 

 ロンギヌスは楽しげに料理を皿に取り分けている。

 シェキナーが話に加わってきた。

 

「本当に全員で頑張ったのですよ。料理が苦手な姫は買い出しを担当したり、あと出来上がった料理を盛り付けたりして」

「そうか。確かに料理の見た目も良いが盛り付けも凄い綺麗だな」

 

 マスターは重箱の中を眺めて言う。キル姫達は皆嬉しそうにお互いの顔を見合わせている。

 

「はい。どうぞ」

 

 ロンギヌスが全種類の料理を小分けに取った皿をマスターに渡した。

 

「ありがとう、ロンギ。では早速……」

 

 マスターは栗きんとんから箸をつけてぱくりと食べた。キル姫達はその様子を固唾を飲んで見守っている。

 

「うん♪美味しいよ。この栗きんとん丁度良い甘さだ。……それにこの煮豆も柔らかいし、……あとこのきんぴらごぼうもしっかり味がついてる」

 

 そう言いつつ、マスターはパクパクとおせちを食べ始めた。

 マスターがどれを食べてもとても美味しそうな顔をするので、皆ほっとしたような顔になっている。

 そしてそのマスターの表情を見て、やっと皆の箸が動き出したのだった。

 

 

 しばらくマスターとキル姫達の楽しげな雑談と飲み食いが続き、キル姫達全員からマスターへのお酌が一回りしたところで、レーヴァテインが提案をしてきた。

 

「じゃあ、そろそろ何かゲームでもやらない?」

「ゲーム?」

 

 少し赤い顔をしたマスターが問い返す。

 

「うん。ちょっとお正月っぽいゲームをやりたいなぁなんてさ」とレーヴァテイン。

 

「……ははぁ、いいね。でも、お正月っぽいのか。どうするかな?どんなのがある?」とマスターが皆に問いかける。

 

 その話を聞いたナーゲルリングが即座に手を挙げる。

 

「あ、はいっ!私、福笑い持ってきました!」

「……ああ、福笑いか。懐かしいな。確かあれって目隠ししてやるもんだっけか」マスターが昔を思い返して言った。

 

 ケーリュケイオンも案を出して来た。

 

「あと、二人羽織なんてどう?これってお正月っぽくない?」

「わ!それいいね。お姉ちゃん♪何かザ・お正月って感じ!」カドケウスがすぐさま姉の案に同調していく。

 

 そこへフォルカスが遠慮がちに手を挙げて話に入って来た。

 

「あの……折角なんで勝負っぽくしたほうが盛り上がりそうだと思うのですが」

「なるほど。でも勝負なぁ……」ほろ酔い気分のマスターがぼんやり考えを巡らしながら言う。

 

 そこへ思いついたと言う様な感じでシェキナーが言い出した。

 

「……あ、そうだわ!なら、それらを合わせてみたらどうかしら?二人羽織をしながら福笑いで勝負ってのは」

「わ♪すごい楽しそう!」とすかさずロンギヌスが話を盛りたてる。

 

 初めにこの話を振ったレーヴァテインがまとめるように言う。

 

「ふむふむ。何かけっこう面白そうね。まあ、一度やってみようよ。どう?マスター」

「うん、そうだな。やってみようか」

 

 それで話が決まって、色々とゲームの準備が始まった。

 

 まずコタツのテーブルの上に福笑いの道具が置かれ、そしてカドケウスとケーリュケイオンが二人羽織をする為の大きな服を二つ持ってやってきた。

 それはマスターの洋服ダンスに入っていた、けっこう大きめな軍用のジャンパーだった。

 そして道具の準備が整うと、部屋の片隅にキル姫達で集まって何やら熱心に話し合い始めた。

 

 マスターがぼんやりとその様子を見ながらコタツで一人待っていると、ロンギヌスが少し赤い顔をしながらマスターの元へとやって来た。

 そしてマスターとロンギヌスの正面にはレーヴァテインとシェキナーがやって来る。

 マスターはやっと納得出来た。

 さっきのあれは、初めは誰がペアになって誰と誰が戦うかの組み合わせの話し合いだったのだと。

 

 マスターはすぐ隣に座るロンギヌスを見つめて思った。

 彼女が隣に座ったと言う事は初めは自分とロンギヌスがペアなのだろう。

 

「……よし。じゃあ頑張ろうな、ロンギ」

 

 マスターはロンギヌスに笑いながら話しかけた。

 ロンギヌスも嬉しそうに返事を返してくる。

 

「は、はいっ!マスター!頑張りますっ!」

 

 ロンギヌスはそう言うと、カドケウス達が持ってきたジャンパーに自ら手を通し始めた。

 マスターは一応確認するべく訊ねる。

 

「うん?って事はまずはロンギが俺の手の役をするって事か?」

「はい!マスターは私への指示役をお願いしますね!」

 

 ロンギヌスはぶかぶかのジャンパーを頭からかぶっていてすでにもう準備万端である。

 そのロンギヌスの姿は何か少し間抜けでとても可愛いらしく見えた。

 

「……ま、いいか」

 

 マスターはあまり深く考えずに承諾した。

 対戦相手のほうは、レーヴァテインが指示役でシェキナーが手の役をしている。

 

「えと、それではマスター……。し、失礼します……」

 

 マスターが背を向けたところへ、ロンギヌスがおずおずとマスターの背中に抱き付くように身を寄せる。

 マスターの背中とロンギヌスの胸が密着し、マスターは背中に彼女の胸の膨らみを感じたが、何とか気をそこから逸らして堪えていた。

 そしてマスター達のジャンパーを胸の前で閉めて準備が終わり、さあゲームを始めようと改めて向かい合った。

 

 だが、ロンギヌスの手が全くテーブルに届いていない状況がすぐに判明する。

 小柄な彼女がマスターの背から前に手を伸ばしてゲームをするには、彼女の腕の長さが少々足りなすぎるのだ。

 

 これでは全くゲームにならないのでケーリュケイオンがある一計を案じてきた。

 それはロンギヌスがマスターの背からではなく、マスターの首元から身を乗り出すような感じで手を出せば良いというものであった。

 確かに首元ならば細いので小柄なロンギヌスでも何とかなりそうではある。

 だがその体勢は少し想像するだけでも、二人の密着度が半端ないものになると分かる。

 マスターは一応止めようとしたのだが、ロンギヌスは全く躊躇しなかった。

 

「マスター……では、いきます!」

「え?うおっと……!」

 

 ロンギヌスがマスターの首元に後ろからぐいっと覆い被さって来る。

 マスターはロンギヌスに首元から抱き付かれて、もう平静ではいられなかった。

 彼女の口元が耳元に寄せられてその微かな息づかいが聞こえる。

 そして、彼女の胸が遮る布のない首元に来た事で、その柔らかい胸の感触がかなりはっきりと感じられるようになってしまったのだ。

 マスターはロンギヌスを物凄い間近に感じて何かえらくドキドキしてしまっていた。

 

 ケーリュケイオンがそんなマスターを見て、少しニヤニヤと笑いながらゲームを開始する。

 二人羽織りのジャンパーの中のロンギヌスがマスターの耳元でそっと訊ねてきた。

 

「あ、あのマスター……まずはどうすれば、よいのでしょうか……」

 

 マスターはくうっと心の中で唸った。

 この体を密着させた状況とロンギヌスのその囁き声で、何だか彼女とのエッチな妄想がどんどん湧いてきてしまう。

 マスターはとにかく気をしっかり持って、何とか理性を保ちながら指示を出した。

 

「よ、よし。まずは目からいこう。右手をもう少し手前に……」

「こ、こう……ですか?」

「そう、それを掴んで左斜め奥に持っていって……そう、そこだ」

「は、はい。……これでどうでしょう?」

「よし、上手いぞ。次に右奥の眉を取ろう」

「はい……えと、どの辺ですか」

「もっと前だ」

「よいしょっと…………あ、ぅんっ……!」

 

 マスターはロンギヌスに耳元で喘がれて、慌てるように訊ねた。

 

「な、なんだ!?どうしたロンギ」

「あ!ごめんなさいマスター……。えと、……その、ちょっとお胸がこすれて」恥ずかしそうに答えるロンギヌス。

 

「そ、そうか」

 

 マスターも顔が少し赤くなっている。

 だがその時マスターは気が付いたのだった。

 ロンギヌスの胸の膨らみに何か別の柔らかさの突起物があるのを……。

 マスターは首元に全神経を集中させて思った。

 え!?これってまさか……ロンギのちく……?

 手が止まっているマスターとロンギヌスペアを見て、進行役になっているケーリュケイオンが急かすように言い出した。

 

「一応制限時間もあるんだからね。完成させないとマスター達の負け確定よ」

 

 それを耳にしたマスター達は急いで福笑いの顔を完成させていく。

 だがもちろんそれは全く顔になっていなかった。

 

 皆のジャッジで勝敗を決める段階になった。

 全員がレーヴァテインとシェキナーペアに票を入れて、圧倒的大差でマスターとロンギヌスのペアは負けてしまった。

 実際レーヴァテイン達の福笑いの顔はなかなかの出来になっていたのである。

 

 

 ケーリュケイオンが楽しそうに言い出す。

 

「それじゃあ罰ゲームね。マスターはこの状態で相手からミカンを食べさせられる事になります」

「え?この二人羽織りのままでか」

「そう。それじゃあ、レヴァさん、シェキ姉よろしくね。あとロンギはマスターが動かないように抱き締めていてね」

「分かった」

「任せて」

「うん!」

 

 3人はとても快く返事を返していた。

 

 

「はい、アーンして。マスター」レーヴァテインがマスターに声をかける。

「はいはい。……あーん」マスターは口を大きく開けた。

 

「……どの辺かしら?レヴァさん」

 

 前が全く見えないシェキナーが、ミカンをひとふさ指で摘まんで宙をさ迷わせている。

 

「えとね、もう少し右、いや、左……あ、行き過ぎ、そこで止まって……そう、その辺で前」

「え、こ、こうかしら……あ……」

 

 シェキナーの指がマスターの口の中にグイっと入り込んでしまう。

 

「……むぐ……」

「……あ!ご、ご免なさいっ!マスター!!」

 

 シェキナーは慌てて謝り、その指を引き抜きつつぼやいた。

 

「うう、けっこう難しいわね……」

 

 その様子を見ていたケーリュケイオンがまた一計を案じた。

 

「それなら、もう片ほうの手をマスターの頬に当てておいたらどう?」

 

 シェキナーはすぐに納得して返事をする。

 

「あ!なるほど。それなら距離感がだいぶ掴みやすいわね。……それじゃあ少し失礼します、マスター」

「ああ」

 

 シェキナーの片手がマスターの頬に触れる。

 だが二人羽織りをしたままでその体勢になったので、レーヴァテインの顔とマスターの顔の距離がかなり近くなってしまう。

 まるでキスをする前の見つめ合っているような状態になってしまい、マスターはかなりうろたえてしまった。

 

 レーヴァテインはそんなマスターを見てからかうように笑って言う。

 

「ふふ、どうしたの?マスター。何をそんなに照れてるの」

「いや、だってだな……」

「……もしかして、このまま私に口移しでミカンを食べさせてもらいたいとか思ってる?……ヘンタイ♪」

 

 そう言いながらもレーヴァテインはとても嬉しそうにマスターを見つめている。

 

 そうこうしている内に少し時間がかかったが、マスターは何とかミカンを1個食べ終える事が出来た。

 

 二人羽織り状態を解いたマスターは精神的にもうヘトヘトになっていたが、他のキル姫3人はとても元気で皆輝くような笑顔を見せている。

 レーヴァテインは、かなりの至近距離で長い事マスターとお喋りしながらじっくりとその顔を見れてもうかなり大満足であったし、シェキナーはマスターの姿は全く見れなかったが、マスターの顔をずっと触りながらミカンを食べさせてあげて、たまにマスターに自分の指を舐められると言う事もあり密かに感激すらしていた。

 そしてロンギヌスはと言うと、マスターに背後からぎゅっと長い事抱き付いて、そのマスターのぬくもりと匂いを心行くまで堪能出来ていたのであった。

 

 

 マスターはもうかなり汗だくになっていたが、すぐに2回戦が始まった。

 今度の組み合わせは隊の若手達とマスターのペアリングになっているようで、マスターとナーゲルリング、フォルカスとミストルティンと言うペアであった。

 

 ナーゲルリングがマスターの横に座ると、礼儀正しくペコリと頭を下げて礼をする。

 

「では、マスター。よろしくお願いしますね」

「ああ、こちらこそ」

 

 マスターはそう言ったが、ナーゲルリングの背の低さを見て慌てて付け足した。

 

「あ、今度は俺が手の役をやるよ」

 

 ロンギヌスより小柄な彼女が手の役をやると、先程のようなヤバい体勢になるとすぐに分かったからである。

 

「はい、了解です!」

 

 ナーゲルリングは楽しげにマスターに背を向けた。

 マスターはジャンパーを頭から被ってそのナーゲルリングの背に近づいたが、今度は彼女の座高が低すぎてどうしようもないことに気が付いた。

 近づかないとジャンバーの前が閉められないが、近づくと彼女の頭が胸の辺りに来るので、体勢的に無理があるのだった。

 

 マスターがどうしようと戸惑っていると、じっとその様子を見ていたカドケウスが助け船を出してきた。

 

「ん~?……ねえ、マスター。ナゲちゃんをそのままマスターの足の上に座らせたらどうかな?」

 

 マスターはなるほどと思い、その案を実行に移すことにした。

 マスターは正座の姿勢で座り、ナーゲルリングをその太ももの上に座らせてみた。

 そうすると位置的にかなりいい感じになり、ジャンバーのファスナーも閉めることが出来て、やっと福笑いを始める事が出来たのだった。

 対戦相手の役割分担のほうはミストルティンが指示役でフォルカスが手の役であった。

 

 しばらく何事もなくゲームは続いたが、マスターは慣れない正座で、しかもその上にナーゲルリングの体重が乗っている事で、次第にその足が痺れてきてしまっていた。

 もう我慢出来くなったマスターは、足を崩してあぐらをかいた姿勢になる。

 だが、それがまずかった。

 

 ナーゲルリングが座りやすかったマスターの太ももから降りる形になり、そのずり落ちそうになる自分の体を支えるために、足を突っ張ってマスターの股間に自分のお尻を強く押し付けてきたのだった。

 

 その瞬間マスターは焦りだした。

 

 ナーゲルリングの柔らかい小ぶりなお尻の感触がただでさえ気になっていて、股間についている男のモノにうっすらと血が集まりだして半勃ちの状態だったのに、もう今それは次第に硬くなり始めて、その彼女のお尻の谷間に丁度挟まれる形になってしまっている。

 そしてマスターのその棒状のモノは、マスターの興奮と共にどんどんとその硬度を高め出して来ているのだ。

 だがそれはマスターの意思ではもうどうにもならないものなのだった。

 

 ナーゲルリングはその場所にずっとお尻を押し当てている。

 彼女もそれが何なのか分かっているはずだと思うのだが、何の躊躇もなくグリグリとお尻をその場所にすり寄せて来るのだった。

 マスターは股間から脳髄にまで込み上げてくるその快感に耐えながらナーゲルリングに囁いた。

 

「ちょ……ナーゲル……あ、あまり動くなって……」

「……何でですか?」

 

 ナーゲルリングはコソコソと小声で囁き返す。

 

「何でって、お前……」

「……大丈夫ですよ、マスター。……でも、こう言うエッチな事は私だけにしたほうが良いですよ」

「……お前分かって……くうっ……」

 

 マスターはナーゲルリングのお尻の柔らかい谷間から必死に気を逸らして何とかこのゲームをやり終えた。

 

 今回の勝負はマスターとナーゲルリングペアの勝ちになり、マスターがミストルティンにミカンを食べさせる事になった。

 だが今回は、何故か片手をフォルカスの両手に握られて、そしてもう片ほうの手でミカンをミストルティンの口元に運ぶ事になったのだが、フォルカスには手を優しくさすられ続け、そしてミストルティンには何度も指を舐められて、マスターはかなりまいってしまった。

 そう、それはもちろん性的な意味でである。

 もうマスターのパンツの中の股間の部分は我慢汁でヌルヌルになってしまっていた。

 

 全身汗だく(汁だく?)になったマスターは二人羽織用のジャンパーを脱ぎ捨てて、ほうと大きな溜め息をついた。

 

 マスターの着ていたシャツは汗で体に張り付き、マスターは額にかいた玉のような汗もそれでぬぐっていた。

 それを見ていたキル姫達の目がキラリと一瞬輝く。

 

 マスターはカドケウスからお疲れ様と手渡された飲み物をグイッと一気に飲んだ。

 

「……ん?これは何かジュースにしては何か少し風味が違うな」とマスターが首を傾げる。

 

「うん。あのお酒で少し割ってみたの。美味しかった?」

 

 カドケウスがニコニコと笑顔で訊ねた。

 

 マスターは喉が渇いていたので、とても美味しく感じていた。

 

「……ああ、これはいいな。お代わりをもらえるか?」

「うん♪」

 

 そう言って後ろを向いたカドケウスは、ニヤと一瞬笑いながら、またお代わりを作り始めたのだった。

 

 

 お代わりも飲み終えて一息ついたマスターは、汗で湿った服を着替える為に立ち上がろうとした。

 だがその瞬間を待っていたかのように、ケーリュケイオンがマスターに話しかけてくる。

 

「あ、待って、マスター。もしかして服を着替えようとしてる?それなら一度やりたかったゲームがあるんだけど」

「ん?何だ?」

「あのね、『野球拳』ってゲームなんだけど」

「それってじゃんけんして、負けたら服を脱ぐやつだろ?」

「そう。着替えるなら丁度よくない?」

「そうか?」マスターは多少酔いが回っているのであまり頭も回っていない。

 

「でも、それも何かお正月っぽくて楽しそうじゃない?」ケーリュケイオンは言葉を継いでいく。

 

「そう……か?」マスターはぼんやりと考えを巡らせていた。

 

「あ~やりたいやりた~い!」とカドケウスが身を乗り出して言う。

 

「何か暑くなってきたから丁度良いわね」とレーヴァテインがお猪口を片手に賛成してきた。

 

「わ、私も、いいと思いますっ……」ロンギヌスが顔を赤らめて恥ずかしそうに呟く。

 

 ミストルティンとフォルカスとナーゲルリングはと言うと何か向こうでじゃんけんの練習を始めている。

 

 マスターは風紀がかなり乱れる事になると思ったので、こう言う事に少しうるさいシェキナーに訊ねてみた。

 

「シェキ……、どうだ?いいのか?」

 

 シェキナーはコホンと咳払いをしてから答えた。彼女の顔も少し赤い。

 

「しょ、しょうがないわね。みんながそう言うなら反対はしないわ」

 

 それでもう話は決まったのだった。

 

 

 そして野球拳が始まった。

 全員で部屋の真ん中に移動して輪になって、せーので振り付けつきの掛け声をかける。

 

「「や~きゅ~う~、す~るなら~、こういうぐあいにしやしゃんせ~~、アウト!セーフ!よよいのヨイ!!」」

 

 さすがにこの人数だとなかなか勝負がつかない。

 だが何度かやっている内についに負ける者が出た。

 一番初めに負けたのはカドケウスだった。

 

「ちぇ」

 

 カドケウスはそう言いながらも初めにスカートをポイと脱ぎ捨てる。

 

「待て待て!!」

 

 マスターは慌てて突っ込みを入れた。

 

「何でお前はいきなりスカートから脱ぐんだ!」

「ほえ?」

 

 カドケウスはキョトンとしてる。

 彼女のシャツの下から覗く白いパンティ姿が何かとても可愛らしくエロい。

 

「んー、何となく?」

「お前なぁ……まずは靴下とかセーターとかからだろ……。……まぁ、別にどこから脱ぐってルールはないけどな……ブツブツ……」

 

 マスターはチラチラとカドケウスの下着姿を見ながら文句を言っていた。

 マスターのその様子を見ていた他のキル姫達も、これは負けていられないと密かに鼻息を荒くし始めている。

 

 

 また皆で掛け声をかける。

 

「「や~きゅう~す~るなら~……」」

 

 今度負けたのはミストルティンだった。

 ミストルティンは少しモジモジしたと思ったら、小さく気合いを入れるような声を出してきた。

 

「う、うぅ…………えいっ!」

 

 ミストルティンはロングスカートに手をかけるとそれをパサリと床に下ろした。

 マスターは正面に立つ彼女のピンクのパンティに目を奪われてしまった。

 

 あの恥ずかしがりやのミストルティンのパンティなどじっくり見る機会がある訳もない。

 

 ミストルティンはマスターに自分の露になった下半身をジッと見られているのを強く意識していた。

 だがミストルティンは、つい隠そうと動いてしまう手を何とか抑えて、自分の下半身を見てもらえるようにと頑張っている。

 

 周りのキル姫達もそんな風に鼻の下を伸ばしたマスターの様子をぐぬぬと言った様相で眺めていた。

 

 

 そしてまた野球拳は続いた。

 今度はシェキナーが負けた。

 シェキナーは負けるとズボンではなくセーターを脱ぎ捨てていた。

 彼女のフリルつきのブラジャーに包まれた形の良い巨乳が露になる。

 マスターはそれを横目で見てゴクリと唾を飲み込んでいた。

 シェキナーはマスターのその気配を察して満足そうに微笑むのだった。

 

 そしてどんどん勝負は続き、レーヴァテインやロンギヌス、フォルカス、ケーリュケイオン、そしてナーゲルリングもじゃんけんに負けると、先の者と同様に、靴下やストッキングをはいているのに、何故か下着が見えるような物から初めに脱いでいた。

 

 マスターはそんな着エロな彼女達に囲まれて、もうすでに勃ちっぱなしになってしまっている自分の股間が、気になってしょうがなかった。

 

 

 その内にフォルカスが連続で負け続けて、もう上下の下着しか着けていない完全な半裸状態になってしまっていた。

 マスターはこれはどこまでやるんだろうと思いながら野球拳を続けていたが、またしてもフォルカスが負けてしまった。

 マスターはこれでフォルカスは脱落かなと思っていたが、彼女はブラジャーに手をかけてそれを外し始めた。

 フォルカスは潔くブラジャーを脱ぐと、それを軽く畳んで脇に積んである自分の服の上に置く。

 そして片腕で自分の胸の膨らみを隠すと、また正面に向き直ったのだった。

 

 マスターはその一部始終をしっかりと凝視していた。

 フォルカスが腕で隠すまで、その彼女の形の良い胸がハッキリクッキリ見えていたのだ。

 

 

 マスターはハッと我に返り、隣にいるロンギヌスにコソッと訊ねる。

 彼女もまたブラウスにパンティと言う色っぽい格好であった。

 

「なぁ。ロンギ……。これって一体どこまで脱ぐんだ?」

「ふえっ?……え、あの……、ぜ、全部脱ぐ物が、なくなるまで、じゃないですか?」

「え!?そうなのか?」

「はい……。あの、勝負ですから……」

 

 ロンギヌスは恥ずかしそうに微笑んで答える。

 

 

 野球拳はまた続き、ついにマスターも負け始める。

 ワイシャツを脱ぎ、靴下を脱ぎ、そしてズボンかTシャツの2択になったが、何か自分の膨らんだ股間が恥ずかしいので、もう先にTシャツを脱ぐことにした。

 Tシャツを脱ぐと、マスターの引き締まった肢体が露になる。

 周りのキル姫達が小さく息を飲み、マスターのその引き締まった上半身にじっとりとした熱い視線を向けていた。

 

 マスターが今脱いだTシャツを既に脱いである服の上に放ろうとすると、カドケウスがススと近寄って声をかけて来た。

 

「あ、マスター。それちょうだい」

「ん?ああ。ほい」

 

 マスターはカドケウスがそれを畳んで置いてくれるのかと思って気軽そうに手渡した。

 

「わ!いいの!?ありがと!!やったぁ♪」

 

 だがカドケウスは大喜びでそれを受け取ると、そそくさと自分の荷物のほうに持って行き、それを何故かジップロック付のビニール袋にしまいこんでしまった。

 

「ちょ、おい……」

 

 マスターはその光景をしばし唖然として眺めていたが、とりあえずカドケウスに抗議をするべく声をかけようとした。

 だがマスターの両隣いたキル姫達が、マスターの正面に顔を出してそれを素早く遮っていく。

 

「さ、次ですよ!マスターっ」と右からロンギヌス。

 

「え、あ、いや……あれ……」

 

「負けないからね。じゃあ次いくよ!」と左からレーヴァテイン。

 

「ん?あ、ああ」

 

 彼女達に次の勝負を促されて、何かもうあやふやにされてしまった。

 とりあえず酔いの回っているマスターも、もういいかとすぐに諦めたのだった。

 

 

 勝負は進んで皆がどんどん色っぽい半裸状態になっていく。

 

 残りパンティ1枚のリーチ状態になっているのはフォルカスとカドケウスで、フォルカスは恥ずかしそうに片腕で胸の膨らみをずっと隠しているが、カドケウスのほうはまるで隠す気がないようで、胸をふるふる揺らしながら掛け声に合わせて楽しげに踊っている。

 

 ブラジャーとパンティだけの下着姿になっているのはレーヴァテインとミストルティンの2人で、レーヴァテインは堂々としたものだが、ミストルティンは少しオドオドとしている。

 

 そして、まだ下着の上に服を着ているのはロンギヌスとシェキナーとケーリュケイオンとナーゲルリングの面々だが、その服と言ってもロンギヌスは薄手のシャツ、シェキナーはストッキング、ケーリュケイオンはスリップ、ナーゲルリングはニーソと言った物を身につけているだけで、凄い色っぽいことには変わりない。

 

 そしてついにフォルカスが負けた。

 もう脱げる物はパンティしかない。

 さすがにフォルカスも目に見えて落ち込んでいる。

 

「はぁ。しょうがありません……」

 

 フォルカスはうつ向いて呟く。

 

 マスターは、これはもうフォルカスはこのまま脱落なのだろうなと思って彼女を見ていたが、フォルカスがパンティに手をかけてそのまま脱ぎ出そうとしているのに気が付いた。

 

「おっ、おい!ちょい待……」

「待って!フォルちゃんっ!」

 

 マスターがフォルカスを慌てて止めようとしたが、それより前にロンギヌスがフォルカスに駆け寄って行った。

 

 それを見たマスターがホッと安堵の息をつく。

 さすがフォルカスと仲の良いロンギヌスだ。

 やはり彼女をこの場で全裸にさせるのは気が引けるのだろう。

 後輩の窮地を救う先輩といった光景を見て、マスターはほんのり胸が温かくなってきた。

 

 だがしかし、ロンギヌスはフォルカスに何かを手渡しただけですぐに元の位置に戻って来てしまっていた。

 マスターはフォルカスのほうに目をやり、不審げにフォルカスが手に持って広げた物を眺める。

 ロンギヌスがフォルカスに手渡した物はかなり薄い生地で作られた真っ白な浴衣だと分かった。

 だがそれはだいぶ丈が短くて、言うなればコスプレ風ミニ浴衣と言える様な代物である。

 

 フォルカスはそれを羽織って帯を締めると、ためらいもなくそのまま履いているパンティを脱いでいく。

 そしてそのパンティを軽く畳んで横の服の上に置くと、そのままそこに座り込んだのだった。

 

 マスターはなるほどと思った。

 着ている物を全部脱いでしまって脱落すると、あれを着てその場に座ると言うルールなのだろう。

 だがかなり際どい浴衣であり、普通の下着姿よりもエロく感じる。

 あの薄い生地の下は完全な丸裸だと思うともう……これはやはり着エロとでも言うのだろうか。

 しかも丈が短いせいで、座ると何か色々と見えそうなのだ。

 

 そして勝負は終わらずにまだ続く。

 マスターもついにトランクス1枚と言う姿にまで追い詰められていた。

 マスターは滑稽な格好なのを承知で、あの股間の膨らみを手で押さえて、何とか隠しながらジャンケンをする。

 

 カドケウスが負けてあの浴衣姿になり(浴衣を羽織る前に全裸になっていた)、そしてシェキナーか連続で負け続けてあのミニ浴衣姿になった。

 シェキナーのその浴衣姿は凄いインパクトがあった。

 あの大きな胸の膨らみが浴衣からこぼれんばかりで、薄い生地のせいで体のシルエットがだいぶ強調されていて、もう本当に見るからに色っぽい。

 そしてシェキナーがそれを着て近くに座ったものだから、上からその胸の深い谷間が覗けて、マスターの目がチラチラと幾度となくその場に注がれることになったのだった。

 

 そしてついにマスターが負ける。

 もう脱ぐ物はトランクスしかない。

 ずっと勝負が続くので、マスターはいつかはこの時が来るのが分かっていたが、とにかく恥ずかしくてしょうがなかった。

 周りのキル姫達からじっと熱い視線で見つめているのが分かる。

 

 マスターがしばらくその場で躊躇していると、隣のロンギヌスがあの浴衣を無言でマスターに差し出してきた。

 彼女は特に何も言わないが、早くこれに着替てくれと言わんばかりである。

 

 マスターは深いため息と共にその浴衣を受け取り、それを羽織ると帯を締めて潔くトランクスを脱いだ。

 この浴衣は、生地は同じでかなり薄いが、一応丈のほうは長めで普通の浴衣で少し安心出来た。

 

 そして脱いだトランクスをマスターが手に持っていると、着物を渡したロンギヌスがその場にまだいて、手を差し出して来た。

 

「あの……マスター。それもいいですか」

 

 羞恥でまるで頭の回ってないマスターは、ついロンギヌスにその脱ぎたてトランクスを手渡してしまった。

 大事そうにそれを受け取ったロンギヌスはかなり嬉しそうにお礼を言い出した。

 

「あ!ありがとうございますっ!」

 

 マスターがハッと我に返った時には、ロンギヌスがカドケウスと共にまたカドケウスの荷物のほうに行き、先程のTシャツと同じようにジップロック付きのビニール袋にしまいこまれてしまっている所だった。

 

 もう時すでに遅しで、マスターは諦めるしかなかったのだった。

 

 

 マスターが負けた事でやっと野球拳のゲームも終わった。

 

 マスターはやれやれと思いながら脱いだ服を着ようとしたが、何故かキル姫達は誰も服を着ようとしなかった。

 

 それどころか全員が着ている物を脱ぎ出すと、あのミニ浴衣を着てコタツの元の席へと戻って行くではないか。

 そして皆で楽しかったねと、ワイワイといつも通りに喋り出していた。

 

 マスターが何か言いたげにその場に突っ立っていると、ロンギヌスがマスターのそばに寄ってきて話しかけてきた。

 

「マスターも座って下さい。……うふふ。何かこうやってお互い薄着でいると、何かこう、連帯感が湧いてくる感じがします」

 

 先に座っているレーヴァテインが話に加わってくる。

 

「あ、分かる。凄い親近感も出てくるし」

「そうね。こう言うのもたまには良いですよね」

 

 生真面目なはずのシェキナーでさえ賛同している。

 

 マスターは何か断りにくくなってしまったこの流れで、もうそのまま席につくことになった。

 始めはこの薄い浴衣一枚と言う格好がとても落ち着かない感じだったが、皆でお酒を飲んだりおせちを食べたり雑談をしている内に次第にリラックスしてきた。

 この無防備な格好が何か凄い解放感を感じさせて、何かとても楽しくなってくるのだ。

 

 マスターとキル姫達は大いに飲み、喋り、そして笑いあってとても楽しい時を過ごしたのだった。

 

 

 楽しい宴は続いていて、その内に何かの拍子にか王様ゲームの話になっていた。

 ナーゲルリングが首を傾げながら言う。

 

「王様ゲームって……何か私にはあまりピンと来ないです……」

「んー?だから王様になった人が何でも命令出来るの」とカドケウスが雑な説明をする。

 

「……え、えと、それは何でも良いのですか?」とミストルティンが少しオドオドしながら、でも興味があると言う感じで訊ねた。

 

「まあ、そうなんだけど……。でも一応、その場のノリにあった楽しそうな事柄にするかな」とケーリュケイオン。

 

「でも確かに分からないわよね。話には聞くけど、やる機会なんて全くない訳だから」とシェキナーが言う。

 

「あの、私も少し興味あります……」ロンギヌスが話に加わってきた。

 

「ふーん、皆未経験なんだ。ま、私もやった事はないけどね」レーヴァテインは首をすくめて言う。

 

「あの、マスターはどうですか?王様ゲームをした事はありますか?」フォルカスが興味津々と言った感じで訊ねる。

 

 マスターは首を横に振った。

 

「いや、俺もないな。俺はあれは都市伝説みたいな物なんじゃないかと思ってるくらいだ」

 

 そうやって皆で話をしている内に、一度やってみたらどうかと言う話になってきた。

 

 キル姫達皆がマスターのほうを期待した目で見つめる。

 ロンギヌスが皆を代表するようにマスターに訊ねた。

 

「……あの、マスター。どうでしょうか?この場を借りて、一度皆でやってみると言うのは?……あの、王様ゲームを。それに今はお正月ですし……」

 

 マスターは王様ゲームの内容を思い浮かべてしばらく考え込んだが、取りあえず承諾する事にした。

 確かに自分も興味があったし、それにこの大人数なら自分に当たる確率もかなり低いだろうと言う安易な思惑もあったのだった。

 

「……分かった。ま、少しやってみようか」

 

 マスターのこの言葉でキル姫達は黄色い歓声を上げて沸き上がったのだった。

 

 

 そしてマスターが王様ゲームをするには、まずどんな物を用意しなければいけないのかなと考え始めた時には、すでにキル姫達が素早く動いて速攻でゲームの準備を整え終えていた。

 マスターが本当に皆未経験なのかと疑うほどの素早さである。

 彼女達は割り箸を使って、王様と書かれた棒と1から8までの数字を書かれた棒を用意していた。

 これがクジの代わりになる物だった。

 

 そして王様ゲームが始まった。

 まず進行役をかって出たケーリュケイオンがそのクジの書かれた箇所を隠すようにして持って、皆にクジを引くようにと差し出してくる。

 マスターとキル姫達が順にクジを引いて、その番号が書かれている箇所を確認する。

 

 マスターは5番と書かれたクジであった。

 さて初めの王様は誰であろうか。

 

 皆で掛け声をかける。

 

「「王様だ~れだっ?」」

 

 一瞬の沈黙の後にミストルティンが勢いよく手を上げる。

 

「あ!は、はいっ!わ、私ですっ!!」

 

 マスターがミストルティンを見て気楽そうに言う。

 

「お、ミスティか。さあ、何番に何を頼むのかな?ま、お手柔らかに頼むよ」

「は、はい!えっと、どうしよう……」

 

 ミストルティンは皆を見回してしばらく考えると、思いきるようにして言い放った。

 

「……えと、あの、じゃあ、2番の人と、ご、5番の人は力強くハグして下さいっっっ!」

 

 シーンとした空気が辺りを包む。

 そこへレーヴァテインが手を上げて言い出した。

 

「……はぁ、いきなりか……ついてないなぁ。だれ?5番」

 

 レーヴァテインは気が進まなそうな雰囲気を出して皆を見回して、そして何故か最後にマスターをじっと見つめて来た。

 

 マスターが手を上げる。

 

「俺が5番だな」

 

 レーヴァテインは驚くように言う。

 

「ええっ!相手はマスターなの!?……あはは。いきなり当たるなんてお互いついてないね。……ま、でも私は別に嫌な気はしないからいいんだけど♪」

「……俺だって、別に嫌じゃないさ」とマスターは少しムキになって言う。

 

「ふーん。……すけべ♪」

「おまっ……!」

「ま、いいよ。はい。じゃ、ぎゅっとしてね」

 

 そう言ってレーヴァテインはマスターに向き合って、大きく両腕を広げる。

 そしてマスターを楽しげに見つめた。

 

 マスターはレーヴァテインに近づくと、彼女の体をそっと抱き締めた。

 

 戦闘時はとても頼りになるこのレーヴァテインの体は、こうやって抱き締めると何かとても細身で繊細に感じる。

 それにお互い薄着なのでお互いの体の感触が良く分かってとても気持ちが良い。

 マスターのかなり遠慮がちなハグを見て、王様のミストルティンが注文を出してきた。

 

「あ、あの、もっと強めでお願いしますっ!」

 

 レーヴァテインがマスターを見つめて、少しからかうような感じで言う。

 

「……だってさ。どうするの?」

「……う」たじろぐマスター。

 

「ふふ♪……私の本気見せてあげようか?」

 

 そう言うとレーヴァテインは妖しく微笑んだ。

 マスターは慌てて返事をする。

 

「いやいや待て待て!殺す気か!?……分かったよ、こうすればいいんだろ」

 

 マスターは少し力を込めてレーヴァテインを抱き締めた。

 

「……あ……」レーヴァテインが微かに息を漏らす。

 

 レーヴァテインはマスターの胸に嬉しそうに頬を寄せて、抱き締め返した。

 そしてマスターとレーヴァテインはしばらくそのまま抱き合ったのだった。

 

 

 誰かの小さな咳払いがマスターの耳に届いた。

 

 ハッとしたマスターは慌ててレーヴァテインの背に回している手を離す。

 だがレーヴァテインはマスターの胸に頬を寄せたままの姿勢で少しも離れようとしない。

 一応進行役のケーリュケイオンが進み出てレーヴァテインに声をかけてきた。

 

「レヴァさん……もうその辺で」

「ええ~……。もうちょい……」

「ダメ。あとがつかえているので」

「うー……仕方ないなぁ」

 

 レーヴァテインは渋々マスターから体を離した。

 

 

 そしてまた番号の書いてある棒が集められてゲームが再開する。

 だがマスターはケーリュケイオンのあの言い回しに何か少しの違和感を覚えていた。

 

 何だろう?この感じは……。

 

 ケリュのあの言い方だと、レヴァと抱き合ったのが何か初めから決められていた事のように感じる。

 

 だが酒のせいなのか、マスターは頭がうまく回らない。

 

 そしてすぐにクジを引く順番になってしまった

 マスターが引いたのは8番と書いてあるクジであった。

 

 皆がまた掛け声をかける。

 

「「王様だ~~れだっ!」」

 

 手を挙げたのはフォルカスだった。

 

「はい、私です」

 

 マスターは何かホッとしていた。

 フォルカスならばあまり変な事は言わなそうだと思ったのである。

 何でこんな事を思うかと言うと、また自分の番号を呼ばれそうな予感がビンビンしたからだった。

 

 フォルカスが皆を見回してから何か少し考え込む。

 そして意を決したように言い出した。

 

「では王様の命令です。1番と……そうですね、初めと終わりと言うことで8番の人にしましょうか。1番と8番の人はおでこと両頬を10回ずつ合わせ合って下さい」

 

 マスターは番号を呼ばれてやはりと思った。

 予感が的中である。

 

 隣にいたロンギヌスがそっと手を挙げる。

 

「あ、あの、1番……私です。……えと、は、8番……のかたは……?」

 

 ロンギヌスは何となくマスターから視線をそらして皆を見渡して、最後の最後にマスターをじっと見つめてきた。

 

 マスターは諦めたように言う。

 

「俺が8番だ」

「え、ええ~~!マ、マスターですか!?そんな~~……」

 

 ロンギヌスは驚いたように言っているが、何となくわざとらしく感じる。

 

「…………それは与一の真似だな?」マスターは疑わし気な視線を向けて言った。

 

「!……はうぅ……」

 

 ロンギヌスは顔を真っ赤にしてうつ向いてしまった。

 

 マスターは小さくため息をつくと、ロンギヌスの頭に手を乗せる。

 

「さ、王様の命令だ。えーと何だっけ?」

 

 ロンギヌスは顔を輝かせてマスターを見上げると、早速説明を始めた。

 

「は、はいっ!えと、顔合わせと言うものです!お互い向き合って、順におでこ、右の頬、左の頬って触れ合わせるものなんですっ」

 

 マスターは王様の命令よりロンギヌス説明のほうが詳しい事にまた少し違和感を覚えながらも、取りあえずそれを実行に移す事にした。

 

 マスターがロンギヌスのおでこに自分のおでこを近づける。

 ロンギヌスと至近距離で見つめ合う事になり、マスターはえらく恥ずかしく感じた。

 そして次にお互いの右の頬と頬をそっと触れ合わせる。

 彼女のふにふにとした柔らかい頬がとても気持ちが良く、そして彼女のとても良い香りが鼻腔をくすぐってくる。

 何か間違ってそのまま彼女の口にキスをしてしまいそうになる。

 マスターは何故か軽く息を切らして何とか10回をやり終えた。

 

 ロンギヌスは頬に手を当てて、とても幸せそうにその余韻を楽しんでいる。

 

 そして次の回になった。

 王様になったのはカドケウスである。

 マスターが引いたのは3番のクジだ。

 マスターはカドケウスが何を言うかと身構えて待った。

 だが今回はマスターの引いた番号は呼ばれなかった。

 

「それじゃあ、2番と7番がキスね♪」

 

 カドケウスがあっけらかんと、かなり際どい事を平気で言う。

 2番がシェキナーで、7番はケーリュケイオンであった。

 マスターがさすがにキスはないだろと思っていたが、その2人は向き合って微笑み合うと、何のためらいもなく唇を重ねていた。

 しかもお互い首に腕を回したかなり熱烈なやつである。

 マスターはついおおと唸ってしまった。

 

 次の番もマスターは呼ばれなかった。

 王様はレーヴァテインだった。

 彼女が出した命令はお互いの胸の揉み合いで、ナーゲルリングとカドケウスが向かい合ってお互いの胸を熱心に揉み合っていた。

 これもなかなかにエロい。

 

 マスターはキル姫達の絡みを見ていて、次第に初めの2回に自分が呼ばれたのは、たまたまなのだと思えてきていた。

 

 そして王様ゲームは続き、またマスターの番号が呼ばれる事になった。

 今度の王様はロンギヌスで、マスターは4番のクジだった。

 ロンギヌスが何故かシェキナーとマスターを交互に見ながら少し言いにくそうに言い出した。

 

「え、えと、4番の人が、5番の人の胸を後ろから揉んで下さいっ!」

「ええっ!?」マスターは驚いてつい声に出してしまっていた。

 

 ……俺が誰かの胸を揉むってか?さっきみたいに……?

 

 マスターはロンギヌスが何かシェキナーに言った様に感じたので、シェキナーのほうをチラッと見てみた。

 すると本当にシェキナーが手を挙げてきた。

 

「5番は私ですね。その様子ですと、もしかしたらマスターが4番ですか?」

「う……。……そうだ」

 

 シェキナーはマスターをじっと見つめると、恥ずかしそうにうつ向いて言い出した。

 

「しょ、しょうがありませんね。……では王様の命令ですので……、ど、どうぞ……」

 

 シェキナーは赤い顔を隠すようにさっさと後ろを向いた。

 

 マスターはさすがに気後れしてシェキナーに訊ねる。

 

「お、おいシェキナー。本当にいいのか?」

「……これはしょうがないのです。ゲームなのですから。決して私が望んだ事ではないのです。……ですからどうぞおやりになって下さい」

「いや、でも、な。嫌な事をやる訳には……」

 

 それを聞いたシェキナーはクルリと振り返り、声を強めて言い出した。

 

「私はマスターに触れられるのは決して嫌ではありません!それはマスターの手が、私のどの箇所を触れてもです!!……分かって頂けましたか?マスター」

「あ、ああ」マスターはたじろぎながら返事をする。

 

「では、改めてどうぞ」とシェキナーは後ろを向く。

 

 マスターはもう断る事は出来ずに、シェキナーの背に近づくと、そっと両手を彼女の前に回した。

 そして、そっとシェキナーの豊満な胸に手を触れる。

 

「……あっ」シェキナーが吐息をもらした。

 

「!す、すまん……」

「いえ……何か少しくすぐったいですね。もう少し強めにしてもらえると助かるのですが」

 

 マスターはシェキナーにそう注文をつけられて、もっとしっかりとその大きな胸を揉むことにした。

 

 モミモミモミ……

 

 マスターは次第に夢中で手を動かし始めていた。

 しかし何と言う心地好い弾力だろうか。

 指に肌が吸い付くような感触とはよく言ったものだ。

 それに胸を揉むたびにシェキナーが小さく吐息を漏らすのが何か愛しくて仕方がなかった。

 しかもシェキナーは薄い生地の浴衣を着ているだけなので、胸の真ん中にある微かな突起すらもハッキリと分かるのだ。

 それはすでに少し固くなり始めているようだった。

 

 マスターが無心で胸を揉んでいると、ケーリュケイオンから声がかかった。

 

「……マスター。名残惜しいと思うけど、もうその辺で」

 

 マスターはハッと我に返って飛び退く。

 

「……え?うわ!す、すまない!」

「い、いえ。……大丈夫です」シェキナーは頬を上気させて涙目で振り返る。彼女の息も少し乱れていた。

 

 

 気を取り直して次のゲームに移った。

 そしてまたしてもマスターの番号がよばれる事になる。

 今度の王様はナーゲルリングで相手はカドケウスであった。

 ナーゲルリングが声高に命令を告げてきた。

 

「では命令ですが……。ん~1番の人(マスター)が2番の人(カドケウス)に寝そべった格好で覆い被さるってのはどうですかね?」

 

 カドケウスが嬉しそうに即座に手を挙げる。

 

「はーい♪私2番~!!」

 

 マスターはハァとため息をついて思った。

 

 ……ナーゲルは何でそう、そんなカドケウス好みの命令を言えるんだよ……。

 何となくその命令は、ナーゲルリングらしくない感じがするのだが……。まぁ、しょうがない。

 

「俺が1番だ」マスターは手を上げる。

 

 さっそくカドケウスがマスターの前の床に仰向けに寝転んできた。

 

「じゃあはい、マスター♪」

 

 カドケウスが仰向けのその姿勢でマスターに向かって両手を差し伸べてくる。

 だが、カドケウスの着ている浴衣が乱れ過ぎていて、何かもう隠すべきな所が色々と見えてしまっていた。

 

「カドケ……お前なぁ……」

 

 マスターは目をそらしつつ額を押さえた。

 

「ねえ、マスター。はやくぅ♪」

 

 だがカドケウスはそれを全く気に止めてもいない様だ。

 

 マスターは諦めてカドケウスの上に覆い被さるようにしてその身を重ねる。

 カドケウスが嬉しそうにマスターを下から抱き締めてぐっと自分の体を密着させてきた。

 しかもカドケウスは両足を開いてマスターの腰の後ろで絡めてきたから、2人は何か凄いヤバい体勢になってしまっていた。

 

 カドケウスの浴衣はもう裸体を隠す機能をほとんど失っていて、そしてマスターも浴衣の下は真っ裸でその股間部分もかなり無防備なのである。

 その為に2人の裸の股間同士が出会うのはもう時間の問題になってきていた。

 カドケウスの股間は期待ですでに潤い始めていて、そしてマスターの股間は度重なる色っぽい刺激のせいで、この一瞬ですでに硬度を保ち始めてしまっている。

 

 マスターが自分の股間のモノの状態に気付いて慌てて腰を逃がしたが、カドケウスはそれを追う様にして巧みに自分のお尻を動かしていく。

 マスターのカチカチになった棒状の先端に、何かニチャっとした柔らかいヌルヌルの感触があった。

 マスターはこれはヤバいと思いカドケウスに向かって囁いた。

 

「あ。……おい、こら、やめろって……ちょ、あっ」

「え~。大丈夫大丈夫♪先っちょ、先っちょだけだから♪」

 

 マスターを見つめるカドケウスの瞳の奥にはハートマークが浮かんでいる様だ。

 

 そして、お尻を動かしてマスターのモノが自分の穴に入る様に照準を合わせたカドケウスは、マスターの腰とお尻に回していた両足を器用に使って、マスターのモノを自分の中に導き入れようと動き出す。

 

「あっ……ホントにいかん!おい、ちょ、待てって言うのに」

 

 カドケウスの濡れた穴にマスターの先端が半ば入りかけ、興奮で我を忘れたカドケウスが、もうこのまま一気に自分の中に入れ込んでしまおうとした時に、やっと周りからの制止が入った。

 

「はい、そこまで」

 

 ケーリュケイオンがマスターに絡みついているカドケウスの足をほどく。

 

「きゃん!」

 

 カドケウスのお尻が床にストンと落ちる。

 

「カドちゃん、やりすぎ」

 

 ロンギヌスがマスターの背に回っているカドケウスの腕をつねった。

 

「いたたた」

 

 カドケウスの体がズルズルと下に落ち、マスターから身を離し始める。

 

 カドケウスから完全に解放されたマスターは身を起こすとふうと大きく息を吐いた。

 

 あ、危なかった……。

 皆の前でホントにやってしまうとこだったぞ。

 今思えば抵抗しようとすればいくらでも出来たと思うのに、何故かあの時はまるで為す術がなかった。

 

 マスターはしばらくの間、快感に屈してしまったあの時の自分を悔やんでいたが、ふと周りからの視線を感じた。

 キル姫達が全員で前に回って自分を見ているのだ。しかも固唾を飲むような感じの熱い視線である。

 マスターは何だろうと思っていたが、その視線が少し下寄りなのに気が付いた。

 

 マスターがその視線の先を追っていくと、浴衣の隙間から飛び出している自分の屹立した肉の棒が股間でテラテラと光っているのが目に入ったのだった。

 

「のわー!!」

 

 マスターは慌ててそれを隠した。

 

 それと同時に周りにいたキル姫達も波が引くように元の位置へと戻っていく。

 そして何事もなかった様にまた次のゲームが再開する事になったのであった。

 

 マスターが王様になる事もあったが、マスターは特に気の利いた命令を思いつかず、お互いの頬にキスをすると言った簡単なものになってしまった。

 それをしたのはロンギヌスとフォルカスであったが、何となくお互いが照れ合っているのを見て心が温まった。

 

 

 次のクジ引きではシェキナーが王様になっていた。

 マスターはホッと少し気を緩める事が出来た。

 もし自分の番号が呼ばれる事になっても、生真面目なシェキナーならそんなにヤバい命令はしないはずだと思ったのだ。

 マスターは何か余裕が出て来て、凝ってきた首をほぐす様に左右に動かした。

 するとその時、隣にいるロンギヌスの顔が目に留まった。見ると彼女は何故かクシャミをする瞬間のような奇妙な顔をしていたのだ。

 

「……。……どうかしたか?ロンギ」不思議に思ったマスターはちょっと訊ねてみた。

 

「ふえっ!?……え、あ、い、いえっ!な、な、ナンデモナイデスヨっ!!」慌てた様にロンギヌスが答える。

 

 そして彼女は赤い顔でそのまま俯いてしまった。

 マスターは少し不審がりながらも取りあえず追求はせずそのままにしておいてあげた。

 

 そしてシェキナーはしばらく考え込んで、何故か顔を真っ赤にしながら口ごもりつつ命令を口に出した。

 

「で、ではっ!王様の命令を、言いますっ!!2番の人と6番の人っ!お互いの指を使って相手におせち料理を食べさせてあげて下さいっ!」

 

「ええっ!?」2番の番号を引いていたマスターが驚きの声を上げる。

 

 そしてその王様の言葉を聞いて、この場から離れるように歩き出したキル姫がいる。

 ケーリュケイオンである。

 

 マスターがそのケーリュケイオンをただ見送るように眺めていると、彼女がマスターのほうに振り向いて話しかけてきた。

 

「その様子だとマスターが2番の番号の様ね。私が6番の番号なの。じゃあまずは一緒に手を洗いに行きましょうか」

「……あ、ああ。……そうだな……」

 

 マスターはケーリュケイオンと順番に台所の流しで丁寧に手を洗った。

 元の場所に戻る際にマスターはケーリュケイオンに歩きながら話しかけた。

 

「……おい、ケーリュ。何かこれって前にお前が言っていた、俺とやりたい事にそっくりなんだが」

 

 ケーリュケイオンは小首を傾げた。

 

「あら、そうだった?私そんな事言ったかな?」

「言ってたぞ。あれは確かイタズラしたカドケにお仕置きをした時だったと思う」

「そう?でも、もしそうなら凄い偶然!あ~嬉しいなぁ」

「……偶然で済むレベルを超えてるんだが……」マスターはポリポリと頭をかいている。

 

「でもしょうがないよね。だって王様の命令なのだもの♪」

「う、……まあ、それはそうなんだが」

 

 そうこうしている内に取り皿におせち料理が取り分けられて、向かい合わせに座ったマスターとケーリュケイオンの間に置かれた。

 マスターが初めに料理を手に取るのを躊躇していると、先にケーリュケイオンがおせちに手を伸ばしていった。

 ケーリュケイオンがカマボコを一枚指で掴む。

 そしてマスターのほうに手を伸ばして声をかけた。

 

「はい、マスター。あ~ん♪」

 

 マスターは言われるがままに口を開いたが、そのカマボコだけを唇に挟んで彼女の手から引き抜いて食べる事が出来た。

 マスターは内心ホッとした。

 これは自分が予想したより際どい事にならなそうな感じがしたのだ。

 

 次にマスターがケーリュケイオンに食べさせる番になった。

 マスターがケーリュケイオンに同じくカマボコを食べさせてあげようとすると、彼女から声がかかった。

 

「あ、マスター。私、栗きんとんが食べたい」

「うん?栗きんとん?分かった。え~と……」

 

 マスターはリクエストされた物を取ろうとしたが、取る直前にピタリと手が止まってしまった。

 それを見ていたケーリュケイオンはニヤニヤしながら催促する。

 

「マスター、早く。はい、先にあ~んしてるから」

 

 そう言って口を開けて待つケーリュケイオン。

 

 マスターは覚悟を決めて栗きんとんを掴んだ。

 だが栗はきんとんの餡の中に埋もれていたので、指にこってりときんとんの餡がべっとりとまとわりついてしまった。

 

 マスターは嫌な予感を感じながらケーリュケイオンの口にその手を伸ばす。

 ケーリュケイオンはマスターの指ごとパクりと口を閉じた。

 マスターは栗をケーリュケイオンの口の中に離してすぐにその手を引いたが、指にはまだきんとんの餡がべっとりとくっついている。

 ケーリュケイオンは微笑みながら栗をモグモグして飲み込むと、マスターを見つめてまた口を開いた。

 

 マスターが戸惑っているとケーリュケイオンが催促してきた。

 

「マスター?私まだ栗きんとんの栗ちゃんしか食べてないんだけど?早くきんとんの部分食べさせてよ」

「う……」

「は・や・く♪」

 

 マスターは観念してケーリュケイオンの口元に餡のついた指を伸ばした。

 しかし何て計略的なケーリュケイオンの要望だろう。

 

 ケーリュケイオンはマスターの指を口に含むと、それは美味しそうに丹念に口の中で舐め回していく。

 マスターは指をケーリュケイオンの口に含まれて、くぅっと唸った。

 ケーリュケイオンの口の中の柔らかさ温かさ滑らかさ、更には目の前の彼女の自分の指を舐め回す妖艶な表情。

 

 エロすぎると、マスターは本当にもの凄い興奮を感じてしまっていた。

 

 息も絶え絶えになっているマスターに、今度はケーリュケイオンが栗きんとんを指で差し出して来た。

 ケーリュケイオンを真似て、マスターは彼女の指を口に含んでそれを舐めとっていく。

 そんなマスターを妖しく微笑んだ表情でケーリュケイオンは見つめていた。

 

 マスターはこれは食べさせるのも食べるのもどちらも物凄く快感があると心から思い知らされたのだった。

 

 

 そしてまた次のゲームになりクジを引く。

 マスターは今度は1番と書かれた棒であった。

 マスターは取りあえず何か飲んで落ち着こうとコタツのほうを振り向いた。

 その時にふとシェキナーとロンギヌスの顔が目に入った。

 それを見たマスターは不審げに眉を寄せた。

 

 その時に見たシェキナーは何故か舌を出していて、ロンギヌスは今度は口をおちょぼ口にしていたのだった。

 彼女らはマスターと目が合った途端にそれをやめて、シェキナーはマスターに愛想笑いを浮かべて見返し、ロンギヌスはすぐにまた俯いていた。

 マスターはそれが何か少し心に引っかかり、一応それを心に留め置く事にした。

 

 王様になったキル姫が手を挙げた。

 

「あ、私が王様か。……うー、めんどいなぁ……」

 

 今度はレーヴァテインが王様だった。

 レーヴァテインは仲間のキル姫を一人一人順に見回して、何故かすごい難しい顔をしてぶつぶつと小声で何かを呟いている。

 

「……えと、次はナーゲルの番だから……うーんと、4、……1、8?……」

 

 マスターが何だろうと聞き耳をたてる。

 レーヴァテインはマスターにじっと見られているのに気が付くと、何やら慌てて言い訳がましくマスターに言い出した。

 

「……あ、あはは。えーと、どうしよっかなー。どんな命令にするか迷っちゃうなー……。……ちょっと考えさせてねー」

 

 レーヴァテインはそう言いつつ何やら本当に真剣な表情で考え込み始めた。

 

 マスターは一体何をそんなに悩んでいるのだろうとしばらくレーヴァテインを眺めていたが、ふと他のキル姫達の表情が気になり始めた。

 もしかしたら、ロンギヌス達と同じような変な顔をしているかもと思ったのだった。

 今までは彼女達のまばゆい肢体のほうに目がいってしまい、彼女達のその表情まで見る余裕がなかったのである。

 マスターは少し俯き加減になると、そっと彼女らの表情を盗み見てみる事にした。

 

 改めてよく見てみると、何故か皆は揃って少し奇妙な表情をしているのに気が付いた。

 

 正面のフォルカスは口を少し半開きにしている。

 その隣のナーゲルリングは舌をぺろっと出している。          

 そしてその横のミストルティンはおちょぼ口をしていた。          

 それらは何か見覚えのある表情だった。

 

 マスターは彼女らのこれは一体何だろうと思いつつ、そしてまた他の姫へと視線を巡らした。

 

 自分の右側のロンギヌスは頬をぷうと膨らましていて、その奥のシェキナーは口を横一文字に引き結ぶ様な感じにしている。

 自分の左側のカドケウスは猿の様に鼻の下を伸ばしていて、そしてケーリュケイオンは……と見ると、マスターはつい吹き出してしまった。

 彼女はアゴをグッとつき出して、ヘンテコなしゃくれ顔をしていたのだった。

 それは普段のクールな彼女からは考えられない表情であり、もの凄い衝撃であった。

 

「……ぶはっ!……ん、んんっ!……ゲホン、ゴホン……」

 

 咳き込んで何とかごまかしたマスターは、何となくこの王様ゲームの絡繰りが見えてきたような気がした。

 

 マスターは今までの事を色々と思い返していた。

 

 王様から命令される自分の頻度の多さ。

 そして自分と共に命令を受ける事になったキル姫達の順番。

 そしてまた、その選ばれたキル姫が好みそうな王様の命令の内容。

 更には王様が命令をする時に、王様になった者が皆を見渡してかなりの時間をかけて考えこむ事実。

 

 これらを踏まえて色々考えると、これは『番号の書いてあるクジを引いた者が、自分の番号が何番かと言う事を、王様に何らかの手段を用いて伝えている』のだろうと推測出来てくるのだ。

 

 だから王様は分からないはずの仲間の番号を知る事が出来て、なおかつその仲間の番号を除いた数字で俺の番号が分かるのだ。

 そう考えると俺と共に命令をされたキル姫の順番が納得出来る。

 そうあれは古参順なのだ。古株のキル姫から順に俺との絡みを設けているのだろう。

 初めがレヴァ、次にロンギ、そしてシェキナー、カドケウス、ケーリュケイオンと来た訳だ。だから次はナーゲルの順番で、たぶんその次はミスティ、そして最後がフォルカスとなるはずだ。

 

 マスターは凄い感心していた。

 この王様ゲームはかなり深いところまで考えられている。

 

 王様が出すあの命令は、前もってキル姫達でお互いにリクエストし合っているのだろう。

 自分の順番ではこの命令を出して欲しいとあらかじめ決めてあるのだ。

 だから皆それぞれあんな個性的な命令なのだと分かる。

 

 そしてこのゲームの肝であるお互いの番号の伝達方法がたぶんあの表情なのだろう。

 

 舌を出したり、頬を膨らましたり、おちょぼ口をしたり、それらが1~8の番号に対応していると思われる。

 だから王様になった者はいつも考え込むのだ。

 

 どの表情がどの番号なのかを思い出さねばならないから。そしてさらに面倒な事に、仲間の全ての番号を割り出して、最後に抜けている番号を見つけ出さないといけない。

 そう、それが俺の番号だ。

 そして決められた順番のキル姫のリクエストを思い出して、自然を装って命令しないといけない。

 これはかなり大変だろう。

 

 それに、俺にここまでこの絡繰りがばれないようにした工夫がまた見事だと言わざるを得ない。

 

 その工夫と言うのがあの野球拳なのだ。

 

 あれは、ただ俺を脱がせたいだけではなかった。

(……まあただ脱ぎたい奴もいたと思うが)

 

 服を脱いで自ら肌や下着を晒す事で、俺の視線を顔のほうへ行かさないようにしていたのだ。

 実際見事にその策にはまって、今までずっと彼女達の肌ばかり見ていたから、それはもう大成功だったと言えるだろう。

 

 マスターはまた色々と考えて深い溜め息をついた。

 

 ……はあ。

 だが、今全て分かったところでもう遅いと言う訳か……

 だからケーリュの奴はあの時あんな意味深な事を俺に言った訳だな。

 ケーリュの順番位まで回ってしまえば、もし俺にばれたとしてももう安心だと言う事なのだろう。

 確かに残りはナーゲル、ミスティ、フォルカスの若い衆だ。

 このゲームの絡繰りを俺が知ったところで、俺が拒否をして彼女らの順番をなくしてしまうような可哀想な事など出来やしないと思っているのだ。

 

 ホント、あいつらは俺の事を良く分かっている。

 さすが俺の自慢のキル姫たちだ。

 そう!その通りだ。

 俺が分かっていて、若い衆だけを拒否する事なんて到底出来るが訳ない!

 

 それにだ……もしかしたら、こうやって俺が途中でこの絡繰りに気が付くようにしたのも、あいつらの思惑の一部分なのかもしれん。

 言わば、俺に対して全てを騙しきる事に抵抗があったのだろう。

 もしくは俺のプライドを考えたのだろう。

 

 ま、どっちにしろ、俺の負けだ……。

 そこまで周到な準備をしていたと知ったら、もう受け入れざるを得んではないか。

 

 マスターはもう完全に諦めの心境で、事の成り行きを待つ事にしたのであった。

 

 

 王様のクジを引き当てたレーヴァテインがやっと命令を出してきた。

 

「……えーと、3番の人が6番の人をお姫様抱っこで。5分間」

 

 マスターは即座に前に出た。

 

「よし。俺が3番だ。さ~て、だれを抱っこするんだ?小柄な姫なら良いんだが」

 

 ナーゲルリングが手を挙げる。

 

「私です。よろしくお願いしますね、マスター」

 

 ナーゲルリングがマスターの前に進み出てきてペコリと頭を下げる。

 マスターはナーゲルリングを見て微笑む。

 

「お、ナーゲルか。それなら何とか俺にも大丈夫そうだな」

「……あ、小さいからってバカにする気ですね」と軽く睨んでくるナーゲルリング。

 

「はは」

 

 マスターは笑ってナーゲルリングの背に手を回すと彼女の膝裏に腕を当ててヒョイと持ち上げた。

 

「きゃあ」ナーゲルリングが小さな悲鳴をあげる。

 

 だがそれは一瞬だけで、すぐにナーゲルリングはマスターを完全に信頼しているような態度で、その腕の中でリラックスして見せた。

 ナーゲルリングがとても幸せそうな顔でマスターに微笑みかける。

 

 マスターはナーゲルリングとの顔がかなり近いので何か照れてしまっていた。

 それに背に回して支えている腕の手の先が、少し彼女の胸の膨らみに触れてしまっているのも、何か気になってしょうがなかった。

 

「ふふ、どうですか?」ナーゲルリングが訊ねる。

 

「ん?何がだ?」

「私の体の抱き心地です」

「……そうだな。ぶっちゃけると、胸が思ったよりあるな……と」

「小さいからって油断した?ダメだね~♪」

「はは♪」

 

 マスターとナーゲルリングは至近距離でそんな感じに親しげな会話を続けていた。

 

 

 次に王様になったのはケーリュケイオンだった。

 ケーリュケイオンは一瞬この場を見渡すとすぐに命令を口に出した。

 

「では王様の命令です。4番の人が2番の人を膝枕して下さい」

 

 呼ばれると思っていたマスターがすぐに一歩前に進み出る。

 

「2番だ」

 

 少し間が空いてミストルティンがおどおどした様子で手を挙げた。

 

「あ、あのあの、私がよ、4番です……」

「ああ、ミスティか。じゃあよろしくな」

「は、は、はいっ!こちらこそよろしくお願いしますっ!!」

 

 ミストルティンは勢いよく頭を下げている。

 

「えーと、どうすればいい?」とまずマスターが訊ねた。

 

「あ、はいっ!」とすぐに床に正座の姿勢で座るミストルティン。

 

「……で、ではこちらにどうぞ」

 

 ミストルティンはそう言うと、自分の膝を手で指し示した。

 マスターの目に彼女の素肌の太ももがとても綺麗に輝くように見えた。

 促されたマスターは普通にミストルティンの横から寝そべろうとしたが、彼女におそるおそる止められた。

 

「あ、あの、すみません、マスター。横からじゃなくて、正面から頭を乗せて貰う感じでも良いですか?」

「え?ああ、分かった……こうか」

 

 マスターは言われた通りにミストルティンの膝に頭を乗せた。

 小柄な彼女の太ももは枕としてちょうど良い大きさと高さで、更にはその弾力と暖かさがとても心地良く感じる。

 それに彼女の正面から頭を乗せているので、彼女の下腹部に頭の頂点が当たり、その柔らかい感触がまた気持ち良いのであった。

 マスターを見おろしてミストルティンが声をかける。

 彼女は嬉しさでもう胸が一杯になっている様な笑顔を見せていた。

 

「……ふふ。私、こうやってマスターに膝枕をしてあげるのが夢だったんです」

「そうか。それじゃあ、たまたま夢が叶ったんだな」

「はい♪」

 

 マスターは可愛らしい笑顔のミストルティンを見上げて、まあいいかと、とぼけてあげる事にした。

 

 2人はしばらくその姿勢で話をしていたが、ミストルティンが気後れがちに言い出してきた。

 

「あ、あの、マスター。よろしければ、お耳のお掃除、何てどうでしょうか……?」

「うん?耳かきってやつか?」

「はい。一度マスターにしてあげたくて……、あ、私、評判いいんですよ!友達からもとても上手だって言われたりして」

「……う~ん。じゃあ、やってもらうとするか」

「はいっ!それじゃあ、あの、そのままそこで横向きになって下さい」

「分かった」

 

 マスターは彼女の太ももに頭を乗せたままそのまま体をひねって横を向く。

 そしてマスターは少々目を見張る事になった

 彼女の太ももの艶のある肌色が目の前に迫り、その柔らかな太ももの感触が直に頬が感じられたのだ。

 それに彼女の良い匂いが強く感じられて、何か次第に興奮してきてしまう。

 

 そしてそのままミストルティンに耳の中を優しくほじられて、マスターはつい喘いでしまった。

 

「ううっ……」

 

 それを聞いたミストルティンは慌てて謝っていた。

 

「あ!す、す、すいません!マスター。痛かったですか!?」

 

 マスターは恥ずかしそうに否定する。

 

「い、いや……。何か気持ち良くて、つい声が出ちまった」

「ほっ……そうですか。良かったです。では続けますね……」

 

 マスターは目の前の柔肌に舌を這わしてみたいと言う欲望に抗いつつ、彼女に優しく耳かきをしてもらっていた。

 

 そして次のゲームになる。

 順番でいくと多分フォルカスだろう。

 

「「王様だ~れだっ!?」」

 

 皆の掛け声が部屋に響く。

 マスターは自分のクジを確認する。8番であった。

 それで王様はと言うと……。

 

「はいは~い!私王様~♪えっへん!」

 

 カドケウスである。

 カドケウスはまずフォルカスのほうを見てニコッと笑うと、いつも通り皆の顔を見渡していく。

 そしてうんと頷くと声高らかに命令を口にした。

 

「それじゃあ、王様の命令~!8番の人が~、5番の人に愛の告白をして下さい~!えーと、基本告白の振りなんだけど、相手を一生懸命口説く事っ♪」

 

 マスターは予想もしてない事を言われて変な返事をしてしまった。

 

「へ!?」

 

 その声を聞きつけたカドケウスがマスターのほうを振り向く。

 

「ん?あれ?マスターがどっちかの数字の人なの?」

 

 マスターは白々しいと思いながらも、話を合わせるようにして答えた。

 

「そうだよっ!俺が8番の番号だ。んでカドケ、お前今妙な事言わなかったか?」

「ほえ?妙な事?」

「何か、口説くとか何とか……」

「うん。そうだよ。ちょっと面白そうでしょ?」

「ん?いや、でもな……」

 

 マスターが少しごねるようにしていると、後ろからフォルカスが手を挙げてきた。

 

「あの、私が5番です。マスター……。マスターは私が相手では嫌ですか?」

 

 フォルカスが悲しげな瞳でマスターをじっと見つめる。

 マスターはたじろぐようにして答えた。

 

「えっ?……いや、お前とするのが嫌なんじゃなくてだな……」

「では王様の命令なのでどうかお願いします」

 

 フォルカスは冷静にそう言うと、部屋の真ん中に出てきてマスターを待った。

 

 マスターは観念してフォルカスと同様に部屋の中央に出向いた。

 そこでマスターとフォルカスは向かい合う。

 フォルカスは少し不安げにマスターを見つめている。

 

 マスターはそんなフォルカスを見ていられずに何とか口を開こうとするのだが、まず初めにどんな言葉を切り出せば良いのかがまるで頭に浮かんで来なかった。

 マスターが困り果ててその場で固まっていると、カドケウスがお酒と共に助け船を出してきた。

 

「はい、マスター。お酒。取りあえず景気づけにこれでもあおっちゃって。それでね、まずは相手の事を褒める事から始めると良いと思うよ」

 

 マスターはなるほどと思い、少しヤケになって手渡されたお酒をグイとあおった。

 いつもの小さなお猪口じゃなくて普通のコップだったが、もう取りあえず一気に飲み干した。

 すぐさま顔と胸がカッカとし始めて、勢いを得る事が出来た。

 マスターは目の前の少し不安げなフォルカスを見て、もう思った事をそのまま言ってやろうと心に決めた。

 

 マスターは息を大きく吸い込み熱い口調でフォルカスに話しかける。

 

「フォルカス!どうかそんな顔をしないでくれ!せっかくの美人な顔が台無しじゃないか!」

 

 フォルカスは目をパチクリとさせてマスターを見返した。

 そして勢いづいたマスターの言葉が続く。

 

「お前にはそんな不安そうな顔は似合わない。大丈夫だ、俺はお前の事なら何でも知っているぞ。お前は人付き合いが苦手だけど、本当に仲間思いな事も。そして仲間を守る為なら自己犠牲すらいとわないと思っている事も。あとはお前が、そう言った事は言葉で語らずに行動で示そうと考えている事もな」

 

「!……マスター……」

 

 フォルカスは目に涙を浮かべながらも、マスターにニコっと微笑んでみせた。

 フォルカスはマスターにそこまで知って貰っていると分かり感動で胸が一杯になっていた。

 

 マスターはフォルカスのその笑顔で胸が締め付けられる様だった。

 

「ああ、いい笑顔だ……。そうしていつも俺に微笑みかけてくれ。俺はもうそれだけで頑張れる」

 

 2人の世界に入り込んでいるマスターに、カドケウスが後ろからコソッと囁いた。

 

「……さあ、そこで愛の告白。フォルカスの手を握ったりしたほうが良いかも」

 

 マスターは何故かもう促されるままに動いていた。

 酔いがかなり回っていると言うのもあるだろう。

 

「フォルカス!!」

「は、はいっ!」

 

 フォルカスの手を取ってグッと握りしめるマスター。

 

「……あ!……あ、あの、マスター……。私、急に距離が近くなるのは苦手って……」

 

 フォルカスは動揺しまくりで顔を真っ赤に染めて俯き、何かもう幼い少女の様に大人しくなってしまっている。

 マスターはいつもの凜々しい感じのフォルカスがこんなにしおらしくしているのを見て、何かもう我慢出来なくなってきてしまった。

 

「好きだっ、フォルカス!」

 

 ガバッとフォルカスの細い体を抱き締めるマスター。

 

「やんっ!マ、マスター……な、何度も言っているじゃないですか、声を……かけてから、触れて下さい……って」

 

 フォルカスは恥ずかしげに小声でそう囁くと、そっとマスターの背に手を回した。

 そして2人は恋人同士のように熱く抱き合ったのだった。

 

 しばらくして、そんな熱々の2人のそばに紫色のリボンがふよふよと近寄って来た。

 

「……もうそろそろ、離れてもいいんじゃないかな~~!?」

 

 この甘い雰囲気を作ったカドケウスが今度はぶちこわしにきたのだった。

 

「あっ!ご、ごめんなさい!」

 

 フォルカスは素直にマスターから離れようとしたが、マスターはそのままの体勢で彼女から離れようとしない。

 

「あの、マスター?」

 

 フォルカスが訊ねる。

 だがマスターは全く返事をしない。

 その内に、マスターの体から力が抜け始めてフォルカスの体にもたれかかるようになり、そしてマスターの体はそのままズルズルと彼女に支えられながら滑り落ちていった。

 

 フォルカスがマスターの頭を胸に抱きながら、その体を床にそっと横たえる。

 心配そうな顔のキル姫達が2人の周りに集まって来た。

 マスターの顔をそっと覗き込むキル姫達。

 そんな彼女らの耳に微かなマスターのいびきが聞こえてきた。

 マスターはフォルカスの腕の中でとても安らかな寝顔を見せている。

 

 キル姫達は皆で顔を見合わせてホッとしたように笑い合った。

 

 

「さ、新年会はもうお開きだね。片付け始めようか」

 

 レーヴァテインが皆に言う。

 皆が頷き、それぞれが自分がやるべき事をやり始めた。

 取りあえずマスターをこのままにはしておけないので、フォルカスとミストルティンとナーゲルリングでマスターを寝室のベッドに運んでいった。

 ロンギヌスとシェキナーとケーリュケイオンでコタツの上を綺麗にしていた。

 レーヴァテインとカドケウスは部屋の中を整頓していく。

 

 そして部屋は元通りに綺麗になった。

 

 マスターの寝室からは盛大ないびきが聞こえる。

 マスターはもうかなり熟睡しているようだ。

 

 もうすでに部屋は片づき、残ったおせちやお酒もきちんとしまい、ゲームに使った小道具もそれぞれがバックに仕舞い込んでいた。

 

 だが誰一人として、あの野球拳で脱いだ自分の服を再び着ようとはしない。

 

 キル姫達はまだあの薄い浴衣や半裸の姿のままでコタツへと戻って来た。

 

「あ~やっぱちょっと寒いねえ」とコタツに腕を突っ込むレーヴァテイン。

 

「あはは。今は真冬だもんね。みんなは大丈夫?」ロンギヌスはレーヴァテインに答えながら皆を見渡す。

 

「私は全然大丈夫よ」とシェキナーが言う。

 

「シェキ姉はその大きな胸を持っているからじゃない?」とカドケウス。

 

「その理屈で言うと貴女はもう凍えて死んじゃうね」ケーリュケイオンがカドケウスの胸をつついて茶化すように言う。

 

 カドケウスが頬を膨らまして言い返した。

 

「む~!お姉ちゃんだって似たようなもんでしょ?ミスティもそう思わない?」

「ふえっ!?わ、私は……」ミストルティンはどう答えたら良いか分からず俯いてしまった。

 

 フォルカスが分析するように言い出す。

 

「でも、酔いが少しずつ抜け始めて、それに片付けをした事で少し体が冷えたんだと思いますよ」

「そうですね。確かにマスターがいる間は寒さなんて感じる暇がないって感じでしたからね」とナーゲルリングが言う。

 

 しばらく雑談が続いていたが、一瞬キル姫の間に沈黙が訪れた。

 その時にレーヴァテインが前とは違う真剣な口調でカドケウスに訊ねてきた。

 

「……それで、居残り組へのお土産は、とにかくゲット出来たと言う事だよね?」

 

 カドケウスは鞄からジップロック付きのビニール袋を2つ取り出してきた。

 中にはそれぞれTシャツとトランクスが入っている。

 

「うん。でもこれって一応マスター公認って事でいいんだよね?」

 

 カドケウスは姉のケーリュケイオンに訊ねる。

 ケーリュケイオンが考えながら答えた。

 

「う~ん……まあ、マスターも諦めたような態度だったから、たぶんセーフだと思う。……ロンギ、貴女はどう思う?」

 

 ケーリュケイオンはロンギを見て訊ねた。

 

「そうね……。一応無理矢理な感じだったけど、マスターの目の前だったから大丈夫だと思う。シェキナーは?」

 

 今度はロンギヌスがシェキナーに意見を求めた。

 

「まあ、強引だったのは否めないけど、マスターは優しいから多分もう問題はないと思うわ」

「よし。じゃあ、決まりだね。これは今回この新年会に参加出来なかった仲間へのお土産と言う訳で」

 

 皆が異議無しと頷き合う。

 

 

 そしてまた沈黙が訪れる。

 

 この沈黙に耐えきれずにナーゲルリングが皆に訊ねるように口を開いた。

 

「あのっ、本当に今からやるんですか?」

 

 皆がナーゲルリングのほうを見たが誰も答えようとはしない。

 

 だがロンギヌスが覚悟を固めたように大きく息を吐いてから話し始めた。

 

「ふ~……。いい?これはもうあの時決めたはず。マスターがかなり酔っ払って、もしも私達の前で無防備に寝てしまったら、もうこれは行こうって。こんな機会はもう二度と来ないかもしれないって、あの時みんなで色々話し合ったよね。それで新年会の終わった後に、脱いだ服を着ないのは、これからする『秘め事』の参加の表明の代わりだってのも決めたよね。……みんな服を着ないと言う事は全員参加と言う事でいいんだよね?」

 

 ロンギヌスのその言葉に、真剣な顔で全員が静かに頷いた。

 ロンギヌスがそれを見てレーヴァテインに向かって頷く。

 レーヴァテインが重々しく話し始めた。

 

「決まりね。……では、これより『裏新年会』を始めようと思う。これから行う事は、今ここにいる同志だけの秘密で、どんな仲の良い仲間にも決して話さない事を誓って。もし漏らした場合は何らかの処罰があると思って構わないわ。いいかしら?」

 

 皆がほぼ同時に深く頷く。

 

「では、行こう。愛するマスターの元へ」

 

 そう言ってレーヴァテインが立ち上がると、皆も一斉に立ち上がった。

 

 そしてマスターの寝室に行くまでに全員があの浴衣を脱ぎ捨てて、綺麗な裸体を見せていく。

 

 一糸纏わぬ裸になったキル姫達8人はマスターの寝室へと順番に静かに入って行った。

 

 その寝室のベッドには薄い浴衣だけのマスターが寝ている。

 マスターはすでに大きないびきをかいて寝ているので、もう何をしても起きなそうだった。

 

 一番最後に寝室に入ったフォルカスがその扉を静かにきっちりと閉じた。

 

 そしてロンギヌスがマスターの熟睡を妨げない様にと薄暗くしてあった照明を明るく点け直す。

 

 全裸のキル姫達の目の前に、寝ているマスターがハッキリと見えた。

 寝相でマスターの浴衣はだいぶ乱れていて、マスターがずっと必死になって隠していた部分がほとんど見えそうになっている。

 

 キル姫達は皆ゴクリと唾を飲み込んだ。

 

 そして、手をそうっとそのマスターの浴衣に伸ばすと、マスターを起こさない様にゆっくりと、皆でその浴衣をマスターの体から脱がし始めたのだった。

 

 

 {終わり}

 

 

 

 




お疲れさまでした。

最後までお付き合い頂きありがとうござます!

ラストの続きはR18で(大嘘)。

感想評価あればよろしくお願いします。
ではまた。
(^^)/

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