東方白天狗   作:汎用うさぎ

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前回のあらすじぃ!!

霊夢「オデ…オマエ…キライ…コロォス…!」

雪「絶対ゆる早苗!お前が氏ね!!!(性格反転)」

もうひとりの()による神速の男女平等パンチ(イマココ)


21.博麗霊夢

 博麗の巫女が突如として戦場から掻き消えた事に最初に気付いたのは戦況を見逃さんと猛禽類の如き眼で見つめていた星熊勇儀であったか、それともスキマを通して俯瞰していた八雲紫であったか、はたまた人間の魔法使いであったか。

 

 高密度の弾幕を展開し、雪を苛烈に攻めていた巫女の姿が突如としてその場から消えた直後に戦場から少し離れた山の麓で爆音が響いた。

 

 制御を失った弾幕が次々と消え去り、その中から爆音のした山の麓に向けて手を伸ばした雪の姿が現れる。そこに霊夢の姿はない。

 

「――は?」

 

 誰かが発した間の抜けた声が緊迫していた戦場に次々と連鎖する。それもそのはず、一瞬も目を離していないのに忽然と霊夢が姿を消し、その直後に地面を揺らすような爆音が観戦者達の後方から鳴り響いたのだ。

 

 魔理沙はすぐさま爆音の震源地に目をやると其処には瓦礫と血に塗れた紅白巫女の痛々しい姿が目に入り驚愕に目を剝いた。

 

「――れ、霊夢ッ!?」

 

 勘の良い者は直ぐに気がついたであろう。弾幕が力を失い淡く消えていく空に静かに佇む天魔が“何か”をしたのだ。霊夢はその何かによって地面に叩き落されたのだ、と。

 

 濃密な弾幕の中で起きた事だから正確に目視出来た訳ではないので確証はない。しかし、確信はあった。確実に天魔が何かを仕出かしたという確信が。それと同時に、薄れていく弾幕の先に天魔の姿を捉えた観戦者は、異質とも言える天魔の様相に激しく戦慄した。

 

 心臓が直接握られたような、あるいは首筋に鎌を添え当てられたと錯覚するような濃密な憤怒や憎悪、そして殺意が其処に顕現していた。

 

――殺意という概念を視覚化したらきっと、此処に居るもの全てが今の天魔の様相を指すだろう。

 

 表情が抜け落ちた冷酷な瞳、異様なまでにつり上がった口角。親愛による笑みではなく、獲物を前にした猛獣が浮かべるソレ。

 

 天魔を知って間もない者は強大な妖怪の殺意に畏れ慄き心臓を押さえて呼吸すらままならず、重圧に耐えきらなくなった者が次々と意識を手放して倒れていく。

 

 そして天魔の知己や配下の妖怪達は、質量を伴うかのような重圧に押し潰されそうになりながらも、一同に同じ事を心中で叫んだ

 

『――あれは、誰だ…!?』と。

 

 これまでに雪が天魔としての役割を果たしてきた中でこれ程までに明確な殺意を露わにした事などなかった。

前天魔との下克上でさえ、守矢の神々との信仰戦争でさえ、強大な力を持つ鬼の四天王との決闘でさえ、鉄仮面とも言える表情が殺意などで歪んだ事は一度もなかった。

 

 天魔が怒った事がない訳ではない。前任の天魔の不誠実な治世に怒り下克上をしたし、鬼との死闘の末に悪態を吐く事もあった。しかし、その怒りでさえ天魔をよく知り、その微かな表情の変化を読み取れる者にしか分からない程だ。

 

 しかし、今の天魔の様子はそれほどまでに理性的な大妖怪であった山神雪からはかけ離れている。

 

 まさに変貌とも言える雪の姿を目の当たりにして、雪の微かな表情の変化を読み取れる者の一人でもある東風谷早苗は絶句した。

 

「…ぁ…う…そ…」

 

 妖怪の山に転移してから間もない早苗ではあるが、なにかと天魔と交流の深かった。(早苗が一方的に押しかけていた)故に、視線の先にある現実を容認出来なかった。

 千早振る嵐のような殺意を身に宿す雪の姿が――

 

(私が知る雪さんは、こんな…)

 

 早苗がよく知る雪は縁側で静かにお茶を飲み、早苗の他愛のない話に付き合ってくれて、ふとした瞬間に万人を虜にするような優しい笑みを浮かべて見守ってくれるお姉ちゃんみたいな人で――

 

「――なえ!おい!早苗!!」

 

 肩を揺すり問いかける魔理沙の声で意識の底から浮上する。

 

「…っ!?な、なんですか…?」

 

「あいつヤバいぜ…!霊夢が一方的に攻撃喰らうなんざ初めてみた…ッ!これまで数えきれないくらいの修羅場を掻い潜ってきたが…私の直感が異常な程に警報鳴らしてる…!天魔ってのはあんな化け物だったのか…!?」

 

「――っ!雪さんは化け物なんかじゃ…!!」

 

 早苗の知る山神雪は化け物ではない。と、言葉にしようとして喉が苦しくなる。声が、出せなかった。

 今の早苗の瞳に映る存在を擁護するような言葉を、早苗の口から言えない、言うことができなかった。

 

 本来の雪は、決して――決して、あんな禍々しい殺意をばら撒く妖怪なんかではない。あれは断じて、東風谷早苗の知る山神雪ではない。

 

 だが、だとしたら、“アレは”誰なのか――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――かはッ…ぁ…ぐ…ぅ…」

 

 痛み、鈍痛、激痛、歯痛、頭痛、関節痛、筋肉痛etc………とにかく痛い。

 

 おおよそこれまでに体験した事がない程の痛みという痛みが全身を駆け巡る。もはや身体で痛みを感じないところがないくらいに痛い。

 

「…何が…ッ」

 

 当事者である霊夢でさえ、何をされたか分からなかった。気がついたら地獄のような痛みに襲われていて、泥や礫、拳大の岩が大量に自分に積もっていた。側から見たら地面に埋まってるくらいに。

 さらに言えば、その瓦礫によって全身に裂傷が走っており、相当量の血が地面に吸い込まれ失われていく。

 

 ただ、分かるのは天魔が何かしらの動きを見せてこうなった。つまりは“攻撃”されたという事は間違いない。

 

(一瞬も目を離してないのに…!?)

 

 これまでに数多の妖怪退治を熟してきたという経験のある霊夢が、視認することすら許されない。

 

――いや、知覚すら許さぬ神速の一撃。

 

 気付いた時には攻撃されている、というのは紅魔館のメイドで体験している。

しかし、あの大妖怪の攻撃は瀟洒なメイドの攻撃よりも苛烈で無慈悲だった。

 

 気付いたら攻撃が迫っている、のではなく、気付いたら攻撃を“食らっている”のだ。

 

 つまり――逃げ道がない。避けようがない。そしてその威力はあまりにも強大で、一撃で戦闘不能寸前にまで陥るほどの破壊力を秘めていた。

 

 その事実を認識すればするほど、山神雪という妖怪への畏怖は高まる。

 

 こうしている間にも、不知覚、不可避の攻撃が襲ってくるかもしれないという恐怖から、身体から発せられる痛みの警告を無視し、身体の上に重く積もった瓦礫を吹き飛ばして立ち上がる。

 

「このままだと…まず――ッ!?」

 

 言葉は最後まで紡がれなかった。

 

「――死ね」

 

恐ろしく抑揚のない人間味のない声と共に、天魔の手刀が霊夢の腹部を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(無事でいろよ…霊夢ッ!!)

 

 霧雨魔理沙は愛用の箒に跨がり空を駆ける。

 

 呆然とする早苗を捨て置いて、普段の飄々とした態度からは想像もつかないほどに焦りや不安の滲んだ表情で魔理沙は霊夢が墜落した場所に一直線に飛び出した。

 

 豹変した天魔の様相、そしてその天魔による攻撃によって霊夢が戦場からあっさりと姿を消された瞬間を目の当たりにした魔理沙は背筋が凍るような戦慄を覚えた。

 

 周囲が呆然とあるいは恐れ慄き体を震わせる中で、魔理沙だけが箒に跨がり霊夢の下へと飛んでいき、見た。

 

 天魔の一撃によって生み出された地獄のような光景を――。

 

 霊夢が叩きつけられた場所は地面がクレータのように抉れておりその中心に霊夢が瓦礫塗れで埋まっていた。

 そして見るのも痛ましいくらいの鮮血が地面に広がっていた。

 もはや誰がどう見ても死を疑うレベルの惨状だった。

 

(――おいおい…この血の量はッ……!れ、霊夢は…生きてるよな…!?)

 

 魔理沙の心配をよそに、死んでてもおかしくない血溜まりで倒れていた霊夢が瓦礫を吹き飛ばし立ち上がる姿が魔理沙の瞳が捉えた。

 

 血塗れでかなりフラついているように見えるがなんとか生きている。

 

――しかし、それを見て安心したのも束の間、突風が巻き起こった。

 

 気が付いたら満身創痍の霊夢の前に天魔が佇んでいた。

 

(――なッ…!?)

 

 霊夢も突如として眼前に現れた天魔に目を大きく開くばかりで体が全く動いていない。傍から見ても絶望的な間合いで、霊夢は天魔の攻撃に対して何の備えも出来ずに体を硬直させてしまっている。

 

(嘘だろ…ッ!?あの距離は不味――ッ!!)

 

 魔理沙が助けようと手を伸ばした瞬間には、天魔の手刀が霊夢の腹部を深々と貫いていた。

 

「――死ね」

 

――なんの躊躇いもなく、なんの淀みもなく、天魔は蟻を潰すかのような目で霊夢の腹部に自身の手刀を突き立てた。

 

「霊夢ッ!?」

 

 腹部に拳大の穴が空いたら、誰かどう見ても致命傷になり得る。外れていてくれと願っても、魔理沙の目は確実に天魔の手刀は霊夢の腹部を貫いている姿が映るのみだった。

 

(つ、貫いてる…ッ!不味い不味い不味いッ!う、嘘だろ…ッ!?いくら霊夢でも腹をぶち抜かれたら…死――)

 

 その瞬間を目にした周囲の妖怪達からも悲鳴が上がる。妖怪退治において絶対的な実力を持つ霊夢が成すすべもなくやられてしまった。誰しもがそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし――霊夢の腹を貫く天魔の手には一切の血肉は付着していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――そこまでよ、天魔」

 

 紅白の巫女の腹部には不気味な隙間が開いていた。

 

 天魔は心底つまらなそうに手を引き抜くと、霊夢は力なく倒れて地面のスキマへと落ちていった。

 

「…」

 

 まるで、標的が変わったかのように、天魔は苛烈なまでに殺意を向けていた霊夢を一瞥もせずに虚空を睨み付けた。

 

「あらあらまぁまぁ…そんなに怒らないで頂戴な。怖くて身が竦みそうよ?」

 

 睨みつける視線の先に亀裂が走ったかと思えば不気味なスキマが開かれ、八雲紫がスキマに肘をかけながら不敵な笑みを浮かべて天魔を見下ろしていた。

 

 山神雪は表情一つ変えずに憎悪の籠もった視線を浴びせる。しかし、スキマ妖怪も表情を曇らせることなく口を開いた。

 

「博霊の巫女の殺害未遂…幻想郷に弓を引く貴女の蛮行はいくらなんでも目に余る。…幻想郷の管理者として、これ以上の蛮行は見過ごせませんわ。少し大人しくしてもらいましょうか」

 

 口元を覆い隠していた扇子をパチリと閉じ、天魔目掛けて振り下ろした。

 




ゆかりん「skmdy(そこまでよ)!!」ババァ―ン!

雪(暗黒面)「オレァ クサムヲ ムッコロス!!!」

更新に2年以上かかるってマジ?

………はい、お待たせして大変申し訳ございませんでした。忙しかったのも確かでしたが、執筆のモチベが落ちていたのも理由です。

しかし、本作の感想欄にて更新を待ち望む声がこの2年間いくつも頂き、再びペンを取った次第でして…応援感謝します!やはり感想とかで応援や意見を貰うと頑張れるものですね…

と、前置きは以上です。一言で言うなら応援感謝感激雨あられ、ということです
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総合評価:20413/評価:8.7/完結:137話/更新日時:2019年02月25日(月) 05:14 小説情報


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