どうしたらこの愛しい気持ちがお前に伝わるのかわからない。

お互いを”食べる”ことで気持ちを満たす、病んだ二人のお話。

「さぁジュダル。今日はどこを”食べ”ようか?」

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咀嚼愛

「愛してる」

 

 

そう言ってみたところで、この気持ちが満たされることなんてまず無い。

 

だって俺たちの愛は、ホントはこんな言葉にできるほど安っぽくはないもの。

 

 

「愛してるよジュダル。愛してる、伝えられない位、愛してるんだお前のこと」

 

「うん、知ってるよシンドバッド。伝わってる。言葉なんかにしなくても伝わってるから」

 

 

”だからいつもみたいに食べよ?”

 

 

そう耳元で囁けば、彼は優しく笑って口づけてくれた。

 

 

「今日は”どこ”を食べようか、ジュダル。」

 

「うーん、この前は肩あたりだったしなぁー、今日は腕にしようぜ」

 

「あぁ」

 

 

そう言って取り出したのは、ナイフとフォーク。

 

 

「じゃあこの前はシンドバッドからだったし、今日は俺からでいいよな?」

 

「仕方ないな、お前にそう頼まれると断れんよ」

 

 

ははは。と優しく笑う彼の腕に、ジュダルはそっとナイフをあてがった。

 

そしてゆっくりと押し付けながら前にそれをスライドさせる。

 

 

「……っ」

 

「…痛い?」

 

「痛いさ、でも全く辛くはないんだ。むしろ、嬉しい。」

 

 

少し腕に沈んだナイフの辺りを、赤い汁がジワリ、ポタリと流れ出る。

 

 

「あぁもったいない」

 

 

彼の血は特別なのに。と腕に舌を這わせて汁を吸い上げると、

痛むのか彼は少し眉を寄せながらなおも優しく笑っている。

 

 

「俺の血、うまいか?」

 

「ん。いつもの事ながら…っん…うめぇ…」

 

 

クチュクチュと舌を這わせれば唾液の音が聞こえてくる。

 

舐めれば舐めるほど溢れ出てくる汁をずっと舐めて吸い出したいが、それでは食べることはできないので、名残惜しくも舌を離した。

 

 

「悪ぃ、舐めるのに夢中になっちまった」

 

「いや、いいよ。お前がうまいと言ってくれるのなら、俺はそれでかまわない。」

 

「……お人よし。」

 

「お前にだけだよ。こんなに愛しいんだから仕方ないだろう?」

 

ぷっ、思わずわらってしまった。

 

何だ今のキザな言葉。

 

 

ギギギ・・・と、ナイフの動きを再開した。

 

前に行って後ろに戻って。・・・その繰り返しだ。

 

そして少しすればちゃんと切り出すことができて、フォークに刺して持ち上げる。

 

 

「ここの肉うまそうだなぁ」

 

「ほら、早くしないと血が垂れてくるぞ」

 

「おっと」

 

 

見ている間にも、肉から汁は垂れてきていて、危ねぇ危ねぇ。と一口でぱくりと口の中へ入れた。

 

 

「んーんめぇ!流石だなぁシンドバッド様」

 

「そうか?それは良かった。……で、次は―――」

 

 

グチュグチュと口の中で肉を噛みくだいていると、輝いた瞳でシンドバッドがナイフをチラつかせてくる。

 

いつもは変にクールぶってるくせにこういう時ばっかり子供っぽいなぁ、とおかしくなったが、仕方ねーな。と笑って返事をした。

 

 

「俺を、めしあがれ」

 

 

互いの身体の部分を食して取り込んでこそ、俺たちは二人で一つ。

 

 

・・・本当の愛のカタチってのは、まだまだ足りない。

 

 

 

 


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