苦手な人、ご注意
追記
ストーリーを一部改定しました。
冒頭部の一夏と浄正の会話を削除しました。
一夏がISコアを動かしたとき、会場は騒然となった。
だが、すぐにパニックになる研究者を尻目に、会場の、ISコアの警護をしていた警察によって一夏は身柄を確保され、そのまま連れ出された。会場に残してしまった、真っ白になって燃え尽きていた友人の五反田弾が気がかりで仕方なかったが、それを車に同乗した警察官に話をしたところ、警察官は一夏と一緒にいたこともあって、マスコミ対策のため、こっそりと家に送り届けた、と伝えられた。
そして、会場からどこかのホテルに移された。
その強制的な対応に怒りがなかったといえばウソになるが、しかし、そのあと、入れ替わり立ち替わり、警察庁や自衛隊やら、様々な組織に所属する初老の男性たちが謝罪を行いに来たため、その怒りもしぼんでしまった。謝罪の際、一人ひとり、一夏に階級と所属を名乗ったが、一夏には、自衛隊とか警察などの大きな組織名しか判別できなかった。だが、胸につけた豪華な階級章と部屋に入った時、部屋を警護する者たちの空気が張り付けたものに変わったため、人の機微に敏いがそれを誤読する一夏でも相当の高官だと判別できた。
そんな状況にあって、一夏の心境はどういったものかといえば、
――まずいことになった、のか?
という、ぼんやりとしたものだった。
謝罪という、真摯な対応は受け取った。しかも、その謝罪した人たちが、本来なら、一夏に頭を下げるなどあり得ない偉い人たちであることも十分にわかった。
だから、家に帰してほしいと一夏は思い始めていた。
こんな日に限って、泊り込みの仕事のため、帰省するのが一カ月に一度か二度という、どこに勤め、どんな仕事をしているのか、唯一の肉親である一夏も知らない姉の織斑千冬が帰ってきたらことだぞ、と悩みがあった。かつて、日本のIS代表という肩書を持つ姉は、家事が全くできない。こんな日に家に帰っていれば、無断で留守にしたとして一夏は折檻を受けるし、どんな惨状を作り出すのか、想像もしたくなかった。
と、気がつく。
――この前帰ってきたけど、様子が違ったな。
二週間ほど前だったろうか、千冬が帰宅した。
夏休み期間中であり、家に一夏はいたが、その際の姉の様子はいつもと違った。一夏に物置にしまっておいたトランクケースの場所を尋ねたり、保険証や印鑑など、貴重品を置く場所を尋ね、それらを用意すると慌ただしく荷造りをして家を飛び出してしまった。
よほど急いでいたようだったが、一夏見送りに家を出たとき、自宅前に止まっていたタクシーに乗っていってしまう。
よほど重要な仕事ができたんだろうな、と思いながらタクシーの背を見送ったことを一夏は思い出した。
ベットに腰を下ろしたまま、窓の外を見れば、とっくに夜の帳が落ち、ホテルの窓から見下ろす町の明かりがまぶしい。
そもそも、一夏は突然こんな場所に連れ込まれた謝罪は受けたが、説明は受けていないのだ。
謝罪に来た高官に理由を尋ねようとしたが、その前にさっさと部屋から出て行ってしまった。部屋の中や外に立っている黒のスーツをきた男たちに尋ねてもいいのだろうが、見た目が恐ろしく、気後れした。
さすがに、もういい加減にしてくれと一夏のいらだちが募っていた時、一人の男が入ってきた。
また、どこかの組織の高官か、それとも部屋の中の黒服の男の交代か、どちらにしてもスーツだろうな、とうんざりとして視線を向かわせると、確かにスーツ姿の男だった。
しかし、その男は、
「よぉ! 一夏、大変なことになっちまったな」
片手をあげながら、もう一方の手にはコンビニの袋を下げ、そういった。
「浄兄(きよにぃ)!」
思わず、一夏は立ち上がり、入ってきた男に声をあげ、
「なんで浄兄がここに!?」
素直に疑問をぶつけた。
「なんでって、俺が警護を任されたんだよ、二番目の男性IS適合者、織斑一夏の警護を、な」
浄兄は、そういって、一夏にコンビニの袋に入っていた――ペットボトルのお茶を投げて寄こす。
一夏はそれを受け取り、
「ま、詳しい話はあとで、いまはこれを飲めよ。積もる話もあるが、一夏は激動の一日で疲れてるだろうしな」
そういって、浄兄は不器用に、顔をひきつらせてウィンクをする。
そんな無理に恰好つけなくてもいいのに、とおかしみがこみ上げ、一夏は笑ってしまった。とりあえず、言われた通り、一夏はペットボトルのお茶を開け、一口飲んだ。
――
浄兄こと、飯盛 浄正(いいもり きよただ)は一夏が数年前、姉の仕事の都合で一年間、ドイツに滞在したときに世話になった一夏の兄貴分だった。
ドイツには仕事で来ていたそうだが、一夏は浄正がどこに務め、どんな仕事をしているのか、詳しくは知らない。
ただ、一夏にとって、確かなことは、ドイツに滞在中の織斑姉弟が借りていたアパートの隣の住民であり、職場と方向が同じだから、という理由で一夏の日本人学校までの送迎と、姉、千冬の職場までの送迎をしてくれる気前のいい人であり、「俺もお兄さんと呼んでくれ」と本人自らが望んで、そのあと、真っ赤になった千冬姉に殴られた、不憫だけど気さくな兄貴でもあった。
浄正は休日の一夏と千冬を誘って出かけたりもしたりと、何かと気にかけてくれていた。
――思えば、ラウラと仲良くなるきっかけも浄兄のおかげだったなぁ。
一夏がドイツで過ごしていた間、友人といっていい関係の人間はできたが、その中でも特に仲良くなった少女がいた。
だが、第一印象は最悪だった。
ある日突然アパートに押し掛けてきて、ドイツ語で千冬を尋ねてきた。その時には、多少の日常会話も一夏は行えていたから、千冬姉はいませんと、無難に受け答えたのだ。たまたま、千冬は隣の浄正と出かけて不在も事実であったし。
しかし、その少女は一夏をじっとみつめ、色々と流暢にドイツ語言ってきたので、対応と間違えたと一夏は考え、すみませんとドイツ語で謝罪した。そして、少女に殴り飛ばされた。
初対面の人間に殴り飛ばされるという、類稀なる経験をした一夏のドイツの思い出だった。
だが、その少女――ラウラ・ボーデヴィッヒと紆余曲折の末、一夏は友人という関係になった。そのきっかけを作ってくれたのは、いま目の前にいる浄正であったのだ。
最も、一夏と千冬が日本に帰国する際、見送りにきたラウラに突如、一夏は唇を奪われ、日本語で「お前を嫁にする!」と宣言された。
あれは、ラウラの勘違いした日本知識である(と一夏は思っている)ため、全く気にも留めていないが、その様子を、まだ仕事でドイツに滞在する予定だが、同じく見送りにきていた浄正に見られていたため、からかわれていた。
その後、ドイツでの仕事を終え、日本に帰国した浄正が織斑家を訪ね、一夏を遊びに誘ったりすることがあったが、そのたびに、家で家事をする一夏を、
「一夏は家事うまいな、ラウラがいつ給料三カ月分の指輪持ってきても大丈夫だよ」
とにやけ顔でからかわれ、街に遊びに行った際、結婚式場の前を通っては、
「おい、一夏、この式場、いまなら洋式で2割引きだとさ、ラウラに報告したらどうだ? 旦那さんの意見を聞かないと」
などと、事あるごとにからかってくるのだ。
そのたびに、一夏は、ラウラの間違った日本知識で、友達でいようということだ、と説明するのだが、浄正はどこか遠くを見つめ、
「ラウラ、お前の春は遠いな……」
と呟くのがお約束となっている。
そんな存在の浄正が一夏の前に現れ、警護を担当するなどと言われたら、混乱寸前に陥った。
しかし、浄正から受け取ったお茶を飲み、一息つくと、体の隅々にまで行きわたり、案外落ち着いた。どうやら一夏は自分の予想以上に一夏の肉体は疲れていたようだった。
目をつぶれば、つかれがどっと押し寄せてきた。だが、その疲れで眠りこけることがないように、自分自身に活を入れる。
――そうだ、混乱しても始まらない、とりあえず、整理してみるか。
「浄兄、質問があるけど、いいか?」
「あ、ちょっとまて、一夏」
部屋に備え付けられている椅子に腰を下ろした浄正は、同じく、ペットボトルに入った紅茶を飲みながら、手で一夏を止めた。
その時、ぱたりとドアを閉める音が聞こえた。出入り口に目を向ければ、そこにいたはずの黒スーツの男たちがいない。
「ああ、プライベートな質問もあるだろうから、外に出てもらった。何かあったらすぐさま飛んでくるが、まぁ、この部屋は盗聴の危険もないし、これで俺とお前だけだぞ。なんでも質問しろ」
笑いながら浄正は言った。
引きつる笑みを浮かべながら、一夏は尋ねる。
「浄兄って、なにもの?」
「ただのしがない国家公務員だ、ただ、警察官だったのに防衛省職員になったあと、外務省に出向し、それで防衛省に戻ってきたってわけのわからん経歴もちだが」
いつもの笑みを浮かべながら、浄正は言った。
原作の人物の変更点
・一夏も千冬とともにドイツに行く
・一夏、すでにラウラと出会っている
・ラウラ、すでに原作二巻終了時点と同じ状態
一夏側のヒロイン、だれにするかまだ決めてませんが、ラウラのヒロイン力が高い、すごく高い。
誰にしようかと迷ってます。
あと、一夏、これで一夏っぽさがでてるか、悩みながら書いたので上というように分けました。
一夏はこんな感じじゃないとかありましたら、改善しようと思います。
ご意見ご感想お待ちしております。