東方一年郷   作:トーレ

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ども! トーレです! Dead space2全クリしたトーレです! ひゃっほい! 一回アイザックさんのお目にブスリと失敗しちゃったい!

さてさて、続きですよー
白滝は、フランを救えるのか! 美鈴のフラグはどうなるのか!
乞うご期待! しないでください!
なんというか、自分でも書いてて「あれ?」ってなったんですが、どこがおかしいのか分からず直しようがありませんでした。おかしい気がするね、だらしねぇし!

ではどうぞー! 温かい目で見て行ってね!




第十八話 ~救出、巫女の微笑み~

 

 

 

 洞窟の薄暗さは前と変わっていなかった。前と変わっているのは俺の意志だ。精神だ。前のようなおっかなびっくりじゃない。

 足下を確認しながら進んでいくと、一層暗く、少し開けたような場所に出る。例の場所に着いたようだ。やはりほぼ真っ暗である。俺の計画上、この暗さはよろしくない。明るくなくては成功率がグンと下がる。

 だが暗いことなど対策済みだ。俺は斜めがけしていた鞄からあるものを取り出す。

 

 たらららったらーん。ランプー。

 

 そう、火を灯すものとしてランプを持ってきたのだ。図書館にあったので拝借してきた。これがあれば暗いところでも安心である。

 ……だがしかし、これには弱点がある。この暗闇でランプをつけるわけだ。当然……フランにもバレる、俺の存在が。だがまぁ、そんなことは俺の計画に別段関係ないし、問題もない。

 俺はマッチに火を点け、ランプを灯した。おぉ、明るい明るい。この一帯を明るくするのは無理だが、うむ、十分だ。

 

 ゆっくり足を進める。……この先にフランがいる。恐怖心が無いと言えば嘘になる。だが……今の俺なら大丈夫だ。いつもの「The無計画」の白滝ではない。……なんか自分で言って泣きたくなった。だらしねえぇし。

 

 ふと目に暗闇の中でぼやけて見える何かが写った。きっと、あの結界を張られた鉄格子だろう。

 ランプを前に差し出す。すると、光の枠に1人の少女の姿が写りこんだ。その少女は、待ち構えていたようにこちらをじっと見つめていたが、はっと驚いたような顔をした。

 

「あれ…? お兄さん?」

 

「やぁフラン。元気にしてたか?」

 

「どうして? この前壊れちゃったんじゃ……」

 

「俺は頑丈だからな。あれくらいじゃそうそう壊れん!」

 

 俺は大げさにえへんっと胸を張る。……正直、今の言動は虚勢だ。俺の焦りや不安は、ばれない方がいい。というか、自分でもいまだにあの俺の体復活の実態は分かってないしな。……だが、この体が今回はキーポイントなんだ。

 俺の言葉を聞いたフランは、ぱぁっと笑顔に変わる。軽く目がしいたけになってた。

 

「すごぉい! お兄さんが初めてだよ、壊れなかったの!」

 

「おぉ、それは光栄だ」

 

「ねぇねぇ! それならもっと遊んでいい?」

 

 すごく目を輝かせてフランがそう言って俺をみてくる。なんとも……この場所には似合わない純粋な笑顔だ。それこそ、なぜ閉じ込められてるのかわからなくなるほど。

 さて、フランの遊びたいとのお誘いだが……予想通りだ。おもちゃが壊れていなかったんだ。そのおもちゃで遊ばないわけがない。自分のことを自分でおもちゃというのもなんだか変な感じだが、俺はこの予想を前提として計画を立てたんだ。何の問題もない。

 そう、つまり計画通りなわけだ。フランが……きゅっとしてどかーんで遊ぼうとすることが。

 まぁそれはまた後でいい。次にこの鉄格子の結界だけど……俺の予想だと、フランなら壊せるんじゃないかと思うんだが……うーむ、不安。

 そう思いながらも俺は鉄格子に手を伸ばして、あのバチッとした感じを――

 

「あれ?」

 

 ぺたぺた、すりすり

 

「あれ?」

 

「どうしたのお兄さん?」

 

「へ? あぁ! うん、なんでもないよ。気にしないで?」

 

「ん? 分かった」

 

 そう言ってフランは頷いた。……あるぇー? バチッとこないぞ? もしかして…結界が無くなった? なぜかは分からないが、そうじゃないと理由がつかない。もしかして俺をきゅっとしてどかーんした時に一緒に壊したとか? んー…謎は残るが、これはありがたい。不安要素が1つ消えたわけだ。

 計画、続行だ。

 

「よし! いいよフラン。一緒に遊ぼう」

 

「うん!」

 

 フランの笑顔。それだけで、あの時霊夢に諭されたときに諦めなくて良かったという気持ちになる。諦めてたら……きっと、いや絶対に俺は後悔していただろう。この笑顔が見れないんだからな。

 守りたい、この笑顔。

 

「アスベルになんかならないぞ!」

 

「ん? どうしたの?」

 

「ううん、何でもないよ」

 

 守れなかった…っ、なんて言うもんか!

 

 さぁ、遊びという名の戦争を始めよう!

 ……の前に、鉄格子を壊さないと。

 

「じゃあフラン。まずこの鉄格子を壊しちゃおうか」

 

「へっ? ……いいの?」

 

 フランは心底不思議そうに俺に尋ねる。……んん?

 

「もしかして、この鉄格子、壊したことない?」

 

「うん」

 

「今まで一度も?」

 

「うん……だって紅白のお姉さんに、これは私を閉じ込めておくためだから壊しちゃダメって言われたから。もし壊しても、出ちゃダメっていわれたから……」

 

 …? あれ? おかしくね? 今までのフランの様子から見るに、人を殺す…いや壊すか、生物を壊すことになんの罪悪感もない感じだった。むしろ遊びだって言ってるんだからな。だが、今の発言はなんだ? 壊してはダメと言われたから壊さなかった? 出てはダメと言われたから出なかった? ……それっておかしくないか。だって、フランは「狂ってる」はずだろ? 「歪んでる」はずだろ? だからこそ、紅魔館の主は…フランの父親は、それを恐れて封じ込めたんだろ? それなのに……ダメって言われたことはしない。注意されたことはしないって……そんなの……

 

 素直で、いい子がすることじゃないか――

 

 ……じゃあフランは…もしかしたら……いや、そんなはずは……

 

「お兄さん? さっきからぼーっとしてるよ?」

 

「はっ…あっごめんごめん」

 

 そう言って俺は苦笑いを返す。フランは少し不満そうな顔を見せていた。

 そうだ、今はそんなことを考えている時間は無い。今だって美鈴が必死に戦っているんだ。……死亡フラグという名の敵とな! やばいよ! 早くしないと、バーサーカーさんに――もとい、霊夢にやられちまう! まぁ弾幕ごっこだから死にはしないだろうけど! そういえば弾幕って受け続けると死ぬのかな? わっかんねぇや!

 俺の慌てる姿を見てか、フランは首をかしげる。俺はフランに頷いた。

 

「いいんだよ、フラン」

 

「えっ?」

 

「こんな鉄格子、壊してもいいんだ。こんな暗い場所からは出てもいいんだ」

 

「でっでも……」

 

「大丈夫。もう紅白のお姉さんには許可を取ってあるんだ。だからさ、このオリからでて、俺と一緒に遊ぼう?」

 

「……うん! 分かった!」

 

 笑顔をフランは見せて、手を前に出す。

 

 きゅっとして、どかーん

 

 俺とフランの間を隔てていた鉄格子は、弾け飛んだ。……おみごと。

 えへへ、と笑うフランに俺も笑みで返しながら、俺は計画の次のフェイズのことを考えていた。

 さぁて、ここからが計画の要だ。このままフランを外に連れ出して――

 

「さ! 遊ぼう、お兄さん!」

 

「へ? ……えっと、今?」

 

「うん! だってお兄さんが遊ぼうって言ったでしょ」

 

「それは……そうなんだけどさ」

 

 ……いかんぞぉ、これはいかんぞぉ! 計画にズレが生じた。まさかここで遊ぼうと言い出すとは……。

 俺の計画では、

 

フランが外に出たいという、または俺が誘導して外に出す

外には美鈴。彼女にフランの注目を行かせる

その隙をついて、俺がパチュリーさんが作ってくれたあれをフランの背後から――

 

という計画だったんだが……ぬーん。これは、計画を考え直す、もしくは変更するしかないか。

 一応、誘導はしてみよう。

 

「えっと…フラン? まずは外に出てみないか――」

 

「いやー! 今はすぐにお兄さんと遊びたいの!」

 

「……ぬーん」

 

 だめだ、揺るぎそうにない。そのまま誘導を続けてもいいが、怒らせたり興奮させるのは、あまりよろしくない。

 仕方ない……計画変更だ。名前は、プランBとでも言っておこうか。

 

「分かったよ、フラン。遊ぼうか」

 

「うん!」

 

 そう言ってフランは満開の笑顔を見せる。……まったく、屈託なさそうにしやがりますなぁ。

 しかし……このプランB、一か八かの計画なんだよな。前にも言ったけど、俺の体の……あの謎の力がカギになるんだから。不確定要素が多すぎるんだけど…仕方がない。やるしかないんだからな。

 さぁ、プランB始動だ。プランBは非常に簡単だ。

 

「さぁ、フラン! 鬼ごっこだ! 俺を捕まえてみな!」

 

 そう言って俺は走りだした。方向は、出口に向かって。つまりフランに背を向けて走り出したわけだ。

 

「あっ! 待てー!」

 

 そう言ってキャッキャッと笑いながらフランが追いかけてきたを振り向いて確認した。同時に……手が、俺の方に伸ばされていることも、確認した。フランは、あの力を使うつもりらしい。フランにとって、遊びとはそういうものなのだから当たり前だ。それにおもちゃは、壊れなかった俺なわけで。力を使わないわけがない。それを分かっていて、俺はあえて、フランに背を向けて真っ直ぐ走りだしたんだ。

 

 そう、フランのその力が、確実に俺に当たるように。

 

 なぜなら……プランBは――

 

「きゅっとしてー」

 

 俺が死ぬことが前提だからだ。

 

「どかーん!」

 

 腹部にとてつもない衝撃が走った。きっと俺の体に今、大きな穴が空いているのだろう。俺はそのまま地面に倒れこんだ。もはや力など入るはずもない。

 痛みは無い、だが体が燃えるように熱い。血がどんどん無くてっていくのが自分でもわかるほどだ。ぐぅふっ……はぁ…はぁ…2回目だけど…慣れるもんじゃないよな……

 

俺はもうすぐ死ぬ。そしてフランは……新しいおもちゃを探しに、外に向かう。

それが……そうなれば…俺の計画通りだ。

 

「さぁ……ぐふっぁ…はぁ……俺の…屍を…っ……越えて…ゆ…け……」

 

 俺はそのまま、意識を手放した。自分の体の可能性を信じて――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フランは落胆していた。その感情を向けているのは、目の前の男に対してだ。

 

「なんだ……やっぱり壊れちゃうんだ」

 

 落胆は、先程のこの男の発言によるものである。

『あれくらいじゃそうそう壊れん!』

 自信満々のその言葉を、フランは信じたのだった。信じて…思いっきり遊んだのだった。だが結果は、いつも通りだった。

 

「……」

 

 フランは何も言わずにその男の亡骸を見つめる。落胆だけではない、悲しみの気持ちもフランにはあったのだった。

 久しぶりだったのだ、名前が呼ばれることが。もはや、最後に呼ばれたのは何百年前のことか。だから、あれほど優しく自分の名前が呼ばれたことが、嬉しかったのだ。だから、この男は、フランにとって特別な存在であるのではと思いかけていたのだが。

 この男も、時々ここに迷い込んでくる人間や、妖怪と同じ、すぐに壊れてしまうものだった。誰も……自分と思いっきり遊んでくれるものはいない。フランは改めてその考えを実感した。

 

「……お兄さん」

 

 フランは、今はもう動かないそれに問いかけた。

 

「あの言葉は、嘘じゃないよね?」

 

 『こんな暗い場所からは出てもいいんだ』

 ……今まで、そんなこと考えた事もなかった。それは、ここから出るなと言われたから。紅白の巫女にも……自分の父親にも。だからフランはそれに従った。ただそれだけだった。

 でもあの男は、出ていいといった。許可はとったと言った。……それなら、自分の、今の気持ちに素直になってもいいかもしれない。

 

「私は……」

 

 一歩踏み出した。また一歩踏み出した。

外の世界に出たいと、外の世界を見たいと、そう思った。もしかしたら……自分と遊んでくれる人がいるのかもしれない、そんな希望が足を動かす力となった。

男の屍をまたぎ、一歩一歩と歩む。

 

「もうすぐ……」

 

 地面が少し明るくなった。空気もいつも感じている物と変わった。違う環境であることに身を震わせながら、フランは歩く。やっと外の世界に出れる――

 

だが、その希望はかなわなかった。

後ろに気配を感じた。振り向こうとする、だがそれはできなかった。後ろから抱き締められるようにして、頭を固定されていたからだ。

 

「ごめん、フラン」

 

その言葉が耳元で囁かれたと思った矢先、口元に何かがあてられた。

ばたついても、抵抗してもダメで……力を使おうにしても、なぜか意識がもうろうとしてくる。次第に力が入らなくなった。息を吸うたびに瞼が落ちそうになる。

 

「大丈夫。絶対に助けるよ」

 

 その声は、先程まで話していた、あの男、壊れたはずのあの男のものだった。驚きは隠せない。だがそれ以上にフランはその言葉に、声に、なぜか安らぎを覚えた。優しさを感じた。そしてひどく懐かしい……全身の温かみを感じた。

いままで忘れていたぬくもりを感じながら、フランはゆっくりと目を閉じたのだった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「作戦成功か」

 

俺は、俺の胸の中で寝息をたてているか細い少女を抱きしめながら、安堵のため息を漏らす。ふぃー、何とかなったか。

俺がフランに使用したのは即効性睡眠薬の付着した布である。相手が息をすればそれが染み出して相手の体の中へ――まぁMGSの某蛇さんや名前が雷の人が良く使用するやつだよ。パチュリーさんの力が無かったら、作ることなんてできなかったね。魔術の力、恐るべし。

……へ? 詳細キボンヌはそこじゃない? じゃあどこだって言うんだよ。まさか俺はなんで死んでないのかってところか? しかたねぇな。説明してやるよ。

 

何と俺は、不死身の体を手に入れたのだ!! ごまだれ~

 

 あっ、嘘です、すんません。謝るんで、ブラウザのバックボタン押さないでください。って俺は誰に話しかけてるんだ、時々自分が分からなくなる。まったく怖いもんだぜ。

 だが……あながち嘘でもない。なぜなら……「俺の体は再生する」んだから。

 自分でも原理は分からない、でもそう考えるしか理解ができない。俺の体は、どんなに傷つけても、傷口がみるみる塞がっていくのだ。もちろん痛みはある。衝撃もある。だが……死なない。

 一回実験してみたんだよね。ナイフで軽く傷をつけてみたんだけど、すぐ塞がったんだ。勇気を出して深めに傷つけてみても結果は同じ。回復する。思い返してみたら、崖から落ちた時も、無傷だったよね。あれもこの体の力だろう。

 ……きっと、紫様の言っていたことはこういうことだったんだろう。今の俺は「肉体=魂」きっとその関係なんだろうけど、やっぱり良くわからん。また機会があったら紫様にじっくり聞こう。そうじっくりと……うへへ、ふへへ。

 

「って、そんな紫様の豊満な体にじっくり聞こうだなんて妄想なんてしてる場合じゃなねえ!」

 

 何をやってるんだ俺は。今も美鈴が頑張ってんのに! 俺はフランをおんぶして、祠の出口に走った。邪魔になるからランプはしまったよ!

 しかし……今更ながらあの作戦はどうかと思うな、うん。いくらフランに疑いを持たれないようにしながら、確実に後ろを取らなくてはいけないと言っても……死ぬ必要はあったのだろうか。まぁ確かに、不自然に後ろに回って、怪しまれたりなんかしたら、どうなるか分かんなかったし、成功はしたんだが……あの痛みはもう味わいたくない。なんかもう痛みじゃなかったけどね。

てか俺これで、3回死んだんだよな。ルーミアとフラン×2で。なんて波乱万丈なんだ! 波乱爆笑じゃないよ! 失敬しちゃうなぁ。

腹部にまだ続く鈍痛に何とか耐えながらそんなことを考えていると、出口が見えた。

 

「もうすぐだ……待ってろよ美鈴!」

 

 さぁ出口だ! 俺は最後の一歩を踏み出して、外へ出た。

 

 

 

 

 

 

「美鈴――!?」

 

 そう叫んだ矢先、俺の隣を何かがものすごいスピードで通り過ぎ、爆発音みたいな音を立てながら、岩に激突した。

 へ? へ? 何が起きたの? 理解できない俺は、その方向に目を向けた。

 ……そこには、力なくへたり込んでいる、ボロボロの美鈴がいた。

 

「美鈴!!」

 

 俺は驚きを隠せず、彼女のそばに走った。うわぁぁぁぁ! やっぱりフラグはブレイクできないんだぁぁぁぁぁ!

 

『俺の予想』

「美鈴! すげぇ。あの霊夢と渡り合ってる」

「あっ! 白滝さん! 首尾の方は!」

「OKだ! 逃げるぞ!」

「くっ、なかなかやるわね門番。良いわ、今回は私の負けよ。行きなさい」

「はい! ありがとうございます!」

 

 って風になんないかなぁなんて思ってたけど、フラグのこともあったし……俺の予想より、霊夢は遥かに強いのかもしれない。

 

「うっ……うぅ…」

 

「美鈴!」

 

「はぁ…はぁ……白滝さん?」

 

「ああ! 俺だ!」

 

 良かった、意識はある。これで気絶なんかしてたら万事窮す! でもこれならなんとか。

 

「よく俺が戻ってくるまで耐えてくれた」

 

 俺が美鈴の前にしゃがみながらそういうと、美鈴は少し悲しそうな顔をしてうつむいた。

 

「……ごめんなさい」

 

「なんで謝るんだ?」

 

「貴方の為に……道を開けたかった。あの巫女を倒して、すぐに紅魔館に帰ろうと思ってたんですが……結果はこれです。……無様ですよ」

 

 美鈴は、消えそうな声でそう呟いた。その拳は、力いっぱいに握られている。よほど…悔しいのだろう。

 ……最低だな、俺は。そんな美鈴の気持ちを踏みにじって「耐えてくれた」なんて言ってしまった。それじゃあまるで、俺が最初から美鈴に期待していなかったみたいじゃないか。くそっ……傷ついた美鈴を自分でさらに傷つけるとは……

 それなら……今かけるべき言葉は。

 

「ありがとう」

 

「……え?」

  

 俺はフランを落とさないようにしながら美鈴の手を握る。美鈴は、驚いたように顔を上げた。

 

「ありがとう、戦い抜いてくれて。俺の為に、フランの為に、こんなにボロボロになってまで、戦い抜いてくれてありがとう。おかげで、フランを連れ出すことができた」

 

「…でも私は、敗北者です」

 

「勝ち負けは関係ない。俺は、俺とフランを守り抜いてくれたことに感謝しているんだ。耐えるんじゃなくて…戦ってくれたことに感謝しているんだ」

 

「白滝さん…」

 

 美鈴の目が震えた。

 

「だから…お礼を言わせてくれ。ありがとう」

 

 美鈴は、驚いたような顔をして、涙を一筋流してから……微笑んだ。

 

「…ふふっ、分かりました。その言葉、受け取っておきます」

 

 自然と、美鈴の俺の手を握る力が強くなった。俺もそれに応じて強く握り返す。

 美鈴は傷だらけだった。弾幕ごっことはいえ、美鈴は接近戦だし、地面に立つことも多い。だから……美鈴のこの綺麗な顔にも傷があった。でも……それでも、その顔は、その笑顔は、とてもきれいだった。

 

「良い雰囲気のところ悪いけれど、私を忘れていないかしら?」

 

「!? ……霊夢」

 

 異様なプレッシャーを感じ後ろを振り向くと、お祓い棒(正式名称は『大麻(おおぬさ)』っていうらしいぜ! みんなも覚えような!)をもった霊夢がふわりと地面に着地していた。服も所々破れていたり汚れていたりしているが、ほとんど息も上がっていないし、疲労感も表にない。……余裕の勝利をにおわせている。やっぱり、強いんだな。

 

「私の予想じゃ、今回もまたあんたが死んで、それを助けに行くもんだと思ってたけど」

 

「どんだけ弱いと思ってたんだ」

 

「私のか細い腕を振り払えないほどかしら」

 

「その通りだよこんちくしょう!」

 

 反論できず! なにも言えなくなった。ぬーん。

 まぁでも、

 

「あの時の霊夢の注意のおかげで、ちゃんと計画を立てて、フランを連れ出せたんだ。無計画な俺じゃ無くなったぞ」

 

「……そう」

 

 霊夢は小さくうなずいてからお祓い棒をしまった。……今一瞬、笑みを浮かべたような気がしたのは気のせいだったろうか。まぁ今はそんなことより、なんとかしてこの状況を脱出して、紅魔館に帰らないと。

 俺はゆっくりと立ち上がり、美鈴を背中で守るように位置づけた。

 霊夢の鋭い目が俺を睨みつける。だが俺はそれに臆することなく、霊夢に頭を下げた。

 

「霊夢、頼む。このまま見逃してくれ。やっと……やっとフランの手をつかんだんだ。救いだせるところまで来たんだ! だから……頼む!」

 

「いいわよ」

 

 くそー、やっぱりダメ元だったからなぁ! こうなったら!

 

「なら力ずくでも! ……って、へ?」

 

 今、なんと?

 

「いいって言ってるでしょ。見逃してあげるわよ」

 

 なんてこったい。こうもあっさりと承諾してくれるとは。美鈴も信じられないと言ったような顔をしている。

 

「えっと……理由は?」

 

 俺がそう尋ねると、霊夢はあからさまに怪訝そうな顔をした。

 

「はぁ? あんたが頼んできたんでしょ。理由なんて聞くの?」

 

「あっいや……妙に簡単に承諾したなぁ…と」

 

 俺が正直に話すと、霊夢は溜息をつきながら答えた。

 

「別に…深い意味はないわ。ただ、あんた達を追いかけて、その様子が誰かにでも見られたら……ほら、私の評判が落ちそうじゃない? だからよ」

 

 霊夢はなんともめんどくさそうに、すこしそっぽを向いて頬をかきながらそう話した。……ははっ

 

「なっ何笑ってるのよ」

 

「にじみ出る優しさ、そうそれが霊夢」

 

「はぁ!? あぁもうめんどくさい。さっさと行きなさい! 私の気が変わらないうちにね」

 

 そう言って、霊夢は俺の背中を押す。なんというか……なんだかんだで優しいんだよなぁ。博霊の巫女としてどうなのかって問題はあるけどさ。嫌いじゃないよ、霊夢のツンデレ。

 催促された俺は、美鈴の手を取る。

 

「美鈴、立てるか?」

 

「大丈夫ですよ。体だけは頑丈ですので」

 

「了解、でも無理すんなよ」

 

 美鈴は俺の手を支えにして立ちあがると、服のほこりを落とす。……うん、心配するほどでもなさそうだ。

 

「それじゃ、またな霊夢。ありがとう!」

 

「なんでお礼なんて」

 

「なんとなくだよ」

 

「そう、なら受け取っておくわ。でも次からはお礼じゃなくて、お金を頂戴ね」

 

「ははっ、了解。用意しておくよ」

 

「ありがと。それじゃあね」

 

 俺と美鈴は、博霊神社を後にしようとしていた。美鈴も治療したいし、今は寝ているフランも、いつ目を覚ますかわからない。なるべく早く帰りたいところだった。

 でも「ちょっと待ちなさい」と霊夢に声を掛けられて、俺たちの歩みは止まった。……正直、このまま走り去って逃げたかったが、美鈴にこれ以上負担をかけたくなかったし、俺たちは振り向くことにした。

 霊夢は、さきほどまでのダウナーな顔とは一変して、しごく真剣な、でもどこか悲しそうに見える表情だった。

 

「ひとつだけ言っておくわ」

 

「……なんだ?」

 

 霊夢の目は、俺をまっすぐに捉えていた。

 

「もしもその子が、幻想郷のバランスを崩そうとする存在になるなら……私はその子を殺すわ。もちろん、あんたの意思に関係なく…よ」

 

 霊夢の言葉、それは俺が今したことの責任、重み、そのすべてを問うた質問だ。「今なら、フランを戻せば、なかったことにできるぞ」まぁきっとそんな感じのニュアンスが含まれているのだろう。

 だが、俺の意思がそんなもので揺らぐものか! フランを救う、そう決めた! 危険な存在であることは百も承知でござるよ!

 

「分かってるさ。絶対にそんなことさせないけどね」

 

「……そう。なら楽しみにしてるわね」

 

「……」

 

「なに突っ立ってんのよ。早く行きなさいよ」

 

 霊夢は俺に向かって、しっしっと手で払う。……なんというか、誘導させられたような、うまく使いまわされたような、なにか釈然としないものを少し覚えた。だが今は、そんなことは考えないでおこう。今日はもう疲れた。帰るとしよう。

 

「帰ろうか、美鈴」

 

「はい」

 

 俺と美鈴は、二人並んで神社を後にした。美鈴は、階段を下りている間ずっと俯いたままだった。……悔しかったんだな。計画は成功したけど、武人としての勝負には負けたわけだからな。

 俺は、美鈴の頭にポンっと手を置いた。美鈴は体をぴくっとさせてから、俺の方を見た。

 

「…白滝さん?」

 

 俺はその美鈴の顔を見ながら微笑んで、頭をゆっくりとなでた。

 

「お疲れ様。……あと、ありがとう」

 

 その言葉に美鈴は、顔を赤らめた。

 

「いえ……そんな…」

 

 そう言って美鈴は、顔を赤らめながら俯いてしまった。むぅ? もしかして失敗したか……いやなに、前なでた時に気持ちよさそうにしてたから、なでられるの好きかと思ったんだけど。

 

「悪い、嫌だったか」

 

 そう言って俺は美鈴の頭から手を離す。すると「あっ…」と言って美鈴が不意に顔をあげ、俺と目が合う。美鈴は一回それで目をそらしたのだが……おずおずといった感じで、俺の方を見て来た。

 

「あの……もっと、なでてくれませんか?」

 

「へ?……いいの?」

 

「はい。今は…そうしていてほしいんです」

 

「…ん、分かった」

 

 俺は何故だか神妙に頷き返す。……何というか、美鈴からおねだりをしてくるとは思わなかったから、逆にドキドキしてしまったのだ。

 俺は、美鈴の頭に再び手を乗せ、ゆっくりとなでた。美鈴はそのたびに気持よさそうな顔をしていた。……なにこの幸せ。今俺死んでも後悔ないわぁ。今死んだら今季四度目の死亡になるけど、死んでもいいわぁ。それぐらい幸せだぁ。

 フランの顔をそっとのぞきこむ。なんというか……こちらもなんとも幸せそうに寝てるな。可愛いなぁ……hshsprpr。

 俺は、フランと美鈴のぬくもりを感じながら、妄想を繰り広げながら、ゆっくりと紅魔館へと歩いて行った――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人……正確には3人が居なくなったのを確認すると、霊夢は溜息をついた。

 

「はぁ……まったく、とんだ来客だったわ。これで賽銭入れていかないんだから、たまったもんじゃないわね」

 

 霊夢は腕をぐるんとまわした。とはいえ、疲れたのは肉体的ではなく、精神的にである。

 思いやりやら優しさやら気遣いやら、ある意味一番霊夢がめんどくさいと感じることをやっていたのである。霊夢はまた一つ溜息をついた。

 

「……めんどくさいから、鉄格子の結界を無くしたの、戻すのは明日にしようかしら」

 

 そういって、霊夢は伸びをしてあくびをしてから、神社に戻っていく。

 だが、ふと立ち止まって、今はもう人のいない、鳥居の先を見つめた。

 

「ま、頑張んなさいよ。白滝」

 

 少し微笑みを浮かべていたのは、きっと本人も気づいていないだろう――

 

 

 

 

 





お疲れさまでした! そして見てくださってありがとうございます!

……なんだかいつもより長くね? って思ったら、一万文字行ってましたww
いつも平均四千文字なんだけどな! オッカシイデス!

感想いつもありがとうございます! あれですよね……ホントに嬉しいんですよ!
誤字脱字もお知らせください! 見つけ次第直しますよ!

次は、特別号、妹紅編ですね
今いろいろと考えてますが……口調難し! 男口調にするべきか、女口調にするべきか……悩みますのぉ。いっそのこと一人称「オレ」にしてしまおうかとか考えてますww
なにか要望があったら、また教えてください!

ではまた次回お会いしましょう! グッバー!
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