東方一年郷   作:トーレ

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ども! トーレでございます! 東方紅輝心を購入したトーレです! いやーこのクオリティは素晴らしい!

さてさて二十五話でございます!
今回の話にて紅魔館を離れ、舞台は次のステージに移ります。

では、本編をお楽しみください! 温かい目で見ていってね!

ちなみに、ニコニコ動画様にてDead Space3実況の最新話と
マインクラフトの二人実況を投稿しました! URLは後書きにてお伝えいたします。

ではどうぞ!



第二十五話 ~別れ~

 

 

 

「今まで、お世話になりました」

 

 俺は、深々と頭を下げた。頭を下げた相手は紅魔館当主、レミリア・スカーレット様である。

 

 異変解決の宴会の翌日の夕暮れのこの日、俺は正式に執事をやめ、紅魔館を後にすることにしたのだ。

 

「……」

 

 レミリア様はなにも言わなかった。どこか元気が無さそうにも見える。ポジティブに解釈すると少し寂しそうにも見えるが、きっと起きてすぐのせいであろうな。

 

「あなたには…」

 

 レミリア様がぽつりとつぶやくような小さな声でそう言った。俺は顔を上げレミリア様を見る。するとレミリア様は一度ため息のような、でも深呼吸のようなそんな風に息を吐き、俺をまっすぐに見る。

 

「あなたには、感謝しているわ、白滝」

 

「レミリア様…」

 

「フランを救いだしてくれたこと。あなたがいなかったら…どうなっていたことか、分からなかったわ。だから…感謝するわ、本当に……」

 

 まさか、レミリア様から感謝しているなんて言われるとは思わなかった俺は目を丸くして驚きを隠せていないであろう。

 その俺の顔を見て、レミリア様は少し不機嫌そうな顔をした。

 

「何かしら、そんなに私からお礼を言われるのが嫌だったかしら?」

 

「いっいえ! 滅相もありません! むしろ逆です! お礼を言われるなんて…思わなかったから」

 

 そういうと、さらに機嫌が悪くなったような顔をする。

 

「私だって、恩義を感じたら感謝の言葉くらい送るわよ。そんなに無作法ものだと思っていたのかしら?」

 

「ソンナコトオモッテナイデスヨ?」

 

「あなたね…」

 

 はぁ、とレミリア様はため息をついた。…きっと去るこの時まで俺がこんな調子だったからであろう。はっはっはっ、ごめんねレミリア様。でも、これが俺なんですよ。

 それに……なんというかさ。

 

「俺なんかにそんな丁寧にお礼を言うなんて、レミリア様らしくないって思っただけですよ」

 

「らしくない…? じゃあ、丁寧じゃなきゃどんな感じに言えばよかったのよ」

 

「もっと偉そうにしていいんです。確かに、俺はフランを助けようとしました。でも最後はやっぱりレミリア様がいなくちゃだめで…だから、まずお礼なんて言われるほど、俺は何かをしたわけじゃないんですよ。それに……」

 

「……それに?」

 

「俺は、レミリア様の為にも頑張ったんですから。レミリア様の笑顔を見るためにも、頑張ったんですから」

 

「私の…ためにも?」

 

 驚いたように、レミリア様は目を丸くした。

 確かに、俺が中心に考えていたのはフランを救い、フランの笑顔を見ること。

 でも、その思いの根本にあったのは、フランとレミリア様が笑いあっている、姉妹として笑いあっている、そんな姿を見たいという思いだったのだ。だから、その人からお礼を言われるのは、なんか違う気がした。

 

それに……

 

「それにですよ、レミリア様」

 

「なに?」

 

「今日今の時までずっと、心はあなたの執事でしたから」

 

「……」

 

「なんて、自分から辞めた俺が言うのもなんですが…ね」

 

 そう。今思い返してみれば、俺は執事をやめてからもずっと、心の中では執事のままだった。そりゃ仕事はしてないけどさ。てか仕事なんてさせてもらえないだろうて。

でも、俺はきっと紅魔館メンバーでい続けたかったんだろうな。辞職しといて何様だって感じだけど。

っと、レミリア様が何やら顔を伏せていることに気づいた。あっもしかして調子乗ったこと言ったから…? …それだとやべぇな。土下座の準備しとくか。……なんだかこの頃自分を安売りしている気がするけど気のせいだね! いろんなところで土下座してる気がするけど気のせいだよね!

 

「…よく…」

 

 レミリア様が何かをつぶやいた。土下座のために膝を曲げようとしていた俺の動きが止まる。

 レミリア様は顔を上げた。それと同時に俺の姿勢もよくなった。なぜなら、その顔は……いつものようにカリスマたっぷりだったわけで。

 

「よくやったわ白滝。今回のあなたの働きは評価に値するもの。ま、最初あなたを雇ったときは役立たずかと思ってたけど……そうでもなかったみたいね。これからも、私の為に頑張りなさい」

 

「……」

 

「こんな感じかしら、白滝?」

 

 なんというか、若干ぎこちなく言葉を紡ぎ、そして最後にレミリア様はドヤ顔をしたわけだが……ごめんレミリア様。

 

「ぷっ、くっ…ははっ…はははははっ!」

 

 俺は、我慢できず、吹き出してしまった。

 そんな俺を見たレミリア様は、少し怒ったように俺に向かう。

 

「ちょっなんで笑うのよ!」

 

「いや、だって…くくっ…なんだかぎこちなくって…ははっ」

 

「あ、あなたが私らしくって言ったんじゃない!」

 

「そうですけど、最後のドヤ顔は何ですかもう…おもしろ可愛くて…はははっ!」

 

「なっ、あなたねぇ…こころは執事とか言っておきながらっ」

 

 むきー! と怒るレミリア様。まぁなんというかブレイク寸前といったところである。ほぼしてるようなもんだけど……

 まぁさすがにこれ以上は本格的に怒られそうなのでなんとか堪えよう。

 

「ははっすみません。でも…そっちのほうがレミリア様らしくて、俺は好きですよ」

 

「…そう」

 

 俺の一言に、なぜかレミリア様は微笑みを返して呟いた。

 だが、紅茶を一口飲んだかと思うと、ため息をつく。

 

「でも、最後の最後までこんな感じなのね、あなたは。さっきも思ったけど」

 

 あ、やっぱ思ってましたか。

 いやまぁでも、実はこれ、意識的にやってたりするんですよ? レミリア様。

 

「だって、しんみりしたくないじゃないですか」

 

「べつにしんみりしたっていいじゃない。一応これ、別れのシーンよ?」

 

「一応って…まぁそうですが」

 

 そんなこと言っちゃだめだよレミリア様。雰囲気ブレイカーだよそれ。

 レミリア様がまたため息をついて、俺に問う。

 

「なんでしんみりしたのはダメなわけ?」

 

「ヒント、俺の性格」

 

「すべてを理解したわ」

 

 うん。さすがレミリア様、よくお気づきで。俺的に、別れるときは、しんみりより明るく笑顔の方が好きなわけです。

 

さて、そろそろ行きますか。俺は最後にもう一度お辞儀をして、部屋を後にしようとした。

その時。

 

「白滝さん! 紅魔館出て行っちゃうってほんと!?」

 

 唐突。扉が思いっきり開かれるのと同時に、そんな大声が聞こえてきた。金色の髪、大きく紅い瞳、虹色に輝く羽。俺が命を懸けて救った、フランその人である。

 そしてそのフランは、俺の姿を見つけるやいなや飛びついてきた。

 

「どうして!? どうして白滝さん出て行っちゃうの!?」

 

「ふっフラン!? ちょちょ、落ち着いて。深呼吸深呼吸」

 

 いきなり飛びついてきて、泣きつくフランに俺は落ち着くことを促す。あー…そういえば、フランには事情を話してなかった。そんな暇なかったものな。

 だが、フランは落ち着くことも忘れたように、抱き付いたまま俺を上目づかいでみてくる。

 

「だってだって、フランもっと白滝さんと一緒にいたいもん! 白滝さんは…フランと一緒は…いや?」

 

「うぐっ。いっ…嫌じゃないよ。俺はフランのこと大好きだから、できればずっと一緒にいたいけど…」

 

「だったら、ずっと一緒にいてよぉ! お姉様とフランとずっと一緒に遊ぼ――」

 

「フラン。わがままはそれくらいになさい」

 

 フランの様子を見かねたのか、レミリア様がため息交じりにそう言った。

 すると、さすが姉妹というかお姉ちゃんの言うことといった感じであろうか。あれだけ矢継ぎ早に言葉を出して俺を引き留めていたフランが『うー…』と唸るだけになった。

 俺は、「ありがとうございます」という感謝を気持ちを込めた視線をレミリア様に送る。レミリア様は肩をすくめ俺の視線に答えてくれた。

 俺は涙目になりながら顔を伏せているフランの頭に手をポンッと乗せた。フランは少し驚いたように顔を上げる。

 

「俺は、フランのこと、大好きだよ」

 

 フランの頭を撫でながら、俺は言葉をつづける。

 

「フランとこのまま一緒に遊んだり、ご飯食べたり、お昼寝したり……一緒にいたいって俺も思ってる」

 

 俺がそういうとフランが俺の服を掴む力を強くして涙交じりの声を出す。

 

「だったら!」

 

「でも。…俺にまだやりたいことがたくさんあるんだ」

 

「やりたいこと……?」

 

「うん。俺はフランを救えた。自分の手で、大切なものを手に入れることができた。それこそ、今みたいに……ね」

 

「あっ…」

 

 フランは何かに気づいたかのような表情をすると、服を掴んでいた手を放して、自分の頭に乗っている俺の手に重ねる。……うん、正解だよフラン。

 

「これも、俺のやりたいことの一つだったんだ。フランを救って、フランの笑顔を見て、フランの頭をこうやって撫でる。ずっと前から、願っていたことなんだ」

 

 そういって俺はフランの頭をもう一度撫でた。フランは気持ちよさそうに目を細める。

 その様子に俺は微笑みながら言葉をつづける。

 

「そしてその願いは、今こうして叶ったんだよ。だから俺は、新しい場所に行くんだ。新しい場所で、自分の願いを叶えたいんだ」

 

「…白滝さん……」

 

 フランが俺の目をじっと見つめる。そんな目をされると非常に言いずらいんだが……でも仕方がない。俺はいろんな場所を見たいんだ。

 

「必ず帰ってくるよ。いっぱいお土産話もってさ! ……だから、俺のわがまま、聞いてくれないかな?」

 

 ちょっと意地悪な言い方だけど仕方がないね。

 俺の言葉を聞いたフランは顔を伏せる。葛藤…というものだろうか。そうだったら俺としてはうれしい限りなんだが。

 少しの間がたち、フランが顔を上げた。

 

「わかった。フラン、待ってる」

 

 フランは、今にも大粒の涙が零れ落ちそうな目をして、そう言った。その、すごく我慢しているような表情がなんだかとっても愛おしくて、俺は頭を撫でながら、微笑みをフランに見せる。

 

「ありがとうフラン」

 

 俺がそういうと、フランは顔をふせ、また「うー…」と唸って俺に抱き付いてくる。その様子が何とも可愛らしくて自然と俺は笑ってしまった。

 「ごほんっ」というわざとらしい咳が聞こえた。その方に視線を向けるとレミリア様がこちらをじっと見つめていた。

 

「話はついたかしら?」

 

「ああ、はい。大丈夫です。な、フラン?」

 

 俺が問いかけると、フランはこくんと頷いた。その様子を見たレミリア様は「そう」と呟く。

 

「最後に確認するけど……悔いはないのね?」

 

「悔いがない…って言ったら嘘になりますけど。でも、これが今生の別れではないですから。いつかこの悔いも、なくすことができますよ」

 

「……そう。あなたらしい、楽観的な考え方ね」

 

「そうやって考えた方が、気分が明るくなるじゃないですか。それに、今ここで悔いがあるって言っても、もう一度執事になることはできないんでしょ?」

 

 俺が軽口のようにそう言うと、レミリア様は小さく笑った。

 

「ふふっ、そうね。次、誰かを雇うなら、もっと静かな人間にするもの」

 

「うわ、ひでぇ」

 

 地味にショックを受ける俺。その俺の様子を見てかレミリア様がまた笑った。……うん、やっぱりレミリア様は笑顔が可愛い。

 

 さて、このままここに長居しても仕方がない。そろそろお暇させていただこう。

 

「では、俺はそろそろ」

 

「そう。ま、死なないようにだけ祈っておいてあげるわ」

 

「……感謝感激ですよ」

 

 レミリア様からいつも通りのSっぽい発言いただきました。ほんと涙が出そう、いろんな意味で。

 それで俺が部屋を出ていこうと体の向きを変えようとしたのだが……相変わらずフランがくっついたままであった。非常に可愛いがこのままなのもいかん。

 俺はフランの頭をもう一度撫でる。

 

「それじゃあね。フラン」

 

「……うん」

 

 そう呟くとフランは俺から手を放してくれた。うん、いい子だ。そんな思いを込めながらもう一度頭を撫でた。

 ふいにフランが顔を上げた。そして

 

「いってらっしゃい! 白滝さん!」

 

 そう、満面の笑顔を見せてくれた。相変わらず目の端には涙が見えていたが、フランは笑ってくれた。その笑顔を見たら、自然と俺も笑顔になっていた。

 

「……おうっ! 行ってきます!」

 

 ありがとう。最高の選別だぜ! フラン!

 

 俺は、少しの寂しさと感謝と、そして最後にフランからもらった温かさを胸に、レミリア様の部屋を後にした。

 これは、次に紅魔館に来るときは、最高の土産話を持ってこなくちゃいかんな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レミリア様の部屋を後にした俺は、二人の顔を思い出し少し寂しい気持ちになっていた。ううむ、こういうのは俺のキャラじゃないんだが…自然とこの気持ちが湧いて出てくるのだから仕方がないな。

 だがもう終わったこと。俺は今はもうこの紅魔館の執事ではない。それにもともと…俺は外来人で、しかもなんの力ももたないただの人間である。本当ならここにいることさえ許されないと言っても過言ではない存在。ここにずっと居たいなんて願いも、もしかしたら口に出すのもおこがましいことなのかもしれないな。だから、もう考えるのはやめよう。前を見て、新しい場所に行こうじゃないか! あ、力を持たないと言っても俺には「夢を見る程度の能力」があるんだった。……まぁ、あれも夢を見なきゃ始まらないし、ほとんど使いどころがない感じがするし……ショボーンだな。

 そんな感じで自分を励ましながら廊下を歩いていると、前からこちら側に歩いてくる人影を発見した。夕暮れの日差しが射して影しか見えないが。スカートで、そのスカートがふわっとしてて、短髪で……まぁ間違いなく十六夜さんであろう。

 

「十六夜さーん!」

 

 俺はそう声をかけて手を振った。十六夜さんの影は少し停止したかと思うと、頭の部分が少し低くなり、また元に戻った。……多分会釈されたな。うーん……いつもの十六夜さんだ。十六夜さんに手を振っても、いつも会釈で返されてしまう。いやー、キャラじゃないのはわかるけどさ。悔しいです!

 

 ようやく顔がわかるような距離まで歩いたとき、先に声をかけてくれたのは十六夜さんだった。

 

「あら、白滝でしたか」

 

「でしたかって、なんだと思ったんですか」

 

「いえ、姿が見えるなりいきなり手を振ってくる変態かと」

 

「あ……うん。正解」

 

 否定ができなかった! どうしてくれる!

 ショボーンとしている俺の様子に、十六夜さんはクスッと笑って、「冗談です」という。

 仲良くなっってきた証拠か、時々十六夜さんはこうやって笑顔を見せてくれるようになった。その笑顔が可愛くてもう生きるのがつらいのだが。だがいつもは冷静を体現したかのような固い表情だし、その笑顔もレアである。仲良しと言える関係になるのはまだまだ道が遠い。

 

「もう、行くんですか?」

 

 十六夜さんが不意にそう俺に問うた。ふむ、俺は廊下を歩いていただけなのによくわかったな。素直に聞いてみよう。

 

「よくわかりましたね」

 

「柄にも合わず、寂しそうな顔をしていましたから。それにこの方向から、ということはもうお嬢様には挨拶をしたのでしょう?」

 

「おぉ正解です。……なるほど、そこまで読みましたか」

 

 顔に出てたのか……恥ずかしいなぁ。しかし、さすが瀟洒といったところか。

 まぁそこまでわかっていらっしゃるなら話が早い。十六夜さんにも挨拶をと思っていたからちょうどよかった。

 俺は服装を正し、姿勢を正し、十六夜さんにお辞儀をした。

 

「短い間でしたが、お世話になりました」

 

「なんですかいきなり。まぁ、確かに世話はたくさんしましたね」

 

「ははは……いつもながらに厳しいっす」

 

 頭を上げると十六夜さんはため息をついていて、それに俺は苦笑いで答えた。しかし…もうなかなかこういう会話ができなくなると考えると、少し寂しい気分と同時に十六夜さんの軽い嫌味なんかもさほど嫌味にもならない。面白いもんだ。

 不意に十六夜さんが目をそらした。珍しい。

 

「とはいえ……」

 

 十六夜さんが目をそらしたまま続ける。

 

「言うほど、あなたと共に仕事をした日々も、嫌なものではありませんでしたよ」

 

「……十六夜さん」

 

 なるほど。だから目をそらしたわけですか。恥ずかしかったというかなんというか、きっと今十六夜さんは、慣れないことはするものじゃないとか思っているのだろう。

 だって俺、今思い返せば、そんな優しい言葉を十六夜さんから言われたの初めてだからさ。

 だから十六夜さん自身も、どういえばよかったのかわからなかったんだろう。

 

「ありがとうございます、十六夜さん」

 

「……お礼を言われるようなことは言っていないと思いますけど?」

 

「俺がただ言いたかっただけですから、気にしないでください」

 

「…そうですか」

 

 なんというか、十六夜さんの新たな一面を見れて、それがいい餞別になった気がする。

 ……相手は十六夜さんだ。きっと、もうこれ以上の言葉は必要ないだろう。もともと十六夜さんは多く話す人ではない。それに今傍らにあるのはいつもの紅茶セット。きっとこれからレミリア様の元に行くのであろう。あまり時間をとってもいかんね。

 そう思った俺はここでお暇しようとかんがえた。

 

「それでは十六夜さん、俺はここで」

 

「そうですか。それではお元気で、と言っておきます」

 

「はははっ。ありがとうございます。十六夜さんもお元気で」

 

 俺はそういって、軽く会釈をもう一度して歩き出そうとした。

 その時、ふと思ったことがあった。

 

 そういえば……最終的に十六夜さんが敬語じゃなくなること、無かったな。いやそれは仕方がない。変えようと思うのは十六夜さんの意志であって俺がどうこうできるものではない。名前の呼び捨てはめっちゃ頼んだらやってくれたけどね。

 でも……でも一回くらい、名前で呼びたかったな。あと敬語じゃなくタメで話してみたかった。パッと見同じくらいの年齢だしね。

 ……やってみる? 一回ワンチャン賭けてみるか? それなりに仲良くはなったはずだ。もしかしたらいけるかもしれない。もしだめだったら速攻で謝ろう。

 よし、やってやる! 俺も男だ! 

 

動かなくなった俺を不審に思ったのか「どうしました?」と声をかけてきた。だが今はそんなことはいい。

俺は深呼吸をして、正面を切った。

 

「レミリア様のこと頼んだぜ、咲夜」

 

 瞬間、咲夜の目が驚いたように見開かれた。だがすぐいつもの顔に戻ると

 

「はぁ…」

 

「!?」

 

 ため息をおつきになられた。えっ? えっ? それはどういう反応ですか? もしかして……「はぁ…これは再教育が必要ですね」のはぁ、なのかな!? そうだとするとやばいな。ナイフでアッー♂ルートまっしぐらですほんとありがとうございます。

 ため息の後、咲夜…いや十六夜さんにしとこう、うん。十六夜さんは何も言わず俺の方へ歩いてきた。あ……これやばいやつかな? そう考えると俺は動くことができなかった。

 仕方がない。速攻で謝るとして、今は来るであろう衝撃に耐えることにしよう。

 だが、十六夜さんはいつもなら攻撃している範囲に入っても、何もしてこなかった。

 それどころか、すれ違う寸前。

 

 

 

「あなたに言われなくてもわかっていますよ、白滝」

 

 

 

 と、優しい声で呟いていったのだった。

 

……え?

 俺が思考停止する中、十六夜さんは、何も言わず、振り返ることもなく、そのまま廊下を歩いて行く。俺は驚きのあまり、振り返ったままその背中を見送ることしかできなかった。

 えっと…今のはどう受け取ってよろしいのでしょうか? 確かに俺はタメ語を使った。そして……名前で呼んだ。しかも呼び捨てした。さすがに若干震え越えになってしまったかもしれなかったな、うん。

 だが十六夜さんは何も言ってこなかった。何もしてこなかった。それどころか、あの声色は優しいものだったぞ? つまり……

 

「これからは、それでOKってことか…?」

 

 その結論に至った時、俺は無意識のうちに、されど思いっきりガッツポーズをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 長く、されどどこか短くも感じられた廊下を歩き終え、玄関…エントランスへの階段を下りていた。短く感じれたのはきっと、過去の出来事に思いはせていたからであろうな。俺が紅魔館に来てから、一か月ほどか。いや一か月よりは多いかな…? 正直よく覚えてないんだよね。 まぁ簡単に言えば短い期間である。だが……それでも俺は様々な心に残る出来事をたくさん経験した。どれ一つとっても楽しかったし、どれ一つとってもみんなのその時の表情を思い浮かべれる。きっと、この思い出がこれから新しい生活で強いられるであろう、つらいことに向かっていく原動力の一端を担うのは言うまでもない。くさい言葉だが、俺は「この思い出を胸に生きていこう」。

 

 と、そこまで考えたその時、階段を下りた先、つまりエントランスの広がったところの中央に人がたっているのに気が付いた。この姿は……

 

「こあさん?」

 

「あ、お待ちしていましたよ。白滝さん」

 

 赤いロングに悪魔っぽい羽が生えている・間違えようもない、こあさんこと小悪魔さんだ

 しかし……基本拠点を図書館にしているこあさんがどうしてここに?

 

「レミリア様に用事ですか?」

 

「いえ、違います」

 

「違うんです? では誰に…」

 

「今、お待ちしていましたって言ったじゃないですかー」

 

 若干呆れたように、されどいつもの笑顔は崩さずこあさんはそう言う。

 まぁそうなると。

 

「つまり俺に用があると」

 

「そうです。今日限りでこの紅魔館を出ていく白滝さんに用があるんです」

 

「ふぐり! 地味にとげのある言葉ですなそれ…」

 

 『今日限り』ってあたりがなんか引っかかるね。まぁ…こあさんの天然毒舌はいつものことなので気にしません。……これ狙ってやってたらすごいことだよね。

 まぁそんな精神ダメージは顔に出さないようにして、俺はそのまま階段を降りこあさんと合流する。

 さっそく話を聞くとしよう。

 

「俺に用とは……どうされたんですか?」

 

「はい。実は……フラン様のことで、白滝さんに話しておかなくては、と思ったことがありまして」

 

「フランのことで?」

 

 フランのこと……わざわざこあさんが大図書館から足を運んでまで伝えに来るということは、何か重大なことであることはわかる。しかもレミリア様よりも先に俺のところに来たと見える。なにか問題でも発生したのだろうか……? だが先ほどのフランは至って普通だったが…? 

そんなことを考えたせいか、俺は無意識に怪訝な顔をしていたらしい。こあさんが驚いたように

 

「ちっ違いますよ! なにか問題とか異常が起きたとか、そういう話ではありませんから、安心してください」

 

 と、訂正をしてくれた。そういう類の話でないのなら安心したが、怪訝な顔をしてしまったのも事実。素直に謝るとしよう。

 

「あぁ…すみません。ついフランのことになると敏感になっってしまって…」

 

「気にしませんよ」

 

 そういってこあさんは笑ってくれた。……大天使小悪魔(すべての意味で矛盾というか真逆)。

 だがそこでこあさんの言葉は終わらず、「それに…」と続ける。

 

「白滝さんの気持ちも分かりますから」

 

「…そうですか?」

 

「はい。少なくとも……フラン様に関しては、私も同じ気持ちになってしまいます」

 

「……へ?」

 

 あれ? それってどういうことだ? こあさんも、俺と同じように、フランのことを心配してフランに関しての話題だと敏感になってしまう、ということか?

 いやだが……こあさんは失礼ながら、フランとの関係は浅いはずだ。あのフランの過ごす部屋の主であるパチュリーさんだってまだ深い関係を作れてはいないというのに。正直いってこあさんがほとんど初対面レベルの知り合いでしかないフランにそこまで入れ込むとは考えられない。

 考えられるとしたら、俺の知らない『どこか』で、フランと関係を持っていることになる。ではいつ? どこで?

 ……こればっかしは考えてもらちが明かんな。素直に聞いてみるか? だがすっごくプライベートな事だったらどうしよう。……もしかして、すごくもしかしてだけど、『こあさんが、フランに一目ぼれしてどうしてもお近づきになりたいがために、フランのことを想っている』なんていう、ふらこあのフラグかもしれない。それはそれでマイナー……というかそんなカップリング今のところ、英語で『Mushroom only』さんという同人作家さんでしか見たことないが(いやでもあれはふらこあって言うのか?)、それはそれでアリかもしれない!

 まぁ、そんなのは妄想でしかなく、だが気になって仕方がない俺は、素直に聞いてみることにした。

 

「それは…つまりどういうことですか? こあさん、フランと深い関係でも…?」

 

 俺の言葉に反応したかのように、すこし目を伏せ、

 

「私の用事は、そのことに関係することなんです」

 

 そう、呟いた。呟いただけ、俺の言葉を否定はしなかった。つまり、否定できないだけの何かはある、ということだ。

 

「……聞かせてもらえますか?」

 

「はい」

 

 こあさんはそう確かに頷いた。ふむ、なんであろうな。

 少しの間があった後、こあさんが俺に問うてきた。

 

「今回のフラン様が封印されていた件、何か不自然な点に気づきませんでしたか?」

 

「不自然な点?」

 

 ……思い返してみる。パチュリーさんから、レミリア様には姉妹はいないと聞かされたことから、紅霧異変まで、フランに関係することを順立てて思い返してみた。だが……不自然な点なんてあったか? それこそ心情心理とかを取り上げれば不自然な点などはいくらでもあるが……今聞かれていることはそんなことではないだろう、と思う。

 だがそうなると……うーん。

 

「さっぱりだ」

 

「…そうですか。ダメですねぇ白滝さんは。状況把握がしっかりできていない証拠ですよ?」

 

「うっ…そうなのかも」

 

 もし本当に不自然な点があるとするならばそれは完全に俺の落ち度であり、こあさんに言い返す言葉もない。

 はぁ、と一つため息をついたこあさんは「しかたないですね」といった。

 

「ではヒントです。不自然なことと言うのは、フラン様が封印されている間のことです」

 

「間か…」

 

 ふむ。となると、フランと出会った時のことから考えてみるか。

 

 フランと出会ったとき、それはもうあまりの悲惨さについ取り乱してしまったな。こんなの俺の知っているフランとは違う、なんて思ってしまった。ボロボロの服、ぼさぼさに汚れた髪、やせ細った体、見るからに痛々しかった。まぁでも今考えても、それは仕方がないことなんだよな。なんてたって、百年以上封印されられていたわけだし。

 しかもその影響で霊夢は存在も忘れていたくらいだったわけでからな。いや、忘れていたというより知らなかったが正解か。あの時、フランのことを知っているものは、一人もいなかったんだもんな。

 今でこそゆっくり回復はしているが、そりゃ当時はお世話をしてくれる人もいるわけもなく、服も髪もボロボロになるわな。あそこまでやせ細るのも無理はないな――……おや?

 

 ここまで回想していて、ふと疑問に思ったことがあった。

百年以上封印されていたんだよなフランは。しかも誰の記憶にもなく、誰にも知られず。

 

ならば……『食事』はどうしていたのだか?

 

 だって百年だぞ? 百年以上も封印されていたんだぞ? なのに、なのに俺は『やせ細った体』としか認識しなかった。

 百年以上なんて途方もない時間だ。そこに食事というものがなければ餓死してしまうのが普通だろう。いや、餓死しないなんてことは不可能だ。例え吸血鬼であっても生きているのだから。食事は必要不可欠。

 確かに、フランは時折妖怪や人間が彷徨いこんできたといっていた。初対面で俺に言った「お兄さんも、私と遊んでくれるんだね?」という言葉の『も』というのはつまりそう言う事だったんだろう。その肉を喰らったとして。想像はしたくないが喰らったとして、だとしてもあんな長期間は無理だろう。

 それにフランは自分から封印を破壊し外に出たことはないと言っている。つまり自分から食料を調達はしていないということだ。

 となると……つまり導き出される答えは一つになるわけで。

 

「その顔は……わかったみたいですね」

 

 こあさんが、ふふっと笑った。

 俺は導き出した答えをこあさんに伝える。

 

「……フランを、援助していた者がいた」

 

 俺の呟いた言葉に少し驚いた様子のこあさんだったが、すぐにふふっと笑う。

 

「そこまで導き出していましたか。はい、その通りでございます」

 

 正解だったか。ふぅー、すっきりしたぁー。……じゃなくて!

 

「ってことはまさか!?」

 

「はい。この私小悪魔が、微力ながらも、フラン様を援助していたのです」

 

 そういってこあさんはぺこりと頭を下げた。…なぜだろう、いつもよりも大人びて見えた。

 しかし…驚きである。まさか……いやでも、むしろそっちの方がおかしいことないか?

 

「でもこあさんは、パチュリーさんの使い魔じゃないですか。どうしてフランの存在を…?」

 

「私がいつ、パチュリー様の使い魔だなんて言いましたか?」

 

「……WHAT?」

 

「といいますか、私を召喚したのがパチュリー様だなんて私は一言も言ってませんよね?」

 

「えっ…いや…えっ?」

 

「まぁ…パチュリー様は、私を自分の使い魔だと思っているんでしょうけど…ね」

 

「どいうことなの。えっとじゃあ、こあさんは誰の使い魔なんですか?」

 

「私は……私の主は」

 

 そこでこあさんが言葉を区切り、なぜか姿勢を正した。そのなぜか感じる厳粛な雰囲気に俺も息をのむ。

 こあさんが、ゆっくりと、だが力強く言葉を紡ぐ。

 

「私の主は、前紅魔館当主様です」

 

「……」

 

 衝撃だった。正直に言ってうすうすわかっていたが、だが改めてこうやって言葉にされると、思わず驚きを感じてしまう。

 俺は、こあさんに更なる説明を求めることにした。

 

「詳細を…お願いします」

 

「わかりました。私の主、前当主様は白滝さんが知っている通り、フランを博麗の巫女を通じて封印させ、そして能力を使い、記憶を操作し始めたのです。ですが、やはり、フラン様を完全には見捨てることはできず、使い魔である私の記憶だけは消さず、そのままにしておいたのです。フラン様を…死なせないでくれと、私は主に頼まれました。つまり、私というフラン様を知る存在を作ることが、前当主様の最後のフラン様に対する良心だったわけです」

 

「……」

 

 こあさんは「あの祠に行くために私は結界除けのシンボルを前当主様からいただきました、。これを用いて一週間に一度、食事を置きに行った。……これがこの真相です」

 

正直、身勝手な話だ、と思った。そんなことするくらいならフランのこともただ愛してやればよかったじゃないかと思う。だが……俺はあの日記の内容を知ってしまった。だから、その考えを簡単に口にすることはできなかった。

 して、こあさんの話は理解した。だが疑問に思う点はある。

 

「では……失礼な話、こあさんは何年生きているんですか? まぁ、そもそもの使い魔の寿命というものがわかりませんが…」

 

 最低でも、フランが封印された時にはこあさんがいなくてはおかしい。つまり最低百年以上。しかも、フランが封印されている間に、その前当主は死んでしまっている。いったいどういうこのなんだろうか?

 

「正直…詳しい年まで覚えていません。使い魔は、高等の術式を扱えるもの尚且つ、魔力量が大きいものであれば召喚が可能です。そして、主が死ぬ、つまり魔力の供給源がなくなってしまえば使い魔はこの世界で形を維持できません」

 

 そうシステムになってるんだな使い魔って。

 こあさんは続ける。

 

「残念ながら、レミリア様はそこまでの術式を扱えるほど成長されておりませんでしたし、魔力も弱い。故に、死期が近いことを悟った前当主様は、私という存在を誰かに引き継いでもらうべく、とある魔女を紅魔館に招き入れました」

 

 それって……

 

「パチュリーさん?」

 

「正解です」

 

 こあさんは笑顔で答えた。

 

「紅魔館に招き入れたパチュリー様に、私という存在を使役するための権利与える、まぁ要するに使い魔の譲渡ですね。それを前当主様は行ったのです」

 

「その際に、パチュリーさんの記憶を操作して、小悪魔さんをもともとパチュリーさんが召喚した使い魔だと思わせた、と」

 

「そういうことです」

 

 なるほど……納得のいく答えだ。そうなれば、辻褄が合う。フランの食事は誰が行っていたのか。その謎がようやく解き明かされたわけだ。謎と言っても俺こあさんに聞かれるまで忘れてたけど。

 そっか…こあさんが……なら。

 

「こあさん、ありがとうございました」

 

 お礼を言わなくてと思った俺はこあさんに頭を下げる。

 その姿に驚いたのかこあさんがぴくんとなったのが見えた。

 

「…なぜ頭を下げるんですか? 私は、白滝さんにフラン様のこと教えませんでしたし……フラン様救出や保護の関してもこれといったお手伝いはしなかったのですよ?」

 

「そんなこと……こあさんはずっとパチュリーさんを手伝ってくれたじゃないですか。直接的ではなかったかもしれませんが…こあさんの力は必要でしたよ。それに、そんなことは関係ないんです」

 

 そう関係ない。こあさんが手伝ってくれたとかそう言う事は関係ないんだ。俺はただこあさんにお礼がしたいんだ。

 だがこあさんは少し困ったように

 

「関係ない…んですか?」

 

 と俺に聞く。うん、関係ない。だってこあさんは。

 

「ありがとうございました。フランのこと、見守っていてくれて」

 

 こあさんは、フランを生かしてくれていたじゃないか。なら、お礼を言うのは当然だ。

 

「見守るなんて…私はただ、前当主様の命に従っただけで」

 

「でも、その前当主様はいません。あなたに合ったのはその記憶だけ。……そんな弱い縛りつけでは、フランへの食事の供給はいつでもやめれたはずです。いちいち大切な休みをつぶしてまで行く理由は、あなたにはなかったはずですから。だから……ありがとうございます」

 

「……」

 

 こあさんが黙った。俺の言葉にどう反応したものかという風であろうか。

 だが、最後には「ふふっ」と笑いだす。

 

「…わかりました。ではここは、どういたしましてと言っておきます」

 

 そういうと笑顔を俺にこあさんは見せてくれた。うん、そうやって受け取ってくれるなら、俺もうれしいよ。

 ……あれ? てか、そういえばそうだよ。

 

「さっきのこあさんの言葉で思い出しましたが」

 

「なんですか?」

 

「フランのこと、なぜ話してくれなかったんです? 確かにそれは秘密にしておくべきことだったのかもしれない。でも、俺という人間は…俺というイレギュラーな存在は、フランの存在を知っていた。そんな俺にだったら、話してくれてもいいじゃないですか?」

 

 フランのことは秘密にされていたのであろう。それはよくわかる。だが、俺があれだけ大騒ぎしていたんだ。俺がフランの存在を知っていてフランを救うと言っているんだ。こあさんからしてみれば願ったりかなったりじゃなかったのか? 確かに俺はどこの馬の骨とも知らんやつだが……

 だがこあさんは、俺の言葉にため息で返した。

 

「だって白滝さん、私にフラン様のこと聞かなかったじゃないですか」

 

「へ? ……いやいや、そんなことはない。だって俺は、パチュリーさんからフランの話を聞いた後、紅魔館中を駆け回ってみんなの話を聞いたんだぞ? その中にこあさんが入っていないなんて――」

 

「ことがあったんですよ。よく思い出してください」

 

 再度ため息をつくこあさんの様子に俺は釈然といない気持ちを抑えて、言われた通りに思い返す。だって、パチュリーさんから話を聞いた後だろ? みんなに話を聞きに行ったはずだけどな……

 

 

 

 

 

 

~回想はじめ~

 

 

 

 

 

『「これが最後の頼みの綱だ……頼む」

 

 「レミリアに姉妹はいない」とパチュリーさんに言われてから、俺は驚愕に支配されていた。フラン様がいないなんて想像していなかったからだ。

 大図書館で、こあさんに一言断りを入れた後、俺は様々なところを回った。十六夜さん…美鈴…。だが、結果はパチュリーさんと同じだった。

 

「お嬢様は一人娘のはずですが」

 

「フラン…? すみません、私にはさっぱり…」

 

 同じだ……みんな知らないんだ…なぜ。

 フラン様は、狂気ではあるがレミリア様の大切な妹だ。だからこそ、レミリア様は異変を起こし、フラン様が外出できるようにした――それが「紅霧異変」の真相だったはずだ。公式だか二次創作だか忘れたが。そしてだ、そしてそこにフラン様がいないとしたら……

 

「異変が起きない…か」

 

 そんな可能性もあるわけで……そうなるとレミリア様は霊夢に会わないし、パチュリーさんも魔理沙に会わない……そんなのいやだぁぁぁぁ! パチェマリが見えないなんてぇぇぇぇぇ!』

 

 

 

 

 

 

~回想おわり~

 

 

 

 

 

 

 ほらー、俺皆に話しかけて聞いてるでしょ? だからこあさんだってー。こあさんにだって……こあさんに……あれ?

 

「……俺、こあさんに、出ていくって断りを入れただけ?」

 

「やっとお気づきになられましたか。私はただ『ちょっとやらなくちゃいけないことを思い出しました。すみません、席をはずします』としか言われていません」

 

「えっと……つまり…」

 

 一気に血の気が無くなった。今の俺は何も考えられないほど混乱している。それもそのはず。俺はパチュリーさんや咲夜、美鈴にフランのことを聞いておきながら、こあさんには何も聞いていないからだ。もしもあの時にこあさんにフランのことを聞いていたら、もっと早く行動に移せたのだ。そう、あの時俺がこあさんに聞いてさえいれば。

 口をパクパクとさせる俺に向かって、こあさんはとどめの一撃を放った。

 

「ま、全部、白滝さんの落ち度ですね。私は秘密にしておくという前当主様との約束を守っただけですし」

 

 なぜかこあさんは妙にニコニコしていて。

 一方で俺は――

 

「俺ってやつはぁぁぁぁぁぁ……」

 

 盛大にへこんでいたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こあさんとの出会いにより、へこんだ俺だったが、今更そんなことは考えても仕方がないことで、結果としてフランが救えたんだからよしと考えることにした。そうでないと精神的にきつい。

 ちなみにこあさんは、こあさんの秘密をみんなにはまだ話さないらしい。今話して混乱を招いても、という懸念からだった。だがいつの日か記憶の制限も消えかかり、すべてを思い出したら話そう、と言っていた。

 いつもの元気でほんわかした感じではなく、きりっとした、どこか大人の女性を思わせたこさん。もしかしたら、あれがパチュリーさんではなく、前紅魔館当主に使えるこあさんだったのかもしれない。

 きを取り直した俺は大図書館に向かいパチュリーさんに挨拶をしようと思ったのだが……パチュリーさんは二日酔いで死んでいた。いやまるで屍のようになっていた。確かに今思い返せば、終盤でへべれけになった霊夢に「なんだーお前全然飲んでないじゃないのー」的なノリでめちゃくちゃ飲まされてたな。元々強くはなさそうだったし、相当こたえたのであろう。いくら返事をしても帰ってくるのはまるで風が抜けるだけのようなそんな声だった。

 あまり無理はさせてはいかんと判断した俺は、挨拶もそこそこに大図書館を後にしたのだった。うーむ、今回のフランの事件に関してパチュリーさんには睡眠薬のことと言い、部屋の結界などといい迷惑をかけた。ちゃんと挨拶したかったのだが……仕方がない。また紅魔館に顔を出したときにその礼はたっぷりするとしよう。パチュリーさん何をお土産にしたら喜んでくれるかな? 菓子折りとかかなぁ…うーむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなことを考えている俺は、紅魔館の入り口である門、つまり美鈴に会いに向かっていた。

 美鈴は、俺が今回のことで一番感謝している存在である。フランのことに気づき狼狽する俺を支えてくれたれた。フランの救出にも同行してくれた。時間稼ぎという作戦を何一つ文句も言わず了承してくれた。……ほんとに、美鈴には感謝してもしきれない。

 

 そんな美鈴に俺は、どんな言葉を初めにかけようかと悩みながら歩いていると、気づかぬ間に門についていた。さてそこで声をかけようと思い、美鈴に近づいたのだが……

 

「……すぅ……すぅ…」

 

「…ははっ、シエスタ中だったか」

 

 気持ちよさそうな顔で、美鈴は寝息を立てていた。まぁマジレスするとシエスタってのはお昼を意味するから、夕方の今はシエスタではないし、別にお昼休みであれば寝ていなくてもシエスタらしいねあれ、まぁそんなことはどうでもいい。

 しかしまぁ……立ちながら寝るなんざ、器用なものだ。

 

「……すぅ…」

 

「可愛い顔して寝てるなぁ。美人の美鈴も、寝顔は子供っぽくて……ううむ、やはりかわいいな」

 

 俺は美鈴の顔を覗き込みそう呟く。この世界の美鈴は、門番をさぼって寝ている、ということはほとんどない。故に今日みたいなことは稀なのである。

しかしまぁ一日中門番として努めなくてはいかんのだ、そりゃ眠くもなる。だから俺はもっと昼寝してもいいんじゃないか? とも思うのだが、ここの美鈴はすごく真面目だからな……。

しかし気持ちよさそうに寝ている。……ちょっとくらいつついても起きないかな?

 

「……んんっ…」

 

 俺がつつくと、美鈴は少し眉毛を八の字にして少しうっとうしそうにする。なんというか、その様子が面白くって、俺はさらにつついてみることにした。

 

「ん……んー…………んっ」

 

 美鈴が身じろぎをしたので俺は慌てて離れる。もしかして起きたか?

 だが幸いにも起きたわけではないようで、美鈴は身じろぎしただけで再び寝息をかきはじめた。

 

「はぁ、よかった。じゃ、もうちょっと堪能を――」

 

 そういってもう一度美鈴の近くに寄り、つっつきを再開しようとした。

 

その時、美鈴の目が、ゆっくりと開かれた。

 

ばっちり目と目が合う俺と美鈴。急な状況に俺は動くことができず、美鈴にも動きはない。というか相手が起きていると考えて初めて気づいた顔の近さ。俺があと一歩でもそのまま前に出たらキスできるぐらいの近さである。

 

「白滝…さん?」

 

 はじめに声を出したのは美鈴だった。目はまだとろんとしていていかにも寝起きであり、なんというかあまり状況が把握できていない様子である。だが戸惑っているのは俺も同じであって。

 

「うん、おはよう美鈴」

 

 美鈴の言葉に、普通にあいさつを返してしまうのであった。

 

 「おはよう…ございます」と寝ぼけなまこで返す美鈴は、一回大きな欠伸をする。なんかいつもとは違う可愛い美鈴が見えて非常に眼福である、と思いはするもののこの状況をどうしようかと俺は悩んでいた。だがなんでか動くこともできず、覚醒前の美鈴をまじまじと眺めているようになってしまっている。

 美鈴は目をこしこしと手でこすると、ようやく覚醒したのか、先ほどまでのとろんとした眼ではなくいつも凛々しく、でもどこか優しい目に戻る。そして、覚醒した後の美鈴と俺の目が合う。……再度訪れた沈黙と静止。

 

 最初に変化があったのは、またも美鈴であった。

 だがそれは先ほどのものとは全くの別の変化であって。

 

 俺から目を離さない美鈴の顔が「ぼんっ」と音が鳴りそうなほどに紅く染まり

 

「ひゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 美鈴は驚くべき速度と動きで、後ずさった。

 

「なっなななっ…何で白滝さん!?」

 

「何でと言われてもな…」

 

 慌てすぎておかしい日本語になっているぞ美鈴。だがまぁ…驚くのも無理はない。目が覚めたらいきなり男の顔があるんだもんな。俺だって想像なんかしたくないほどだ。

美鈴の紅潮は治まらず、依然慌てたままである。

 

「だって私、門番をしてて……そしたら白滝さんの顔が目の前に…えっ? えっ?」

 

まぁ…今回ばっかしはこの驚きようにも俺の責任がある。寝顔を見られるのはあまり好かない人もいるもんな。ここは素直に謝ることにしょう。謝ればなんとか落ち着いてくれるかもしれんしな。

 

「えっと…美鈴?」

 

「はっはい?」

 

 俺の言葉にびくんっとなりながらも返事を返してくれる美鈴。だがその目にはまだ戸惑いの色が映る。

 

「その…ごめん。別に驚かすつもりはなかったんだ。ただ…美鈴の寝顔が可愛くってつい、覗き込んじまった」

 

「かっかわ…っ!?」

 

 謝る俺。なんとか美鈴が落ち着いてくれることを祈っていたんだが……

 なぜかそこには、さらに顔を赤くしている美鈴がいた。

 

「そそっそんな! 可愛いだなんて、そんなこと! あっありませんよ!」

 

「いや、美鈴は可愛い」

 

 何を言っているんだ美鈴は。例え慌てているとはいえ、そこは否定しておかねば。

 だがそれが逆効果だったのか。

 

「はぅっ……」

 

 と言って、さらに美鈴の顔は赤くなってし、今度は俯いてしまった。……もうどうしろっていうの…。

 それから俺は、美鈴をいつもの調子に戻すべく、奮戦したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぅ……恥ずかしいところをお見せしました」

 

「ははっ。可愛かったからよし」

 

「また可愛いって……まぁ…うれしいですけど…」

 

「うん?」

 

「いえ! なんでも!」

 

「ならいいけど。……でも、こちらこそごめんよ。女の子の寝顔とか遠慮なく見ちゃいかんものだもんな…」

 

「いえいえ、白滝さんに謝ってもらうことなんて……職務中に寝ていた私の落ち度です」

 

「昼寝くらい…もとい夕寝か。それくらいは咲夜も許してくれると思うぜ?」

 

「そうでしょうか…? ……って、えっ?……今、咲夜って…」

 

「ん? ああ、よく気づいたね。うん、さっき呼び捨ての許可もらってきた。咲夜厳しいからどうなるかと思ったけど、よかったよ」

 

「そう…ですか…」

 

「どうしたの?」

 

「何でもありません!」

 

「ええっ!? なんで急にそっぽ向くのさ!」

 

「つーん」

 

「そんな、美鈴―! なんで怒ってんのさー」

 

「怒ってなんかいません!」

 

「ううっ…美鈴が明らかに怒っている件について」

 

「……ふふっ、冗談ですよ。そんなに落ち込まないでください」

 

「…ほんと? 怒ってない?」

 

「はい」

 

「はぁ、良かったぁ」

 

「まぁ……これ以上私の気持ちに気づかないなら、ほんとに怒っちゃうかも知れませんけど」

 

「ん? 何か言ったか?」

 

「いえいえ、なんでも」

 

「?」

 

 とまぁ、何とかいつも通りの調子を取り戻してくれた美鈴と二人横に並んでしばし談笑を楽しんだ。やっぱり……美鈴と話していると落ち着く。理由はわからないけどな。でも俺は、この安寧によってすごく助かっているのだ。

 紅魔館のメンバーはみんな個性たっぷりで誰といても楽しいものだ。でも、楽しいと安らぎは違う。美鈴と一緒にいると安らぎをもらえるのだ。これはきっと、紅魔館の中では美鈴と一緒にいるときにしか味わうことができない。ほんとに……この安らぎにどれだけ救われたか。そう考えると……俺の中に寂しさがどっと押し寄せてきた。

 

「あー…やっぱり寂しいな。美鈴と離れるの」

 

「えっ!? いきなりどうしたんで――あっ……そっか。白滝さん、今日で紅魔館出ていっちゃうんですもんね…」

 

 美鈴の声が弱くなったのは明らかにわかることだった。それほど、美鈴は俺との別れを悲しんでくれているという事であろうか。そうだというのなら…素直にうれしい。

 俺と美鈴、その二人をひと時の静寂が包み込む。なぜだろう、静寂と言えど心地がいい。悪くない気分だ。もう少しこの静寂を味わっていたい気持ちもあるが……今は美鈴と話をしたい気持ちの方が大きい。

 

「ほんっと…大変だったな。フランを助けるの」

 

 俺の言葉に、美鈴は同意する。

 

「ほんとですね……でも、あの笑顔が見れて、よかったです」

 

 美鈴は何かを思い出すように空を仰ぎ、そして笑顔を見せる。フランのあの、はじけるような笑顔を思い出していたのだろうか。なるほど確かに。あの笑顔が見れただけで、あの大変さなんてへでもなかった、そう思えるのも頷ける。ほんとによかった。

 そして、そう思うたびに、俺はみんなへの感謝の気持ちがあふれる。そしてその中でも美鈴への感謝の気持ちが一番大きいことにも気づくんだ。

 

「ありがとうな、美鈴。その……美鈴がいてくれたおかげで、俺と一緒に戦ってくれたおかげで、俺はここまで来れたんだと思う。ほんと、ありがとう」

 

 俺は感謝の気持ちを、その本心を素直に言葉にした。正直こんな拙い言葉では足りないんだが、悔しいことに俺にはこれが限界のようだ。美鈴が気を悪くしなきゃいいが……

だが俺の予想とは裏腹に、美鈴は驚いたように俺の方を見て声を出した。

 

「そんな! 感謝の言葉をいわれるほど私は役立っていませんよ!」

 

「そんなことはない。美鈴には言葉で伝えきれないほど感謝してるんだから」

 

「もったいないです! 私なんて……最後には、大切なものを守りきることができず、倒されてしまったんですから……」

 

 そういって美鈴は、悲しい顔をして俯いてしまった。もしかして……フランを祠から救出するとき霊夢に負けたこと、再戦でも敗北してしまったことをまだ気にしていたのか? まったく……気にしなくていいとその時に言ったのに……。だが、美鈴は武人だ。敗北を気にしてしまうのも仕方がないことかもしれない。

 でも……それは違うんだよ美鈴。勝ち負けじゃなくて、「一緒に戦ってくれた」それが大きな意味を成すんだから。

 

「美鈴」

 

「なんです――って、きゃあっ!」

 

 俺は後ろから美鈴を抱きしめた。力強くじゃなく、包み込むように。初めは声を出して驚いた美鈴だったが、抵抗はしてこなかった。

 

「どうしたんですか? 急に…」

 

 美鈴が、すこし震えた声でそうつぶやいた。その様子がちょっと可愛くて、俺は笑いながら答える。

 

「前に美鈴が、俺に抱きしめられると安心するって言ってたから……駄目だったか?」

 

「いえ……そんなことは……。ふふっ、覚えていてくれてたんですね」

 

「まぁな」

 

 あれは美鈴が紅魔館に来た霊夢に敗北してしまった後、俺が駆け付けた時だったか。その時に言ってくれた言葉だ。おっ俺が理由もなしに女のこにいきなり抱き付くとかそんなナンパな真似できるわけないだろい! 正直今でも俺の心臓バクバクして平然を装うのが大変なんだから!

 まぁそんな俺の内心の慌てふためきっぷりは置いといて、俺は、俺の思いをしっかり伝えるべく口を開く。

 

「勝ち負け、じゃないんだよ美鈴。美鈴はそこに拘ってるのかもしれないけど、そうじゃない。俺と一緒にいてくれたことに感謝してるんだ。俺と共に戦ってくれたことに感謝してるんだ。俺の願いを…いや、俺の願いなのに、俺と共に来てくれたこと、それに感謝してるんだ」

 

「白滝さん…」

 

「だから、ありがとう、なんだよ美鈴。……美鈴がこの感謝の気持ちを聞いてどう思うかは正直わからないけど……それでも俺は、感謝の気持ちを伝えたいんだよ。だから……受け取ってくれないか? そうじゃないと、俺の気が収まらない」

 

 俺が気持ちを伝えきると、美鈴は何も言わず、ただ顔を少し伏せた。自分の中で葛藤しているのだろうか。そんな気がする。

 だが、次に顔を上げた時、美鈴は笑顔で。

 

「どういたしまして、ですね」

 

 そう、俺にささやいてくれた。……良かった。

 

「ありがとう」

 

「もう、またお礼ですか?」

 

「今のは、受け取ってくれたことに対するお礼」

 

「くすっ、そうですか」

 

 美鈴がふき出したように小さく笑う。それにつられて俺も笑ってしまった。やっぱり美鈴と話してると安心する。ほんと敵わないや。

 

 話が途切れると、俺は自然と美鈴から離れた。「あっ…」と少し名残惜しそうにつぶやいた気がするが、きっと俺の気のせいであろう。もしそうだとしてもこれ以上続けてたら俺の理性が持たないっす。

 気が付けば、もう日も落ちようとしている。いかんな、完全に夜になってしまう前になるべく人里に近づいておきたい。夜に森を抜けるきることは難しいが、ある程度まで行くことができればまだ比較的安全であろう。

 名残惜しいが…非常にまことに名残惜しいが、美鈴と別れを告げることとしよう。

 

「美鈴、もう少し居たかったけど…もうそろそろ」

 

「あっそうですよね。早く人里に行かなくては。すみません、送りたいのですが…」

 

「職務大切、だよ。俺のことは大丈夫だから、心配しないで」

 

 そういって不安そうにする美鈴の頭を撫でる。「あう…」と言って美鈴は少し驚いたようにしながらも、最後には目を細めて気持ち良さそうにしてくれる。うん、いつもながらに可愛い。

 

「それじゃ、元気でな」

 

「はい! 白滝さんも、お元気で」

 

「おう! ま、今生の別れってわけじゃないからな」

 

「ふふっ、そうですね」

 

 そう、俺が暇を見つけて顔を出せばいい。何もそんなに寂しがることはない。美鈴もそれがわかっているのか、はじめに会った時のような寂しい顔はしていなかった。

 俺は美鈴の頭から手を離し、手を振り立ち去ろうとした。だがそれを阻むものが。

 

「……美鈴?」

 

 美鈴が、俺の服の端をぎゅっと握っていたのだ。なんというか…そういうのすごくかわいくてずるいんだが。

 

「おねだり…」

 

「うん?」

 

「白滝さんに聞いてもらうおねだり、考えておきますね!」

 

 美鈴は顔を真っ赤にしながら、そう俺に言うと、そのまま恥ずかしそうに顔を伏せてしまった。

 なんかもう…可愛すぎるんだよ美鈴は! 俺はわしゃわしゃと美鈴の頭を撫でる。

 

「ああ、期待しておくよ!」

 

 俺のその一言に、美鈴はまた、満面の笑顔を見せてくれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 俺は、まだ顔の赤い美鈴が見送る中、紅魔館を後にしたのだった。

 

 

 

 

 さらば、美鈴!

 

 さらば、咲夜!

 

 さらば、こあさん!

 

 さらば、パチュリーさん!

 

 さらば、レミリア様!

 

 さらば、フラン!

 

 さらば、紅魔館!

 

 

 

 最高に楽しい日々を、ありがとう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんばんはー」

 

「いらっしゃい! って白滝の旦那じゃねぇか。久しぶりだな」

 

「お久しぶりです。前の服の件、ありがとうございました」

 

「なんだなんだ改まって」

 

「いえ。あの服、すごく喜んでくれましたから。そのお礼に」

 

「いいってことよ。こっちも商売だしな。珍しい意匠でいい勉強にもなった。それに、喜んでくれたんなら職人冥利に尽きるってもんだ!」

 

「ありがとうございます」

 

「それで、今日はどうしたんだい。また注文かい?」

 

「いえ、少し聞きたいことがありまして」

 

「聞きたいこと? なんでい、言ってみな?」

 

「では。上白沢先生って今人里にいます?」

 

「慧音先生か、ああいるぜ。せがれが寺子屋通ってんだ、間違いねぇよ」

 

「そうですか、よかった」

 

「しっかし、慧音先生に何の用だ? まさか寺子屋に通うっての?」

 

「そうそう、実は俺すっごくバカで――ってそうじゃなくて!

 

「がっはっはっ!」

 

「まったく……そうじゃなくて、人を紹介してほしいんです」

 

「人?」

 

「はい、藤原妹紅っていう人なんですが」

 

「おおっ、妹紅さんか」

 

「ご存じで?」

 

「ご存じも何も、たびたび道案内で世話になってるよ。なるほど、確かにあの二人仲良さげだわなぁ」

 

「そうなんですか……よかった」

 

「よかった?」

 

「あぁいえ、なんでも」

 

「そうかい。しっかし妹紅さんに用なんざ、つまるところ道案内か?」

 

「そうですそうです」

 

「ほぉー、ちなみにどこへ行きたいんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「永遠亭に。お礼を言いに行かなきゃいかんので」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした!そして読んでくださってありがとうございます!

今回は総じて白滝のお別れ会となりました。ほんとはもっと短い予定だったんですがねぇ…

でもこれにて、紅魔館から移り、舞台は人里、並びに永遠亭へと移ります。
ということで、次回あのキャラクターや皆さんおお待ちかねのこのキャラクターなど、続々登場の予定です。まぁ…あくまで予定ですが(笑)
とはいえ、次の異変もありますしそう長くはなりませんかねぇ…

誤字脱字指摘、感想待ってます。皆さんの感想がトーレのエンジンの燃料となります。
前回のサービスも引き続き行っていますよ!

Dead Space3実況 Part2 → http://www.nicovideo.jp/watch/sm24258685
(part3も投稿してますのでよろしくお願いします)
マインクラフト二人実況 → http://www.nicovideo.jp/watch/sm24518010
(動画主は私ではなく相方です)

お暇があればぜひどうぞ! 米なんかしてくれると嬉しいです!

さて次回ですが、後回しにしていた特別号を投稿しますね。永遠亭ファンのみなさんもうしばらくお待ちください。
次の特別号は…宮古芳香になりますかね。よしかわいい。

では次回をお楽しみに! グッバー!
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