歪魔の体がグニャリと歪んだと思うとクロンの視界から消え去った。と同時に腹部に激痛が走る。視線を落とすと、先ほど大剣によって傷ついたところにナイフが突き刺さっていた。確認後、すぐさまクロンは飛び上がる。どういう攻撃かわからないが全く反応できなかった事実に戦ったことのないタイプの攻撃だと直感した。
「あはは、必死に逃げるんだね」
空を飛ぶクロンの周囲にナイフが次々と飛びかかる。その際も少年の姿は目に映らない。
「なんなんだ、これは」
空中で回転して翼でナイフを叩き落そうとするが、どういう芸当か弾かれるどころかナイフは翼に突き刺さる。高速で移動することで逃れようとするが、あらゆる場所からあらゆる方向からナイフが飛来する。一本一本は大したダメージにはならないが確実にクロンを疲弊させていた。
「ちょこざいんだよ!」
クロンは翼で体を覆うと防御態勢をとる。高速回転しても突き刺さったナイフである。ただ盾とするだけでは容赦なく突き刺さるだろう。しかし、見えない壁に阻まれるように翼に触れることなくナイフは弾かれ大地に降り注ぐ。クロン自身理由はわからないが、あの体勢を防御の意思とともにすることで見えない盾のようなものを作れるのだった。僅か一手。ナイフを乱射するという至極単純な戦法でそんな不確かなものに頼らなければいけないほどに追い込まれていた。
「もう効かねえぞ、こんな玩具は! 出てこい!」
姿を見せない歪魔に向かって声を上げる。すると、グニャリと空間が歪みクロンの真下に姿を現す。
「あはは、凄いや! そんなにナイフ刺さっても死なないなんて頑丈なんだね! じゃあ、もっと強くいくよー」
そう言いたいことだけ言うとグニャリとまた姿を消す。それを見てクロンは舌打ちするとその姿を探すべく視線を走らせる。歪魔が攻撃を始めてから一度もその姿を捉えられていないのだ。森という戦場は隠れやすさからもクロンに不利だった。焦土に変えることも頭に過ぎるが、それは最終手段。実行すれば工匠ではいられないだろう。
「くそ、あんなカスガキじゃ俺の工匠人生終了の対価には見合わねえ」
クロンが毒づいているうちにナイフの投射が始まる。舌打ちとともにクロンはまた翼で体を覆い、盾を展開する。ありとあらゆる方向からナイフは襲いかかるが、すべて翼に届くことなく地に落下する。しかし、突如クロンの全身にドゴッという爆撃音とともに衝撃が襲う。
「ガハッ」
その一撃はクロンの防御態勢を解かせる。ならば当然、ナイフは防げない。態勢の崩れたクロンにナイフが殺到する。いくつかナイフに身を裂かれながらも急降下して被害を押しとどめる。その際も歪魔の姿を探すが見つからない。
「姿を見えなくする能力に念動力……違うか、あの感じからすると転移」
相手の能力の凶悪性に唇を噛む。今の衝撃で歪魔には防御を貫く強力な攻撃があることも発覚した。ならば引きこもり、接近のチャンスを窺うこともできない。となればクロンが打てる手は二つ。森を焦土に変えて敵を丸裸にするか、丸裸になる覚悟でナイフの攻撃をかいくぐりかくれんぼを制するか。高速で飛行しながらも体は徐々にナイフにより消耗していく。
「二つ、リスクを被るが子供の遊びにつきやってやるか」
立ち止まり、目を閉じ、イメージする。自分の体を自分よりも大きな竜の咢で飲み込む。飲み込んだ先にあるのは胃。炎竜の胃。今自分の周囲は炎竜の胃そのもの。その中に自分は居る。紅蓮のブレスを生み出す胃の中は当然紅蓮に満たされている。万物を飲み込む炎。食べ物だけではない、敵もこの身もなんであろうが焼き尽くす。目を見開くとともに咆哮する。
「あああああああぁぁああああ、纏え纏え纏え纏え纏え纏え纏え、この身を焼くかの様に! 鎧よりも空気よりも密接に! 隙間なく、揺るがなく覆い尽くせ! 炎の鱗よ!」
最後にイメージを口に出すことでイメージをさらに強める。こうすることでかつて偶然できたものを再現する。炎の鱗、クロンのイメージではそうなっていたが、実際に具現したものは鱗と呼べたものではない。まるでクロンの体自体が炎に変わったかの様に隙間ない炎の塊と化していた。クロンの顔も判別できない。人型の炎の塊に翼と尾の形の炎の塊がくっついているようなモノだった。突き刺さっていたナイフを焼き尽くし殺到するナイフも体に届く前にその形を奪われる。一瞬ナイフがやんだかと思われた瞬間、純粋な魔力が練られた弾丸が高速で着弾する。しかし、僅かも炎の塊は揺るがない。その様を隠れて見ていた歪魔の少年は舌を巻いた。
「なにあれ、顔も見えないし気持ち悪い。全身覆うとか普通顔は外出しとくもんだよ。技は見た目も大事だよ」
先ほどの魔力弾はクロンの防護壁を打ち破ったものだったが、微塵も効果がない。ナイフもどの角度から投げても燃料を投げているようなものだった。さて、どうしようかと少年は考え込む。少年にはあの炎の上からクロンにダメージを与える術がなかった。少年を探して飛び回るクロンを眺めていた少年は何かに気づいたように一瞬無表情になると、ニターっと笑みを作る。
「居ねえな、くそ」
やはり焦土にするべきだったかとクロンが後悔し始めたとき突如としてクロンの背後に歪魔は姿を現す。そして、接近状態からナイフを投げつける。だが、いくら勢いが増そうとナイフはクロンの肌に到達するまで形を保てない。クロンは振り向き腕を伸ばす。それを僅かに下がって歪魔は回避するとナイフを投擲しながら徐々に後退していく。
「無駄だ!」
ナイフを気にせずクロンは突撃する。振るう豪炎の腕を器用に避けながら歪魔は無駄な攻撃を続ける。かくれんぼから鬼ごっこに変わったが、クロンは誤算に気づく。転移を抜いても歪魔の方が早い。直線の最高速度ではクロンが勝るかもしれないが、一つ一つの動作のスピードが比べ物にならない。クロンが腕を歪魔に向けて突き出すうちに歪魔は横に滑るように回避してナイフを投げつけ、バックステップ、これらをたやすくやってのけていた。
「鬼さん、こちら。あはは、手の鳴る方へ」
実際に回避しながら両手を叩いてみせる歪魔に苛立ちながら尾や翼も使って攻撃を繰り返すが、異様な動きと圧倒的な速度で回避される。突き出した腕をリンボーダンスのようにのけぞって避けたかと思うと、その隙をついて尾を横から叩きつければ横にずれて背筋を伸ばしてから縄跳びのように跳んでかわす。そんなありえない速度の差をクロンは思い知らされていた。仰け反った態勢からそのまま飛び跳ねるというなら驚異的なバランスに驚くだろうがまだ理解できる。だが、腕と尾、連動して行った攻撃に対して向こうは回避、態勢を立て直す、回避の三動作をやってのける。こちらの攻撃は向こうを追い詰めてすらいない。その事実が重たくのしかかった。炎の鱗を形成していなければいまごろ急所を刺されて死んでいただろう。
「何!?」
攻勢に出ていたクロンの腹部に痛みが走る。突き刺さったナイフは瞬時に覆われた炎に消滅させられるが、確かに皮膚へと届いていた。
「どういうことだ……」
今の攻撃がいままでナイフの攻撃を防いでいた炎の鱗を貫通するほどの攻撃とは思えない。反撃しながらも次々と鱗の奥の体に攻撃が突き刺さる。
「ガアァ!」
「ははは、不思議? 不思議だよね。でもおじさんのその炎、おじさんが早く動けば動くほど揺らぎが大きくなるんだ。揺らぐってことは防御にも揺らぎができるってことだよね? あはは」
笑いながらクロンの技の弱点を指摘する歪魔にクロンは戦慄する。その眼力に驚いたのではない。この歪魔はあの回避をしながらクロンの炎の揺らぎを観察する余裕があったということだ。クロンはこのままでは一度も触れることもできずに敗北することを悟った。度重なるダメージで体もそう長くはもたない。そもそもこの竜の鱗は長時間維持できるものでもない。動きを止め、思考を巡らす。戦いで思考を巡らすなど何時振り、いや初めてかもしれなかった。いつもはそんな理性は残っていないのだ。だがなぜか今日は幸か不幸かずっと理性を保ったままでいられた。
「あれ? 鬼ごっこは終わり? 缶蹴りかな? 何秒待てばいいのかな?」
立ち止まられては炎の揺らぎができないからか、立ち止まるクロンの周りを攻撃しないで回り始める。
「いいや、鬼ごっこ継続だ。俺が触れれば終わりだから気をつけろよ?」
そう呼びかけると両腕を覆う炎が無くなる。そして、両腕の傷だらけの肌が露わになる。
「うっわ、いったそー」
「そーでもない。これからお前が味わうものには負けるよ」
「何言ってるの、おじさん。僕にはおじさんみたいなのろまな攻撃はあたらないよ、あはは」
歪魔は腹を押さえて背を大地につけて笑い転げる。信じがたいことにこの状態でもクロンの攻撃を回避できる自信があるのだろう。
「じゃあ、行くぜ」
後方にクロンは飛び上がると両手の前に火球を作り、連続で放り続ける。それを、寝そべった体勢から側転やら逆立ちやらしながら余裕綽々で回避していた歪魔も爆風で視界が悪くなったことで、クロンの頭上に転移して火球を放り続ける両腕にナイフを投擲する。クロンの両腕から血飛沫が上がるとそれでやっと居場所が分かったのか炎に覆われた表情のわからない顔を頭上の少年に向ける。
「あはは、遅い遅い!」
両腕の痛みと攻撃途中だったからか、腕を前に向けたままで反撃に移れないクロンに二射目を放つ。そして、さらにあがるであろう血飛沫を想像して口を歪める。少年は知識として竜の特性を知っていたからそれを最初はかなり警戒していた。だが、クロンが物理攻撃に拘ったことと、クロンの顔が炎で覆われていたからその表情を読めなかったせいですっかり忘れてしまっていた。竜の真骨頂とは何か、炎に覆われた中でクロンの口が大きく開かれている可能性など全く考えていなかった。
「え?」
一瞬年相応の無邪気な表情が歪魔に張り付く。驚愕は命を繋ぐ一コンマを奪い、その身を紅蓮の放流の中にとりのこした。クロンの口から発せられた豪炎とともに空に打ち上げられる。全身を焼く痛みと 炎の勢いにより頭が真っ白になる。
「ぎゃう……ああああああ!」
歪魔の特性である存在するだけで空間を歪ませることが対魔力として働き、即死を免れブレスから泳ぐようにして抜け出す。しかし、圧倒的なスピードを最初から持っていたが故に、攻撃に当たることなどなかった少年は痛みに耐性がなく、ブレスから抜けた後頭が真っ白になり何もできずに落下していた。
「言葉まだわかるなら、歯ぁくいしばれ!」
全速力で移動してきたせいで炎の鱗が胴体以外無くなったクロンが一度少年の隣で静止すると、拳を握る。そして、下から腹部を殴り更なる上空へと打ち上げた。
「あづ、がふぁ……」
そして完全に歪魔の少年は意識を手放した。
「首謀者は?」
戦闘が終わり、一番近くにいた人間から服を強奪したクロンはそれを身に纏い腕を組み、密猟者の拠点で転がっていたジフカを尾で叩き起こし問いかける。
「ゴホ、ゴホ、怪我人に酷い仕打ちだぜ」
「なに? 文句あんの?」
「い、いや殺されてねえだけめっけもんだからな。文句はねえ」
疲労からか異様なまでに機嫌が悪いクロンから後ずさりながらジフカは拠点の奥の倉庫のようなところを顎でしゃくる。
「奥で縮こまっているのがそうだ」
暗い倉庫で荷物に隠れるようにして蹲っているきれいな身なりをした小男にクロンは視線を一瞬向けるとすぐにジフカに視線を戻す。
「嘘だったら容赦なく次は一手目からブレス叩き込むからそのつもりでいろ。訂正すんなら今だぞ」
「ハッ! 依頼人なんか庇うわきゃねえだろ。別に誇りとか無えんだからよ」
「さよか」
是非以外は興味なさげに淡白に返答するとクロンはツカツカと商人に歩み寄り、片手で首根っこを掴んで持ち上げる。
「ヒイ!」
「おい、動くな、喋るな。爪刺さるぞ」
淡々と話すクロンに顔を真っ青にして商人は動きを止める。事実、商人が呼吸するたびに鋭い爪が肉を引き裂きそうになる。それ以上大きな動きをすれば警告通りその爪は商人の命を削るだろう。
「俺らは逃がしてくれるっていう解釈でいいのか?」
ジフカは一度周りを見渡してからクロンに尋ねる。その視線を追ってみれば、いつの間にか戦った三人も含めて数十名の人間が周りに集まって不安げな眼を向けていた。もっとも大剣を持っていた男だけは気絶したままで他の人間に担がれていたが。クロンはそれらを視線で一周すると深く溜息を吐いた。
「まあ、いいんじゃね? 正直どーでもいいわー。もう頭痛いし腹痛いし全身痛いし気持ち悪いし疲れたし帰りたい」
「そりゃ、ありがてえことだ。俺はジフカ。まあ、一応名前覚えといてくれよ。それとユイドラの討伐隊組織もそれとなく妨害してくれるとありがたいんだけどな」
「はいはい、言っとく言っとく」
その言葉に四方から歓声が上がる。クロンはこいつらなに盛り上がってんの、と落ちてくる瞼と戦いながら呆れる。そしてジフカという名前を何度か頭の中で復唱するがどうもしっくりこない。それにもう会わないだろうと考えて覚えることを諦めた。
「これでみんな助かるってわけね。ありがとね、私は」
「あ、別にいいよ。自己紹介とかどーせ覚える気ないし」
「ちょっと!?」
とにかくもう家にクロンは帰りたかった。まだユイドラに帰っても工匠会に商人を連行しなければいけないのだ。その際またいろいろと言われるに決まっている。そう考えるとただでさえ疲れているのに更に疲れがどっと押し寄せてきた。
「女の子の自己紹介遮るのはどうなのよ!? それでも男?」
「いや、だってあんたさっき俺をガチで殺しに来たじゃん。女性としては見れないだろ、普通」
地団駄踏んで騒ぐ双剣を持つ女性を無視してクロンは視線を巡らすと魔術師風の男に目が留まる。途端、魔術師だけはダメージを受けずに戦闘を終えたことを思い出し思わず食って掛かる。
「おい、てめえ! さっきピンピンしてたんだから手を貸してくれてもよかったんじゃないか?」
「無茶言わないでくれ。あんな人外の戦いで私のような人間に何が出来る。そもそもあの時点で君に味方する理由がない」
「何だと? お前だけロサナ様に会ってく?」
「ちょっと無視しないでよ!」
いきり立つ女性に一度視線を向けるがそのまま通過してジフカに向き直る。
「じゃあ、帰るわ。まあ、元気でな。二度と会わないと思うけど」
そう言うとクロンは顔を真っ青にした商人と焦げあがったまま伸びている歪魔を担いで背を向ける。
「おう、そいつも工匠会につきだすのか?」
「うんにゃ、こいつには聞きたいことがあるんでしばらく飼うつもり」
「そーかい。まあ達者でな。二度と会いたくねえけど」
「ねえったら! 無視しないでよ」
「色々大変だろうが頑張ってくれ」
三人から別れの挨拶を受けて空によろよろと飛び立つ。もう霊悔の森には絶対来ないと誓って。
「わかりました。その商人は預かります。よくぞやってくれました。あなたには追って褒賞が届くでしょう」
「ありがとうございます」
ユイドラに帰ったクロンは歪魔を自分の工房に放り投げてから、すぐさま領主ロサナ・レビエラの居る領主館に向かった。そこで商人を引き渡し、報告を終えたところだった。
「今回の件には工匠会にも落ち度があります。そのせいで貴方に随分と負担を強いました。申し訳ありません」
「へ? いやいや! なんてことないです。やめてください、俺なんか低階級の工匠にそんな」
「なにか求める褒賞はありますか? 出来うる限り応えますが」
「じゃあ、ユイドラ鉱脈の」
「ダメです」
「……解禁を……なんて」
出来うる限り応えると聞いて意気揚々と望みを伝えようとしたら言い終わる間もなく断られる。どうやらユイドラ鉱脈の解禁はどうしても出来ないことらしい。
「じゃあ、お金でいいです。次点は武器以外ならなんでも」
「わかりました。善処します」
「そういえば、もうすぐ工匠試験ですよね? 俺が試験官は」
「無理です」
「あ、はい」
またしてもきっぱり断られて頭を垂れる。
「貴方には期待しています。ユイドラの発展にきっと貢献してくれると。頑張りなさい」
「はい、がんばります。あ! そうだ密猟者に追手ってつけるんですか?」
「いいえ、首謀者は捕えましたしそのつもりはありませんが?」
「じゃあ、いいです。では、失礼します」
そのままクロンは踵を返し、領主の館を後にする。ロサナ・レビエラ、ユイドラの領主にして凄腕の工匠である。クロンが工匠になる際は随分と力を尽くしてくれた。無論それはクロンのためというわけではなくユイドラの発展のためなのだろうが、クロンはそれなりに感謝していた。銀髪の貴婦人といった容姿でありメルヘンリミッタという娘もいるらしい。クロンは会ったことはないがロサナ譲りの綺麗な銀髪の美少女なのだろうと容易に予想できた。もっとも、クロンは領主の家族関係などまったく興味はなかった。とにかく言えることは、ロサナ・レビエラはクロンを差別しない数少ない人物の一人ということだった。
領主の館から出てさっさと自分の家に向かう。閑散とした店内には一人ポツンとアリトが立っていた。
「あれ? レグナーは?」
「さっき帰りましたよ。これ、問題点らしいです」
「どうしたらいいじゃなくてここがダメとしか書いてないところがいやらしいな」
アリトから受け取ったメモの束にはびっしりと文字が書き連ねてあった。密猟者がこっちに来た様子はないので暇だったのだろう。サラッと目を通した後にクロンはうへえと声が漏れる。そんないつも通りの様子のクロンを見て、アリトは呆れる。
「というか当然のように普通に帰ってきますね」
「まあな。じゃ、俺しばらく引きこもるから!」
「え!?」
突然のクロンの告白に戸惑うアリト。そんなアリトを無視してクロンは奥へと引っ込んでいた。これから連れてきた歪魔のことなどいろいろあるが、もう休みたかったのだった。
「気持ち悪い……頭痛い」
人を殴ったせいで異様に疲れていた。クロンには歪魔の少年も人間臭かったからか異様なまでに殴ることに抵抗があった。未だに日本の教育で培ったものは吹っ切れたつもりになっても残っているらしい。高揚していれば関係ないのだが冷静な時は終わった後に殴った時の映像がフラッシュバックして気分が沈む、吐き気のおまけ付きで。つまり、戦闘が終わってから歪魔やらおっさんやらが殴られ吹き飛んでいく様が定期的に思い出されるせいで非常に気分が悪かった、しばらく外にもう出ないと誓ってクロンは眠りについた。
序章終了。本作的にも原作的にも本編入ります