魔王討伐後の恋する乙女なアクア様   作:クロワッサンチョコ

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お待たせしました。
前回、前々回の評価、感想、誤字指摘ありがとうございます。
これからも更新速度は遅いですが、細々と投稿していこうと思います。


続々・魔王討伐後の恋する乙女なアクア様

アクアが引きこもった。

 

引きこもったと言ってもまだ一日も経っていないのだが。

 

「で、どうしてアクアが泣いて引きこもったのか聞こうじゃないか」

「あそこまで死んだ目をしたアクアを見たのは初めてだったぞ。言い訳はあるんだろうな?」

 

そして、俺はというと現在正座で事情聴取中。

 

アクアが酒場から泣いて逃げ出した後、ほろ酔い気分で屋敷に帰ってきた俺は、アクアを泣かせたと勘違いしてガチギレしためぐみんとダクネスによって叩き出された。

 

反撃しようとも思わないくらい怖かった。本当に怖かった。あそこまでキレた二人を見たのは初めてだった。

 

だが、よく考えたら勘違いで人を一晩中外に放り出すとはどういうことなのか。今回こちらには全く非はないというのに、勝手に決めつけやがって。

というか普段の行いを考えれば俺がそんな事をするはずがないとすぐわかるはずなのに、何故そうすぐに人を疑うのか。

 

そうだ、今回は俺は全く悪くないのだ。

俺は意を決して、逸らしていた目線を合わせて二人へと反撃する。

 

 

「お前ら俺が悪いと思ってんの?言っとくけど俺はアクセルの勇者カズマさんだよ?悪い事するように見える?……な、なんだよその目は!お、俺は今回悪くねーぞ!……まぁ取り敢えず聞けよ…………すみません、どうか聞きいてください」

 

二人からゴミをみるような目で見られ、堪らず土下座を敢行する。

 

 

あれ、俺ってこんなに弱かったっけ。

俺これでも魔王倒した勇者だよね?なんで女の子二人相手にビビってるの?

 

プライドの欠片もない土下座に毒気を抜かれたのか、顔を上げると二人はいつもの雰囲気に戻っていた。

どうやら話を聞いてくれるらしい。

 

 

「……まぁ、そうですよね。いくらカズマでもそこまでひどくはないはずです…………多分」

「……そうだな、カズマにも少しは優しさというものがあるはずだ…………多分」

 

おい、こっち見て話せよ。

 

 

 

 

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事情を説明し終えると、二人は申し訳なさそうに俺に謝ってきた。

 

「すみません、てっきり私はやってきたアクアをペット扱いして寝床から追い払ったのかと……」

「ああ、私はアクアの好意を信じずに罠だと思い込んでギルドに言いふらしたのかと思ったぞ……」

「いくら俺でもそこまではしねぇよ!」

 

しそうになったけど。

 

そうして仲間からの信頼の低さに悲しむ中、めぐみんが意外そうに話しかけてきた。

 

「というか、カズマがあっさりデレるなんて思ってもみませんでした。もっといつものようにツンデレっぷりを発揮するのかと思いましたよ」

「ぶっ飛ばすぞ」

 

それを聞いたダクネスがうんうんと頷き

 

「それにアクアもアクアでそこまで初だとは、なんだか意外だな。なんというかもっとこう、おおっぴらな感じだと思っていたんだが」

「キス程度で顔真っ赤になるお前が言うな」

「!?」

 

カウンターを喰らって両手で顔を覆い震えるダクネスから視線をめぐみんに移し

 

「なぁ、アクアはまだ出てこないのか?アイツに説明してもらわないと明日からギルドのみんなにどんな顔して会えばいいのかわかんないんだけど。てか噂を聞きつけたアクシズ教徒に殺されそうなんだけど……」

「いくらアクシズ教徒でもそこまでは……いえ、やりそうな気が……?ま、まあ、それよりもアクアです!食事の時間になっても降りてこないのですよ。いつものアクアなら何があっても食事の時には全て忘れているはずなんですが」

 

お前は女神様をなんだと思ってるんだ。いや確かにあってるし俺もそういう認識だけれども。

 

「まぁ、そういう事情があったなら仕方ありませんね。では、アクアに外に出るように説得してきてくれませんか?私達では何を言っても聞いてくれませんでしたし、事情が事情なのでカズマが適任でしょう」

「……わかった」

 

 

立ち上がった俺は、アクアの部屋がある二階へと向かう。

笑顔で見送ってくれる二人だが、正直、真正面から向き合えない。

 

なぜなら魔王を倒す前、本気の告白をしてきたダクネスを振り、めぐみんとは凄いことをするという約束もしたのに、すぐに流されてしまって合わす顔がないからだ。

 

俺だって、二人の気持ちを蔑ろにしてアクアに迫ったわけじゃない。

これは完全に言い訳になるが、アクアを異性として見るようになると、あそこまで歯止めがきかなくなるとは、自分でも予想外だったのだ。

 

俺は、一体どうしたらいいのだろうか。

もちろん、ハーレムをつくれる甲斐性なんてない。

 

やはり、こういったことは三人に一度相談した方が―――――。

 

「…………ついたか」

 

考えているうちに、いつの間にかアクアの部屋の前についていた。

 

そうだ、とりあえずアクアを部屋から出さないと話にならない。

まずは目先の問題からだ。これは決して逃げてるわけじゃない。

 

俺はドアにノックをしてアクアに呼びかけた。

 

「おーいアクアー。出てこーい」

 

…………。

 

へんじがない。ただのひきこもりのようだ。

 

 

「おい、いるんだろ。出てこいよ。みんな心配してるんだぞ」

『…………嫌』

 

返事が返ってきたと思ったらたったの二文字。

こいつ、そんなに落ち込んでるのか。

 

「そんな事言ってないでさっさと出てこい。ほら、飯食べるぞ」

『…………もうお外にいけない』

 

いやお前のせいで俺も出れないんですけど。

 

……ここは一つ、モノで釣ってみるか。

いや、いくらコイツが馬鹿でも流石にこんな初歩的な罠にはかからないだろうけれど、一応やってみよう。

 

「めぐみんとダクネスには事情を話したからさ、とりあえず下に行こうぜ?お前のためにわざわざ高級酒まで買ってきたんだからな」

『ほんと!?待っててね、すぐ着替え………あ』

 

 

 

おい。

 

 

 

「お前なめてんのか!お前のせいで俺は恥ずかしくて外も出歩けねーんだよ!ムダに心配かけさせやがって、モノに釣られくらいならとっとと出てこい!引きこもったフリなんてしてんじゃねー!」

 

本当はそこまで落ち込んでいなかった事にに気づいた俺は、さっきまでと打って変わって借金取りの様にばんばんドアを叩く。

 

『いやー!嫌よ!というかなんでヒキニートのカズマに外に出ろとか言われないといけないのよ!』

 

ドアを無理やり開こうとするも、向こうから強い力で押さえつけられていてどうにも開きそうにない。

こいつ!さっきまで真剣に悩んでいた俺の気も知らないで……!

 

「ふざけんな!今は別にニートじゃねぇし!魔王を倒してお務め果たしたからやる事がないだけだ!というか俺の事をニート呼ばわりする癖にお前だってすぐに怠けるわ冬は暖炉から一歩も動かないわで俺を馬鹿にできないくらいヒキニート体質だろうが!」

『ああー!女神に向かってヒキニート体質とか言った!謝って!女神にヒキニートとか言ったことを謝って!それに落ち込んでたのは嘘じゃないのに!さっき喜んだのは、モノに釣られたんじゃなくて、カズマさんが私の事を心配してプレゼントを買ってきてくれた事が嬉しくてつい………ってわああああああ!今のナシ!アンタ私に何言わせてんの!?バカなの、ねぇバカなの!?もうやだ!実家に帰らせていただきます!』

「何ひとりで漫才してんだ!いいから開けろ!この!」

 

くそ!ビクともしない!

こんな時は自分の低いステータスが本当に憎らしい。

 

「ていうか何で俺が悪いみたいになってんだよ!勝手に自爆して引きこもったお前が悪い……おい待て、そういや最後なんつった!?実家って……お前まさか!」

 

嫌な予感を覚えた俺は、ドアが壊れるのも構わず、ウィンドブレスで吹き飛ばした。

 

すると、中はもぬけの殻。

 

 

「やっぱり!アイツ天界に逃げやがったな!」

 

 

 

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私の名はエリス。この世界でモンスターと戦い、惜しくも命を落とした方々を導く存在。

今日も、何人もの冒険者を新たな人生へと案内したところだ。

 

人が死ぬのは人生において基本的に一度きり。

なので、ここに来る人達とは殆どが初対面で、そして二度と会うことは無い。

 

なのだが……

 

「あの……先輩。そんなに簡単に遊びにこないでください……」

 

目の前には、私の先輩である水の女神アクアが椅子に腰掛けている。

魔王を討伐して以降、天界に帰ってくることが認められた先輩は天界と下界を自由に行き来できるようになり、この場所にも簡単に来れるようになった。

しかし、ここは死者の魂を扱う厳格な場所。他の神々ですら余程の事情がない限り来ないもの。

まったく、お仲間のカズマさんといい、ここは遊び場ではないというのにどうして気軽にきてしまうのだろうか。

 

この前のカズマさんは、ハーレム発言で追い出されたからここに来るという、何とも微妙な理由で遊びにこられたのだが、一体先輩はどうしたのか。

 

そうやって私が悩んでいると、いつもと比べてどことなく元気のなさそうな先輩が、理由を話し始めた。

 

「……ごめんね?私もあんまり来ちゃダメなのはわかっているんだけど、カズマさんから逃げるにはもうこれしか方法がなかったの。少しだけここにいさせて?」

「それは構いませんが、一体何があったのですか?先輩がここに来る以外逃げ道がなかったなんて余程の事だと思うのですが……」

 

困り顔で頼んでくる先輩はいつになく珍しく、つい興味が湧いて深く聞いてしまった。

すると、

 

「私もちょうどエリスに聞いて欲しいかった事があるの。ここに来たのはそれも目的の一つだもの」

 

意外な事に、先輩は逆に聞いて欲しいと言ってきた。

てっきり怒られると思っていたので、驚きと同時に自分が頼られている事を感じ、なんだか嬉しく思う。

 

「構いませんよ。私で力になれるのなら、喜んでお聞きします!」

 

私が聞く姿勢にはいると、先輩は下を向いてモゴモゴと小声で話し始めた。

 

「えっと……エリスに聞いて欲しいのは、その、カズマさんの事なんだけど……」

「すみません、できればもう少し大きめの声で喋って頂かないと聞き取りにくいのですが……」

「えっ!?……うぅ……エリスのいじわる!」

 

私がそう言うと、先輩は耳を真っ赤にしながら睨んできた。

意地悪をするつもりなどなかったのだが、どうやら先輩がこれから話すのは余程恥ずかしい事らしい。

 

覚悟を決めた先輩は、涙目になりながらも先程より大きな声で話し始めた。

 

「実はね、私ね、カズマさんの事、最近す、好きだなぁって思ったりしてね?……あ!べ、別に私からそう思ったわけじゃなくて、この前からカズマさんが私にアタックしてくるから、多少揺らいでるだけなんだけどね!?」

 

そう言って、どこかの勇者様のようなツンデレを発揮する先輩。

どうやら、話したい事というのはカズマさんに対する自分の気持ちの事だったらしい。

 

「ふふ、カズマさんたら女神に迫ろうだなんてとんだ罰当たりよね!慈悲深い私じゃなかったら天罰を食らわしてるとこだわ!まったく、今度迫ってきた時はどうしてやろうかしら!」

 

ものすごく嬉しそうな顔で報告してくる先輩にどう反応するか困るが、他の人にこんな言い方をして傷が広がる前にここは正直に言った方がいいだろう。

 

「あの……すみません先輩。実は私、この前下界を覗いた時に嬉しそうにカズマさんの寝床に向かう先輩を見てしまったんです……」

「えっ」

 

私の台詞を聞いて固まる先輩。

 

「それに、この前カズマさんが来た時に先輩がハーレム発言に嫉妬していたと仰っていたので、先輩がカズマさんに恋愛感情を抱いているのは既に知って………っ!?わ、わあっ!?先輩、掴みかかってこないで下さい!パッドを取ろうとしないでください!!や、やめてぇ!」

「わああああああ!!エリスのバカ!エリスのバカあああああああ!!」

 

 

 

 

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「…………もう、いじわるしない?」

「元から意地悪なんてするつもりはありませんよ!……でも得意げな先輩が可愛らしくてつい……って嘘です!今のは冗談ですので私の胸に向かって手を伸ばさないでください!」

 

あの後拗ねた先輩の機嫌を直すのはかなり大変だった。

余程恥ずかしかったのだろう。

 

「まったく、みんなして私のことからかうんだから……もうこの際ぶっちゃけるわよ。私はカズマの事がす、好きよ!……それで話はそれちゃったけど、エリスに相談したいことっていうのはね」

 

そう言って佇まいを直し、真剣な表情になった先輩は

 

 

 

「私って、カズマと一緒の人生を歩めると思う?」

 

 

少し、悲しそうな雰囲気を漂わせながら問いかけてきた。

一緒の人生。というと神の身である先輩が、人であるカズマさんと寄り添えるのかという事だろうか。

 

「……そう、ですね。昔の神話などに登場する神々の中には人と結ばれた御方もいるらしいです。ですので、本人達の気持ち次第だと私は思いますが……」

 

私は恋愛をした事がまだないので、前例を語る事しかできないしかないのだが、前例と照らし合わせると可能ではあるはず。

更に、カズマさんは魔王を倒した勇者で、生きる伝説となってもおかしくない人。神と結ばれる資格は十分にあると思う。

 

しかし、先輩は首を振り。

 

「違うの。気持ち的な問題じゃないのよ。私はもう何があってもカズマの側を離れるつもりは無いわ。でも、私達神と違って人はすぐに歳をとってしまうものでしょう?今は馬鹿なことやってるカズマさんでも、いつかは大人になって、年老いて、死んでしまうの。カズマさんだけじゃないわ。めぐみんもダクネスも、私の大切な仲間は、百年後にはみんないなくなってしまうの……」

 

寿命。それは誰もが抗えない運命で、それは私達でも勝手に変えることは出来ないもの。

 

なおも先輩は続ける。

 

「だから、今こうやって楽しく過ごせてる毎日も、時間が経てば、私は、一人になって……グスッ……せっかく、大切な仲間と、好きな人を見つける事ができたのに……わ、わたし……それが、こわ、くて……う、うぅぅ……」

 

私は、途中で涙を零し始めた先輩を抱きしめた。

胸の中で泣く先輩は、いつものいざと言う時は頼りになる先輩と違って、か弱い普通の女の子に見える。

 

「先輩。残念ですがそれはどうにもできません」

「ッ!」

 

私は、残酷だと思いながらも事実を告げた。

 

「先輩だけじゃなくて、カズマさんも、めぐみんさんも、ダクネスも、きっと先輩とずっと一緒にいたいと思っているはずです。でも、その夢は叶えられません。寿命は、誰にだってどうしようもできないものなんです」

「……………」

「ですので、せめて、一緒にいられる時間を精一杯楽しんで下さい。私にはそれしか言えません」

「…………そう、よね」

 

自分でも酷いことを言っていると思う。

けれど、これはいつか先輩が受け入れないといけない事なのだ。

 

暫く泣いた後、先輩は顔を上げ私から離れた。

 

「……すみません、私なんかが、偉そうなことを言ってしまって……」

「ううん。ありがとう、エリス。アンタのおかげでスッキリできたわ。そうよね、いくらなんでもさっきのは我が儘過ぎたわよね」

 

目元を赤く腫らしながら笑顔を浮かべる先輩に、何もしてあげられない事がとても悔しい。

 

自分は、少しでも力になれただろうか。

 

「あの……私に出来ることがあれば……」

「……じゃあ、もう少しここにいさせて?今、カズマ達に会ったら泣いちゃいそうだから、ここで気持ちの整理をさせて欲しいの」

「……は、はい!やっぱり先輩には笑顔が似合いますよ!私も、先輩が笑顔でいられるように天界からさりげなくお手伝いを」

「ちーっす!エリスさまー!ウチの駄女神を迎えに来ましたー!」

「「えっ」」

 

 

 

突然の声に驚いた私達が後ろを振り返ると、そこには最悪のタイミングでテレポートをして来たカズマさんがいた。

 

 

「…………ぅ!……ぁぅ……ぇ……!」

「か、カズマさん!もう、どうして来たんですか!」

「えっ!?なんで!?どうしていきなり怒られてるんですか!?俺、気づかないうちにエリス様にまたセクハラでもしましたっけ!?」

「さ、されてません!そうじゃなくてですね、何とも間が悪いと言いますか、さっきまで私と先輩は貴方について………先輩?」

「ん?おいアクア、一体どうし」

「わあああああああああ!!!かじゅましゃん!かじゅましゃああああん!!!」

 

突然のカズマさんの登場に、わなわなと震えていた先輩は、我慢出来なくなったのか、再び泣きながらカズマさんに抱きついた。

 

「う、うおっ!?お前急にどうしたんだよ!?」

「カズマさん!カズマさん!私、もう絶対にカズマさんから離れたりしないからね!カズマさんがどこに行ってもずっとついて行くからねっ?ねっ?」

「家出したと思ったらストーカーみたいになって帰ってくんなよ!こ、こらっ!とりあえず離せ、このバカ!」

「いやー!離すとカズマさんが何処かに行っちゃうかもしれないんだもん!」

「何言ってんだかお前!い、今更お前捨てて何処かに行くわけねーだろうが!ほら!離せ!」

「え……あ……うん……えへへ……」

 

なんだろう、ここは私の居場所のはずなのに凄く居づらいのはなんだろう。

 

「ったく……すみません、エリス様。コイツがお世話になりました。後でエリス様の邪魔をしないようにこっぴどく叱っておきますんで」

 

そのセリフはカズマさんが言えたことなのだろうか……

先輩の頭を無理やり下げさせるカズマさんに対し、苦笑を浮かべる。

しかし、いつ見てもこのお二方の仲の良さには敵わないな、と思い知らされる。

それに

 

「おいアクア。別にテレポートには腕を組む必要なんてないんだぞ。はやくほど……ほど……やっぱり解かなくていいです」

「ふふん、ようやくカズマも素直になってきたわね」

 

カズマさんの反応を見ていると、先輩にはこの先何十年も明るい未来が待っているのがひと目でわかる。

この人に任せておけば、きっと先輩は別れの時が来たとしても、悔いの残らない日々を送れることだろう。

 

テレポートの準備をし始めた二人に向け

 

「それではカズマさん、先輩、いってらっしゃいませ。そして―――」

 

 

二人に私に出来ることはただ一つ。

 

 

それは幸運の女神として、二人の幸せを願うこと。

 

 

私は彼に手をかざし、心の底からの祈りを捧げた――!

 

 

 

 

「『祝福を!』」


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