諸行有常記   作:sakeu

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第41話 別離の日の青年

 

「イデッ……」

「大丈夫なの?」

「ハハ……大丈夫に決まってんだろ……」

 

ふらっ……ガシッ

 

「全然、大丈夫じゃないじゃん……」

「寝れば治るさ……」

「何言ってんのよ……しこたま攻撃喰らっといてよく言うわよ。ほら、肩を貸すから、ね?蓮子も手伝って」

「分かったわ」

 

 

 

 

 

「それにしても、よく場所が分かったわね」

「ああ……それはだな……俺のあげたネックレスにちと細工させてもらっただけだ」

「そう……ありがと」

「いいってことよ」

「でも、本当に大丈夫なの?」

「さすがに金属バットは効いたかなぁ……あの時は星がみえた……」

「あんた……人間なのかしら?」

「さぁ……俺も分からなくなってきた……でも、俺っていうことには変わらねーだろ?」

「そうね」

「そういえば思ったのだけど」

「何?メリー」

「貴方が使ってる霊力っていうのは私達も使えるのかしら?」

「使えないことは無いだろうけど……それが?」

「いいえ……少し興味を持っただけよ」

 

 

「……と話してたら着いたわね」

「ほら、あと少しよ」

「ん?ああ……」

「段差に気を付けなさいよ」

「了解」

「とりあえず、血をどうにかね……」

「風呂入ってくる」

「お湯で洗っちゃダメだからね!」

「分かってる」

 

「ふぅー……今日は色々あったわね……」

 

デートのつもりがこんなことになるなんて……でも、勇人が助けに来てくれたからいいか。

 

「で、蓮子 今日はどうだった?」

「え?な、何が?」

「その調子だと言ってないわね……彼、明日には居なくなるのでしょう?しっかり伝えなきゃ、絶対 後悔するわよ」

「わ、分かってる……色々あったもんだから……」

「そうね……でも、さすがにこれであいつは懲りたでしょ」

「完膚なきまでに叩きのめされたからね」

「本当に彼って面白いわよね……空も飛んだし……」

「え?本当に空飛んだの?」

「ええ、すごかったわね」

「本当にあいつは人間なのかしら?」

「でも、彼ということには変わりないでしょう?」

「そうね……あいつだから、いいのよね」

「よし、私はお邪魔になるだろうし帰らせてもらうわ ……あ、貴女に伝えることが……」

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

「く、ク〜〜……し、しみる……冷たいし……」

 

頭の傷どうなるかな……ハゲにはなりたく無いな……それにしても……俺の体、頑丈過ぎないか?俺もこっちの世界の人間じゃ無いのか……

 

「うわ…….ひっでー顔だな」

 

唇の端は青くなってるし、額にまで傷がついてる。口ん中も切れてるようだ……口内炎になりそうだな……痛いんだよな……口内炎……

 

「もう、流したー?」

「おお、もう上がるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわー……ひどい顔してるわよ」

「ひどいのは顔じゃ無い、疲れだ」

「それはいいとして、私が処置してあげるから、こっち来なさい」

「了解」

 

「イデッ、もう少し優しく……」

「男ならそれくらい我慢しなさい」

「そう イデッ 言われても イデッ 痛いもんは イデッ 痛いんだよ」

「はい、完了っと」

「ありがとな」

「どういたしまして、あ、そうだ、これ」

「ん?俺にか?」

「そうよ、あんたって誕生日は5月でしょ?だから、エメラルドのネックレス」

「え!?エメラルド?高くなかったか?」

「大丈夫、大丈夫!ほら、つけてよ」

「おう、に、似合うか……?」

「いいじゃない、さすが私が選んだだけはあるわね」

「自画自賛ですか……」

 

「もう時間ね、ご飯作らないと……」

「俺も手伝おうか?」

「あんたはけが人だから大人しくしてなさい」

「あい……」

 

 

ピッピッ……

 

「ん?なんの音だ?俺からか?」

 

ガサゴソ……

 

「あ、これか」

 

紫さんから渡されたお札か……確か連絡用だっけか。

 

「はい、どうしましたか?」

「は〜い、勇人?お久しぶりね、元気してる?」

「お陰様で」

「なら、いいわ。 分かってるかもしれないけど明日、幻想郷に戻って来てもらうわよ」

「……はい、分かってます」

「それなら、いいわ。……しっかりと自分の想いのけじめつけたかしら?」

「あ、当たり前です!そのためにここに戻って来たんですから」

「そう……明日の場所だけど、近くに古い神社があるでしょ?」

 

ああ……前に行ったところか

 

「そこに来てちょうだい」

「分かりました……今回はありがとうございました」

「あら、感謝されるとわね」

「まぁ、一応」

「みんな、貴方のこと待ってるわよ」

「ありがたい限りです」

「それじゃあ、また明日」

「ええ」

 

 

もう、今日で最後か……あっという間だったな。本当に時が流れるのは早い。蓮子には感謝しないとな。

 

 

 

 

 

 

「ほら、できたよ!」

「ん?分かった」

 

これが勇人と一緒に食べる最後のご飯ね……いつもと変わらない料理だけど、何か違う気がする……

 

「「いただきます」」

 

「やっぱり、蓮子の料理は美味いな」

「そうでしょ?私だってしっかりしてんだから!」

「そうだな、もう心配することもねぇーな」

「……」

 

言わないと……

 

 

 

 

 

「「ごちそうさまでした」」

 

言えなかった……はぁ……でも、チャンスはまだある!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぁ……眠いな……」

「寝ましょうか」

「そうする、じゃあ、リビングで……」

「今日も一緒に寝てよ」

「……だいj「絶対よ?」アッハイ……」

 

「お前も物好きだな……」

「いいじゃない」

 

 

 

 

 

 

 

「こっち向いてよ」

「今日はさすがに……な?」

「むぅ……」

 

ギュ……

 

「!?ちょ、ちょっと……」

 

 

 

 

 

「私はあんたのことが好き……ずっと前から……好きよ」

「……そ、そうか」

「あんたは……私のこと、どう思ってる?」

 

スッ……

 

暗くてよく見えないけど、勇人が、こっちを向いた。

 

「……俺も……その……好きだ」

「なんで?」

「分からない、ずっと一緒に過ごしてたらいつの間にか……」

「私と一緒ね」

 

「でも、俺は蓮子の想いに応えられれない」

「分かってるわよ」

「……すまない」

「なんで謝るのよ?私が勝手に好きになっただけよ」

「……」

 

 

「でも、今……今だけは私のものになって?」

「…………了解」

「目を瞑って……」

 

そう言って、私は彼に唇を重ねる。

 

「んっ……」

 

は、初めてだから、よく分からない……で 、でも、もう一度……

 

「はぁ……私を抱き締めて」

「りゃ、了解」

 

噛んじゃって、勇人もウブね。私も言えたことじゃないけど。

 

ギュ……

 

暖かい、彼の鼓動がよく分かる。でも、この温もりも明日には無くなってしまう。彼の声、鼓動、手……今、感じ取ってるもの全部が無くなる。明日には全て無くなってしまうんだ……

 

「!?……ん!?」

 

ゆ、勇人からき、キスしてくるなんて……でも、やっぱりウブなせいか、どこか遠慮がちだ。ちょっと、イタズラを……

 

「!!」

 

舌を入れると、勇人は少しビクッとしたが、彼も舌を絡めてきた……は、恥ずかしいわね……

こんな時間が長いように感じられた……

 

「はあ、はあ、えらく積極的じゃねぇか……」

「そう?好きな人にこれぐらいは当たり前でしょ?」

「そ、そうか」

 

また、照れた。わ、私もきっと照れてんだと思う。暗いので分からないだろうが、多分両方、顔真っ赤だ。

 

「ねぇ、もう一回……」

「わ、分かった……」

 

好きな人のさとの深いキスは甘酸っぱいとか聞いたけど、そんなこと考える余裕はなかったわ。せめて、言うなら、血の味?でも、それが幸せでまた寂しく感じた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、行くのね……」

「ああ……今までありがとな」

「当たり前でしょ? これが惚れた弱みというのかしら?」

「そうかもな」

 

 

「もう、行くよ」

「そう……じゃあね」

「ああ、幸せにな」

「貴方もね」

 

 

 

 

 

じゃあな、蓮子、そして、俺のいた世界。

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました、お久しぶりです 紫さん」

「お久しぶり、随分と精悍な顔つきになったわね」

「そうですか?ひどい顔してると思いますが」

「あら?けじめはつけたんじゃなくて」

「そうですよ、でも、後ろ髪引っ張られそうなんですよ」

「なら、早くしないとね」

「ええ」

 

スキマが開く。ここに入ればこの世界での自分とは完全にお別れだ。自然とネックレスに手がいく……

グダグダするんじゃない!俺!決めたのだから、しっかり貫き通さないと!

 

「勇人!」

 

蓮子の呼ぶ声がする。ダメだ、決めたんだから!きっと幻聴だ!

 

「勇人!」

「え?」

 

蓮子?なんで?

 

「あらあら……」

 

 

「勇人!私はゼッータイ、あんたのこと諦めないから!あんたのいる世界への行き方見つけて絶対あんたのところに行くから!だから……だから……絶対に私のこと忘れないでよ!待ってなさいよ!」

「……ああ、待ってるぜ!」

 

「じゃあ、行くわよ」

「……はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は不思議な女性と一緒に謎の空間に消えてった……

 

「これでいいのよね?メリー?」

「私たち秘封倶楽部でしょ?絶対に彼の元に行くんでしょ?」

「そうよね……」

「ええ」

「でも、今は泣いていいのよね?」

「いいわよ、思いっきり泣きなさい」

「う、ウアアアアアア!」

「私も手伝うから」

「うう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれで良かったの?」

「大丈夫です、けじめはつけました」

「でも、彼女はああ言ったわよ?」

「そうですね……嬉しい限りです でも、無理でしょう?」

「そうね……彼女たちが幻想郷を見つけるのはほぼ不可能ね」

「そうですね、ハハハ……でも、忘れないのはありですよね?」

「ええ……もちろん」

「それじゃあ、行きましょう」

「なら、涙を拭いてからにして頂戴」

「泣くわけないじゃないですか……男なら泣いちゃあダメなんですよ………」

「そう、そうなら それでいいわ」

 

ポタッ、ポタッ

 

「あれ、なんでかな……泣かないと決めたのに……」

 

いや、これは雨だ……雨なんだよきっと。決めたじゃないか……そういうことならそういうことでいいんだよ……

 

 

 

こうして、俺は完全に幻想郷に、受け入れられた。

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