第5話 逃走した日の青年
お父さん、お母さん、俺は生きているよ。でも、今もうダメかもしれない。とか考えていると、また光る弾が放たれた。今度は数発撃ってきやがった。相手はまるで遊んでいるようだ。
「くそったれが、近づけねぇ!」
徐々に弾を撃つ量も増やしていやがる。じわじわと殺す気か。避けるのが辛くなってきた。すると、左肩に弾が掠ってしまった。
「っつ!」
クソッ、痛い。火傷のような痛みだ。だが、同時に
「ックク、フフフフッ、フハハハ!」
もう迷いはねぇ。女だからって殴るのを躊躇っていたが、そんなことしったこっちゃねぇな。今、あいつは絶対油断している、だから一撃で仕留める。弾幕が途切れたのを見計らって、俺はその女の元に一直線に向かった。
「!?」
相手は面食らったようだ。今がチャンスだ!女は弾を撃ってきたが下に避け、そのまま接近し、上がるのと同時に思いっきりアッパーパンチを喰らわせた。
ベキッ!
「ック、ぐあぁぁぁ!、」
パンチは完全に決まった。角度、力の入り方どれも完璧だった。だが、
「アァァァ!」
俺の右手は折れていた、血も出ている。まるで鉄の壁を殴ったみたいだ。あいつは人間なのか?痛みやなんやで俺の頭はこんがらがっていた。
「中々やるじゃない。面白いわ。でも、次で終わりよ。」
そういうと、彼女は自分下に何か開いた。彼女はそこに入るとそれは閉じた。
「どこに行きやがった。」
見回すがいない。後ろから何か来た!同じ様に床から何か開いてそこからで出て来ていた。
「それでは、ごきげんよう」
俺の視界は光でいっぱいになったのと同時に吹き飛ばされた。
「ぐぁぁ…」
全身が痛い、もうダメか。いや、まだだ、二回も諦めてたまるか、なにか打開策があるはずだ。すると、ポケットにナイフがあることを思い出した。なんとなくだが、これでどうにかなる気がする。俺はダガーナイフを取り出した。血で汚れてしまったが、気にしてる暇はない。迷わず俺はナイフをあの女に投げた。なぜか、ナイフについている宝石が光っている気がした。
「あらあら、無駄なことを」
女はまた空間に何か開いた。あぁ、最後の望みもダメか……と思った次の瞬間、ナイフは開かれた空間を突き破ってそのままあの女の腹を貫通した。
「きゃっ!なんで……」
と女は腹から血を出しながら倒れた。
「なんなんだ……そうじゃない早くここから出ないと」
痛む体に鞭打ちながら外に出ようとする。多分あいつは人間じゃねぇ。死んでねぇだろう。起き上がるまで逃げないと。ナイフは拾っておこう。逃げ道を探していると、リュックを見つけた、一応持って行こう。外にでればなんとご丁寧にも自転車とセカンドバックがあった。怪しいがかまってる暇はねぇ。ありがたく自転車を使わせてもらおう。俺はがむしゃらに自転車をこいだ。
「紫様、紫様、お目覚めなられてるのでしょう」
「バレちゃったー?」
「当たり前です。なぜ、あの程度の人間を逃したのですか?」
「あの程度ねぇ。まぁ、面白そうだから?」
「ちゃんとした理由を言ってください!」
「分かったから、怒らないでよ、藍。まぁ、理由はあの子ちょっといいやかなり特殊な子よ」
「どこがですか?確かに格闘においては心得があるようですが。」
「あの子の投げたナイフ、私のスキマを破って来たのよ」
「なぜです?」
「さあ〜、分からないわ、まぁ、あの子自分でこの屋敷から抜け出したけど」
「本当ですか?あの子は一体…」
「能力はもっているわね。なんなのかは分からないけど。久々にたのしめそうだわ。」
「はぁ、はぁ、ここはとこだ?」
勢いよく逃げ出したのはいいが、今どこにいるのかさっぱりわからない。無我夢中でこいでいるうちに森にきたようだ。斜面もあるから山か。
「うわっ!」
ガッシャーン!
「ってて、クソッ」
木の根っこによって転倒してしまった。右手が折れてハンドルを握れないので当然片手運転である。よって、アンバンランスで少しの段差で倒れてしまった。
「おいおい、嘘だろ…」
前を見れば巨大な熊がいた。それにしてはデカすぎるし、なんか思った熊と違う。あれか、熊の妖怪か。ありえねえ。とりあえず、バレないように逃げないと。後ろに一歩下がると、
パキッ
枝を踏んでしまった。えぇ、漫画のように。
グォォォー!
やっぱり、こっち来るか…でも、こうして生き延びたんだ。絶対生き延びてみせる。
こういう、単純な野郎は、動きを見極めれば避けるのは容易い。
「よっと」
ズガーン!!
派手に木にぶつかりやがった。だが、ピンピンしていやがる。どうすっかなぁ。ふと後ろを見ると斜面になっていた。そこには、いつしか倒れただろう大きな木があった。
「よし。」
俺は意を決して、相手の突進を待った。
「まだだ…まだだ…まだ…今だ!」
俺はギリギリのところを避けた。一方、あの巨大熊は止まらずそのまま斜面の方へ突っ込み倒れた木の断面に突き刺さった。
「派手にささったなぁ。」
様子を見ると見事に顔面からいってた。あれはグロイ。さすがに死んだろ。
「フゥ〜」
緊張が解けたせいか、喉が渇いた。確かセカンドバックに水筒があったな。バックから水筒を取り出しお茶を飲むと急に眠気が襲ってきた。
「ふぁ〜、少し寝るか」
あっという間に意識は深くへ落ちた。