「……はぁ、やっと2人か」
なかなか体力がきつくなってきた。2連戦でもこの疲労。あと半分持つのか?
「次は私ね」
ーーー紅いリボン、紅白を基調とした衣装、その衣装はなぜか脇の部分は開いており、袖がどうくっついてるのか分からない。そして、手にはお祓い棒を持った巫女ーーー博麗霊夢が次の相手だ。
「お手柔らかに頼みますよ?」
「女の子にそういう要求するの?」
普通の女の子にならしないな。普通の女の子にはな。だが、目の前に立つ巫女さんはこのカオスな幻想郷でもパワーバランスを保つ存在、数々の異変を解決もしている。どこに"普通"という要素があるのやら……
「ふぅ……」
今は集中だ。周りの人達の歓声やざわめきが少しずつ聞こえなくなる。今は目の前に立つ霊夢だけを見据える。
「なぁ、今回やけに霊夢やる気あるんじゃない?」
「ああ、優勝したあかつきには大金が手に入ると言ってあるからね」
「現金なやつだぜ」
「むしろ、やる気が無くては困るよ。私だって今回の戦いには興味があるんだから」
「むぅ……そうなのかぜ」
「さて、次の試合はどう思いますか?紫さん」
「さぁ〜、私にも分からないわ。でも、面白くなることだけは確かね」
うーん……この娘はよく分からない。臨戦態勢をとってるのは分かる。が、どこか違和感を感じる。なんていうのか……この娘には闘志とか敵意とかいうのを全く感じない。いつも通りの自然体なのだ。どんな人でも戦う時は殺意やら敵意やらを持つのだが、霊夢からは一切感じない。むしろ、無気力にも見える。
「……めっ!」
んぁ?なんか聞こえた……
「ぼーっとしてる場合?」
やべっ!考え過ぎた!
が、気づいた時にはもう遅かった様だ。霊夢が術を発動したことに反応が遅れた。
「神技『八方鬼縛陣』」
うっ……う、動けない……雁字絡めに拘束されて微動だにできない。ああ……やっちまった。集中したのが仇になるとは……やはり、その辺は流石に見逃さずに拘束、確実に倒しにきてるな。
「宝貝『陰陽鬼神玉』」
と宣言すると同時に詠唱を始める。霊夢の上に巨大な陰陽玉が生成され始めた。成る程、動けない間にため系の大技で確実にと……やるじゃない(震え声
あの技は本来は隙の大きい技だろう。多分、弾速も速くないはず。とは言っても、今は身動き1つできやしない。まさに八方ふさがり、どうしようもないな。まさに将棋でいう、王将のみの状態。完全に詰みだろう。
ま、普通の王将ならな。なら、その王将が全ての方向に無限に進めるなら?どこにでも自由に動けるなら?それなら、少しは勝機があるはずだよな?俺は普通の王将でいるつもりはない。
霊夢が詠唱を終えた様だ。見ればこれまで見た弾幕の中で比べようがない程の巨大な陰陽玉が投擲された。はたから見ればほぼ絶望的。だが、打開策が俺にはある。タイミングさえ合えば絶対に打開できる……!
目の前に陰陽玉が迫る。5メートル……4メートル……3メートル……2メートル……1メートル!
「カァッ!」
「!?」
迫る陰陽玉を勇人は凝視する。
ドゴーン!
「おお!これは勝ったのぜ!」
「あら、意外とあっさりね」
「……まだよ」
「は?何を言って……」
魔理沙は慌てた。なぜなら、目の前には全くもって無傷の勇人がいたからだ。
「お、おかしいぜ!あいつは拘束されて微動だにできないし、糸も仕掛けてない!能力だって、どこにも血をつけてないはずだぜ!?」
「ねぇ、必ず"血"をつけないとダメなのかしら?」
「え?あいつはそうだっていってたし、実際に今まで能力を発動する時は必ず血をつけてたぜ」
「ど、どういうことなのでしょうか?紫さん!?」
「そうねぇ……よく分からないけど彼も成長したってことじゃないかしら?」
「貴方の半径1メートルぐらいに何か発動させてるのかしら?」
「ご名答、ホント勘が鋭いですね」
「勘も何も、貴方の周りの地面だけなんでも無いならそう疑うでしょ?」
「まぁ、そうだな」
「能力なのかしら?」
「そうだ」
「"血"は必要無いのかしら?」
「俺も少しは成長したんでな……俺の半径1メートルぐらいまでなら空間ごと『不変化』できる。その空間では俺の許可したものが不変化され、それ以外は消滅、外部からの干渉は不可、物理的にも精神的にもだ(もっとも、せいぜい2秒ぐらいしかこの空間を生み出せないがな)」
「ふーん……でも、長続きがするわけでは無いのかしら?」
「……さぁ」
「表情が変わらないわね」
先程の空間で拘束していた『八方鬼縛陣』は消滅している。つまり、動ける。そして、懐から二丁の自動拳銃を取り出し霊夢に向ける。
そして、銃に許容の限界まで霊力を込める。これにより、グレネードランチャーの如くの威力をもつ弾幕を高速で放てる。
だからと言って霊夢も突っ立てる程馬鹿じゃない。持ち前の勘で危機を感じ取ったのか結界を咄嗟に作り出す。
それに構わず、霊夢に狙いを定め……
ドンッ!ドンッ!
今までの乾いた軽い音では無く、野太い音が鳴る。それだけの威力を持っているのだ。無論、勇人にも反動があるわけで
「……くぅ!」
腕に相当きたのだろうか、震えている。
撃ち出された、弾幕は高速に飛んでいき、それでもって高速回転もしている。1発目が当たるといとも容易く、結界は破壊され、もう1発の弾幕が霊夢に目掛けて飛んでいき……
ドゴーン!
強烈な轟音とともに霊夢に直撃した。
「おいおい……あの弾幕相当強力じゃないか……人に着実性が大事とか言っといて……」
「あ、あいつ、そ、相当な霊力持ってるんじゃないの?」
「おーっと!これは決着がついたのでしょうか!?」
「能力だけじゃないのね……成長したのは」
「これは勇人さんの勝利でしょうか?どう思います、紫さん?」
「そうねぇ……確かに勇人は成長したけど……」
そう言うと、視線をある所に向ける。そこには……
「あっ!」
「!?」
傷1つ付いていない霊夢がいた。その姿は半透明になっている。
「おお!そうだったぜ!霊夢には『夢想天生』があったのぜ!」
「にしても、相変わらず勇人の顔は変わらないわね。焦ってもいない」
「ホントだぜ」
「……冗談だろ?」
当の本人は相当驚いている。が、いたって頭は冷静だ。
「ね?伊達に博麗の巫女をやってないわよ、あの娘は」
「さ、流石ですッ!」
「どうかしら?貴方が私に能力を教えてくれたから、一応貴方にも話すわ」
「そうかい、ありがたい話だ……」
「今の私は現世の理から完全に『浮いて』いるわ、すなわち、どんなことも無視してすり抜けられるのよ」
「ハハ……ほぼ無敵じゃねぇか……」
「こっちもお金をかけてるからね、本気でいくわよ」
「さぁ……どうするかしら?霊夢は貴方と同じように理から外れる者。貴方の場合は『絶対』ということで、霊夢の場合は『浮く』事で外れる。どう対抗するかしら?」
「(無敵かよ……これじゃあ策も通じないんじゃぁないのか?…………どうする?)」
悩む勇人に対して霊夢は再び詠唱を始める。すると、霊夢の背丈程の陰陽玉が無数に生み出され、勇人に目掛けて放たれる。
「おいおい!シャレになんねぇよ!」
遂に地上だけでは限界と感じたのか、勇人は空へと逃げる。膨大な量の弾幕を掻い潜るながら避ける。が、多過ぎる、多過ぎるのだ!
シュッ……
「……っく!」
脚を掠ったようだ。掠っただけなのに鋭く熱い痛みが!ふざけんじゃぁねぇぜ!1つ1つ狙いが正確でこの量!しかし、今は目を閉じて悠長に構えてやがる……っ!つまり、チャンスでもあるんだな!
あの弾幕、常に放たれているわけでは無い!『切れ目』があるッ!そこをつくしか無い!そして、それは……
「今だ!」
勇人は陰陽玉を掠りながらも霊夢へ突っ込む。
「喰らえッ!」
先程と同等の威力の弾幕を撃つ。
ガッ!
「……は?」
だが、それは爆発も貫通する事もなかった。無論、霊夢もなんとも無い。放たれた弾丸は霊夢の手で掴まれていた。
「はぁぁぁぁ!?」
う、受け止めたあ!?あの弾丸は高速スピンもしてんだぞ?それを素手で受け取れるのか!?ありえねぇ!ありえねぇ!
「お、あいつ動揺してるぜ」
「流石に素手でキャッチされたらねぇ……」
「こりゃあ、珍しいぜ」
「は?は?な、ナンデ!?」
お、落ち着け!ま、まだ、敗北が決まったわけじゃ無い!冷静に!クレバーにいくんだッ!とりあえず、接近だ!話はそれからだ!
「来るわね」
勇人は向かって来るようね。動揺はしていたがすぐに平静を保ったようね。真っ直ぐ向かって来るようだが、必ず策があるわ。とは言っても、何も意味ないけど。どうせなら、肉弾戦に持ち込もうかしら。
「!?」
れ、霊夢も向かって来やがった……近距離に自信があんのか?だが、とりあえず、先手は俺がもらう!
「オラァ!」
青く光る霊力を右腕に纏いながら、霊夢に殴りかかる。
スッ
「やっぱりか……」
空振りしたな……予想通りか……反撃がくるから下に降りて……
「!?」
ガアァン!
「あ、危ねぇ!」
お、音も無く拳が来たぞ!?そ、それに、地面がこんなに抉れる程のパンチって……どこにそんな力があるんだよ!
霊夢は空振りしたもののすぐに次への攻撃をする。それに対し、勇人は避ける一方である。
「紫さん、勇人さんは避けるだけですが、それでも避けるのさえ一苦労な感じがしますがどういう事でしょう?」
「そうねぇ……勇人って、攻撃を『読む』でしょ?つまりは相手の考えを『読む』という事。それに対して霊夢はただ『勘』で攻撃してるのだから、読めないんでしょうね。だから、その場の反射で避けるしかない」
「……ッ!……くぅ!」
少しずつ限界が……
「隙あり!」
「しまっ……」
ベキィィ!
「グガァ……」
か、辛うじてガードできたが……なんだ?この威力は……!痛みで気を失いそうだ。
ガヅンッ!
重い衝撃が勇人の脳天を貫く。霊夢の踵が勇人の後頭部を捉えていた。
「ガッ……」
景色が歪む。平衡感覚が失われ、真っ直ぐ立てない。の、脳震盪起こしたか?
「よしっ!勇人に攻撃が入った!」
「流石にあれはきついわね……」
「「先生ー!」」
「勇人さん!」
「あ……ガッ……ァァア……」
「まだよ?」
ドギャッ!
「グフッ……!」
は、腹に……ち、力入れてなかった……こ、このままだと、意識が……飛ぶ……
そのまま、勇人は膝をつき……
「勝負あり、ね?その辺の妖怪よりは骨があったわ」
「ナイスだぜ!霊夢!」
「GUGAAAAAAAAAAAAAA!」
「なっ!まだ立てるの……よ!?」
「な、何してるん……だぜ!?」
「せ、先生……」
周りがどよめく。なぜなら、勇人は自分自身の右手をナイフで突き刺していた!そして、わざわざナイフを動かして痛みを増幅させている!
「はぁー、はぁー……こうしてないとい、意識が飛ぶんでね……」
「頭がおかしくなったのかしら?」
「オラァ!」
ナイフをで刺した右手で霊夢に殴りかかる。それを霊夢はかわさず、『掴んだ』。
「いい加減やめたら?それとも頭が狂っちゃったかしら?」
「ハハ……俺の頭は平常だ。なんなら、証明してやろうか?」
「あんたが弾丸を素手で受け止めれたのは、外部からの『エネルギー』を受けないからだ。だから、相当な運動エネルギーを持つ弾丸も簡単に受け止めれる。また、そのパワーは反作用を受けないからだ。もの同士の衝突には必ず作用と反作用があるが、あんたの場合はそれが無いからな、見た目以上のパワーを出せるわけだ」
「……そう、だから?」
「はっ、ということはあんたはほぼ無敵だな。その状態のあんたには敵わないよ」
「なら降参?」
「ハハハハ!降参?面白い冗談だな」
「やっぱり頭がおかしくなったわね」
「……別にその状態のあんたには勝てないだけであって、その状態では無いなら、十分に勝機がある」
「今、あんたは俺に触れている。あんたの方から触れている」
「だから?」
「あんたの手を見てみろよ」
「はぁ?何を言って……!!」
ま、まさか、狙いは!
「ようやく気付いたようだが……もう遅い!」
「ああっ!」
「れ、霊夢の身体の色が……」
半透明だった霊夢の色が元に戻る……それはすなわち『夢想天生』が解除されたことを示す。
「『外部』からの干渉は不可能だ。だが、『あんた』の方から触ったからな、『あんた』の方から『血』に触れたからな!」
「それにッ!ここでいう『外部』とは理の事!俺の能力は理から外れている。つまり、あんたと同じ土俵ということ!だから、俺の能力はあんたに干渉できるッ!」
「な、な!」
「そして!あんたが理から浮いている存在なのなら、無理矢理その逆である存在に引っ張ればいいーーーつまり、あんたが『理にある存在』であることを不変化すればいい。今、あんたは理から浮いた存在では無い」
「な、何を……!」
「次にあんたは『それでも今のあんたに負ける気はしないわ!』と言う!」
「それでも今のあんたに負ける気はしないわ!……はっ!」
「分かんねーのか?既にあんたは俺の術中なんだぜッ!」
「う、動けない?服には血がついていないはずよ?」
「忘れたか?半径1メートルは血が無くても不変化できるってもっとも時間がかなり伸びたがな」
「くっ……」
「それでも限界なんでな!これで終わらせる!」
掴まれた右手から大量の霊力を流し込む!
ビリビリッ!
「キャアア!」
霊夢はプスプスと煙を出しながら倒れる。
「流石にここまでは勘が回らなかったようだな……策士っていうのはどんな時でも常に策を練ってるんだぜ……」
少々無理矢理な理論を挟みましたがご了承ください。