「はぁ……はぁ……」
れ、霊夢をなんとか倒せた……が、はっきり言ってもう限界が近い。しかし、次のお相手は伊吹萃香。ただでさえ、鬼という規格外の力を持つ相手である。その上、『山の四天王』とまで言われ恐れられた存在だ。もう、勝てる要素が無いんじゃないか?生徒に申し訳ないがもう無理だ。
「おっと……」
足元もふらふらだ。霊夢の攻撃が相当きている。特に踵落としがきいていて未だにグワングワンしていて気持ち悪い。吐きそう……
「いや〜、さっきの戦いは素晴らしかったよ」
「ど、どうも……」
「もう限界だろ?」
「そう……ですね」
「しかしなぁ〜、私もねさっきの戦いでさ、あんたともっと戦いたくなったんだよ」
「も、もう無理……」
「見たら分かるよ。立っているので精一杯だろ?流石に満身創痍の者を痛めつける趣味は持っていない」
「な、なら降参して……も……いい……だろ……?」
「残念ながら降参は受け入れれない」
「な、何言ってんだ……?」
「そこでだ!この永琳特製の薬をやる。それを飲めばどんな傷でも1発で治り疲労もぶっ飛ぶってやつだ」
「い、いや、休みたい……」
「ほら飲め」
「ちょ……」
どうにか薬を飲むのを避けようとするが、相手は鬼。パワーでは勝てないわけで……
「ほら、水が無いな……酒でいいか」
「ゴボッ!……ゴクン……ゲホッゲホッ!」
「よし!これで治ったろ?」
「冗談じゃねぇぞ!」
「うんうん、効果はバッチリのようだ」
確かに身体が軽くなって痛みも消えたがそういう問題じゃ無いんだ……肉体的な疲労じゃなくて、精神的にもうキツイんだよ!
「よし、それじゃあ早速始めようか……!」
「あぁ!もう!ならやってやろうじゃないか!!」
お!やる気になったかな?ヤケクソに近いようだがむしろそっちの方が都合がいい。さぁ、どんな風に楽しませてくれるかな?
と思ったが別にヤケクソでは無いようだな。演技か?あいつの足が一歩下がる。鬼を騙すのはまだ百万年は早いッ!
「さぁ、いくぞ!」
「弾痕『バレットホウル』!」
こちらから向かうとすぐに弾幕を張った。避けるが、弾幕は向きを変えてこちらへ向かってくる。成る程、自動追尾か。
肝心の勇人は背を向けて距離を取ろうとしている。
面白いね……大技でも繰り出す気かい?でもね……
「こんな弱っちぃ弾幕、私には効かないよ!」
追跡してくる弾幕を私が霧へと変化することでかわす。弾幕同士ぶつかって爆ぜる。そして、私はあいつの真上で再び実体化。
「なっ……!」
「酔夢『施餓鬼縛りの術』!」
空中で驚く勇人に向けて一気に鎖を伸ばし、投げつける。
「!?」
すぐさまガード態勢をとる勇人だが、狙いは攻撃じゃ無いんだよ。
「うおっ!?」
鎖は勇人の右腕に絡みつき、ゴキリと鈍い音と共に右腕を縛り上げる。
「……くっ!」
そのまま、勢いに任せて勇人ごと鎖を振り回そうとする。勇人も力を込めて対抗しようとするが、鬼が力勝負で人間に負けるわけがない。勇人を地面に叩きつける。
「グガァ……!……くっ!」
叩きつけられながらもまだ私の姿を捉えている。腕に力を込め始めたようだ。
「残念ながら『施餓鬼縛りの術』は霊力吸収の効果があってね、お得意の霊力の流し込みはできないよ」
今の攻撃で右腕を潰した。さらに霊力もある程度奪われた。さてさてこっからどうくるのかい?
「鬼符『ミッシングパワー』!」
そう言うと同時に私の体は巨大化する。周りの被害も考えてそこまで巨大化できないが十分だ。
握った拳は勇人の背丈に匹敵しそうなぐらいだ。
「さぁ!どうする!?このまま潰れてしまうかーーぁ!」
その拳を振り上げ、振り下ろし、勇人の目の前まで迫る瞬間、俯いていた勇人の顔が上がり、目を見開いた瞬間
ガゴーン!
その拳は勇人にぶつかることは無かった。拳は勇人の1メートル程目の前で止まっていた。まるで壁ができたかのように。
「ガアアア!」
反作用によって右手が……!こ、このぐらいなら、すぐに直せる!
「こっちを見ろーッ!」
勇人がこちらに銃を向け、既に引き金が引かれていた。そのまま、弾丸は眉間にめり込み……
「目閉じないと知らないぜ」
ピカァ!
目の前が光一色に……!
「ぐぅ……!」
何も見えないッ!くそッ!どうにか霧に変化して、飛んできているだろう弾幕をかわす。鬼が一方的にやれているとわねぇ……でも、流石にメンツというのがあるからな!
未だに霞む目を無理矢理見開いて、勇人の姿を捉える。その辺だな、そして、口に酒を含み……
ボワッ!
辺り一面が炎の海に包まれる。避けれる場所など無い。
姿を元に戻す。辺り一面、焦げてしまっている。
「いやぁ、流石だね」
一箇所全く燃えた形跡が無い。そこには服が宙に浮いており、そこからどこも火傷した形跡な無い勇人が現れる。
「人間がここまで楽しませてくれたのは霊夢以来か?」
問いかけてみるが全く反応しない。何か仕掛けてるのか?
と、その時、勇人はポケットから素早く銃を取り出し連続で撃つ。
「危なっ!」
間一髪で霧に変化し、弾丸を避ける。不意打ちとは、そういうのは好きじゃないね。
霧の状態のまま、弾幕を放つ。霧の状態では
向こうからは全く攻撃ができない。
兎に角逃げ回る勇人。何か策でもあるのかい?
「また、『糸』を張っているな?残念ながら既に切らしてもらったよ」
腕と足元を確認する勇人、糸が切れてることに気づいたらしい、驚いた顔をする。
「何度も同じ手は喰らわないさ!」
逃げ惑うだけか?もう終わりか?と、懐から何やら試験管みたいなものを取り出す。また、同じ手でも使う気か?
「グビッ……」
「は、はぁぁ!?」
あ、あいつ、血を血を……飲みやがった!?な、何を考えたんだ?すると、勇人は上空にいき、口に入れた血を私がいる霧に向けて吹き出した!な、何を考え……て……!
「喰らえ!」
ま、まさか!狙いは!
ボッ……バグォォォォン!
「ふぅ……流石に今のは効いただろ。元々『血』って霊力を流しやすいからな。それを霧状にして、ばら撒いて霊力による爆発を行えば一気に粉塵爆発が起きるわけよ。さらにあんたは、霧状になっていて広範囲に存在しているが故に全ての爆発を受けてしまう。ひとたまりも無いよな」
鬼であってもきついだろう。これで終わりか?と思っていたら、目の前に霧が集まり萃香が実体として出てきた。その姿はボロボロである。が、その間に宿る闘争心は全く衰えるどころかむしろ増したようだ。
「流石鬼って言ったとこ……」
頭に鋭い衝撃が駆け抜ける。
「ゴフッ……」
なんとか踏み止まる。額に痛みが走る。そして、生暖かい感触が……血がながれている。
萃香の方を見ると手には鎖が伸びていた。
普段なら反撃に転じただろう。だが、それができない。動くこともできない。策を弄することすらできない。
萃香は睨むのみ。
それなのに俺は何もできない。
膝が笑う。歯が噛み合わない。何もされていないはずなのに貼り付けられたかのように動けない。
ま、まさか、今、俺は『恐怖』してるのか?俺がか?
「ふ……今、あんた、『恐怖』しているな」
「何を言ってやがる……」
「別に恥ずかしがることは無いさ。今の人間が忘れてしまった鬼に対する『恐怖』を思い出しただけだよ。弱き者が強き者を恐れる、当たり前のことだろ?」
「……俺は弱者と言いたいのか?」
「別にそうは言っていないさ、でも、そう思うのならそうなんじゃないの?」
今、勇人は精神的に追い詰められているな……やはり、男。自尊心が高くそして脆い。
「どうするまだ続けるか?」
「……ふっ」
笑った?なんで笑う?
「続けるに決まってるだろ?」
「男がおとなしく女に降参するわけねぇーだろ!」
「はは!そうでなくちゃ面白くない!」
「今度は拳でいく!」
「ああ!来いッ!」
「オラァ!」
いいねぇ!その目!その勢い!その拳!今まで冷静だった勇人がここまで闘争心を剥き出しにするとは!
真っ直ぐ額を狙ってくる!
私は動かない。笑みを崩さず立つ。
ガンッ!
硬質的な音が響く。
私は首を少し捻っただけだ。それで角で勇人の拳を受け止める。
「今度はこっちがいくぞ!」
身体を少し捻り、右拳に力を込める。
「ハァァァァ!」
ホゴォ!
右拳が勇人の腹部を捉える。痛みで身体を折る勇人の顔に右拳を入れる。
ベギィッ!
人間とは比べ物にならない衝撃が2発勇人を貫く。
そのまま、勇人の身体は宙を浮き、背中から落下する。
血飛沫を撒き散らし、動かなくなる。そこにあるのは沈黙。
「なかなか面白かったよ、勇人」
そう言い、勇人に背中を向けて立ち去ろうとする。
「……まだ立てるのか?」
これはたまげた。まだ立てるとは。
「もう限界だ……ろう?」
目の前に勇人の拳が迫る。まだ、こんなに動けたのか!?
「このぐらいなら避けれる!」
だが、拳はこちらまでこなかった。振り下ろされた拳は私の目の前で広げられていた。
何がしたい?そう聞こうと思った時違和感に気づいた。
付近の蝶が止まっている。空中で。空気の動きを感じない。
いや、私も動かない!?私がいる一帯が動いていない!?
「!? いかん!今すぐ勇人を止めろ!」
「ど、どうしたんでしょう?」
周りがざわつき始める。何かが起こっているのか?
「!?」
お、おい!蝶がき、消え始めてる!?よく見たら、一帯が色が薄くなってる!?
ブシュッ!
勇人を見ると目や鼻から血が流れている。その目に光は無い。右腕から血が吹き出す。
あ、動ける!色も元どおりに!
バタッ
勇人が倒れたようだ。何が起こった?
「萃香!大丈夫か!?」
「あ、ああ、何があったんだ?紫?」
「勇人の能力を知ってるわよね?」
「ああ、知ってるさ」
「その能力なんだけど……必ずしも『存在』させるわけでは無いのよ」
「は?」
「『滅びる』事も不変にできるのよ……」
「は、はぁぁ!?わ、私はさっき……」
「あの一帯ごと滅びかかってたわ」
な、なんだと……!?な、なぜそんなことに?
「どうする?場合によってはあの子……」
「……そうじゃな、今のを見るに気を失ってから発動しておる。無意識に発動したのじゃろう。それにあれを発動した時に身体が追いついて無くて身体がボロボロになった。まだ、安全だと思うが……」
「成長次第では脅威になるわよ」
「じゃが、使いこなせる場合もある」
「危険と判断した時は容赦なしよ?」
「分かってる……」
「萃香」
「ひゃい!」
「この事は他の人に伝えないでね?」
「あ、ああ」
「…………ぅぅ、いだっ」
「あ、先生起きた!」
「あぁ……俺、寝てたか?」
「ああ、もう日付が変わってしまったぞ」
「あちゃー……すみません、負けちゃいましたね」
「謝ることは無い、元々生徒たちの希望だ」
「大丈夫?」
「多分、大丈b「大丈夫じゃないわ」ア、ハイ」
「紫の都合のいい結界が無かったら死んでたわよ」
「そんなにひどかったんですか?」
「萃香の殴打で内臓損傷と肋骨や頬骨を骨折、右腕に至っては内側からグチャグチャよ」
「……oh」
「まぁ、この薬飲んだらすぐ治るわ。死ぬ程の痛みを味わう事になるけど」
「ゆっくり治療します……」
「ああ、そうしてくれ」
「すみません……復帰したばかりなのにまた慧音さんに負担がかかって」
「気にすることは無い、それよりも後の娘達に無事を伝えてくれ」
「……? はい……」
「それじゃあ、お大事に」
「バイバイ、先生」
「じゃあ」
本当に慧音さんには申し訳ない……早く治さなければ。そのために、今は寝よう……
「「勇人さん!」」
物凄い勢いでドアが開いた。なんだ?びっくりしたじゃないか。永琳さんまでビクッてしたぞ。
「お怪我は大丈夫ですか!」
「永琳さんには何もされてませんか!」
「あー……大丈夫、安静にしとけば治る」
物凄い形相で迫ってくるあたり、少々恐怖を覚える。別に危篤では無かろうに。
「あまり動かさないでね、まぁまぁひどいから」
「私が看護をします!」
「いえ、私が!」
「今は寝かせてくれ……」
尚、優勝した博麗チームには大量のお酒が渡されたそうな。