「当麻くん……あのォ……当麻くん!」
「……?」
「ねぇ、当麻くん一緒に寺子屋行こう?」
「寺子屋?なんで?そんな歳じゃ無いだろ?」
「いや、なんでも新しい先生の授業を受けるとすっごく頭良くなれるんだって」
「へぇ……」
「その先生はね、"碓氷 勇人"って言うらしいんだけど見た目は私達と変わんないのに頭も良くて、そしてとても強くて、力を持つ"妖怪"とも仲がいいんだって」
「……妖怪?」
「うん、生徒としても来てるみたいよ?でさ一緒に行ってみる?」
「ごめん……遠慮しておくよ、僕にはそんな暇が無いからね、じゃあ」
「…………」
「やめとけ!やめとけ!あいつ、付き合い悪いんだぜ」
「『どこかに行こうぜ』って誘っても楽しいんだか楽しくないんだか……」
「しょうがないさ、家族みんな妖怪に殺されちゃって傷ついたまんまなんだよ、そっとしてやるのがいいさ」
「"当麻 琥太郎" 16歳 今は自分で働いて稼いでいてどんな事もそつなくこなすけど今ひとつ情熱に欠ける」
「まぁ、背もまぁまぁ高くて、顔も悪くないから女の子からはモテるよな」
「ああ、でもどんな人でも対応は変わらずなんか冷たい感じがするよなぁ……」
「やっぱりあの日以来かな……」
「("碓氷 勇人"か……力を持つ"妖怪"と仲がいい……か。使えるかもな)」
「…………」
「何を読んでるのですか?」
「ん?新聞だが……気になる記事があってね……」
「どんな事ですか?あ、コーヒーです」
「ん、ありがと……最近、妖怪の死体がよく見つかってるらしい」ら「そうなんですか」
「それもただの死に方じゃあ無い。外傷は全く無い、内部の損傷も無い、全く"無傷"の状態だそうだ。だいたいの死因が餓死らしい」
「?餓死?全部ですか?」
「ああ、人間を食べないはずの妖怪も餓死だ、なんかおかしいよな」
「そうですね……もしかして、生徒達が心配なんですか?」
「まぁな……とは言っても寺子屋にくる娘は力を持っている方だ。今は下級の妖怪の死体しか見つかってない。杞憂だと思うが」
まぁ、大丈夫か。あまり心配しても意味が無いか。心配すべきなのは、今、当たり前のように早苗が家にいる事だ。あの日の後、交渉を重ね、朝だけにする事に成功した。流石にあのままだとダメ男になりかねん。こうして今も全て早苗に任せっきりでこっちが不安になるくらいだ。
「あら〜、朝からいい夫婦してるじゃない」
「グフッ!?……!ゲホッゲホッ!きゅ、急に出てこないでください!」
「そ、そんないい夫婦だなんて……//」
「顔を赤らめない、そんな事より何の用ですか?」
「最近、妖怪の怪奇死が多発してるのは知ってるかしら?」
「ええ、さっきその話をしてたところです」
「なら、話が早いわ、その事件、あなたが解決してちょうだい?」
「丁重にお断りします、そんな暇じゃないんで。そもそも、そういう仕事は霊夢がするのが普通だろ?」
「それがねぇ……あの娘、自分には何の問題も無いからする意味が無いってーー泣いちゃうわもう」
「これはひどい……」
「で、引き受けてくれる?」
「暇があったらやりますけど、期待はしない方がいいですよ」
「やっぱり引き受けてくれたわね、このツンデレめっ!」
「ぶっ飛ばしますよ?」
「じゃあねぇ〜」
「…………はぁ」
思わず額に手を当てる。本当に喰えない奴だ……
「引き受けちゃっていいんですか?」
「もう遅いさ……」
鬱蒼と生い茂る竹林の中、隠れるようにひっそり佇む和風の屋敷。大昔からあるような建物のはずなのに真新しくも見える。
『永遠亭』そう呼ばれる屋敷に住む人たちは、
「ふふっ……これで新薬完成ね、やっぱりあの血はいいわね」
「ほら!起きてください!」
「ん〜〜、あと1時間……」
「よいしょっと……これでまた落とし穴完成〜」
……なかなか濃い人達のようである。そんな人達も最近多発する怪奇死事件については少々耳にし、気になるのか話題に上がったようである。というか、見つかった死体のほとんどが迷いの竹林で見つかっている。
「ねぇ〜、この事どう思う?鈴仙」
「どう思うと言われましても……」
「あんまり関係無いのでは?」
「分からないわよ?もしかしたら月の使者が私達を捜索がてらにやってるかもよ?」
「な、何ですって!?」
「んなわけないじゃない〜、冗談を間に受けないの」
「そ、そうですか……そうですよね!」
「ま、私達が最初に疑われるかもしれないけど」
「問題無いですね」
「そうね、やってない事だからね」
その頃、勇人はまだその事件が迷いの竹林で多発してることを知らないので候補にすら挙がらないが。
「ここの里は本当に素晴らしいよな……飢饉に見舞われたこともなく、豊かに暮らしていける。それにみんなは親切で両親を失った僕をいつも気遣ってくれる」
「ただ1つ問題があるよな。どうして、この素晴らしい里に『妖怪』がいるんだ?おかしいよな?『妖怪』は人間の敵だろ?なんで仲良くしてる?」
「だよな、"先生"……」
「また、新しく寺子屋で習いたい人が増えたんですか?」
「ああ、すまないが……」
「い、いえいえ、だ、大丈夫ですよ」
「そうか……だが、無理はするなよ?前みたいに倒れたら困るからな?」
「は、はい……善処します……」
「えっと……今回君達が……」
「はい!山田です」
「田中です」
「佐藤です」
「……当麻です」
「そうか、てか俺と歳変わらないよな?嫌じゃないか?」
「いいえ!是非とも勇人先生の授業を受けたくって!」
「お、おう……それじゃあよろしく頼むよ」
「「「はい!」」」
「…………」
「ねぇ、先生かっこいいよね?」
「うんうん!同い年とは思えないくらい大人びてるよね!」
「の割に身長高くないけどな」
「それでも全然ストライクゾーンだよ!」
「あ、でも彼女とかいるって噂を聞いたよ」
「えー……」
「(碓氷勇人……ぱっと見、ただの人間だな……もう少し観察するか……)」
「はい、今日の授業はここまで。宿題は必ず提出するように」
「すごい……こ、こんな考え方があるなんて……」
「思わずへぇーって言っちゃった」
「本当に同い年かよ……」
「(……授業中も特に変わったところは無しと。後をつけてみるか……)」
「…………」
「(本当に何も無いな、ただ歩くだけ……噂はデマか?)」
「…………」
「(どこまで歩くつもりだ?もう人里を出てしまうぞ?)」
「…………よっと」
「(な、なにぃ!空を飛びやがっただと!?これじゃあもう後をつけれない!)」
「(は!?)」
ガルル……
「(よ、妖怪……もう人里を出てたのか……)」
「(数もそれなりにいそうだ……仕方ない、"あれ"をやるしか無い)」
「(さぁ……こい)」
バンバンバンバンバンバン!
「え!?」
「なぁにしてんだ?もうここは人里じゃないんだぜ?」
「え、いや、え?(あれだけの量を一瞬で?)」
「本当に何したいんだ?ずっと俺の後を尾けてさ?」
「!?(尾行してたのがバレてる!?)」
「そ、その……先生がどこに住んでるのかを知りたくて……」
「はぁ?物好きがいたもんだ。俺の家は人里にないから、妖怪に襲われるぞ?」
「すいません……」
「ほら、一緒に帰ってやるから、次はこんなことするなよ?」
「はい……」
「せ、先生」
「あー……歳そんなに変わんないからさ、先生って呼ばないでさ、呼び捨てでいいよ」
「流石にそれは……なら勇人さんで」
「まだ固いけどいいか、でなんだ?」
「勇人さんはどこの方なんですか?その服装はこの辺では見かけませんが……」
「あー……それ聞くんだ。まぁ、外来人なんだ、俺」
「そうなんですか(外来人か……道理で頭がいい)」
「後……なんでそんなに強いんですか?さっき妖怪をあっという間に倒してしまいましたけど……」
「んー……霊力を扱う修行したぐらい?」
「れ、霊力ですか(さっきも霊力で倒したのか)」
「それにしても……お前、背高いな」
「ハハ……取り柄はそれぐらいですよ(まぁ、確かにこいつの背は低いな)」
「じゃあさ、俺も聞くがよ、なんで妖怪に囲まれた時、動かなかったんだ?」
「!?」
「あの時のお前、悲鳴もあげずただ突っ立てただけだよな?なんでだ?」
「い、いや……きょ、恐怖のあまり声も出せなかったんですよ(チィ……鋭いな)」
「ふーん……そうか」
「そうですよ」
「最近だな、妖怪がな死んだんだけど知ってるか?」
「……何を言ってるんですか?いきなり(な、こ、こいつ……!)」
「すまん……変なこと聞いたな。ここまでくれば安心だろう、じゃあな」
「はい、ありがとうございました」
「(恐ろしく鋭い上に少ししか見れなかったが十分だ。あいつは強い。そして、絶対にもっと格上の妖怪を知ってるはずだ……!)」
「(あいつは使えるぞ……少々リスクが高いかもしれんが僕の計画のためにはあいつを利用することが必要不可欠だ!)」
「(だが、早まっちゃあダメだ。じっくり、時機を見分けるんだ……)」
「ハハ……絶対に成功させてやるッ!」