諸行有常記   作:sakeu

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第54話 前兆の日の青年

「うーん……」

 

紫さんから妖怪の怪奇死を暴くように言われてから早1週間。何1つ掴めてはいない。それもしょうがないだろう。まともな証拠も無ければ、目撃情報も無い。逆にどうやって見つけろと?

 

「うーん……怪奇死の発見場所は主に迷いの竹林付近……その他の場所にもちらほらと……」

 

"迷いの竹林"ねーー迷いの竹林と言えば永遠亭……か……まぁ、真っ先に永琳さんが犯人候補に挙がるが……ただ、その線は考えにくい。

 

確かに永琳さんなら実験台に妖怪を使うとかは考えれるが、それだとなんでわざわざ何もせずにそのまま放置というのはおかしい。それに永琳さんなら証拠を残すようなアホなことはしないだろう。

でも、何か情報があるかもな。訪ねてみるか。

 

「あー……折角の休日が……」

 

嘆いていてもしょうがないな……さっさと行くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(ふむ……ここが霧の湖か。噂通り霧で覆われてよく見えないな……)」

 

「(ここにも妖怪が住んでると聞いたのだが……今のところは何も居ないようだ……が……)」

 

 

 

「あっ!」

「フランちゃん!」

「チルノと大ちゃんじゃん、どうしたの?」

「今から遊ぶんだよ、フランちゃんこそ何してるの?」

「先生のところに行こうかなーって、そうだ!チルノ達も来る?」

「先生とこに?行く行く!」

「でも、急に行っていいのかなぁ?」

「大丈夫よ!さ、早く行きましょ!」

 

「(先生……?ああ、あの人か。妖怪にも教えているそうだが……その教えられているのはこいつらのようだな)」

 

「(ふむ……後をつけてみるか)」

 

カサ……

 

「……?」

「どうした?チルノ?」

「うーん……なんでも無いよ」

「変なの、ま、とりあえず寺子屋にあるかどうか確認しよう」

「そうね、サイキョーのあたいについて行きなさい!」

 

「(あのチルノとやらは頭が弱いらしいな……)」

 

 

 

「ね、ねぇ、あれ何?」

「ん?なになに?遠くてよく見えないよ」

「ちょっと近くに行ってみようよ!」

「やめておこうよ……何か嫌な予感がする」

「ビビってんの?大ちゃん?安心なさい!サイキョーのあたいがいるんだから!」

 

 

「(ちょっと待て……どこに向かってる?そ、その場所は!)」

 

 

「こ、これって……」

「し、『死体』?」

「もしかして……先生の言ってたのかな?」

 

「(チィ……道中でやった奴が……まぁ、見られても問題無いか)」

 

「何か無いかな?」

「ち、チルノちゃん!何してるの?」

「ん?何か無いかなーって」

「それよりも先生に報告しようよ!」

 

「(それよりもあの教師が探ってるのか……今後、気をつけるべきか)」

 

「うん?何これ?」

「紙切れ?」

 

「(なんだと?はっ!無い!あの"紙"が無い!あの紙には今まで倒した妖怪のメモが……!)」

 

「何が書いてるのかなー?」

「ちょっと待って!先生に見せるまで開けないでおこうよ」

「えー……」

 

「(あいつら!紙を持って行きやがった!まずい……あの『紙』に書かれてることを見られたら……)」

 

「(あの教師なら書かれてる『字面』からこの俺まで辿って来るのは時間の問題だ……あの教師は僕の字面を知っている……)」

 

「(この『当麻琥太郎』……今までは『手掛かり』ひとつ残したことがないが……どうやら慢心してたようだ……よりやってあの教師の教え子に持っていかれるとは……)」

 

「(どうするか!?)」

 

「(しかし……あいつらと会話するのは避けたい……ひったくるしかないか……それも気づかれずにくすね取るのがベストだが……)」

 

 

 

 

 

 

「(よし、里の中に入った……ここなら、普通に歩いていても問題あるまい)」

 

「(あと少し……)」

 

「チルノ!寺子屋はそっちじゃない!」

「お?」

 

「(く……ッ!)」

 

「もー、寺子屋の場所くらい覚えなさいよ、このバカ!」

「ば、バカって言ったわね!バカって言う方がバカなのよ!」

「はいはい、ほら早く行くよ」

「むー……わかったよーー

 

ドン!

 

「イタタ……もう!どこ見てるのよ!気をつけなさいよ!」

「す、すまない」

 

「(クソッ、さっきはチャンスだったな……)」

 

「(まずいな……寺子屋についてしまったぞ……間違いなく数分のうちに『紙』はあの教師のもとへいく……俺は今日、寺子屋に来る日では無い。他の生徒に怪しがられるだろう。まずいぞ……)」

 

「非常に……まずいぞ……」

 

 

 

 

「先生ー」

「おや、チルノ達じゃないか、どうした?」

「慧音先生、勇人先生はいる?」

「あー、今日は生憎居ないんだ。多分家に居るだろう」

「先生の家ってどこだっけ?」

「そうか、知らなかったな、教えるよ」

「お願いします」

 

スッ……

 

「チルノ!何見ようとしてるの!」

「し、してないわよ!」

「はぁ……とりあえずそこに置いといて」

「わかったよ……」

「とりあえずあっちで教えよう」

「はい」

 

 

 

「危なかった……最悪見られたら『始末』することを考えてたよ……」

 

「さっさと回収するか」

 

タッタッ……

 

「流石に置きっ放しはダメね!」

「!?」

「あんた、誰?」

「あ、いや、ここの生徒だが?(クソッ、チルノとか言う奴が戻って来るとは!)」

「ふーん……あ、その紙、返してちょーだい」

「え、いや、その……」

「返しなさい!」

「あっ(しまった!)」

「ふんっ」

 

「(あと少し、あと少しだったのに!ここにあの教師がいなかったのが幸い。いっそ3人とも始末してしまうか?)」

 

「勇人の家だが……」

「こんな所に住んでるんですね……普通の人なら住めない……」

「ま、勇人先生強いし大丈夫よ」

「え、どこ?」

 

 

「(今はあの教師の家を調べることに集中してるようだ……紙は……フフ……あそこならどうにか腕を伸ばして届きそうだ……)」

 

「(よし!あと少し……)」

 

ヒュー

 

パサァ

 

「(風だと!?紙が落ちてしまった!)」

 

「ん?」

 

「(し、しまった!気づいたぞ!しかも少しめくれて書いてあることがチラリと見えてるじゃあないか!)」

 

「……」

 

「チルノ!先生の話を聞きなさいよ!」

「だって、紙が落ちたんだもん!」

「そんなの後でいいでしょ?」

「喧嘩は止めようよ……」

「むー……」

「先生の話を聞くよ」

 

「(今だ!)」

 

「(フッフッフッ!冷や汗をかいたが……ついに回収したぞっ!)」

 

 

「よし先生のお家も分かったところで、行きましょう!」

「ああっ〜っ!か、紙が!ど、どこにいった!?」

「え?」

「もう、フランが後でって言うからよ!」

「うっ、そ、そんなことより探さないと!」

 

「(クックックッ……もめろもめろ)」

 

「とりあえず、あっちに行ってみるわよ!」

 

「(…………)」

 

 

「(バタバタしたが……無事このハードな状況を乗り越えてみせたぞッ!)」

 

「さっさと帰るか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待ちなさい!」

「さっきからあんた怪しいと思ってたけど、あんた今、何してるのかしら?」

「…………」

「ここの生徒って言ってたけどもうすぐ授業が始まるって言うのになんでその"紙"を持ってコソコソ動き回ってるのかしら?」

「…………」

 

「ひょっとして、僕に話しかけてるのかな?嬢ちゃん?」

「その紙を返しなさい!」

「何を言ってるのか分からないよ……これは僕がメモに使った紙だよ?」

「違うわ!その紙はあんたのじゃないわ。あんたには分からないでしょうけどあたいには分かるのよ!」

「だ・か・ら、これは僕のなんだよ、分かる?」

「あー!もういいわ!こうなったら力ずくよ!」

 

ピシィ……!

 

「な、なんだ!?こ、これは……!?」

「ほら!」

 

パシッ

 

「これで取り返したわね……ん?」

 

「こ、これって……先生の言ってた事件じゃない!」

「なんということだ……見てしまったか……そして、これは……」

 

「足を凍らされてると言ったところか……」

「や、やったわ!犯人はあんたね!」

「はぁ……君、1人だよね?さっきの友達も……どっかに行ったようだ……」

「彼女たちも人間じゃないんだろ?」

「あんたッ!動くんじゃないわッ!」

「…………」

「少しでも動いたらカチコチに凍らすわよ!」

「…………」

「変な奴ね……」

「僕の名は『当麻琥太郎』 年齢16歳 自宅はこの里の西部にある。仕事はいくつかしていて、必ず8時には帰る。両親は居ない。死んだのだよ。"妖怪"によってね。妹もいたが同じく死んだ。今は1人で暮らしていて、全ての家事を自分でしている。周りの人がよくしてくれてるおかげで平凡で充実した日々を送ってるよ」

「何を話してるの?あんた?」

「だかな、僕は毎日熟睡することはできない。僕には『心の平穏』は無い」

「?」

「僕は妖怪が憎い。僕の家族を殺した妖怪が憎い。今、こうしてこの里に妖怪がいるだけでも震えるくらい腹が立つ」

 

「いつか、僕のことをよくしてくれた人達も妖怪に殺されてしまうと思うとね夜も寝れないんだよ」

 

「全ての妖怪を駆逐しない限り、僕に『心の平穏』は永遠に訪れない」

 

「つまりチルノちゃん……君も憎しみの対象であり、僕の計画の邪魔でもあるんだ」

「はぁ?ただの人間がサイキョーのあたいに勝てるっていうの?」

「ただの人間ねぇ…………まぁいい、君を始末させてもらう」

「うっ……動くなってあたいは言ったわよ!」

 

「あたいを舐めないでよーッ!」

 

ビシビシ……

 

「ぐ……ッ、さらに凍っていく……」

「それ以上動くと完全に凍らせるわよ!あたいはサイキョーなんだからねッ!」

「なるほど……妖怪ってのは不思議な能力を持ってるんだな……」

「いろんな人が持ってるのよ!ま、1番サイキョーなのはあたいだけどね!」

「ン〜〜『能力』ねェ〜〜」

 

「ところで……僕もちょっとした特殊な能力を持っていてね……」

 

キラッ……

 

「な、何を持っているのよ!」

 

バシッ

 

「なーんだ、ただの小銭じゃない」

「いや……僕の『能力』を教えようとね……どーせ君は既に僕の『能力』で始末されてしまってるからね」

 

「僕の『能力』……それは『触れたものから力を奪い取る』」

 

「たとえ小銭だろーと……なんであろーとね……」

「はっ!」

 

ドシュッ

 

「これで計画が一歩進む……」

「うっ……うっ……」

「お?まだ『力』が残ってるのか?流石だな」

「な、何されたの?ち、力が……」

「僕の『能力』は触れたものから力を奪える……もちろんエネルギーもだ。霊力、妖力、魔力、生命エネルギーもね……ああ、養分もだな」

 

「もっとも君の場合は小銭を媒介にしたせいで奪いきれなかったけどね」

 

「これから全ての力を奪う前にちょっと確認しておく事を思い出した。『能力』ってのはあの2人も持ってるのか?どんな『能力』なんだ?」

「た、助けて……!」

「ダメだね、君には死んでもらわないと……まだ途中なんだよ。今バレたら困る」

 

「そうだな、あの『碓氷勇人』とかいう教師も能力を教えて欲しいな」

「知ら……ない」

「知らないことは無いだろ?さもないとあの2人も始末するよ」

「なんだ……と!大ちゃん達……も!?」

「早くしてくれ、授業が終わる、ほら!」

「な、何言ってるの……?あ、あんたみたいな奴先生がぶっ倒してくれるもん!先生があんたを探してるもん!」

 

「氷符『アイシクルマシンガン』!」

「!?まだ動けるのか!?」

 

「イテテ……クソッ、いくつか刺さった……ムッ!?」

 

「どこへ行きやがった!?」

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、みんなに伝えなくっちゃ……」

 

「大ちゃん達を守るもん!あたいが……!守る!」

 

「フランなら……あいつをたおせる……!なんでも破壊できる、フランなら……!」

 

「い、いた……!慧音先生もいる!」

 

「…………!!」

「あの教師も俺を探してるのか……」

 

「しかし、誰にも僕を追い詰めることができない。君が死んでしまったらね」

 

スッ

 

「僕は既に襖に触ってる」

「え!?」

 

ドシュッ!!

 

「大ちゃーーッん!!」

 

スーッ

 

 

 

 

 

「うむ……他の妖怪は死んでも消えなかったのにこいつは消えてしまったぞ。まぁ、こっちの方が都合がいい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、今誰かが私を呼んだ気が……」

「うん、誰か呼んでたわね」

「ん?これは?氷?」

「あれ?このリボンってチルノちゃんのじゃないの?」

「え?」

「うむ、そうだな。ん?この氷、何か入ってるぞ?なんだ?紙か?」

「!?」

 

「ちょ、ちょっとおかしくない?」

「チルノちゃんを探そう!」

「あ、ああ……何かがあったようだな。勇人にも連絡する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、紙も取り返した……し?」

 

「ち、千切れてる?何かの拍子に破れたのか?ま、いいか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どこにもいない……」

「ね、ねぇ、妖精って死なないんでしょ?」

「う、うん、自然がある限り妖精は存在するから……」

「じゃ、じゃあ、どっかでやられたら復活するの?」

「そうだよ」

「死なないのよね?」

「うん」

「もしかしてだけど……チルノは犯人と会ったのかも……」

「!?本当ッ!?」

「多分……とりあえずこの紙を先生に渡そう」

「うん」

 

 

「(絶対にそいつをぶっ壊してやる……!)」

 

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