諸行有常記   作:sakeu

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第58話 発見の日の青年

「早く教えてください……!」

「お、落ち着け!焦っても意味が無いぞ!」

「ん……!そ、そうですね、つい熱く……で、その犯人は?」

「まだ分かったわけでは無いが……証拠らしき物は見つかった。フランとチルノと大妖精が見つけたそうだ」

「それで……チルノが……」

「すまない……教師なのにこんなことに……」

「いえ……慧音さんは悪く無いです」

「そう言ってくれると助かる。フランと大妖精はチルノの迎えに行ってから来るそうだから、その娘達の迎えに行ってやってくれ」

「はい、では、慧音さんは?」

「この紙から手がかりがないか調べる」

「了解です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?慧音さんじゃあないですか」

「ん?早苗と妖夢か……ここになんでいるんだ?」

「勇人さんのお見舞いに……」

「?勇人はここに調べに来たのではないのか?」

「そうなんですが……実は色々あって怪我しちゃったんです」

「その色々は聞かんが……まぁ、災難な奴だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

単調な風景、非常に成長の早い竹、地面の僅かな傾斜で斜めに生えた竹による平衡感覚の異常、などが原因で非常に迷いやすい『迷いの竹林』。その中を迷ってるいるような様子もなく進む青年が1人。

 

「(チルノがやられた、か……チルノはそんなに弱いはずが無い……普通の人間では無いと見るのが妥当か……)」

 

「………………」

 

「(誰か後ろからついて来ている……それで、気配を消したつもりか?妖力がダダ漏れだ)」

 

迷いの竹林の出口とは真反対のところに向かう青年。

 

「……………」

 

「(こいつ妖怪なのか?人間にしては妖力が大きいし……妖怪にしては殺意が全く感じない。襲う気配も全く無いぞ)」

 

走り出す青年、それについて来るかのように追いかける影1つ。

 

「(走ってもついて来るか……こいつ……例の犯人か?……確かめる価値はあるな)」

 

走る青年。追いかける影。青年が竹林の中に消えていき、影も追いかけるが見てみれば青年はいない。

 

「…………!」

「俺を探してんのか?」

「!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん……この文字は……んー……」

「あら、だいぶ悩んでいるようね」

「永琳か……文字だけが手がかりだからな、だが、チルノが必死にもぎ取ったものだ。是が非でも犯人を見つけないと……!」

「まぁ、程々に、頑張りなさいなって、紙が落ちてるわよ」

「ああ、すまない。生徒の宿題を落としたようだ…………ちょっと待て……こいつの字……」

「どうしたのかしら?」

「この字……似ている!この字も!こいつか!分かったぞ!しかし、生徒が犯人だとは……つまり、勇人も危ない!早く伝えないと!」

「貴女も落ち着きなさいな……って言っちゃったわね」

 

落とした宿題には『当麻琥太郎』と書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのさぁ……ずっとつけてるの分かってんだからな?何をした……いんだ……?」

 

ずっとつけて来た影を見てら青年は驚く。無理もない。その影は寺子屋で見た顔だからだ。

 

「お、お前は……寺子屋に最近来始めた……『当麻』じゃないか……!?(人違いか?でも、妖力はこいつから感じている……!何故?今まではそんな様子は無かったぞ?)」

「…………フッ」

「今までの事件はあんたがやったのか?」

「だから?知ったところで……意味はない。……お前は死ぬんだからなッ!」

 

当麻の鋭い蹴りが勇人に迫る。その蹴りは素人の蹴りそのものだった。だが、速さが人間のそれではない。

 

「……ッ!」

 

その蹴りは勇人の腹を掠めたがダメージにまでは至らなかった。

 

「あんた……人間か?その速さ……パワー……人間じゃあ無いぞ?」

「ハハ……凄いよな?あの青い奴って凄いパワー持ってんだな」

「……は?」

「いやー、あいつを倒すには苦労したよ。だって、凍らせてくるんだもん。まぁ、俺の前では無意味だがな」

「……やっぱり、あんたか……生徒だから少し躊躇いがあったけど……もういらないな」

「あっそう。だからッ!?」

 

バッ

 

金槌のような、速く、重い拳が勇人の顔付近を通る。

 

「……クッ!(やっぱり、こいつ人間じゃねぇ!この拳が当たったら吹き飛ぶぞ!)」

 

バッ、バッ

 

「(チィ……戦い慣れしてやがる……全部見切ってるようだな……だかな……あの青い奴のおかげで相当な量のパワーを奪い手に入れた!もはや、ただの人間なんか相手にならんッ!)」

 

シュッ

 

「クッ!!」

 

当麻の拳が勇人の頰を掠める。

 

「(あ、あぶねぇー!あと少し遅かったら……)」

「うーん、惜しかったなぁ。やっぱり、噂通りの強さだな」

「あんたに聞くが何故こんなことを?」

「あ?お前に教える義理はねぇよ」

「なら、吐いてもらうまでだな」

「ふんっ、お前もあの青い奴と同じようにしてやる。そうだ、お前を倒したら、金髪の娘や緑髪の娘も同じようにしてやるか」

「……なんだと?」

 

「もう一度言ってみやがれ」

「ああ、何度でも言うさ、あの2人もぶっ殺してや……バッ

 

勇人の拳が当麻のすぐ目の前までに迫っていた。

 

「さ、流石だな(な、なんだあの速さは?見えなかったぞ?)」

「不意打ちは男として情けないからな……」

 

そう言い勇人は構えを取る。

 

「(腕は顔の横……重心は……)」

「そうか……(なんだ?あの構え?まぁ、関係ない。今の俺はあいつより速く、殴れる。それに、リーチもこちらの方が長い。もし当たったとしても、今までの妖怪で奪って来たパワーにより強化されたこの身体なら……肉を差し出し骨を頂く……あいつの拳を耐え、そのまま俺の拳を叩き込むのみ!)」

 

タッ

 

勇人が地を蹴る。そのまま当麻の元へ一直線に進み、近づいたところで拳を向ける。

 

「オラァ!」

 

勇人の拳が当麻に迫る。しかし、同時に当麻の拳も勇人に迫っていた。勇人の腕より長い当麻の腕は勇人の拳より先に迫る。

 

「もらった!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズサッ

 

迷いの竹林に人影2つ。1つは立っており、1つは横たわっている。

 

「な、何故だ……!」

 

倒れているのは当麻。

 

「タイミングは完全に俺の方が速かった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もらった!!」

 

当麻の拳が勇人の顔に迫る。だが、勇人は当たる直前に

 

クルッ

 

「なっ!?」

 

顔を捻り、そのまま、後方に旋回し、そのまま肘打ちを当麻の顔へ

 

ゴォン!

 

「グゲェ……!」

 

まともに喰らった当麻は、糸が切れた人形のように崩れた。

 

「バックスピンエルボー……って、言っても分かんないか」

「な、何故だ……?この身体は……」

 

あの膝打ちはただの肘打ちじゃない。なんと、肘に霊力を集中し、強化されていた。上級妖怪でも堪える攻撃だ。ましてや、少々強化したぐらいの人間では1発KOだ。

 

「ぐ、グゾォォ!」

 

さっきの攻撃により、頰の骨が折れたようだ。

 

「本当は俺がぶっ殺したいところだが……紫さんには捕まえるって言われたからな、生け捕りだ」

 

勇人はそのまま当麻の首根っこを『触る』。

 

「ハハ!『触った』な!?」

「ん!?」

 

異変を感じ取り、離れようとする勇人。だが、遅い。勇人は知らなかった。当麻の能力を。『力を奪う程度の能力』をッ!

 

ドシュッ!

 

「うげっ!グッ!!」

「ハハ……ハハハハ!バカが!俺のことはよく知っておくんだったな!」

 

「さぁ……霊力をくれェ〜〜〜ッ、お前の霊力をくれェ〜〜〜!」

「ど…….どんどん『霊力』が抜けてく!」

「霊力だけじゃねぇ、生命エネルギーもくれェ〜〜〜!」

「ゴフッ……!ふ、不変の結界を……!」

 

「張れないッ!?」

「ハハ!流石だな!今までの比ではないぐらいにパワーが上がったぞ!」

 

 

 

 

 

「先生ー!どこにいるのー!」

 

「ふ、フラン!?」

 

「あれー?確かに先生の声がして来たんだけどなー……」

 

「(な、何故フランがッ?不幸か幸いか……)」

 

 

「この辺から……って、いた!先生!」

 

当麻はフランからは見えないように勇人に触れたまま竹林に隠れた。

 

「なぁ、先生……フランって奴を呼べ」

 

「先生!何してるの?大丈夫?」

 

「『こっちに来てくれ』って言えよ……お前があいつを呼べば生命エネルギーを少し残して命を助けてやる。代わりにあいつの力を全てもらう。なぁ、協力しろよ」

「………………」

「命だけは助けてやるよ……早く呼べよ」

 

「先生、顔色悪いよ?何かあった?」

 

少しずつフランは勇人に近づく。

 

「早く言えよ!怪しんで近づいてこねぇじゃないか!」

「ふ……フランを差し出せば……本当に命は助かるのか?」

 

ニタァ

 

「ああ、約束するよ〜〜っ、奴の力との引き換えにだ。呼べ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが断る」

「はぁ!?」

「俺は教師だ。教師である俺が生徒をわざわざ危険な目に会わせるわけがないだろ!」

 

「逃げろッ!フランドールッ!これ以上近づいたら危険だっ!」

「えっ?」

「お、お前!」

「そこに誰かいるんだねッ!私が壊してあげる!」

「く、来るな!触られたら、フランドールでも勝てんぞ!」

 

ピタッ

 

「やった!触ったぞ!こいつの力もいただき!」

 

ドシュッ!

 

「きゃっ!ち、力が!」

「オラァ!」

 

勇人の血がフランに、着く。すなわち、

 

「あ?奪えないぞ?」

「フランドール!お前を不変化した!今の内に逃げろ!」

 

「え?え?」

「落ち着いて聞くんだ!こいつは触れない限り、力を奪えない!今は不利だ!この狭い中じゃ不利だ!早く広いところに行け!」

「うるさいんだよ!こいつ!」

 

ドギュゥ!

 

「ガッ……!」

「先生!」

「い、今は逃げろ!俺は大……」

「うっ、分かったよ!ごめんなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チィ……!逃げられたか……」

「まぁ、いい……こいつは凄いぞ!このパワー!今までとは比べ物にならないぞ!」

 

倒れている勇人は目を開けない。

 

「ふー、手こずったが……1番の問題を解決だな……こいつの能力も気になったが……もう用無しだ」

 

「もう、隠れる必要は無いな!」

 

迷いの竹林の中で不快な笑いが響く。

 

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