戦いの火蓋は俺たちが牽制を入れることで切られた。あいつ……只者じゃない……直感なのでは無い。裏づけがあった上での確信だ。
牽制と言えども、幻想郷でも指折りの実力を持つ、早苗と妖夢と鈴仙の3人の弾幕をいとも容易く斬り捨てた。右手に刃物を出して。
これを見て、逆に普通だという奴はおかしい。しかし、俺はそれ以外にも引っかかるものがあった。
あいつといる、咲夜である。レミリアの従者のはずだが……どういうわけかあいつと一緒にこちらと戦う気満々である。咲夜とは面識が無いはずがない。紅魔館にはちょくちょく訪れるし、その度に咲夜とは会っている。顔見知りのはずだ。
だが、今の彼女にはそういった様子もなくただこちらに向かってくる。
「勇人さんッ!来ますッ!」
「ああ!分かってる!」
今回は相手が得体の知れない者なので早苗達には申し訳ないが後衛に回らせてもらう。半径5メートルなら、不変化できる。もしもに備えておこう。
そう思った矢先ーー
「『ザ・ワールド《世界》』!」
「グフゥッ!?」
腹にまるで車が突っ込んだような衝撃が走る。身体は後ろへ吹っ飛ぶ。何をされた!?例のあいつは俺とは離れている。
「ほほう……少しはタフなようだな……」
背筋が凍るような冷たく残虐性を秘めた声。しかし、俺は恐怖の前に今起こったことの整理を優先した。
「…………!?」
早苗と妖夢と鈴仙は俺と同じように吹き飛ばされていた。
「フッ、青ざめたな?」
何もかも見下すような冷酷な眼差し。まるで、俺の動揺、恐怖を見透かすように言葉を繋ぐ。
しかし、俺も今まで呆けて生きてきたわけでは無い。すぐに動揺を直し、相手の威圧に呑まれないように睨む。そして、右足を踏み出しあいつへ向かう。
「ほほう……向かってくるか……」
「向かわなきゃ、あんたをぶっ飛ばされないからなッ!」
「……勇気と無謀は違うぞ?」
後7メートル……6、5、4……
「『ザ・ワールド《世界》』」
先程と同じ言葉を繰り返す。思い出したぜ……その言葉……
「時を操れる者のみが認識でき、動ける時間……!?」
「動揺したのはお前の方だったな……」
景色が灰色に変わっている中、俺と俺の周囲は色を保っている。『不変の世界』ーー俺が許可した事柄や物質のみが存在や行動を許される世界。この世界には外側からの干渉は不可能だ。時が流れるのは不変であり、止めることはできない。そのまま、敵へ突っ込む。
「無駄ァ!」
リーチの長い脚が俺の顔面に向かう。
「……少し焦ってないか?」
相手が人間かは定かでは無いが、人は焦ると勝負を早く決めたくなる傾向にある。焦ってはいけないと思えど体は勝負を決したがる。その結果、こいつは1発で仕留めようと俺の頭を狙い蹴りを喰らわせようとしている。
つまりだな……こちらは非常に動きを読みやすい。
その蹴りを下へ躱し、懐に潜り込む。そして、そのまま右手に霊力を込め、拳を顎にめがけて振り上げる。
「オラァ!」
ガゴンッ!
相手の体はそのまま後ろへ飛ぶ。感覚は最高だ。霊力もいい感じに入った。軽い脳震盪は起こすんじゃないか?
「勇気と無謀は違う……か。確かにそうだな。無謀は何も考えず敵に立ち向かうアホ……しかしだな……俺には考えはあったんだぜ。裏づけがあったこそ、突っ込んだんだ」
地面に倒れてる者に言う。咲夜が何もしてこないのが少々気になるが、それは後回しで早苗と妖夢と鈴仙を運ばなければ……
「ハハ!流石のよう!孫よ!2人はわしが運ぶ。お前さんは妖夢を頼む」
見た目によらず元気に2人を担ぐ老人。はたから見ればさぞかし滑稽に見えるだろう。
「ペッ……」
先程のダメージで血が出てたようだ。
「よいしょっと……やっぱり、女って軽いな」
「ング……はっ!わ、私は!?」
「おお、目覚めたか、じっとしとけ、すぐに運ぶ」
「え、え?い、今私……お、お、お姫様抱っこを……!?」
「いやそうしない……「勇人!!避けろ!」ん?」
何を言って……
ドゴォ!
「ガハッ!」
背中に先程とは比べ物にならない衝撃が走る。意識が刈り取られそうになる。
「勇人さん!」
「グフゥ……だ、大丈夫……」
なんとか、妖夢に被害が及ぶのは防げたようだ。だが、痛みはとてつもなく、痛みのせいで目眩がおき、立つのもやっとになる。
「トドメは刺しておくものだぞ?」
「て、テメェ……」
「しかし、これ程のダメージで尚立っているとはな、賞賛に値する。それに先程の拳……生身にしては相当な物だ。この俺が拳を受けるとはな」
「だが、流石にもう限界だろ?スタンド使いでは無いにしては健闘したぞ?」
「スタンド……使い……さっきの『ザ・ワールド《世界》』という言葉といい……なんでジョジョの単語が出てくるんだ?っと、問いたいが………………信じたくねぇが……スタンド使い……存在するのか?」
「Exactly(その通り)」
「そうか……だが……テメェみたいな奴は野放しにはできないな」
「それと、名推理をした君にもう1つ教えてやろう」
さっきから、威圧感を消さずに話しかけるあたり、精神的にも抑えようてか?だがな
「テメェみたいな高圧的な奴は大っ嫌いだ。それに…………俺の平穏を脅かす奴はもっと嫌いだ」
「……ハハ!そういう強気な態度は嫌いじゃないぞ!俺のスタンドは『変化者《チェンジャー》』。君がどれ程のスタンドを知ってるかは俺も知らんが少なくとも君が知っている数以上のスタンドの能力に変化させれる。変化は強い……意味が分かるか?」
「………………」
変化……今、こいつは確かに変化と言った。変わる者……皮肉なもんだな……俺は変わらない者なのに。不変と変化……
「フフ……」
「おや?ここにきて笑みを浮かべるとは……何か考えでもあるのか?」
「さぁな、どう逃げるのかを考えてるんじゃねぇの?」
「京谷、やるべきことは別にあるわ、さっさと終わらせましょう」
「ふむ……こいつはまだ泳がせたいのだがな……そうも言ってられないか」
ハハ、言ってくれるぜ……俺が泳がせられるのか?
「……勇人さん、下ろしてください。私も戦います」
「無理しなくても……」
「それは自分を見てから言ってください」
「うっ……」
「ハハ!わしも忘れるんじゃないぞ?サポートは任せろ!」
「鈴仙と早苗はどうするんだ?」
「ん?とっくに目を覚ましておる」
「私達も戦います!」
「そうですよ!この戦いが終わったら私達……けっk「それはダメだ」なんでですか!」
「理由は2つ、まず俺の同意が無い、次にそれはフラグとなってしまうから言うな。結婚するんだと言って生きて帰ってきた奴はいない」
「そうですか……」
「いつまでお喋りするつもりだッ!」
振り向けば拳が迫っていた。
「そうはさせません!」
と目にも止まらぬ速さで妖夢が現れ拳を剣で受け止めていた。
鍛錬の成果が最近見て取れるがここまでとは……俺も頑張らないとなぁ……
妖夢が作ってくれた隙を逃さぬよう拳銃を構えて
「こっちを見ろ」
パァンと乾いた音を響かせ、霊力による弾丸は眉間へ進むが直前でピタッと止まる。
「こんな欠伸の出るようなスピードじゃあ避ける必要も無いな」
「妖夢!目を閉じろ!」
辺り一面に閃光が広がる。
「……ッ!」
「ここは距離を取らせてもらう。さぁ、ここからが本番だろ?」
「フフ……やはり貴様は面白いな」
「京谷、私も参戦するわ、いいね?」
「勇人さん、背中はお任せを」
「私達も……」
「待て、今は2人に任せるんじゃ」
「で、でも」
「勇人の性格を知ってるなら分かるじゃろ?ここはあの子たちに任せるんじゃ」
「「…………はい」」
変わる者……どうくるかは知らないが……俺は俺らしく頭を使って戦わせてもらう。スタンド使いだろうがなんだろうが撃ち抜いてやるッ!