諸行有常記   作:sakeu

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第71話 6F(弱肉強食)の日の青年

「チッ…………!ジオットがやられるとは…………!」

「んー……魔王の魂とは相性が合わなかったようですね……あ、ちゃんと回収しましたか?」

「ああ、回収はしたが……あそこまで戦闘の才能が無いとは……」

「確かに頭の回転が速い人でしたが、戦闘においてはDIO以下でしたね」

「所詮、ハキムの推薦する奴だ。大した奴ではない事は分かりきってた事だろう」

「だ、黙れ!」

「実際そうだろう?」

「ぐ…………」

「それでは次は私の推薦する人ですね。彼なら何かの成果は出ると思いますよ」

「まぁ、ハキムよりはマシな結果になるだろうな」

「言わせておけば…………!」

「喧嘩はよしてくださいよ?私はグントラムさんに会ってきますから」

 

 

 

 

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〜ヘブン・クラウド 6F〜

 

「お頭、会いたいと言う奴が来ましたぜ」

「通せ」

「相変わらず凄まじい肉体ですねぇ…………」

「おお、ソネか。例の件についてか?」

「ええ、これが"魔王の魂"。これがあれば今までに無い力を得ることができますよ」

「ハハ!ライカンになってからというもの、これ程のパワーを得て、そして、人間の頃よりも忠実な部下を持った。昔の俺ならこんな充実した人生は予測しなかっただろうな!それに加えて、王になれるというとはな!」

「貴方に聞きますが、もし魔王になったらどうするおつもりで?」

「なぁに、世界を支配すると決めている!」

「流石!お頭!」

「ハハ!そうだろう!」

「それはそうと、人間がこちらに向かって来てます」

「人間がか?」

「あまり舐めない方がいいですよ。この城の5階まで突破してますから相当な手練れでしょう」

「いいや、寧ろそっちの方がいい。敵は強くなきゃあ面白くない」

「ふむ、流石元軍人なだけありますね」

 

 

「このぐらいの向上心があるなら、問題無さそうですね…………」

 

 

 

 

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〜ヘブン・クラウド 5F〜

 

 

「京谷!!………!?」

「京谷さん!!咲夜さん!!無事でした……か……!?」

 

妖夢とマゼンダの一騎討ちは主人の死によって終わりを告げ、京谷達のいるところに向かったのだが…………

 

「……勇人、妖夢、じいさん。終わったのか」

「京谷、咲夜……これは……何だ?」

「この部屋に居た吸血鬼の元配下よ。さっきまで死にながら生きてたけど」

「……急に湿っぽくなったな。悪い」

「そうか……まだ階段が続いてる。少し休んで行くか」

 

京谷が死体を焼却処理している間、マゼンダの言った言葉を噛み締める。大切な物を守りたかったーーーー何かは分からないが、命を売ってまで守りたかった物だったんだろう。力と言うのはどんなものだろうか?純粋な腕力などのパワー?剣術や体術などの技術?何事にも揺れない強い心?

少々考え過ぎか…………京谷の方を見ると腕から刃物を出して、それを見て呆けていた。

 

「京谷~、お~い」

「……ん、あぁ。わり」

「大丈夫?京谷」

「……んまぁ平気だ。心配すんな」

「本当かしら?……それじゃあねぇ」

 

と咲夜は京谷の顔に近づく。…………はぁ、仲がよろしいようで。

 

「うおっ!?」

 

おっと、不意打ちで首にキスをしたぞ!

 

「何時もの仕返しよ♪」

「仕返しって……それやると俺だって」

 

おっと、京谷が仕返しにキスをしたぞ!

しかも、ディープだぞ!

それに俺らがいるのにも関わらずにだぞ!

 

君たちには羞恥心は無いのかな?放っておくといつまでもしてそうなので軽く咳払いをする。

 

「うぉっほんッ!!!」

「「!!!!!!」」

「……イチャイチャするのは良いけどよ、時と場合を考えろよ。見てる俺たちが恥ずかしいわ」

「「……ごめん」」

 

妖夢はもはや気絶寸前である。彼女が彼らに感化されない事を願うばかりである。

 

はぁ、疲労がどっと来た…………仮眠とろ……………

 

 

〜30分後〜

 

んー…………なんなのだろうか、この感触…………久々に感じるな…………あー…………快適だ…………

 

 

ん?枕?異変に気づき、瞼を開ける。すると、妖夢の顔が映った。

成る程、膝枕か…………

フフ、俺はもう驚かないぞ。寝ていたらーーとかと言うシュチュエーションはもう慣れっこなのさ!

兎にも角にも、体を起こし、体を伸ばす。少し寝ただけでも大分違うな。

京谷達も俺が目覚めたのに合わせて、準備運動を始める。

それらが終わった後、次の階へ歩を進めるのだった。

 

 

 

 

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〜ヘブン・クラウド 6F〜

 

辿り着いた先には下の階よりも広い部屋となっていた。

 

まぁ、たくさんの『狼男』がゾロゾロといるせいで全く広く感じないが。

その中に一際体の大きい個体がこちらを睨んでいた。

 

「やぁ~ん、京谷~こわ~い!!」

「嘘こけ」

「はいはい、分かったから。今敵の前だから」

 

この2人の茶番にはもう慣れてしまった。おかげでスルースキルが向上したよ。

 

「はっ!!貴様ら、ここまで辿り着けたとはな……褒めてやるぞ、人間ども」

 

一際体の大きい個体が話しかける。こいつがリーダーと見て問題無さそうだな。

 

「頭!!その人間と、そこのメイドからは何の恐怖すらも感じられません!!寧ろ状況に感化されていません!!」

「黙れ童」

 

不意に喋った仲間の首を簡単にへし折った。こいつのパワーはなかなかにあるな…………鬼と張り合えるではないのでは?

 

「……悪いな、俺はどうにも短気なものでな。コイツらを見てくると無性に腹がたつ」

「か、頭!?何故その様な事を!?」

「……はんッ。それよりも奴等を倒すことを命ずる。お前達は人間を殺して食っておけ」

『へ、ヘイッ!!!』

 

数で来るか…………俺はすかさず銃を構える。この銃は調子がおかしいがリボルバーを使う程の暇は無い。

しかし、京谷は俺達よりも先に動いていた。京谷は狼男の群れに飛び込み

 

「俺とッ!!スタンドで道切り開くからッ!!!お前らはそこのデカブツをッ!!頼んだぜ!!」

「……あぁ!!分かった!!」

 

京谷の言う通りにリーダーと思わしき者と対峙する。

 

「貴様らが相手をするのか……だが、それも良かろうて!!」

 

その一回り大きな狼男は腰を低く落とし、右腕と右脚を前に出し、左腕と左脚を下げる構えを取る。

 

「我が名はグントラム!!このライカン共を統べる王なり!!この戦いの中に一切の言葉は無用!!全ては血風の中で語り合おうぞ!!」

 

その言葉を皮切りに戦闘が始まった。

 

 

 

 

 

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京谷達が手下を処理している間にこいつを始末しないとな。

 

「さぁ、かかってこいよ。デカブツ」

「フンッ!なら、お望み通りにしてやろうッ!!」

 

このグントラムとか言う奴は馬鹿正直にこちらに真っ直ぐ突っ込んで来た。

それなら、こっちは銃で撃ち抜くだけだ。

素早く引き金を引き、グントラムに弾丸を浴びせる。が、弾丸は狙った所とずれ、掠るだけとなった。

 

「馬鹿者が!どこを狙っている!?」

「しまっーー

 

軽自動車ぐらいはあるような巨体が俺の体へ近づく。そして、全身に強烈な衝撃が走り

 

「ウグッ!?」

「勇人さん!」

 

軽々吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。その拍子に銃を手放してしまった。

 

「弱い、弱過ぎるぞ!その程度か?」

「く…………ッ!」

 

肋が何本か折れたか?口には鉄の味がする。

 

「ほら!さらにいくぞ!」

 

再び巨体がこちらに迫る。俺はそれを辛うじて避ける。

そして、構えを取る。

 

「ほう…………人間風情が素手で俺に向かおうとするとはな…………」

「……ほら、早くこいよ?」

「なら、後悔しないようになッ!」

 

巨体に見合わない速さで俺に摑みかかるが、腕を掻い潜り、顎に強烈なアッパーを食らわせる。

しかし、相手は仰け反ることなく受け止め、

 

「ガハハ!良い拳だ!」

「な!?」

「が、ちとパワーが足りん」

 

両手で体を掴まれる。そのパワーにより骨がミシミシと悲鳴をあげる。

 

「グアァァァ!」

「勇人さんを離せ!」

 

すかさず妖夢が飛びかかるが、足によって薙ぎ払われる。

 

「このまま、お前を握り潰すのもいいが…………この状況においてのその目…………敵を滅さんという目…………それにあの拳…………気に入ったぞ!お前を俺の配下としてやろう!」

「ふっ…………そんなのは…………死んでも…………ごめんだぜ…………」

「そんなのは関係ない。俺が咬めばもう俺の配下だ」

 

グントラムの牙が首に近づく瞬間、弾幕がグントラムを襲った。

 

「勝手にわしの孫を配下にしようとするんじゃないぞ」

「チッ…………だが、こいつは圧倒的なパワーに憧れているのだろう?」

 

「ふっ、魔族はいい。昔、俺は軍人だった。軍人になった理由は何かを守りたかったのではない。ただ、純粋に強くなりたかった。誰よりも強く、頂点に立ちたかった。そう思いながら必死に鍛え、地位を上げ、優秀な軍人とまで言われるようになった。だかな、それでも頂点には立てなかった。俺よりも強い奴はうじゃうじゃいた。いくら鍛えても鍛えても追いつく事は出来なかった。そんな時だ。俺がライカン(狼男)に咬まれたのは。最初は怖かった。仲間にも殺されかけた。しかしだな、ライカンになると、圧倒的なパワーを手に入れ、今まで全く敵わなかった相手に簡単に勝てた。今まで強いと思ってた奴があっさりと打ち破る事が出来た。その上、たくさんの部下を手に入れ今はこうしてライカンの王として君臨している。終いには魔王になろうとしている」

 

「だから?単純な力だけでは頂点に立てない」

「いや、立てる。力がある者が全てだ。力が無ければ何も守れない」

「…………!!」

「力だけでは何も守れないという奴は力が無い者の言い訳に過ぎん。所詮、力が無ければ何も守れん」

「そ、そんな訳がない!」

「フンッ!ならそれを証明してやる!」

 

再びグントラムはこちらに迫る。

 

「じいちゃん!妖夢!」

「な!?」

 

脇から妖夢もじいちゃんがグントラムを抑えつける。その隙に銃を拾い上げる。

 

「は、離しやがれ!」

 

暴れるグントラムに狙いを定め、

 

「『ようこそ、男の世界へ』」

 

2丁拳銃に霊力を最大まで込め、トリガーを引く。

その最大霊力により放たれた銃弾はバイソンと呼ばれる動物の様に荒々しく、男が持つ決闘美を象徴するかの様に速く、グントラムの眉間を貫いた。

 

「…………やっぱり、そうだろ?力がある者が全てだ…………これも所詮力の差…………お前は…………弱肉強食の原理こそがこの世の真実である事を…………証明した事に過ぎん…………」

 

そう言い残し、グントラムは倒れた…………力こそが全て…………そうかもしれんな。

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