〜勇人宅ー夕方ー〜
妖夢が俺の姿を見て発狂寸前となり、刀のサビとなりかけたがどうにか説得し事なきを得た。
いや、マジで斬りかかりそうなぐらいのオーラを妖夢は出していたと思う。
「…………す、すいません。早とちりしてしまって」
「いや、いいんだ。悪いのはあのニートと詐欺師だからな」
「そうですよ。私もとても慌てましたし」
早苗の場合は無言で抱きついて来たのだがな。小さくなった俺としては軽くトラウマになりそうだ。
「しかし、なんと言うか…………勇人さんは昔からその……目が……」
「死んでるってか?多分、本来ならまだ無垢な目だろうが、生憎中身は変わってないからな。昔っからの目を細めて物を見ようとする癖が出てるんだろう」
7、8ぐらいの時に目が悪くなり始めて…………放置してたら癖がついてしまった。そのせいか通常時でも瞼はそんなに開いていない。今ではあんまり気にしてないが。
「それでも、小さい頃の勇人さんは可愛かったのですね」
「…………まぁ、皆んな小さい頃は可愛いもんだろ」
ふっ…………流石に耐性はつく。可愛いと言われようが最早俺のメンタルは傷つかん!
「でも、どうして勇人さんは早苗さんの膝の上にいるのです?」
「俺も分からん」
「いやぁ…………なんと言いますか…………丁度いいんですよ。それに頭を撫でられますしね」サスサス
「んっ…………急に撫でないでくれ…………」
あんまり頭を撫でられた事が無いもんだから、慣れていない。そのせいか、なんだか力が抜けて自然とダランとなってしまう。気持ちよく無いと言ったら嘘になる…………すいません、普通に気持ちいいです。
「なら、やめますね」
と撫でる手を止める早苗。それに思わず
「あっ…………」
「あれ?もしかして、またして欲しいんですか?」
しまった…………完全に失言だ。
「気持ちよかったのですね?まだしてあげてもいいですよ?」
からかうような口調で言う早苗。しかし、実際に気持ちよかったしもう一度やって欲しいと言う思いもある。まぁ、それはプライドという物によって口に出せないのだがな。
「…………別に」
「遠慮しなくてもいいんですよ?」
「…………頼む」
所詮、プライドとは貧弱なものである…………
「うーん、でも人に物を頼む時はそれ相応の対価がひつようですよね…………?」
「な…………!?」
「どうしましょうかねぇ…………」
よ、余計な事を言わなければ良かった…………お金はある程度溜まってるからどうにかなるか…………
「ここは『早苗お姉ちゃん、頭撫でて〜』と言ってください!」
「なななにを言わせる気だ!?」
そんな事、俺のプライドが許さんッ!言わないからな!
「でも、言わないと頭を撫でませんよ?」
「クッ…………!」
「さ…………さ……」
「…………!!」
「早苗お姉ちゃん、頭撫でて〜//」
「「…………ッ//!?」」
「はいッ!!姉ちゃん撫でちゃいますよォォ!!」ワシャワシャ
「むぅ…………//」
ヤバい、恥ずかしくて死ぬ。クッ、頭を撫でてもらうためにこの屈辱を受けようとは…………しかし、頭を撫でてもらうとこれでいいのでは無いのか?と思ってしまう。
「さ、早苗さんだけズルいです!勇人さん!私にも『妖夢お姉ちゃん』と呼んでください!」
「これを言う度に俺はプライドを破壊しなければならないのだぞ?」
「しかし、早苗さんだけでは不公平です!」
「何が!?」
「一度!一度だけでもいいですから!」
土下座せんとばかりに食らいつく妖夢。…………仕様がない。
「よ、妖夢お姉ちゃん…………?」
「…………ッ//!!!」
「これで気がすn ガバッ
「ぬぉ!?」
気がつけば俺は早苗の膝の上から妖夢の腕の中にいた。お前ら速すぎんよ!
「はっ!勇人さんは?」
「可愛いですッ!」ギュウ……
「むぅ…………少し苦しいぞ」
「すいません…………でも、もう少し…………」
「ちょ、ちょっと妖夢さんッ!?」
「いいじゃないですか!早苗さんだって昼間は満喫してたのでしょう?」
「あー、交代制にしたらどうだ?」
「なら、後30分はこのままで」
「な、長すぎますよッ!」
「早苗さんはもっと長かったじゃないですか!」
「ぐっ…………」
「どう言うわけで後30分ですね♫」
うむ、俺の意見は無しか。知ってた。
〜30分後〜
「スゥー…………スゥー…………」
「寝ちゃいましたね…………」
「そうですね、寝顔も可愛いです……」
「布団で寝かせましょうか」
「なら、私が用意するので妖夢さんはしばらく待っててください」
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〜翌日〜
「朝ですよ〜、起きて下さ〜い」
「…………ん、まだ寝る」
「今日は寺子屋に行くんですよ」
「…………そうだった」
うーん、体が小さいとすぐに眠たくなってしまうな…………待て、なんでこの家にまだ早苗がいる?
「早苗、昨日は守谷神社に帰ったか?」
「いいえ、泊まらせていただきました。寝顔、可愛かったですよ〜。写真に撮りたいぐらいです」
「それはやめてくれ、しかし何処で寝たんだ?」
俺の家には布団は一式しかないわけだから床で寝てたのか?
「それは…………勇人さんと一緒に…………」
「…………何もしてないよな?」
「もちろんですよ!」
今回は早苗の言葉を信じよう。それよりも寺子屋に行く準備をしないとな。
「朝食はもう作ってありますよ」
「そうか、ありがとな」
とりあえず、顔を洗ってから朝食を取った。顔を洗う時なのだが…………台が無いと届かず少々苦労した。
朝食の時はほっぺにご飯粒を付けたりと完全に子供の様な行動を取ってしまっている。
ともあれ、準備が完了し寺子屋へ向かおうというわけなのだが…………
「やっぱり早苗も一緒にか?」
「もちろんです。勇人さんに万が一があったらいけませんから」
「…………銃さえあれば大丈夫なのだが」
「その体で銃は危険です!あ、ナイフも没収しときましたからね」
「…………了解」
もう、ここは俺が折れるしか無いな。確かに反動で腕が折れてしまう可能性もあるわけだし…………
「それじゃあ行きましょう!」ギュ
「ちょ…………なんで俺を抱える必要が?」
「なんでって…………空を飛ぶからですよ?」
「それもそうか」
てっきり歩くのかと…………それにしては遠すぎるか。
〜少年&少女移動中〜
「さ、人里に着きましたよ」
「あの事件の影響は…………もう無さそうだな」
と人里を見渡す。あの事件前と同じように活気溢れる里に戻った様だ。うんうん。平和が1番だよ。
「…………肩車の必要あるか?」
「必要です!」
即答ですかいそうですかい。周りの視線が痛いかと思ったがそうでも無い。それ相応に見えてるのだろう。
「おっ、早苗ちゃんその子は?」
と早速里人のおっちゃんに声をかけられる。すると周りの人達もこちらに注目する。
「見ない顔の子だねぇ…………もしかして、ついに先生との子供が?」
とおばさんが。
「ちちち違いますよッ!まだ私達はそこまで…………」
おい、墓穴を掘るな。そんな事を言ったら…………
「あら、"まだ"ってよ」
「そう、お熱い事ね〜」
「あ…………」
「…………早苗お姉ちゃん、早く行こ?」
「……!!そそそうね!」
「うん?なんだい、親戚か?」
「はい、勇人さんの親戚の子です!」
その理由はキツい気が…………
「そうかい、どうりで先生に似てるわけだ」
うむ、案外通る物なのか。
「それでは私は用事があるので…………」
「おう、早苗ちゃんも頑張ってな!」
「はい!」
「ふぅ…………近所のおばさん程怖いものは無いな」
ああいう人程恋沙汰などに敏感で鋭いものなのだ。
「…………『早苗お姉ちゃん』って、可愛かったですよ〜。もう一度言ってくれませんか?」
「拒否する。あれは俺のプライドを削って言っているんだ。言い過ぎるとプライドが無くなって死んでしまう」
「むー…………そんなにプライドは大事ですか?」
「ああ、男は無駄にプライドが高いものなんだ」
そうそうべ○ータとかさ高いよな。ん?べ○ータって背が低かった気が…………
「はい、寺子屋に着きましたよ!」
「おお、よし降ろしてくれ」
「はい、よいしょっと」
やっと地面に足が着いたよ。よし、慧音さんを呼ぼう。
「慧音さん!」
「はいはい、誰…………だ?」
俺の姿を確認するなり固まる慧音さん。そりゃあそうなるか。いつも働いている俺が急に小さくなればな。
「…………早苗、もしかして勇人と?」
「あー…………違いますね。この子は勇人さん本人です」
「え?勇人なのか?こんなに小さいのがか?」
「ええ、実は永遠亭で……………………」
「…………というわけなんです」
「成る程…………勇人も苦労してるのだな」
「いえ…………もうなんか…………慣れました」
「ハハ…………それでそんな姿でどうして寺子屋に?」
「最近はまともに寺子屋に来れてないので…………」
「別に無理しなくてもいいのだが…………」
やっぱり、この体じゃあ教師は務まらんよな…………小学生に勉強を教えてもらうなんて俺だったら嫌だもん。
「しかし、ここまで来てくれたのだからな…………」
「そうだ!いつもは教師として寺子屋に来ているのだからこの機会に生徒として寺子屋に参加したらどうだ?それに私の授業を君に受けてもらいたかったしな!」
「それはいい案ですね!」
視点が変わるとはこういう事か。確かに慧音さんの授業には興味があるし、ちょうどいい。
「そうとなれば今日の授業は気合を入れてやらないとな!」
「ええ、楽しみにしてます」
こうして、生徒として寺子屋に参加する事が決まったのであった。