IS/MS   作:ジャスティ―☆

2 / 20
早くも2話突入します!


太平洋のど真ん中で

誰かの声が聞こえる。

ユウ・カジマはこの声に聞き覚えがあった。

一年戦争時、蒼い死神と呼ばれたRXー79BD-1、ブルーデスティニー1号機のパイロットとして、ニムバス・シュターゼンが操るEXAMを搭載したイフリート改と激戦を繰り広げている時。

大破した2機の次にユウ・カジマはブルーデスティニー3号機、ニムバスはブルーデスティニー2号機に乗り換え激闘の末に大破。

あの時に聞こえた少女の声だ。

名前はたしか・・・・マリオン。

 

ー覚えててくれたのね、ユウ・・・ー

 

(ここは・・・どこなんだ?それになぜ君が?あの時君はEXAMから解放されたはず・・・)

 

ーえぇ、私は確かに解放された・・・貴方のおかげでー

 

(ではなぜここに?)

 

ーもう貴方に会えないから・・・ー

 

(会えない?・・・そうか俺は・・・死んだのか)

 

ユウ・カジマはあの時コロニーレーザーによって戦艦ごと飲み込まれ消滅した。

死んでしまったからもう会えないのだろう。

 

ー死んでなんかいないわー

 

(死んでいない?どういうことだ?)

 

ー貴方は・・・いいえ貴方達は別の世界に流れてしまったのー

 

(別世界?何をいっているんだ・・・意味が分からない!)

 

ーでも事実なの・・・だからユウ、もう貴方には会えない。遠いところに行ってしまった貴方に会いに行けないの・・・ー

 

(そんな・・・もし別世界に流れたとして、俺は一体何をすればいいんだ?)

 

ー貴方の心に従えばいい・・・ー

 

(俺の心に・・・従う?)

 

ーそう、貴方がやりたいことをやればいいのー

 

(・・・・・)

 

ーここから先は貴方次第ー

 

(・・・分かった)

 

ー私を解放してくれてありがとう、貴方のこと忘れないわー

 

(忘れるものか、俺は君にたくさんのことを教えられた。あの光のことも・・・)

 

ーうん、それじゃ・・・さようならー

 

(あぁ・・・今度こそさようならだ、マリオン・・・)

 

互いに別れあった瞬間、ユウ・カジマは再び暗闇に飲み込まれた。

 

 

 

再び誰かに呼ばれている。

さっきと違い、体が重く感じる。

この感覚・・・俺は生きているのか?

 

「・・・長!!・・・カ・・・マ艦長!!」

 

視界が段々広がってくる。

少しぼやけているが、少しすると視界は完全に復活した。

 

「艦長!!ご無事で・・・」

 

俺はクルーに囲まれて床下で横になっていた。

 

「生きて・・・いる?」

 

「はい、我々は生きています!」

 

重く感じる体を無理矢理立たせる。

まだ少しフラつくが、これくらいの程度なら大丈夫だ。

 

「状況は?」

 

「艦に損傷等の異常はありません、機材もすべて正常です」

 

「艦長が気を失っている間、勝手ではありますが独断でMSによる偵察を行っています」

 

「いや、いい判断だ。それで、何か分かったのか?」

 

「「・・・・・・」」

 

この質問でクルーは皆静まり返ってしまう。

というより、何か言いづらそうな感じだ。

 

「どうした?」

 

「艦長、直接目で見た方が分かりやすいかと。こちらへ」

 

そういってクルーに案内されたのは艦橋の窓だ。

窓から見える光景を目にしたユウ・カジマは絶句した。

なぜなら、ペガサス・コーウェンは海の上に浮かんでいるからだ。

カタパルトにはスタークジェガンとジェガンD型の数機が立っていた。

 

「通りで重力を感じたわけだ・・・」

 

「我々がなぜ地球にいるのか全く分からず、この通り飛行性能を持たないジェガンでは偵察もままならず・・・。それにあの時我々は・・・」

 

「あぁ、焼かれていた。コロニーレーザーにな」

 

それを聞いたクルーは一気に顔を青ざめた。

自分達がコロニーレーザーに焼かれたことに驚いている。

当然だ、何の前触れもなく撃たれたのだから。

 

「スタークジェガンに乗っているのは?」

 

「は、ノーベンバー3のタチバナ少尉です」

 

話によれば彼は撃たれる直前にMSに搭乗し、起動した瞬間に意識を失っていたらしい。

そして先に目を覚ましたのがタチバナ少尉であり、MSもすぐに動ける状態だったので真っ先に偵察に出たようだ。

 

「ノーベンバー3に連絡はできるか?」

 

「はい、繋ぎますか?」

 

「頼む」

 

ユウ・カジマは艦長席に座り、テンキーを操作し受話器を手に取り、耳に当てる。

 

「ノーベンバー3、聞こえるか?」

 

<艦長?ご無事で!>

 

「心配をかけた、偵察して何か分かったことはあるか?」

 

<申し訳ありません、重力下での飛行ができない機体なので今はこうしてカタパルトの上で立って周囲を確認することだけしか・・・>

 

「分かっている、小さなことでもいい。何か変わったことはあるか?」

 

<艦長?・・・そういえばGPS通信を拾ったのですが、地図に違和感を感じるんです>

 

「地図に違和感?転送してくれ」

 

<了解>

 

通信モニター越しでタチバナ少尉はデータ転送を実施する。

数分もかからずにデータが転送されてきた。

それを艦橋のメインモニターで表示する。

そこでユウ・カジマ達は信じがたいものを目にした。

それはオーストラリアだ。

一年戦争の発端である、ジオン軍によるコロニー落とし。

落とされたコロニーはオーストラリアのシドニーに直撃し、それ以降地図には巨大な穴が開けられた状態で記されていた。

だが今はどうだ、オーストラリアにあるはずの巨大な穴、コロニーの落ちた場所が表示されていないのだ。

ユウ・カジマは確信した。

マリオンという少女に語られた、別世界へながされたという事実が。

だとしたら状況は最悪だ。

別世界なら、恐らく地球連邦軍やジオン軍は存在しないことになる。

つまり・・・艦の修理や補給が一切行えないということだ。

もちろん、MSもそれに含まれる。

ユウ・カジマ達は・・・命綱のない状態で別世界に存在してしまっているのだ。

 

「・・・艦長」

 

クルー達が自分達はこれからどうしたらいいのかという顔をしている。

新米である俺たちにいきなりこの絶望的な状況は最悪だ。

だがユウ・カジマ諦めなかった。

彼は立ち上がり、即座に命令をする。

 

「こうしていても仕方がない、艦内にいるすべての乗組員とMSパイロットに通達!第1戦闘配備だ、整備大隊には申し訳ないが、すぐにMSを重力下で稼働できるよう調整を急がせてくれ。重力下で動かせるMSはあるか?」

 

「・・・ジェガンD型が2機、エコーズのロトが全機出撃可能とのこと!それとサブフライトシステムが2機!」

 

「運がいいな。それにエコーズ、特殊部隊か。・・・ならそのジェガン2機には先に偵察に出ているノーベンバー3とノーベンバー1が搭乗するように伝えてくれ、エコーズには白兵戦が出来る状態でカタパルトデッキに待機。整備待ちのMSはカタパルトに、無闇に動かなくてもいい。本艦を護衛することに専念させろ。」

 

「「了解!!」」

 

クルーはユウ・カジマに敬礼をし、一斉に動き出す。

艦内で第1戦闘配備の警報がなり、艦内にいた全乗組員が慌ただしく動き出す。

MSパイロットも全員MSに搭乗し、機体の調整を一斉に始める。

ユウ・カジマはテンキーを操作し、再び受話器を手に取り耳に当てる。

 

「火器管制、第1戦闘配備!全砲門開け、準備でき次第全方位を警戒。命令があるまで撃つなよ!」

 

<火器管制了解!>

 

「副長はどこにいる?」

 

「ベネズ中佐、今戻りました。」

 

女性副艦長であるベネズ・ローカー中佐が艦橋に戻ってきた。

 

「すまない、機関部の様子はどうだ?」

 

「異常は特にありませんでした。しかし本艦は宇宙での運用を前提に建造されているため、重力下での飛行はミノフスキークラフトを搭載するなどの改造でもしない限り厳しい状況です。スラスターは動きますので、海の上でしたら航行は可能です。しかし・・・本艦の下部は海に浸かっている為、下部カタパルトは使用出来ません」

 

「浸水箇所は?」

 

「今のところありません」

 

「ありがとう、今後の方針を決めよう」

 

「わかりました」

 

 

 

MS格納庫では乗組員と整備員、MSのパイロットが慌ただしく動いていた。

その中で、重力下で稼働ができるよう調整された2機のジェガンに2人のパイロットが搭乗していた。

その一人、タチバナ少尉はジェガンD型を起動させカタパルトデッキに準備されているサブフライトシステム、ベースジャバーの上に機体を乗せる。

異常がないことを確認し、艦橋に出撃準備完了を伝える。

 

<ノーベンバー1と3には周辺の偵察を行ってもらいます。偵察任務ですが、攻撃を受けた場合は回避を優先し本艦に帰還してください。そちらで記録されているデータはこちらで随時受信します>

 

<ノーベンバー1、了解した。ゲン、聞いたな?>

 

「了解です、フォード隊長」

 

艦橋から出撃の合図が出された。

 

<お先に。ノーベンバー1、フォード・ファーミング、ジェガンで出撃する!>

 

先頭にいた隊長機であるジェガンD型がカタパルトから射出された。

次はタチバナ少尉だ。

 

「ノーベンバー3、ゲン・タチバナ、ジェガン・・・・出撃します!!」

 

レバーを一気に引き加速する。

ジェガンD型をのせたベースジャバーはカタパルトから射出され、空中を飛翔する。

 

<それじゃ行くとしますか、付いてこいよゲン!>

 

「了解ですフォード隊長!」

 

インフィニット・ストラトスの世界ではじめて2機のMS、RGMー89ジェガンD型が飛翔する。

そして刻々と、インフィニット・ストラトスとモビルスーツがぶつかり合う時が迫ってきていた。




ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回もお楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。