ゼロの使い魔は芸術家   作:パッショーネ
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20,旅立ち

 

 

 

 

朝もやの中、トリステイン魔法学院の敷地内にある厩舎から、ギーシュが馬を引いて姿を現わす。

厩舎の前には、ルイズとデイダラの姿も見える。ルイズは歩きやすい様にブーツを履き、デイダラは背中にデルフリンガーを背負っている。

 

 

アルビオンという国へ赴く為には、まずはトリステイン南部にある都市『ラ・ロシェール』へと向かう必要がある。魔法学院からは、馬で普通に走って二日ほどの距離にある港町である。

 

「今回は急ぎの任務だからね。君達に僕の華麗な手綱さばきを、ゆっくり見せられそうになくて残念だよ」

馬に鞍をつけながら、ギーシュはルイズとデイダラに向けてキザったらしく言う。

 

度々、学院の女の子とラ・ロシェールの森へと遠乗りしているギーシュは、馬術にも腕に覚えがある。

ルイズはどうでもいいが、デイダラが馬乗りにへばった時は、なんて言ってからかってやろうかと考え、ギーシュはチラリと視線を向ける。

 

 

「時間のねー任務だって言ってんだろ、ギーシュ。呑気に馬なんて乗ってられるかよ…うん」

「んなっ!?」

ギーシュの目には、デイダラが召喚した巨大な白い鳥の姿が映っていた。

 

「そっか。あんた、デイダラの作る大型の鳥を見るのは初めてだったのね」

こいつが馬で疲れる姿なんて見せる訳ないでしょ、とルイズはギーシュの心を読んだかのように言い放つ。

ちなみに、ルイズは本当にギーシュの心を読んだ訳ではない。単にギーシュが、何を考えているのか分かりやすい表情をしていただけである。

 

「くっ…。僕は何ひとつ、この男には勝てないのか」

当のギーシュは、そんなルイズの言葉など耳に入っていないかのようだ。地面に両手をついて、本気で落ち込んでいる様子だ。

 

「ほら。時間もないんだし、はやく行くわよ」

「ま、待ってくれ。その前に、ひとつお願いがあるんだが…」

なによ、とルイズはギーシュに問う。すると彼は、足で地面を叩く。モコモコと地面が盛り上がり、茶色の大きな生き物が顔を出す。

 

「おおヴェルダンデ!ああ!僕の可愛いヴェルダンデ!」

ギーシュは、顔を出したその生き物を愛おしく抱きしめる。

 

どうやら、ギーシュは自分の使い魔である巨大モグラ、ジャイアントモールのヴェルダンデを連れて行きたいようだ。

 

「なぁルイズ、いいだろう?ヴェルダンデは優秀なんだ。きっと役に立ってくれる」

「ダメよギーシュ。私達、これからアルビオンに行くのよ。地面を掘って進む生き物を連れて行くなんて無理よ」

ルイズがそう言うと、ギーシュは地面に膝をついてしまう。

 

「そんな…。お別れなんて、つらい。つら過ぎるよ、ヴェルダンデ…」

ギーシュが地面に膝をついて悲しんでいると、ヴェルダンデは急に鼻をひくつかせ始めた。

 

「な、なによこのモグラ」

くんくんと鼻を動かし、ルイズに擦り寄るヴェルダンデ。

ルイズはヴェルダンデに押し倒され、鼻で体をまさぐられる。

 

「や!ちょっとどこ触ってるのよ!」

巨大モグラに襲われ、ルイズは地面をのたうち回る。スカートが乱れ、あわや下着をさらけ出しそうになる。

ヴェルダンデは、ルイズの右手の薬指に光るルビーを見つけると、そこに鼻を擦り寄せた。

 

「おいギーシュ。ありゃ、何やってんだ?」

「うーむ、おそらく指輪だろうね。なにせヴェルダンデは、大の宝石好きだからね」

現在進行形で巨大モグラに襲われているルイズを余所に、デイダラとギーシュはのんびりと状況分析をしていた。

 

ギーシュの話では、ヴェルダンデは貴重な鉱石や宝石を主人であるギーシュの為に見つけてきてくれるのだと言う。土系統のメイジにとっては、とても嬉しい存在の様だった。

 

「冗談じゃないわ、姫様から頂いた指輪に鼻をくっつけないで!……デイダラ、あんたも見てないで助けなさいよ!」

ヴェルダンデの鼻を押しのけながら、ルイズはデイダラに向かって叫ぶ。

 

「それくらい、お前の魔法で吹っ飛ばせばいいだろーが…うん」

「ちょっと待て、ヴェルダンデに何しようと言うんだね…!?」

他人事のように言うデイダラ。この程度のことでは、手を貸してはくれそうになかった。

 

「そんなこと言われたって…!」

ルイズは魔法で吹っ飛ばそうにも、アンリエッタから貰った水のルビーを庇っているせいで、杖を取り出すことができないでいたのだ。

 

 

そうして、ルイズが何とかモグラの下から抜け出そうと暴れていると、一陣の風が舞い上がり、ルイズに抱きつくモグラを吹き飛ばした。

 

「誰だッ!」

ギーシュは声を荒げ、攻撃がきた方へ薔薇の造花を向ける。

デイダラも、ギーシュと同じように風が吹いてきた方向へ顔を向ける。

 

朝もやの中から、羽帽子をかぶった一人の長身の貴族が現れた。

 

「貴様、僕のヴェルダンデに何をするんだ!」

ギーシュはすぐに呪文を唱えたが、一瞬早く、羽帽子の貴族が『風』の魔法を発動させ、薔薇の造花を吹き飛ばす。模造の花びらが宙を舞った。

 

「落ち着きたまえ、僕は敵じゃない。姫殿下の命により、君達に同行することを命じられた者だ。君達だけではやはり心許ないらしいからね。しかし、密命の任務である以上、一部隊つける訳にもいかぬ。そこで、この僕が選ばれたってワケさ」

羽帽子を取ると、長身の貴族は一礼した。

 

 

「トリステイン魔法衛士隊、グリフォン隊隊長のワルド子爵だ」

「魔法衛士隊……隊長だと?」

少し意外そうに、デイダラはワルドに確認するように聞き返す。ワルドは「そうとも」と堂々と頷く。

 

文句を言おうと口を開きかけていたギーシュは、相手が悪いと知ってうなだれた。魔法衛士隊とは、ギーシュを含め、全貴族の憧れの的なのである。

 

「すまない。婚約者がモグラに襲われているのを、見て見ぬフリはできなくてね」

「……はぁ?」

予想外のワルドの発言に、デイダラは驚き、口をポカンと開ける。

 

魔法衛士隊の隊長という、デイダラから見てもなかなかの実力者が現れたと思ったら、まさかのルイズの婚約者だと言うのだ。驚くなと言う方が無理であろう。

 

「ワルド様…。お久しぶりでございます」

「久しぶりだな、ルイズ!僕のルイズ!」

恥ずかしそうに立ち上がったルイズを、ワルドは笑顔を浮かべながら駆け寄り、抱き上げる。

ワルドに抱き上げられ、ルイズは頰を染めた。

 

「相変わらず軽いな、君は。まるで羽のようだ!」

「お恥ずかしいですわ…」

「彼等を紹介してくれないかい、ルイズ」

ひとしきりルイズを抱き上げた後、ワルドはルイズを地面に下ろし、再び帽子を目深かにかぶって言った。

 

「あ、あの……。こちらが同級生のギーシュ・ド・グラモン。そして、こちらが私の使い魔のデイダラです」

ルイズに紹介され、ギーシュは深々と頭を下げる。対して、デイダラはお辞儀もせずに、興味深そうにワルドを眺めるのみである。

 

「君がルイズの使い魔なのかい?剣を背負っているし、メイジではないと思っていたが、まさか使い魔とはね」

言いながら、ワルドは気さくな物腰でデイダラに近寄った。

 

「僕の婚約者がお世話になっているよ」

「ふん」

軽く答えて、デイダラはワルドの力量を測るように上から下まで見つめる。

ワルドも同様に、その鷹のような眼光を光らせ、自身の形のいい口髭を撫でながらデイダラを見る。

 

「……へぇ。今までオイラが会ったどのメイジよりも、腕は立ちそうだな。うん」

「それはどうも。……君も、なかなかの実力者と見た。これは心強いね」

お互いに、ニヤリと笑い合いながら、デイダラとワルドは言葉を交わす。

 

何か二人だけに通じるものでもあったのだろうかと、ルイズは首を傾げる。

 

「さて…」

そうして顔合わせを終えると、ワルドは学院の正門の方へと向き直り、口笛を吹く。

朝もやの中から、鷲の翼と上半身に、獅子の下半身がついた幻獣、グリフォンが現れた。

 

「おいで、ルイズ」

ワルドは、ヒラリとグリフォンに跨ると、ルイズに手招きした。

 

「ん?おいルイズ。お前、こっちに乗るんじゃないのか?」

親指で背後の粘土製の鳥を指しながら、デイダラが尋ねる。

 

「え?え、え〜っと…」

ワルドとデイダラ。二人の男に同時に声をかけられ、ルイズが戸惑っていると、ワルドが再び口を開く。

 

「すまないが、ルイズとは十年振りの再会なんだ。僕とルイズに、二人の時間を与えてやってくれないか」

ワルドの発言に、デイダラは再びポカンと口を開ける。

 

「さぁ、行こうルイズ」

「え、ちょ、ちょっとワルド様…!」

ワルドは、躊躇うルイズを抱き抱えて、再びグリフォンに跨った。

 

「では諸君!出撃だ!」

手綱を握り、杖を掲げてワルドは叫んだ。

 

 

「……やれやれ、仕方のねえ旦那だぜ。うん」

駆け出すグリフォンの背を見ながら、デイダラは多少呆れたように呟くと、感動した面持ちのギーシュの首根っこを掴んで粘土製の鳥に飛び乗る。

 

「うわあ!お、お手柔らかに頼むよ、デイダラ…」

「そりゃお前次第だ、ギーシュ。精々落っこちないように気をつけな。うん」

そんなぁ、と呟きながらギーシュは粘土製の鳥にしがみつく。

 

 

こうしてルイズ一行は一路、アルビオンへ向けて旅立つのであった。

 

 

 

 

 

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アンリエッタは出発する一行を学院長室の窓から見つめていた。目を閉じて、手を組んで祈る。

 

「彼女たちに、加護をお与えください。始祖ブリミルよ……」

彼女の後ろでは、オスマンが学院長席に着きながら鼻毛を抜いている。

 

アンリエッタは振り向くと、オスマンに向き直った。

 

「見送らないのですか?オールド・オスマン 」

「ほほ。姫、見てのとおりこの老いぼれは、鼻毛を抜いておりますのでな」

それに、と付け加えるオスマン。

 

「心配せずとも、無事に帰ってきますとも」

「……オールド・オスマン。そうは言いますがーー」

 

その時、アンリエッタの声を遮るような形で、学院長室の扉がドンドンと叩かれた。

「入りなさい」とオスマンが言うと、慌てた様子のコルベールが飛び込んできた。

 

「いいい、一大事ですぞ!オールド・オスマン!」

「君はいつでも一大事ではないか。どうも君は、あわてんぼでいかん」

「慌てますよ!私だってたまには慌てます!」

そうしてコルベールは、慌てた調子のままオスマンへ報告した。

 

チェルノボーグの牢獄に捉えられていた土くれのフーケが脱獄したこと。

その際、さる貴族を名乗る怪しい人物が『風』の魔法でフーケの脱獄を手引きしたこと。

 

魔法衛士隊が、王女のお供で出払っている隙の出来事である。つまりーー

 

「つまり、城下に裏切り者がいるということです!これを慌てずにどうするのですか!」

「分かった分かった。その件については、後で聞こうではないか」

アンリエッタが顔を蒼白にさせていると、オスマンが手を振り、コルベールに退室を促した。

 

コルベールがいなくなると、アンリエッタが学院長机に手をついて、溜め息を吐く。

 

「城下に裏切り者が!間違いありません。アルビオン貴族の暗躍ですわ!」

「すでに杖は振られたのですぞ。我々にできることは、待つことだけ。違いますかな?…あいだっ!」

鼻毛を抜きながら言うオスマンの余裕ある態度を見て、アンリエッタは訝しむ。

 

「何故、そのように余裕でいられるのですか?」

「いやなに。彼が一緒ならば、道中どんな困難があろうとも、やってくれますでしょうからな」

彼、というオスマンの言葉に、アンリエッタの頭にも自然と一人の青年の顔が浮んだ。不思議とそれは、ワルドのものでもギーシュのものでもなかった。

 

「それはもしや、ルイズの使い魔の…?」

頷くオスマン。

アンリエッタは昨夜から気になっていたことをオスマンに問うた。

 

「オールド・オスマン。彼は一体何者なのですか?手のひらに口のある人間など、わたくしは初めて見ました」

それに、先ほども杖も無しに大きな白い鳥を召喚するなど、ただの平民とは言い難い力を見せていた。アンリエッタが疑問に思うのも無理はないだろう。

 

「彼が何者か、ということについては、お恥ずかしながら我々にも正直分かっておりませぬ。ただ、彼は異世界からやってきた『忍』という者なのです」

「異世界?シノビ?」

「そうですじゃ。ハルケギニアではない、どこか。『ここ』ではない、どこか。そこでも、我々メイジの様な力を持つ者がいるみたいでしてな。それが忍という存在。彼が相当な強者であることは、間違いありませぬ」

そこでオスマンも言葉を区切り、窓の外からどこか遠くを見つめる。

 

「彼がミス・ヴァリエールの使い魔である以上、彼女らは無事戻ってくるでしょう。この老いぼれの余裕な態度も、それが理由なのですじゃ」

「そういう、ことだったのですか…」

オスマンに倣い、アンリエッタも窓の外へと目を向ける。

 

アンリエッタは、自らの手をぎゅっと握り、昨夜のことを思い出す。異形の手で、自分をからかい不敵に笑う男の姿を。

思い返してみれば、男の笑みは、どこか愛嬌のある笑みだったように思えて、アンリエッタはふと微笑みを浮かべた。

 

不安は残るが、確かに今は、信じて待つことしかできないのだ。ならばーー

 

 

「ならば祈りましょう。異世界から吹く風に」

 

 

 

 

 

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魔法学院を出発して以来、ワルドはグリフォンを疾駆させっぱなしであった。すでに二駅ほどの道のりを経たが、幻獣はまったく疲れを見せることはない。

 

「ちょっと、ペースが速くない?」

抱かれるような格好で、ワルドの前に跨ったルイズが言った。

雑談を交わす中で、ワルドの頼みもあってだが、ルイズの口調は昔の丁寧な話し方から現在の話し方に変わっていた。

 

「問題ないよ。君の使い魔が召喚した鳥も、変わらずついてきている。このままラ・ロシェールの港町まで止まらずに行けるだろう」

ワルドの言葉通りに、グリフォンの背後には、少し離れて低空飛行をしている粘土製の鳥がいる。もちろんその背には、デイダラとギーシュの姿がある。

 

「優秀な使い魔を持ったじゃないか、ルイズ」

「そ、そんなこと…」

ワルドに使い魔を褒められ、ルイズはまんざらでもない表情となる。

 

「それに、なかなか頼もしそうな青年だ。もしかして、君の恋人だったりするのかい?」

「なっ!こ、恋人なんかじゃないわ」

笑いながらワルドに尋ねられ、ルイズは思わず顔を赤らめる。

 

「そうか、ならよかった。婚約者に恋人がいるなんて聞いたら、ショックで死んでしまうからね」

そう言いながらも、ワルドの顔は笑っている。

 

「お、親が決めたことじゃない」

「おや?ルイズ!僕の小さなルイズ。きみは僕のことが嫌いになったのかい?」

「もう、小さくないもの」

ワルドに、昔と同じおどけた口調で尋ねられ、ルイズはからかわれていると思って「失礼ね」と頰を膨らませる。

 

「僕にとっては、未だに小さな女の子のだよ」

少し穏やかな雰囲気で、ワルドは言う。

 

ルイズは、先日見た夢を思い出す。生まれ故郷の、ラ・ヴァリエールの屋敷の中庭。忘れられた池に浮かぶ、小さな小船での一幕を。

 

それと同時に、ルイズは幼い日の約束も思い起こされる。

 

互いの親同士が決めたこと。

婚約者。こんやくしゃ。

 

当時は、言葉の意味もろくに知らなかった。憧れの人と一緒にいられることだと教えてもらって、なんとなく嬉しいだけだった。

だが、今はもう言葉の意味も知らない子供じゃないのだ。

 

それから、ルイズとワルドは昔の思い出話を語り合った。

未だにルイズのことを婚約者だと言ってくれるワルドに、ルイズはただただ困惑しかなかった。

今のルイズにとってワルドは、遠い思い出の中の憧れの人なのだ。十年間ほったらかしだったのだし、婚約などとうに反故になったとも思っていたのだ。

 

「旅はいい機会だ。一緒に旅を続ければ、またあの懐かしい気持ちになれるさ」

落ち着いた声で言うワルドを見て、ルイズは思った。

自分はワルドのことを好きなのだろうか。離れていた分だけ、ほんとに好きなのかどうか、まだ分からなかった。

 

 

ふと、ルイズは背後のデイダラへ目を向ける。胡座を組んで座り、頬杖をつきながらギーシュと雑談をしていた。

そこには、ルイズとワルドの様子を気にしているといった雰囲気は微塵も感じられない。

 

自分のご主人様に、突然婚約者が現れたのだ。もう少し取り乱してくれてもいいのに。

 

そう思ったら、ルイズは何だかやきもきして、胸が震えた。

 

 

 

 

 

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アルビオンへ向けて旅立った日の夜。

出発してからスピードを緩めずに飛ばしたお陰で、ルイズ達は何とかその日の内にラ・ロシェールの入り口に辿り着いていた。

入り口の前に着くと、ワルドがグリフォンのスピードを緩めて進み始め、デイダラも鳥をゆっくり低空飛行させてついていく。

 

「おいギーシュ。ラ・ロシェールってのは港町なんじゃなかったのか?山ばっかじゃねーか」

デイダラが怪訝そうに辺りを見渡して言う。

 

その言葉通りに、このラ・ロシェールの入り口はどう見ても峡谷に挟まれた山道であり、少し進んだ先に見える港町とやらも、狭い峡谷の間に設けられた小さな街であった。

 

「なんだい。君はアルビオンを知らないのか?」

「知らん」

「まさか!」

デイダラの問いかけに、ギーシュは呆れた声で尋ね、その後笑みを零す。

そうか、デイダラの弱点は常識知らずということか。と、ギーシュがしたり顔で考えていると、デイダラは何かに気づいたように真剣な表情となる。

 

「ん?どうしたんだい、デイダラ?」

「黙ってろ。舌を噛むぜ…うん」

そして、デイダラはワルドが操るグリフォンの隣りまで鳥を移動させる。

 

「おい、ワルドの旦那」

「なんだい。どうし……ああ、なるほど」

デイダラに声をかけられ、すぐにワルドは事態を把握する。

 

ギーシュとルイズが、二人の会話に首を傾げていると、突然デイダラとワルドが左右に並ぶ崖の頭上それぞれに、攻撃を繰り出した。

 

デイダラは大量の小型蜘蛛の起爆粘土をばら撒き、ワルドは一陣の風を巻き起こし、小さな竜巻を放つ。

 

「喝ッ!」

巻き起こる爆発と竜巻が、ルイズ達に向かって放たれていた無数の『矢』を吹き飛ばす。

 

「なッ!敵襲か!」

遅れて事態を飲み込んだギーシュが、薔薇の造花を取り出し叫ぶ。

 

「お前は降りてな、うん」

「え?ぎゃあー!!」

ギーシュの首根っこを掴んで地面に放り投げると、デイダラは粘土製の鳥を羽ばたかせ、一気に飛翔する。

 

 

「うわああぁ!?」

「な、なんなんだ!?」

山道から崖の上まで飛び上がると、左右それぞれに弓矢を構えた複数の男達がいた。皆、デイダラが一気に崖上まで上昇してきたことに驚愕の顔を見せている。

 

「お前ら、何者だ?…うん?」

静かに問うデイダラに、襲ってきた男達は怯みつつも弓を向け、次々に矢を放つ。

 

デイダラは巧みに鳥を操り、それらを軽々躱していく。男達は「なんで当たらねぇ!」と口々に喚く。

 

そんな男達を尻目に、デイダラはまず、片側の崖の上にいる男達に向かって鳥を急降下させ、男達の頭上を高速で飛行する。

 

風圧を受け、堪らず吹き飛ばされた男達は崖の上から転がり落ちていき、硬い地面に体を打ちつける。

痛みに苦しむ男達は、ルイズ達の目の前でうめき声を上げていた。

 

「……なるほど。これは手強いな」

デイダラの蹂躙劇を下から見ていたワルドは、誰にも聞こえないような大きさで、そう呟いた。

 

 

「このォ…!」

反対側の崖から、残りの男達がデイダラに向かって弓を引き絞る。

冷静に、腰のホルダーバッグに手を入れ、手のひらの口に粘土を喰わせるデイダラ。

 

そうして、デイダラがいつでも迎撃できる準備を整えたところで、ルイズ達の耳にバッサバッサとどこかで聞いたことのある羽音が聞こえてきた。

 

そして、突如小型の竜巻が放たれて、崖の上に残っていた男達が、先ほどの男達と同様に山道へ転がり落ちていった。

 

 

「……あいつら、何でこんなとこに居やがるんだ?」

ルイズ達より先に乱入者の正体に気づいたデイダラが、呆れたような声を零す。

 

 

山道にいるルイズ達にも、ようやく羽音の正体が分かった。

月をバックに見慣れた幻獣が姿を表し、ルイズとギーシュは声を揃えて叫んだ。

 

「「シルフィード!!」」

「やっほー、おまたせ〜」

シルフィードの背から、タバサとキュルケがひょっこり顔を見せてきた。

 

 

級友のまさかの飛び込み乱入に、ルイズもギーシュも驚きの顔を見せてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 








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