ゼロの使い魔は芸術家   作:パッショーネ
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29/2/25
以前の9話を読まれていた方々、大変申し訳ありません。
誠に勝手ながら、先々の展開を変える為にすこし書き換えさせて頂きました。

本当に申し訳ありませんです。




9,平穏な、日常

 

 

 

 

 

デイダラとギーシュが決闘をしてから数日が過ぎた。ここの所、特別に重大な事件などは一切起きてはいない。変わらぬ日常というやつである。

 

しかし、ルイズとデイダラそれぞれの日常には、わずかだが変化したこともあった。

 

まずルイズだが、彼女の周りでは、相変わらず罵倒の声が上がっている。たが、それでも以前に比べると、確実に罵詈雑言の数は減ってきているのだ。

それについては、先の決闘が起因している。ルイズの使い魔であるデイダラが、あまりに圧倒的過ぎる力でギーシュに勝利してみせたことだ。

さらには、デイダラは生徒達からすれば、杖も使わずに謎の力を見せた存在ということもあり、恐れを抱いた者が出てきたということが理由である。

 

ルイズとしては、使い魔の力をそのまま主人であるルイズの力として周りから評価されない事実に多少の不満を持っているようであるが、以前より罵倒が少なくなり、授業もより受けやすくなったので良しとしている。

 

 

そしてデイダラだが、彼はギーシュと決闘をしたことによって、その異能を明らかにした為に、以前のように平民だとは呼ばれなくなっていた。

だが、メイジと呼ばれる様になったワケでもなく、その手のひらの異形から、エルフの類ではないかという憶測が飛び交う様になっていた。悪い意味で有名人となってしまっていたのである。

 

デイダラの忍術も、ハルケギニアのメイジからすれば、エルフ独特の魔法なのではないか、という風に写ってしまっていたのだ。

 

それによって、学院に勤めている平民達は、デイダラのこともメイジを見る目と大差なく見るようになってしまっていた。

唯一、ギーシュから助けたシエスタだけが、デイダラに対して以前と変わらずに接しているといった具合である。

 

そういった現状に、シエスタは何かと心配した様子でデイダラを尋ねるが、デイダラは「くだらねぇ」の一言で済ましている。

 

そんなデイダラを、痩せ我慢しているのだと勘違いしたシエスタは、何かと彼の世話を焼きたがるようになっていた。ギーシュから助けた恩もあるだろうが、純粋なシエスタらしいことである。

 

 

 

 

そして、デイダラの日常では、もう一つ変化したことがあった。それはーーー

 

 

「………」

 

(あいつ、またつけてやがるのか…うん)

 

デイダラが、チラリと自分の背後に目を向ける。その先には、赤く、巨大なトカゲがジッとデイダラを見つめていた。

 

 

デイダラの日常で変化したもう一つのこと。それはキュルケの使い魔、サラマンダーのフレイムが、日々デイダラのあとをつけるようになったことである。

 

実はここ数日、正確にはギーシュとの決闘以降だが、キュルケの使い魔フレイムは、日が昇る度にデイダラをつけまわしているのである。

 

別に何か仕掛けてくる訳でもなく、無害であった為、放っておいたデイダラだが、そろそろ目障りだと感じてきていた。

 

 

(これ以上尾け回して来るってんなら、オイラの芸術を味わわせてやろうか……いや、待てよ?)

 

そろそろトカゲの目を潰しておくか、と考えていたデイダラだったが、ふと天啓が舞い降りた。

 

(そういや、ルイズが言ってたな。使い魔には主人の目となり耳となる能力が与えられると…うん)

つまり、今自分の背後にいる赤い巨大トカゲ、サラマンダーは、誰かがデイダラの動向を監視するために放った使い魔だということだ。

 

このサラマンダーが、誰の使い魔なのかを知らないデイダラは、ニヤリと悪い笑みを浮かべた。

近い内に何者かが自分に挑みに来ると推測したのである。

 

 

 

 

 

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昼休みの時間。

 

『まだ見ぬ挑戦者』が現れるかもしれない、という楽しみを見つけたデイダラは、しかし、先々の楽しみを置いておき、今現在自分が直面している問題を解決すべく、行動を始めていた。

 

 

その問題とは、ズバリ、『字が読めない』ということであった。

 

 

「しかし、まさか字が読めねーとはな。普通にルイズ達と会話できてたから、まったく気がつかなかったぜ…うん」

トリステイン魔法学院が誇る知識の宝庫、図書館へとやってきたデイダラは、適当に本棚から取った本を見ながら独り言を零す。

 

魔法学院周辺の地理を把握しておこうと、ルイズから地図を借りたことで発覚したことだが、まったく予想外過ぎてウンザリする。

今のデイダラでは、字面と子供の落書きの区別もできないであろう。

 

(流石にこのままじゃあ不便が過ぎる。さて、どうするかな…うん)

はじめは、シエスタに教えて貰おうと考えたデイダラだったが、生憎と彼女は給仕の仕事があった。

ルイズは、地図が読めないと発覚した際に、傲然たる物言いで教授を申し出られ、癪に触ったので断ってしまっていた。

 

(というか、何でこうも人が居ない。誰かしらは捕まえられると思ったんだがな……)

図書館に行けば、誰かしら見つけて教わればいいだろうと考えていたデイダラだったが、今の図書館には、司書さえも席を外していて、人っ子ひとり見つからなかった。

 

 

「こりゃ、出直すしかねーか……うん?」

諦め掛けていた時、一人の生徒がちょうど新たに図書館へやって来た。

 

「おい、そこのお前」

「………!!」

デイダラが話しかけた相手は、ルイズよりも背の低い、眼鏡をかけた青髪の少女であった。

少女はデイダラに気づくと、なにやら驚いた様子であったが、デイダラは気にせずに続ける。

 

「悪いが、オイラに読み書きを教えてくれねーか?ここの字は、オイラの居たとこと違うみたいでな、困ってたんだ。うん」

「………」

思案するように顎に手をやる少女。程なくして、少女が頷き、了承の意を表す。

 

「そうか!悪いな、助かるぜ。じゃあさっそくーーー」

「…その代わり」

「ん?」

早速教えてくれ、と言おうとしたデイダラを制止するように声を被せる少女。どうやら条件があるらしい。

 

「貴方に聞きたいことがある」

「なんだ、そんな事なら構わねーよ。言ってみな」

「……貴方は、エルフと何か繋がりを持ってる?」

少し言いかねたようだが、少女はハッキリとした声で問いかける。それは、デイダラがエルフの仲間なのかどうかを問う質問であった。

 

エルフ…。確か、砂漠地帯に住む種族で、メイジとは違った魔法を扱うとルイズから聞いたことがある。

「……なんだよ。お前もオイラがエルフだとかいうやつだと思ってるのか?その話もいい加減ウンザリしてきたとこなんだがな…うん」

 

「……じゃあ、貴方はエルフと関係ない?」

「ああ、そうだ。これ他の奴らにも伝えとけ、うん」

「…そう」

少女は、どこか残念そうな表情となった気がしたが、すぐに元の、何を考えているか分からない表情となって、デイダラに向き直る。

 

「それじゃあ、貴方に字を教える」

「ん?ああ、よろしく頼むぜ」

 

「タバサ…」

「??」

「私の名前」

デイダラは、短く自己紹介される。口数の少ない奴だな、という感想が頭の中に自然と出てきた。

 

「……オイラはデイダラだ」

タバサ、と名乗った少女は頷くだけで返事をした。あまりの無口っぷりに、人選ミスしたか、と思ってしまうデイダラであった。

 

 

 

 

 

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夜になり、段々と生徒達が寝静まってきた頃。デイダラは、部屋の外に何やら気配を感じ、腰を上げる。

ルイズはすでにベッドへ潜り、寝息を立てている。

 

 

デイダラが廊下へ出ると、件の赤い巨大トカゲ、サラマンダーが待ち構えていた。

 

サラマンダーがデイダラの元へと近寄って来ると、デイダラの服の裾を甘噛みし、クイクイと引っ張ってきた。どうやらついて来いということらしい。

 

(ついに来たか、オイラに挑もうとする命知らずが。だが、褒めてやるぜ、うん)

デイダラは一人、ほくそ笑む。

 

一応デイダラは、芸術家であると同時に忍である。忍の術はあまり見せびらかすものではないという意識は、もちろんデイダラも持っている。

その為、こうした決闘だ挑戦だといった戦いの場面は、自身の芸術忍術を披露する数少ないチャンスなのである。

 

 

「さてと、どんな奴が……うん?」

サラマンダーは、ルイズの部屋のすぐ隣の部屋へと案内した。

すぐさま怪訝な面持ちとなるデイダラ。何かはわからないが、行くしかない。

 

鍵は開いていた。中に入ると部屋は真っ暗であった。

 

「扉を閉めて?」

 

声がした。女の声だ。デイダラはますます訝しむ。

 

「用件があるならここで聞くぜ。言ってみな…うん」

「ツレない人ね」

女が言い終わると、背後の扉が勝手にしまった。

魔法か。デイダラがそう判断していると、部屋の中のロウソクがどんどん点っていく。

それは、部屋の入り口付近から部屋の奥へと続くようについていき、ついに部屋の主が姿を見せた。

 

 

その女の姿を認めた時、デイダラは思わず片手を頭にあて、項垂れ、呆れてしまった。

いや、これがもし自分を呆れさせ、油断させる為のものであったのなら、まんまとハマっているのだが。

 

(まぁそれで後れをとる様なことはないが……しかしこれは……うん)

 

薄明かりの中、褐色の肌の女はベッドに腰掛け、セクシーなベビードール姿で悩ましい視線を送っていた。

 

「そんな所に立っていないで、こちらへいらっしゃいな」

女が言う。デイダラは憮然とした表情で無視を決め込む。

 

(とりあえず、どこがとは言わねーがルイズとは正反対な奴だな。どこがとは言わねーが、うん)

注意は怠らずに、相手を見据える。

 

女は、仕方ないとばかりに立ち上がり、デイダラに近寄ってくる。ルイズにはないそれを、ゆっさゆっさと揺らしながら。

 

「…おい、そこまでだ。そこで止まれ。何者だテメー、うん?」

「うふふ。下心丸出しの他の男達とはわけが違うみたいね」

身の危険を感じたので、デイダラは蜘蛛型の起爆粘土をもって威嚇をする。

 

「貴方はあたしをはしたない女だと思うでしょうね…」

「………まぁな」

「でも仕方ないの。あたしは『微熱』のキュルケ。恋してるのよ!あたし、貴方に!恋はまったく突然ね」

 

デイダラは少し頭が痛くなってきた。どうやらこのキュルケと名乗った女は、とんだ色ボケ魔人であったようだ。

つきあってらんねーぜ、と退出しようとしたデイダラだが、いつの間にかキュルケはデイダラの腕に抱きついていた。

 

一生の不覚。デイダラ、キュルケの恋パワーの前に、接近を許す。

 

「テメー、ひっつくな!」

キュルケの、その豊満な胸がデイダラに押し付けられる。腕に挟まった。

 

「貴方がギーシュを倒した時の姿、表情……。とってもシビれたわ…。あんなに凄い魔法も見たこともないけれど、何よりも貴方の出す、その鋭い魅力にシビれたのよ!」

「ギャーギャーうるせーぞコラァ!」

 

二人が盛大に騒いでいると、突然何かが規則正しく叩かれる音が響いた。窓だ。外には一人のハンサムな男が浮いていた。

 

「キュルケ!待ち合わせの時間に君が来ないから来てみれば!」

「ペリッソン!えーと、二時間後に」

「話が違う!」

 

キュルケはうるさそうにしながら、胸の谷間に刺した杖を取り出して振るった。

ロウソクの火が大蛇のように伸びて、窓ごと男を撃ち落とした。

 

「まったく、無粋なフクロウね」

「夜のハンターだからな。狩りをしようとしてたんだろ。うん」

デイダラは、掴まれていた腕が解放されたので、落ち着きを取り戻した。冷静に、キュルケの言に乗っかった。

 

「さあ!あんなのほっといて続きを…」

「キュルケ!その男は誰だ!今夜は僕と過ごすんじゃなかったのか!」

キュルケが言いかけて、今度は、精悍な顔立ちの男が乱入してきた。

 

「スティックス!ええと、四時間後に!」

「そいつは誰だと……!」

再び炎の蛇が窓に向かい、男を撃ち落とす。

 

(あのフライって魔法も便利だよな、うん)

余裕を取り戻したデイダラは、忍世界では限られた者にしかできなかった空を飛ぶ力を見て、心の中で称賛した。

 

「とにかく!貴方が特別なの!本当に魅力的な人にこそ、貴族は恋の炎を燃え上がらせるんだわ!」

キュルケが三度、愛の言葉を紡ごうとするが、ーーー

 

「「「キュルケ!そいつは誰だ!恋人はいないって言ってたじゃないか!!」」」

窓の外で、三人の男達が押し合い圧し合いしながら叫んでいた。

 

デイダラは、いい加減この喧騒が鬱陶しく感じてきた。

 

「マニカン!エイジャックス!ギムリ!えーと、六時間後に…」

「「「朝だよ!!!」」」

三人にそろって突っ込まれてしまったキュルケは、うんざりした様子で使い魔であるフレイムに声をかけようとする。

 

「フレイーー」

「喝ッ!!」

 

サラマンダーのフレイムが炎を吐くよりも早く、デイダラは男達に向かって蜘蛛型の起爆粘土を放っていた。

 

デイダラが印を結ぶと、三人の男達の中心で爆発が起きる。彼らは「ギャー!!」と叫ぶ元気を残しながら吹っ飛んでいった。

 

「あら〜……」

キュルケが三人を見送っていると、背後で扉が閉まる音がした。

 

振り返ると、デイダラはもういない。

「えー、もうお帰りー?」

キュルケは一人、ぶーたれて呟いた。

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

「まったく、なんて日だ…うん」

デイダラはキュルケの部屋から出る。するとーーー

 

「あっ…」

「ん?……あっ」

ちょうどルイズが部屋から出てきてバッタリ鉢合わせた。

 

 

「あ、あ、あんた……。今、キュルケの部屋でナニしてたの……?」

「……何もしてねぇよ、うん」

わなわなと震えるルイズはーーー

 

「う、うう嘘おっしゃい!隣でドッカンバッタン騒がしいし、あんたも部屋に居ないんでまさかと思って起きて来てみれば!あ、ああんた!キュルケと一体どんなプレイを……!!」

「てめーコラァ!頭の中お花畑かッ!どんな解釈してやがる!うん!」

堰を切ったようにまくし立てるルイズに対し、デイダラはストレスを爆発させたのであった。

 

 

 

その後、デイダラはキュルケとの誤解を解くために多大な労力を消費した。チャクラまで持っていかれている気分であった。

いや、ここはルイズの予想外なパワーを称賛するべきなのか……。

 

さらに、ルイズのヴァリエール家とキュルケのツェルプストー家との恋人を寝取られた因縁話を長々と忌々しげに話すルイズに付き合わされ、久しぶりに疲労が溜まってしまった。

 

「………」

ひとしきり話し終えたルイズが、デイダラをジト目で睨んでいる。何なんだろうか。

 

 

「…あんた、キュルケの胸を見て、どう思った……?」

「………………」

 

 

ルイズから視線を逸らすデイダラ。ルイズには、それだけで十分伝わったようであった。

 

 

「去勢してやるわこのエロ犬ーーー!!」

「上等だコラァ!!てめーオイラを怒らせてただで済むと思うなよ!うん!」

 

 

杖を持つルイズ。起爆粘土を構えるデイダラ。

ルイズは我を忘れていたが、デイダラには粘土の威力を抑える理性は残っていた。

 

それでもこの日、深夜というこの時間で。ルイズの部屋からはしばらくの間、爆音が鳴り響き、近隣の寮生の安眠を妨げたという………。

 

 

 

 

 

 

 






ルイズは子供の頃から失敗魔法による爆発を自分で受けていた、ということで、勝手に爆発に耐性あるんじゃないかと考えて、こんなオチにしてみました。

NARUTO原作のトビとデイダラみたいな掛け合いがやりたかったんや……








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